アルファベット(GOOG)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。純利益1,122億ドルでフリーキャッシュフローはマイナス59億ドル、増資496億ドル
10本目はアルファベット(Alphabet、ティッカー GOOG)です。所長が選んだのではなく、3本のファンドを組入比率の高い順に回っていて、順番で来ました。所長はこの銘柄について何も言っていません。
グロース・オポチュニティの組入3位、6.7%。ティッカーが2つある会社で、GOOGLは議決権のあるクラスA、GOOGは議決権のないクラスCです。ファンドが持っているのはクラスCの方です。
使うのは、2026年7月22日に出た第2四半期(4〜6月)の決算プレスリリース(SECに提出された8-K)、翌日に出た四半期報告書(10-Q)、同じ日の決算説明会の書き起こし、それと6月と8月の資金調達の8-Kです。読む前は「検索広告が伸びて、クラウドが伸びて、以上」で終わる会社だと思っていました。10-Qの注記と現金収支の表を読んだら、この四半期は、この会社が株を売った四半期でした。
どんな会社か
売上の内訳を、第2四半期の数字で書きます。
| 売上の区分 | 2026年第2四半期 | 前年比 | 中身 |
|---|---|---|---|
| Google検索など | 633億ドル | +17% | 検索結果に出る広告 |
| YouTube広告 | 111億ドル | +13% | 動画の前後に出る広告 |
| Googleネットワーク | 73億ドル | -1% | 他社サイトに配信する広告 |
| サブスクリプション・プラットフォーム・端末 | 129億ドル | +15% | YouTube Premium、Google One、Google Play、Pixel |
| Google Cloud | 248億ドル | +82% | クラウド基盤、Workspace、それと今期から始まったTPUシステムの販売 |
| Other Bets | 3.8億ドル | +2% | Waymoなど |
合計1,198億ドル。広告だけで816億ドル、売上の68%です。セグメントの営業利益は、Google Servicesが395億ドル(営業利益率41.8%)、Google Cloudが88億ドル(35.6%)、Other Betsが18億ドルの赤字、それとセグメントに割り当てない「Alphabetレベルの活動」が58億ドルの赤字です。最後の項目は、10-Qによると主に「汎用AIモデルの開発に関わる研究開発費」です。Geminiを作る費用はクラウドにも検索にも載せず、ここに置いています。
クラウドの営業利益率は、前年同期の20.7%から35.6%に上がりました。説明会でCFOのアナット・アシュケナージ氏は、売上の伸びがTPUシステムの販売を除いても加速したと言っています。TPUはGoogleが自社で設計しているAI用のチップで、これまで自社のデータセンターでしか動いていませんでした。第2四半期に、顧客のデータセンターに納める形の販売が始まっています。
直近の決算の数字
| 項目 | 2026年第2四半期 | 備考 |
|---|---|---|
| 売上 | 1,198億ドル | 前年比 +24%(為替の影響を除くと +23%)、前期比 +9% |
| 営業利益 | 408億ドル | 前年比 +30% |
| 営業利益率 | 34% | 前年同期は32% |
| その他の損益 | 980億ドル | うち株式の評価益が990億ドル |
| 純利益 | 1,122億ドル | 前年比 +298% |
| EPS(希薄化後) | 9.11ドル | 前年同期は2.31ドル。評価益の寄与が6.26ドル |
| 営業キャッシュフロー | 391億ドル | 前年同期は277億ドル |
| 設備投資 | 449億ドル | 前年同期は224億ドル。1〜6月で806億ドル |
| フリーキャッシュフロー | -59億ドル | 第1四半期は101億ドル、直近12か月で533億ドル |
| 現金と有価証券 | 2,425億ドル | うち上場株式が871億ドル |
| 長期負債 | 982億ドル | 2025年末は465億ドル |
| 従業員 | 198,933人 | 前年同期は187,103人 |
売上が24%伸びて、営業利益が30%伸びて、純利益が4倍。この並びを見て、まず純利益から疑いました。
純利益の7割は、売っていない株の値上がり
その他の損益980億ドルの中身は、プレスリリースの表に出ています。株式の評価益が990億ドル。10-Qは「主にSpaceXと、ある未上場企業の株式の未実現の利益」と書いています。SpaceXは10-Qの有価証券の注記に名前が出ていて、上場株式としての計上額は、短期の売却制限が付いたものが800億ドル、2027年第3四半期まで売れないものが141億ドル。もう1社は資料に名前がありません。
プレスリリースの脚注は、この評価益が税金を219億ドル、純利益を771億ドル、EPSを6.26ドル押し上げたと書いています。つまり、評価益を抜いたEPSは2.85ドル。前年同期の2.31ドルから23%増で、営業利益の伸びとだいたい同じです。「純利益4倍」の正体は、本業ではなく、持っている株が値上がりしたことです。会社も脚注で「投資の価値の変動は、今後の期間でもその他の損益の変動に大きく寄与しうる」と断っています。売って現金になるまでは数字の上の話で、下がれば同じ桁で損も出ます。
株を買い戻す会社が、株を売った
ここがこの記事を書きたかった理由です。
現金収支の表の「財務活動」の欄を、前年同期と並べます。2025年第2四半期は自社株買いが132億ドルで、株の発行はゼロ。2026年第2四半期は自社株買いがゼロで、普通株の発行で305億ドル、転換優先株の発行で191億ドルが入っています。1〜6月で見ても、自社株買いはゼロです。
10-Qの注記の中身はこうです。
- 6月4日、クラスA株2,900万株を355.20ドル、クラスC株2,900万株を351.80ドルで公募。手取り205億ドル
- 同じ日、バークシャー・ハサウェイの関連会社にクラスAとクラスCを1,400万株ずつ私募。手取り100億ドル
- 6月5日、6.25%の強制転換優先株を預託証券で3億8,500万株。手取り190億ドル。2029年5月に普通株へ自動的に転換される。配当は年6.25%
- 合わせて496億ドル。使い道は「AIインフラとグローバルな計算能力を拡大するための設備投資を含む、一般的な企業目的」
- 別に、最大400億ドルまで市場で売れるATMプログラムを設定。こちらは「従業員の株式報酬に伴う税金の支払いに使う」とあり、6月末時点では未使用
優先株には、転換時の希薄化を抑えるために10億ドル払ってキャップド・コールも買っています。資金調達のために株を売り、その株の希薄化を抑えるために金融機関に10億ドル払う。自社株買いを続けてきた会社の財務の動きとしては、見たことのない形です。
社債も出しています。5月にユーロで90億、カナダドルで95億、円で5,769億、第2四半期の手取りが203億ドル。8月10日にはさらに250億ドルの米ドル建て社債を出しました。説明会でCFOは「1年前は約160億ドルだった負債を、複数の通貨と地域で約1,000億ドルにした」と言っています。
なぜ株まで売ったのか。説明会での答えは「成長だけでなく、強靭で健全なバランスシートを持ちたい、というのが株式市場に出た理由」で、「現時点で株式市場に戻る計画はない」とも言っています。設備投資の予想は2026年で1,950〜2,050億ドル。前回の1,800〜1,900億ドルから上がり、2027年は「大幅に増える」とだけ言って数字を出していません。営業キャッシュフローは直近12か月で1,857億ドルなので、設備投資の予想は、本業で稼ぐ現金を1年分まるごと超えています。足りない分を社債と株で埋めた、というのが数字の順番です。
クラウドの受注残5,139億ドル
10-Qに、契約済みでまだ売上に計上していない金額(受注残)が5,195億ドル、うちクラウドが5,139億ドルとあります。説明会では「前の四半期から500億ドル以上増えた」「2年以内に売上にするのは全体の50%強」。クラウドの四半期売上が248億ドルなので、受注残は売上のおよそ5年分です。
受注残の中には、TPUシステムの販売契約も入っています。10-Qによると「限られた数の契約」で、顧客は「オンプレミスの基盤を必要とするか提供する、特殊で大規模なワークロードの顧客」。売上の大半は2027年に計上する予定で、今年は「比較的小さい部分」だそうです。貸借対照表の在庫が2025年末の24億ドルから100億ドルに増えているのは、10-Qの説明では主にこのTPUシステムの在庫です。
誰に売っているかは、資料に書いてありません。説明会でCEOのスンダー・ピチャイ氏は「顧客のデータセンターや、Blackstoneとやっているプロジェクトのような他のデータセンターにTPUを置く」と言っていて、それ以上は出ていません。TPUの利益率も「個別の製品の利益率は開示しない」で終わりました。
気になっていること
10-Qの契約義務の注記です。6月末時点で、購入の確約と契約上の義務が合計8,110億ドル、うち1年以内のものが2,007億ドル。大半は技術インフラの長期供給契約で、2030年までに履行する予定。エネルギーの購入契約は最長2054年まで続き、最低数量の引き取り義務(テイク・オア・ペイ)が付いています。これとは別に、まだ始まっていないデータセンターのリースが852億ドル。マイクロソフトの記事で「未開始のリース3,291億ドル」を書きましたが、アルファベットはリースより購入契約の側に数字が寄っています。
さらに、データセンターの事業者の支払い義務を肩代わりする保証が76億ドルと438億ドル、これから結ぶ予定のものが241億ドル。それと「ある未上場企業」に対して、2030年までの達成条件付きで200億ドルの追加出資の約束。評価益を出した「未上場企業」と同じ会社かどうかは、資料からは分かりません。
説明会でCFOは、供給制約の環境が続いているので「第3四半期は内部の能力を作るまでのつなぎとして、第三者の計算能力の利用を広げる」と言っています。自社のデータセンターが足りないので、他社から借りる。年間2,000億ドル使っていても、まだ足りないという話です。費用の側では「減価償却費と、電力などのデータセンターの運営費が損益を圧迫し続ける」「フリーキャッシュフローは圧力を受け続ける」と、会社が自分で言っています。
株価は10月15日の終値で344.91ドル。6月の公募でクラスCを売った351.80ドルを、4か月たって下回っています。52週高値は404.47ドルでした。株を買った人は今のところ含み損で、会社は496億ドルを手に入れている。評価益990億ドルの四半期に、自社の株は公募価格の下にいます。
10月28日に見る所
次の決算は10月28日(米国時間)。10月6日に会社が日付を出しています。
- 設備投資。第2四半期の449億ドルの次が、通年1,950〜2,050億ドルに向けていくらか。2027年の数字が出るか
- フリーキャッシュフロー。第2四半期のマイナス59億ドルが続くか。会社は「圧力を受け続ける」と言っているので、プラスに戻っていたら逆に理由を知りたい
- クラウドの受注残。5,139億ドルから、四半期で500億ドルのペースが続くか。TPU販売の契約が増えたか
- その他の損益。SpaceXの株価次第で、純利益はまた桁が変わる。評価益を抜いたEPSで見る
- ATMプログラム。400億ドルの枠を使い始めたか。使っていれば、理由が「税金」のままか
- 第三者の計算能力。第3四半期に広げると言った分が、クラウドの利益率にどう出たか
使った資料
- Alphabet 第2四半期決算プレスリリース(Form 8-K Exhibit 99.1、2026年7月22日)
- Alphabet 四半期報告書(Form 10-Q、2026年6月30日期、2026年7月23日提出)
- 第2四半期決算説明会の書き起こし(allmind.ai、自動生成)
- 強制転換優先株の発行に関する8-K(2026年6月5日)
- ATMプログラムの設定に関する8-K(2026年6月4日)
- 米ドル建て社債250億ドルの発行に関する8-K(2026年8月10日)
- 第3四半期決算の日程の告知(2026年10月6日)
組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。
純利益が4倍になった四半期の記事で、いちばん長く書いたのが株を売った話になりました。読む前に想像していた記事と、ずいぶん違います。