アマゾン(AMZN)の2026年第3四半期決算を一次ソースで読む。AWS+39%の裏で、AI2社の株が「その他の資産」を9か月で3倍にし、社債は1,151億ドル

次の決算は2027年2月4日ごろの見込みです(推定。前年の同じ時期から)。過去の発表日は2026年10月29日、7月30日、4月29日、2月5日。決算日の一覧


順番で来た銘柄です。グロース・オポチュニティの組入7位、4.5%。所長はこの銘柄について何も言っていません。

決算は書く前日、10月29日の米国の引け後に出ました。使うのは、SECに出た8-Kに付いている第3四半期(7〜9月)のプレスリリース、7月31日に出た第2四半期の四半期報告書(10-Q)、比べるための第2四半期のプレスリリース、それと9月の社債の条件表です。第3四半期の10-Qはまだ無く、決算説明会の書き起こしはどのサイトでも弾かれて取れませんでした。説明会の数字は報道で補い、そう断って書きます。

速報はAWSの+39%と、売上とEPSが予想を少し下回ったことで埋まっています。この記事は貸借対照表の下の方を読みます。

どんな会社か

売上の切り口が2つあります。地域別の3セグメントと、商品別の7区分です。7〜9月の数字で書きます。

  • 北米: 売上1,128億ドル(+6%)、営業利益87億ドル、営業利益率7.7%
  • 海外: 売上431億ドル(+5%、為替を除くと+8%)、営業利益16億ドル、営業利益率3.7%
  • AWS: 売上460億ドル(+39%)、営業利益178億ドル、営業利益率38.7%

AWSは売上の23%で、営業利益の63%です。商品別では、自社で仕入れて売るオンラインストアが685億ドル(+2%)、出品者から取る手数料と物流費が465億ドル(+9%)、広告が196億ドル(+11%)、プライム会費などのサブスクリプションが140億ドル(+11%)。広告は前の四半期まで+22〜26%でした。会社は、プライムデーが今年は第2四半期に移った「タイミングのずれ」だと言い、第4四半期は10%台後半に戻ると書いています。

アマゾン 商品別の売上(2026年7〜9月)全社2,019億ドルオンラインストア684.7億ドル出品者向けサービス464.9億ドルAWS459.8億ドル広告196.4億ドルサブスクリプション140.1億ドル実店舗57.1億ドルその他16.5億ドル出所: Q3 2026 プレスリリース(Supplemental Financial Information)

直近の決算の数字

  • 売上: 2,019億ドル、前年比+12%(為替を除くと+13%)。stockanalysis.comの予想2,023億ドルを0.2%下回りました。プライムデーの移動が無ければ約4ポイント高かった、と会社は書いています
  • 営業利益: 281億ドル、+61%。会社が7月に出した予想は225〜265億ドルで、上限を15億ドル超えました
  • 営業利益率: 13.9%。会社は「過去最高」と書いています
  • 純利益: 207億ドル、-2%。前年同期にはAnthropic株の評価益95億ドルが入っていました
  • EPS(希薄化後): 1.89ドル、前年同期は1.95ドル。stockanalysis.comの予想1.99ドル、Zacksの集計2.01ドルをどちらも下回りました。会社は調整後EPSを出さないので、比べたのはGAAPの数字です
  • 営業キャッシュフロー: 424億ドル(前年同期は355億ドル)
  • 設備投資: 773億ドル。前年同期の351億ドルの2.2倍
  • フリーキャッシュフロー: 直近12か月でマイナス424億ドル。前年同期はプラス148億ドル
  • 第4四半期の会社予想: 売上2,400〜2,470億ドル(+12〜16%)、営業利益285〜335億ドル。2026年の設備投資は「約2,200億ドル」で据え置き

営業利益は会社予想の上限を超えたのに、EPSは予想を下回っています。差は営業利益の下の行です。支払利息が17億ドルで前年同期の5億ドルから3倍、その他の損益がマイナス7億ドル(前年同期はプラス102億ドル)。営業利益の+61%も、前年同期にFTCとの和解金25億ドルと退職金18億ドルが乗っていた分が効いていて、それを除いた前年の営業利益率は約12%です。13.9%は最高ですが、9.7%からの跳ね上がりではありません。

AWS 四半期の売上と営業利益率2025年4〜6月から2026年7〜9月まで。売上の伸びは6四半期続けて加速0160320480640800億ドル308.725Q2330.125Q3355.825Q4375.926Q1422.326Q2459.826Q332.9%34.6%35%37.7%39.4%38.7%29%36%43%AWS売上AWS営業利益率出所: Q3 2026 プレスリリース(Supplemental Financial Information)

その他の資産が9か月で3倍になった

貸借対照表で、2025年12月末と2026年9月末を並べます。

アマゾンの貸借対照表、2025年12月末と2026年9月末増えたのはAI2社の株が入る「その他の資産」、データセンターの有形固定資産、長期負債2025年12月末2026年9月末その他の資産1,226億ドル3,588億ドル有形固定資産3,570億ドル5,089億ドル長期負債657億ドル1,731億ドル現金と有価証券1,230億ドル1,142億ドルその他の長期負債360億ドル999億ドル出所: Q3 2026 プレスリリース(Consolidated Balance Sheets)

「その他の資産」が1,226億ドルから3,588億ドルに増えています。総資産の29%です。何が入っているかは第3四半期の10-Qが出るまで確定しませんが、第2四半期の10-Qに中身が書いてあります。

持ち物 2025年12月末 2026年6月末
Anthropic 転換社債 458億ドル 979億ドル
Anthropic 優先株 148億ドル 925億ドル
OpenAI 優先株 なし 287億ドル

Anthropicの転換社債は、2023年から2025年までに80億ドルで買ったものです。それが時価で979億ドル。含み益の920億ドルは損益を通らず、資本の「その他の包括利益」に積まれます。優先株は、Anthropicの資金調達のたびに「観察できる価格の変化」として値上がりを損益に入れます。1〜6月で628億ドル。第2四半期の純利益626億ドルの正体はこれでした。

OpenAIには1〜3月に150億ドル、4〜6月に137億ドル、そして7月以降に残りの213億ドルを入れ、合計500億ドルです。第3四半期のキャッシュフロー計算書の「買収と非上場株への投資」が240億ドルなのは、この213億ドルが大半だと思います。

7〜9月の包括利益の表には、売却可能な債券の含み益が税引後で360億ドル(税引前482億ドル)増えたと出ています。第2四半期の10-Qは、この区分の中身は主にAnthropicの転換社債だと書いています。つまりこの四半期も、損益には出ない形でAnthropicの値上がりが482億ドル乗った。純利益が-2%の四半期に、資本は9か月で4,111億ドルから6,136億ドルに増えています。

税金も同じ構図です。1〜9月の法人税は帳簿で339億ドルですが、現金で払ったのは53億ドル。キャッシュフロー計算書の繰延税金は355億ドルで、評価益にかかる税金をまだ払っていない分です。

借りて、建てて、出資して、使ってもらう

この会社がAIラボ2社との間で作っているお金の流れを、1〜9月の数字でつなぎます。

アマゾンとAIラボ2社のお金の流れ(2026年1〜9月)社債で借りてデータセンターを建て、出資した2社がAWSに1,000億ドルずつ約束する社債 1,151億ドル出資 約600億ドル設備投資 1,757億ドル利用の約束 各1,000億ドル超社債の投資家アマゾン借りる・建てる・出資するAnthropicOpenAIAWSのデータセンター2社の株の値上がり1〜6月の損益に628億ドル出所: Q3 2026 プレスリリース(キャッシュフロー計算書)、Q2 2026 Form 10-Q
  • 借りる: 長期の社債の発行が1〜9月で1,151億ドル。3月に米ドル建て370億ドル(最長2076年満期、利率3.85〜6.05%)、同じ月にユーロ建て145億ユーロ、5月にスイスフラン建て、6月にカナダドル建て、9月にポンド建て42.5億ポンド。長期負債は657億ドルから1,731億ドルになりました
  • 建てる: 設備投資が1〜9月で1,757億ドル。有形固定資産は3,570億ドルから5,089億ドル
  • 出資する: OpenAIに500億ドル、Anthropicに4〜6月だけで100億ドル。Anthropicにはさらに200億ドルの融資枠を用意していて、10-Qによると「計算能力の引き渡しの節目に達するごとに」引き出せるようになる仕組みです。残りは150億ドル
  • 使ってもらう: OpenAIは1〜3月に、既存の380億ドルの契約を8年で1,000億ドル上積み。Anthropicは4〜6月に、10年で1,000億ドル超を上積み。どちらも「AWSのチップの性能に関する契約上の義務」が付いています。長期契約の未履行分(受注残)は6月末で4,960億ドル、平均残存6.4年

受注残は説明会で5,780億ドルになったと報道にあります。3か月で820億ドル増えた計算ですが、書き起こしが取れていないので、報道の数字として置いておきます。

お金が一周しています。アマゾンが出資した会社がAWSに払い、その契約が受注残になり、社債を出してデータセンターを建て、建てた分をラボが使うと融資枠が開く。ラボの資金調達で株価が上がれば、アマゾンの利益と資本が増える。マイクロソフトは10-Qの注記でOpenAIからの売上が全体の11%だと出し、アルファベットはAnthropicにTPUを売っています。同じファンドに入っている3社が、同じ2社の顧客で、同じ2社の株主か取引先です。

気になっていること

1つ目。Anthropicの転換社債と優先株の値段は、どちらも「レベル3」の時価です。市場の値段ではなく、新しい資金調達の条件から会社が見積もった値段です。資本の増え方はAnthropicの次の資金調達の条件で決まり、下がった時に同じ速さで減ることも、仕組み上は同じです。

2つ目。借りる速さです。支払利息は四半期で17億ドルになりました。1年前の3倍です。6月末時点で未開始のリースが1,372億ドルあり、設備投資の2,200億ドルとは別です。マイクロソフトの未開始のリース3,646億ドルより小さいですが、方向は同じです。

3つ目。小売の減速がプライムデーの説明で全部片付くかどうか。オンラインストアの+2%と広告の+11%は、どちらも「タイミング」で説明されています。

株価は10月29日の終値で243.79ドル。決算の前の通常取引で4.2%下げていて、52週高値は287.20ドル、安値は196.00ドルです。CNBCは時間外で6%超下げたと書いています。CEOが説明会で2027年の設備投資は「大幅に増える」と言ったのも、同じ記事からです。

次の決算で見る所

第3四半期の10-Qが出れば先に確かめられることがあります。「その他の資産」3,588億ドルの中身、受注残5,780億ドルが10-Qの数字と合うか、未開始のリースの残高、Anthropic向けの融資枠150億ドルがいくら引き出されたか。

第4四半期の決算は2027年1月末か2月初めになるはずです(会社の予定表は今回の資料にありません)。見るのは、広告が10%台後半に戻ったか、AWSの営業利益率が38.7%から上がるか下がるか、支払利息がいくらになるかです。

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年9月30日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

80億ドルで買った社債が979億ドルになった会社の決算を、「EPSが0.10ドル足りなかった」で読むのは、たぶん読む場所を間違えています。

この会社は半導体を買う側・使う側の地図の「クラウド」にいます。