AIの設備投資は誰のお金で回っているか。クラウド4社の7〜9月、稼いだ現金で足りたのはマイクロソフトだけで、残る3社は社債と株で埋めている
10月30日、ナスダック100は前日比3.5%下げました。前日の引け後にアマゾンとインテルが決算を出し、インテルはこの日28.6%下げています。SNSでは「AIに回るお金が細り始めた」という見方が広く読まれました。
AIのデータセンターにお金を出しているのは、主にマイクロソフト、アルファベット、メタ、アマゾンの4社です。このブログでは4社の7〜9月の決算を1社ずつ読んできました。その数字を並べ直して、設備投資のお金がどこから来ているのかを確かめます。株価がこれからどうなるかの予想や、売り買いの判断は書きません。
要点
- 4社の7〜9月の設備投資は2,088億ドル。 稼いだ現金(営業キャッシュフロー)は1,755億ドルで、333億ドル足りません
- 稼いだ現金で足りたのはマイクロソフトだけ。 アルファベット、メタ、アマゾンは、設備投資が稼いだ現金を上回りました
- 足りない分は社債と株。 アマゾンは1〜9月に社債を1,151億ドル出し、アルファベットは株を売り始め、メタは議決権の無い株の仕組みを作りました。アルファベットとメタは、1〜9月の自社株買いがゼロです
- それでも、設備投資の見通しを下げた会社は無い。 アルファベットとアマゾンは、2027年は「大幅に増える」と言っています
- 出資した先が、自分のクラウドの客になっている。 マイクロソフトの7〜9月の売上の約11%はOpenAI向けでした
- 10月30日のインテルの下げは、この話とは別。 10〜12月の弱い見通しの理由は、パソコン向けの売上と工場の事故でした
4社の7〜9月を並べると
| 会社 | 稼いだ現金 | 設備投資 | 差 |
|---|---|---|---|
| マイクロソフト | 580億ドル | 452億ドル | +128億ドル |
| アルファベット | 423億ドル | 514億ドル | -91億ドル |
| メタ | 328億ドル | 349億ドル | -21億ドル |
| アマゾン | 424億ドル | 773億ドル | -349億ドル |
稼いだ現金は営業キャッシュフロー、設備投資は各社が決算で出している数字です。マイクロソフトの設備投資にはリースで借りた設備も入っていて、現金で払った分だけなら394億ドルでした。
1年前の7〜9月、4社の設備投資はマイクロソフト348億ドル、アルファベット240億ドル、メタ194億ドル、アマゾン351億ドルで、合計1,133億ドルでした。1年で+84%です。稼ぐ現金も増えていますが、設備投資の増え方のほうが速く、4社のうち3社で追い越されました。
読者が気になりそうなこと
AIに回すお金は尽きかけているの? 尽きてはいません。9月末の手元資金は、アルファベットが2,651億ドル、メタが824億ドル、マイクロソフトが645億ドルあります。変わったのは、設備投資を自分の稼ぎでまかなう形から、借りたり株を売ったりして建てる形に移ったことです。アマゾンの支払利息は7〜9月に17億ドルで、1年前の3倍になりました。借りて建てる形には、利息という値段が付きます。
設備投資は減りそう? 4社の見通しに、減らす話はありません。マイクロソフトは次の四半期を「500億ドル超」、下期はさらに増やすと言っています。アルファベットは2026年を1,950〜2,050億ドルで据え置き、2027年は「大幅に増える」。メタは2026年の予想の下限を1,300億ドルから1,350億ドルに上げました。アマゾンは2026年を約2,200億ドルで据え置き、2027年は「大幅に増える」と説明会で話したと報じられています。
10月30日の下げは、これが原因? この日いちばん下げたインテルは、別の理由です。インテルの7〜9月の売上は165億ドルで前年比+21%、データセンター向けは+78%でした。株価を下げた10〜12月の売上の見通し150〜160億ドルは、パソコン向けの売上が前の四半期から20%超減るという予想が中心です。粗利率の下げのうち2ポイントは、イスラエルの工場の事故でした。データセンター向けの注文が止まった、という話ではありません。アマゾンの株価は、この日1.4%の下げでした。
誰が気にするべき話? 4社の株を持つ人には、会社の形の変化が効きます。稼いだ現金を株主に返す会社から、稼いだ現金を設備に回して足りない分を借りる会社に変わりつつあります。半導体の株を持つ人にとっては、4社の見通しが下がっていない間は注文の源は細っていない、と読めます。
ここから後ろは、上の数字の根拠です。
マイクロソフト: 足りているが、「借りる準備がある」と書いた
7〜9月の営業キャッシュフローは580億ドルで、4社で唯一、設備投資を上回りました。フリーキャッシュフローは会社の数字で186億ドルです。それでも手元資金は6月末の768億ドルから645億ドルに減り、借入金を49億ドル返しています。
数字に出にくい約束もあります。10-Qのリースの注記によると、まだ始まっていないデータセンターのリースが9月末で3,646億ドルあり、3か月で355億ドル増えました。2027年度から2034年度の間に始まります。この四半期に新しく計上したリースは、設備投資に入らない営業リースが65億ドルで、設備投資に入るファイナンスリースの52億ドルを上回りました。
会社の説明会の原稿の最後には、前の四半期に無かった一文が入りました。事業が生む現金を補うため、魅力的だと判断すれば追加の資金調達源を使う、という内容です。詳しくはマイクロソフトの7〜9月の記事に書きました。
アルファベット: 2四半期続けて足りず、株を売り始めた
7〜9月のフリーキャッシュフローはマイナス91億ドルで、4〜6月のマイナス59億ドルから幅が広がりました。CFOは、AI用のチップ(TPU)を組んだシステムを顧客に売る商売で、部品の在庫を先に積んでいることを理由に挙げています。在庫は133億ドルで、売上の大半は2027年に計上する見込みだそうです。
お金の入りは、7〜9月に社債290億ドルと、株を少しずつ市場で売る仕組み(ATM)で124億ドル。4〜6月にも普通株と転換優先株で496億ドル、社債で203億ドルを集めています。1〜9月の自社株買いはゼロです。詳しくはアルファベットの7〜9月の記事に書きました。
メタ: 自社株買いを止め、株を出す道具を作った
7〜9月の設備投資は349億ドルで、営業キャッシュフローの328億ドルを上回り、フリーキャッシュフローは21億ドルの赤字でした。9か月で249億ドルの社債を出し、2026年の自社株買いはゼロ(前の年の同じ9か月は262億ドル)です。
同じ日に、議決権の無いクラスC株を新しく作ることを発表しました。株主向けの説明書には、借入を検討したが経営陣が考える規模では格付けに悪い影響が出るので退けた、と書いてあります。CFOは説明会で、今の時点で発表する具体的な調達の計画は無いと答えています。詳しくはメタの7〜9月の記事に書きました。
アマゾン: 差がいちばん大きく、出資した先が客になる
7〜9月の設備投資773億ドルは、営業キャッシュフロー424億ドルの1.8倍です。直近12か月のフリーキャッシュフローはマイナス424億ドルで、1年前はプラス148億ドルでした。長期の社債を1〜9月に1,151億ドル出し、長期負債は2025年末の657億ドルから1,731億ドルになっています。
アマゾンの4〜6月の10-Qには、AIの開発会社2社とのお金の流れが書いてあります。OpenAIには2026年に合計500億ドルを出資。Anthropicにも4〜6月に100億ドルを出資し、さらに200億ドルの融資枠を用意しています。融資枠は、計算能力の引き渡しの節目に達するごとに引き出せる仕組みです。同じ2社は、AWSとの長期の利用契約をそれぞれ1,000億ドル規模で上積みしました。
出資した会社がAWSに利用料を払い、その契約がAWSの受注残になり、アマゾンは社債を出してデータセンターを建てる。マイクロソフトも、OpenAIの持分約24%を持つ株主で、7〜9月にOpenAIとの契約から計上した売上は100億ドル、全社の売上の約11%でした。アルファベットは、Anthropicを顧客としてTPUを売っています。
この形では、AIの開発会社が資金を集められる条件が、クラウド大手の売上と受注残、それに持っている株の値段に直接つながります。アマゾンが持つAnthropicの転換社債は、80億ドルで買ったものが6月末に979億ドルで計上されていますが、この値段は市場の価格ではなく、新しい資金調達の条件から見積もった値段です。詳しくはアマゾンの7〜9月の記事に書きました。
次に見るところ
- アルファベットとアマゾンの2027年の設備投資の数字。 どちらも10〜12月の決算で出すと言っています。「大幅に増える」が何割か
- フリーキャッシュフローのマイナスが続くか。 アルファベットは、TPUシステムの納品が始まって現金が入り始めるか
- 借り方。 アマゾンの支払利息、マイクロソフトの未開始のリース、メタがクラスC株を使うか
- AIの開発会社の資金調達。 新しい調達の条件は、クラウド大手の受注残と資産の値段に効きます
使った資料
各社の数字は、このブログの決算記事で読んだ一次資料(決算のプレスリリース、10-Q、説明会の原稿)からです。