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カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ(CP)の2026年第3四半期決算を読む。営業係数は60%を切らず61.9%、残る第4四半期に13%増益が要る

次の決算は2027年1月27日ごろの見込みです(推定。前年の同じ時期から)。過去の発表日は2026年10月28日、7月29日、4月29日、1月28日。決算日の一覧


前の記事を書いたのが10月15日、その2週間後の10月28日に第3四半期の決算が出ました。カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ(CP)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。増収13%の半分は燃料、下期は営業係数60%割れを約束の続きです。世界のベストの組入は3位、4.1%(9月30日の月次レポート)。前の記事の時点では2位でした。所長はこの決算について何も言っていません。

使うのは、10月28日の第3四半期決算のプレスリリース(SECに提出された8-K)と、同じ日に出た石炭会社との契約の発表です。決算説明会は東部時間の午後4時30分、日本時間の29日早朝に開かれましたが、書き起こしもスライドも会社のサイトにまだ無く、今回は読めていません。スライドの中身を伝える記事を1本だけ補助に使います。10-Qも未提出です。通貨は断りが無ければカナダドルです。

前の記事で見ると書いた所

  • 穀物: 売上9.04億で前年比+29%。輸送量(トンマイル)は+23%、貨車数は+20%。9月の記録発表のとおりでした
  • 営業係数が60%を切ったか: 切っていません。調整後で61.9%、前年同期の60.7%から1.2ポイント悪化し、第2四半期の61.6%よりも悪い。会社は、燃料価格の上昇だけで調整後の営業係数を1.9ポイント悪くしたと書いています。燃料を除けば60.0%前後で、それでも60%は切れていない計算です
  • 燃料サーチャージの時間差: 追い風にはなりませんでした。機関車の燃料の平均価格は1ガロン4.49米ドルで前年比+53%、第2四半期の4.19ドルからさらに上がっています。燃料費は6.67億で+61%。サーチャージ収入そのものの金額は10-Qに載るもので、プレスリリースには無く、今回は分かりません
  • 通期ガイダンス: プレスリリースの本文には数字が無く、CEOの「今年の約束を達成する軌道にある」という一文だけです。スライドでは「2025年の4.61ドルから10%台前半の伸び」が維持されたと、Investing.comの記事が伝えています。計算は下の節で

今回の決算の数字

  • 売上: 42.19億、前年比+15%。為替の影響を除くと+13%。stockanalysis.comの予想42.1億とほぼ同じ
  • 営業利益: 14.87億、+11%。調整後は16.08億、+12%
  • 営業係数: 報告ベース64.8%(前年同期63.5%)、調整後61.9%(同60.7%)。第2四半期は64.6%と61.6%
  • 純利益: 9.16億、前年の9.17億とほぼ同じ
  • 希薄化後EPS: 1.04、+3%
  • 調整後EPS: 1.28、+16%。stockanalysis.comの予想1.31に2%届かず。NasdaqにあるZacksの集計は0.95ドルで、前の記事と同じ為替1.38で1.28カナダドルを米ドルにすると0.93なので、あちらは米ドル建てとみて比べません
  • 営業キャッシュフロー: 15.50億、前年同期12.74億
  • 調整後フリーキャッシュ: 10.18億、前年同期4.15億。設備投資が6.13億と前年の8.60億から減った分がそのまま乗っています
  • 自社株買い: 14.87億、1〜9月で34.31億。希薄化後の株数は前年比4%減

売上の伸びが輸送量の伸びを上回る構図は前の期と同じです。穀物は+29%と+23%で差が小さいのに対し、インターモーダルは売上+22%で輸送量+10%、自動車は売上+9%で輸送量-5%、石炭は売上-1%で輸送量-11%。トンマイルあたりの貨物収入は7.20セントで前年比+9%、為替を除いても+7%。燃料サーチャージと値上げが載っています。自動車は工場の改修と生産停止で輸送量が減った、とスライドにあるそうです。

営業係数は60%を切らず、残るのは第4四半期だけ

CPKC 四半期の売上と営業係数(調整後)2025年第1四半期から2026年第3四半期まで。営業係数は低いほど良い01632486480億カナダドル382025Q1372025Q236.62025Q339.22025Q4372026Q141.62026Q242.22026Q362.5%60.7%60.7%55.9%63%61.6%61.9%52%59.5%67%売上営業係数(調整後、%)出所: 各四半期のプレスリリース

前の記事で、CFOが「下期は60%を切るというのは妥当」と言った所を見ると書きました。第3四半期は61.9%で、2025年第4四半期の55.9%以来、3四半期続けて60%台です。

営業費用は27.32億で前年比+18%、増えた額は4.07億です。内訳を見ると、燃料が2.52億増で、増加分の6割を占めます。人件費が0.92億増(+15%)、購入サービスが0.29億増、減価償却が0.26億増、材料が0.16億増。設備賃借料だけ0.08億減りました。

CPKC 営業費用の増加4.07億の内訳(2026年第3四半期、前年同期比)燃料が6割61%燃料 2.5億カナダドル22%人件費 0.9億カナダドル購入サービス等 0.3億カナダドル減価償却 0.3億カナダドル材料 0.2億カナダドル設備賃借料は0.08億の減少で、合計は4.07億。燃料は1ガロン4.49米ドルで前年比+53%、燃料費は+61%出所: 2026年第3四半期決算プレスリリース

燃料の値上がりが荷主への上乗せ請求(サーチャージ)で戻ってくる仕組みと、それが営業係数を悪くする理由は前の記事に書きました。今回は会社がその影響を数字で出していて、報告ベースで1.7ポイント、調整後で1.9ポイントの悪化です。燃料を除いた調整後の営業係数は、私の計算で60.0%。第2四半期にCFOが「事故費用と報酬が無ければ60%に近かった」と言ったのと同じ場所に、今度は燃料を理由にして立っています。

燃料効率は3%良くなり、列車の平均速度は時速20.5マイルで+8%、ターミナルでの滞留は9.4時間で-7%。運行の数字は全部良くなっています。それでも営業係数が悪化するのが、燃料高の局面の鉄道です。

通期の計算をします。調整後EPSは1〜9月で3.57、前年同期の3.28から+9%。ガイダンスの「10%台前半」をいちばん低い10%で取ると通期5.07が要り、第4四半期は1.50。前年の第4四半期は1.33(通期4.61から1〜9月の3.28を引いた数字)なので、+13%です。前の記事では「下期に14%増が要る」と書きましたが、第3四半期が+16%だったので、第4四半期に要る伸びは13%に少し下がりました。

営業係数の方は、Investing.comの記事によれば、第4四半期は60%を切るとスライドに書いてあるそうです。輸送量の環境とカナダの天候が理由だとか。前の記事で「下期に60%割れ」と読んだ約束は、「第4四半期に60%割れ」に狭まりました。第4四半期は昨年55.9%を出した季節なので、切れなければ説明が要る数字です。

純利益が増えなかった理由は、税金だった

調整後EPSが+16%で、報告ベースの純利益が横ばい。差の中身を調整表で見ます。

  • KCS買収時の資産の時価評価の償却: 0.94億、税引後0.69億、1株11セント。前の記事で「消えない11セント」と書いたもので、今回も11セントです
  • カナダ歳入庁(CRA)による過年度の税の再査定: 0.94億、11セント。KCS買収に関係する過年度の税で、第3四半期に一度に計上しています
  • メキシコの税務当局(SAT)との和解: 0.17億、2セント
  • UPとNSの合併への反対活動の助言費用: 0.17億、3セント。1〜9月で0.44億
  • 買収関連費用: 0.12億、1セント

税の2件で13セント。これが無ければ報告ベースのEPSも1.17で+16%でした。前の期までの調整項目は償却と買収費用と助言費用の3つで、今回から税の再査定が加わりました。「一時的」と言われれば一時的ですが、KCS絡みの税金の話が買収から3年半たって出てくるのは、3カ国で税務をやる会社の面倒さだと受け取りました。法人税費用は4.48億で前年の2.96億から+51%です。

借金は258.5億で、1年前の238.9億から19.6億増、第2四半期末の251.5億からも7億増えました。純負債のEBITDA倍率は3.2倍で、前年同期も3.2倍。純利息は2.39億で+8%。設備投資を減らし、借金を増やして、自社株を買う構図は前の期と同じです。

石炭の契約と、安全の数字

決算と同じ日に、エルク・バレー・リソーシズ(EVR)と5年の新契約を発表しました。EVRはブリティッシュ・コロンビア州に4つの製鉄用石炭の鉱山を持つ、この会社の最大の石炭顧客です。2027年1月1日から、バンクーバーの輸出ターミナルへ運ぶ石炭の取り分をCPKCが増やす内容で、金額は発表にありません。

石炭はこの会社でいちばん弱い品目で、第3四半期の売上は2.54億で前年比-1%、輸送量は-11%。1〜9月では売上-10%、輸送量-17%です。輸送量が11%減って売上が1%減で済んだのは、トンマイルあたりの収入が+12%だったからです。契約は2027年からなので、今年の数字には効きません。

安全の指標は、前の記事で気になっていた所です。従業員の人身事故率は20万労働時間あたり1.12で、前年の0.93から+20%。第2四半期も+32%だったので、2期続けて悪化です。一方で列車事故率は100万列車マイルあたり0.46で、前年の1.15から-60%。1〜9月では0.77で-7%。列車は壊れなくなったが、人は怪我をしている。前の記事でCOOが「失望している」と言った指標は、まだ直っていません。

次の決算で見る所

第4四半期と通期の決算の日程は資料に無く、前回は1月28日でした。

  • 営業係数が第4四半期に60%を切ったか。切れば通期で約束どおり、切れなければ燃料のせいにできるかどうか
  • 調整後EPSが第4四半期に1.50以上か。ガイダンスの下限に要る数字です
  • 2027年のガイダンス。会社は2024〜2028年の目標として調整後EPSの2桁成長を掲げていて、燃料高が続く中でその数字を出すかどうか
  • 人身事故率。2期続けて悪化した数字が止まったか
  • 説明会の書き起こしが出たら、CRAの再査定の中身と、UPとNSの合併審査の進み具合

説明会で分かったこと(10月29日に追記)

説明会の書き起こしは、会社のサイトには今日もまだ無く(司会はスライドを投資家向けページに置いたと言っていますが、ページ自体が開けません)、The Motley Foolが公開した書き起こしを読みました。

記事で待っていた所から。燃料サーチャージの時間差は、やはり追い風ではなく向かい風でした。CFOのVelani氏は、燃料価格の上昇が調整後の営業係数を1.9ポイント悪くした一方、利益にはわずかに追い風だったと言い、質疑では、サーチャージの時間差と精製マージンの分だけアナリストのモデルより燃料の痛みが大きく出た、と説明しています。燃料効率の3%改善で浮いた金額は0.21億でした。

第4四半期の営業係数は、CFOが60%を切ると強い自信を示しました。理由は、10月の輸送量が非常に強いこと、鉄道の運行が良いこと、カナダの天候がここまで穏やかなことの3つ。10月27日時点のトンマイルは前年比6%強の増加、トンマイルあたりの収入は1桁台後半の伸びだそうです。ただし前年の第4四半期とは燃料価格の環境が違うので、燃料では前年比で向かい風になる、とも言っています。通期ガイダンスは「達成できる位置にいる」で、数字の修正はありません。

新しく分かった数字です。設備投資は今年26.5億で、カナダドルの水準次第で少し増えるかもしれないが、長期の26〜28億の枠は変えない(CFO)。通期の従業員数は前年比で少し減る見込み(CFO)。カナダとメキシコを結ぶ陸橋ルートの売上は、合併時の年1億から、今年の終わりには年6億のペースを超える(CEOのCreel氏)。EVRの契約は、今カムループスでCNに引き渡している石炭の約半分、列車1.5本分がCPKCの一貫輸送に戻る内容です。CFOは「5〜6年前に失った売上1〜1.5億の半分が戻る」というアナリストの見立てを、妥当な概算だと認めました。EVRの今年の出荷量は15%以上減る見込みで、2027年の量はまだ見えない(CMOのBrooks氏)。

2027年のガイダンスは出していません。CMOは、カナダの穀物の収穫は7,600〜7,800万トンと記録的だった昨年より8%ほど減る見込みだが、CPKCの沿線は干ばつから回復していて昨年より良い地域もある、値上げの更改は3〜4%で続いている、と言っています。エネルギー・化学品は、燃料高で荷が短距離の国内向けに流れ、会社の想定を下回ったとも認めました。

人身事故率の20%悪化は、COOのRedd氏が「我々の基準を満たしていない」と一言。原因や対策の中身はありません。

CRAの税の再査定は、説明会では誰も触れず、質問も出ませんでした。UPとNSの合併は、CEOが質疑の大半を使って反対を述べ、11月18日に次の意見書を出す、求めるのは条件付きではなく全面的な却下だと言っています。万一承認される場合に求める中身として、接続駅の保護、荷主のアクセス、残る独立鉄道への制限の撤廃も挙げました。審査の日程そのものの話はありません。

使った資料

株価は10月28日の終値で89.43米ドル、発表の前の値です。前の記事を書いた10月14日の86.13ドルから4%上げていました。Investing.comの記事によれば、決算を受けた時間外取引では3.6%安の86.24ドル。52週の高値は96.90ドル、安値は68.42ドル。直近4四半期の調整後EPSは4.90カナダドル、前の記事と同じ為替1.38で3.55米ドルにすると、終値はその25倍です。私の計算です。株価は書いた日のものです。

60%を切ると言った期に61.9%を出して、理由が燃料で、約束は第4四半期に持ち越し。数字の筋は通っているのに、どこか既視感がある決算でした。