インテル(INTC)の7〜9月決算を読む。株価を2割下げたのはPCの在庫で、日本の取引先が売っている基板と装置は「足りない」側にある

次の決算は2027年1月21日ごろの見込みです(推定。前年の同じ時期から)。過去の発表日は2026年10月29日、7月23日、4月23日、1月22日。決算日の一覧


番外編です。普段は所長が持っている投資信託3本の組入上位を順番に1社ずつ読んでいますが、今回は順番の外で、インテル(Intel、ティッカー INTC)を読みます。

きっかけは2つあります。1つは、レーザーテックの決算を読んだ記事(売上の20.7%がインテル)で、インテルが大口の客だと分かっていたこと。イビデンの基板の客でもあります。もう1つは、10月29日の決算のあと、10〜12月の見通しが弱いとして時間外で株価が2割前後下げたと報じられたことです。速報は見通しと株価の反応で埋まっていたので、そこは短く済ませ、日本の取引先から見て何が変わったかを読みます。

使うのは、10月29日のプレスリリース、CEOとCFOの説明原稿(Prepared Remarks)、決算説明の資料、質疑の書き起こし、第2四半期の10-Q、2025年の10-Kです。

どんな会社か

CPUを設計して、自分の工場で作って売る会社です。工場の部分はIntel Foundryという別の事業で、社内の製品部門も外の客と同じように工場からウエハを買います。

7〜9月の売上の内訳(セグメント間の取引を含む)です。

  • クライアント(CCPG): 81億ドル、前年比-5%。パソコン向けのCPU。4〜6月からは-9%
  • データセンターとAI(DCAI): 73億ドル、前年比+78%。サーバー向けのCPU(Xeon)と、顧客専用のチップ(Purpose-built silicon)。この部門では15年で最大の伸び
  • Intel Foundry: 67億ドル、前年比+58%。ほとんどが社内向けで、外の客からの売上は4.1億ドル。営業損失は19億ドル
  • その他: 7億ドル。Mobileyeなど

会社全体では165億ドルで、社内の取引63億ドルを消しています。

インテル 事業別の売上(2026年7〜9月、セグメント間の取引を含む)PC(CCPG)81億ドルデータセンター(DCAI)73億ドルIntel Foundry(うち外部4.1)67億ドルその他7億ドル出所: プレスリリース(2026年10月29日)

7〜9月の数字

  • 売上: 165億ドル、前年比+21%。7月に出した予想の真ん中より2億ドル上
  • 粗利率: 非GAAPで44.1%、前年比+4.1ポイント。GAAPは43.0%
  • 営業利益: 非GAAPで32億ドル、営業利益率19.6%。GAAPは25億ドル
  • EPS: 非GAAPで0.52ドル(会社予想は0.38ドル)。GAAPは0.60ドル
  • 営業キャッシュフロー: 51億ドル。設備投資42億ドルを引いた調整後フリーキャッシュフローは16億ドル
  • 現金と短期投資: 540億ドル。有利子負債は501億ドル
  • 10〜12月の会社予想: 売上150〜160億ドル(真ん中は155億ドル)、非GAAP粗利率38.0%、非GAAP EPS 0.25ドル
インテル 四半期の売上と粗利率2026年7〜9月期まで。10〜12月は会社予想の真ん中060120180240300億ドル13725Q313725Q413626Q116126Q216526Q315526Q4予40%37.9%41%41.8%44.1%38%34%41%48%売上粗利率(非GAAP)出所: Q3 2026 Earnings Presentation、プレスリリース

株価を下げたのは、PCの在庫

速報で言われていることなので、短く。

CFOは、2026年のPCの市場全体の台数を約12%減、下半期だけなら20%超の減少と見ています。2027年も約10%減で計画する。理由はメモリです。メモリの値上がりと品薄でパソコンの値段が上がり、IT予算が足りず、パソコンメーカーが在庫を急いで減らしている。

10〜12月のクライアントの売上は前の四半期から20%超減る予想です。データセンターは10%台半ばの増加なので、計算すると約84億ドルと65億ドル未満。この四半期で、データセンターがクライアントを初めて抜きます。

インテル データセンターとPCの四半期売上セグメント間の取引を含む。10〜12月は会社予想(DCAI 10%台半ば増、CCPG 20%超減)から計算データセンター(DCAI)PC(CCPG)2025年7〜9月41億ドル85億ドル10〜12月47億ドル82億ドル2026年1〜3月51億ドル77億ドル4〜6月63億ドル89億ドル7〜9月73億ドル81億ドル10〜12月予84億ドル65億ドル出所: Q3 2026 Earnings Presentation、説明原稿

粗利率が44.1%から38.0%に下がる理由も、PCです。「クライアント向けのウエハ投入を今の需要に合わせて減らすので、固定費に対して売上が減る」。イスラエルの工場の事故が2ポイント分、残りは主にこれです。

株価は10月29日の終値で92.07ドル。決算後の時間外で2割前後下げたと報じられています。

足りないのは基板で、CEOが日本に来ていた

データセンターの売上73億ドルは、供給が追い付いた分だけ出た数字で、会社は「需要は供給を大きく上回り続けている」と言っています。何が足りないか、CEOの説明原稿は3つ挙げています。Intel 3の歩留まりとサイクルタイム、EMIBというパッケージ技術に使う「先端有機基板の業界的な不足」、そしてイスラエルの工場の停止です。

基板は、チップをマザーボードにつなぐための板で、イビデンの電子事業はこれだけを作っています。CFOは質疑で、CEOが日本に行って多くの基板メーカーと話し、供給の割当を確保したと言っていました。基板の能力は40%増やす手配をしたが、その多くは2027年の後半まで効いてこない。2027年の上半期は、ウエハも基板も足りないまま。

10-Qには、お金の動きが書いてあります。基板などの不足を受けて仕入先と長期の契約を結び、2026年の上半期で9.34億ドルを前払いした。10-Kには「基板を中心に、長期の購入約束か大きな前払いを伴う契約を一部の仕入先と結んでいる」とあり、需要が落ちた場合は前払いを全額回収できない可能性があると注記しています。

ここでイビデンの側を見たくなります。イビデンの有報でインテル向けの売上は753億円で横ばい、NVIDIA向けが1,224億円で最大の顧客になりました。10月29日の決算と同時に、河間事業場に1,510億円の新しい投資が決まり、目的は「CPU向け高機能ICパッケージ基板」でした。インテルの前払い9.34億ドルがどこへ行ったかは10-Qに無く、イビデンの前受金1,997億円の相手も開示にありません。つなげたくなりますが、つなげられません。言えるのは、基板メーカーが新しいお金をCPU向けに積み、CPUの会社が「基板が足りない」と言って日本に来ていた、という2つの事実が同じ週に出たことまでです。

インテル 売上を減らすのはPC、足りないのは基板とウエハ2026年7〜9月期の決算から。日本の取引先が売っている物は「足りない」側にある10〜12月は20%超減供給が追い付かない前払い9.34億ドル、能力+40%確定発注 前期比+40%弱PCメーカー在庫を急いで減らすデータセンターの客需要が供給を上回るインテル7〜9月 売上165億ドル10〜12月予想 150〜160億ドル基板メーカー(イビデンなど)装置メーカー(レーザーテックなど)2027年上半期はウエハも基板も足りない(CFO)2027年の設備投資は大幅増、FCFはプラスにならない見込み出所: 説明原稿、質疑の書き起こし、Form 10-Q(2026年第2四半期)

装置の確定発注は前期比4割増、ただしPC向けのウエハは減らす

レーザーテックの側です。2026年6月期のインテル向けの売上は477億円で、前の期の837億円から減りました。

2026年の設備投資は200億ドルで据え置き、2027年は「大幅に増える」。金額はまだ決めていないと質疑で答えていますが、装置の納期があるので発注は先に出していて、装置メーカーへの確定発注は前の四半期から40%近く増えたそうです。支出の大半は装置で、建屋が重いのはオハイオだけ、とも。

使い道は、アイルランドのIntel 3、オレゴンとアリゾナの18A、そしてオレゴンでPC向けの18Aを減らした場所にIntel 3を入れて2027年後半からサーバー向けに回す。18A-Pは年内に立ち上がり、14Aは10月に0.9版のPDK(設計キット)を出し、1.0版は2027年の第1四半期です。

マスク検査装置がこの40%増に入っているかは分かりません。資料にレーザーテックの名前も、マスク検査という言葉も出てきません。言えるのは、新しいプロセスが予定どおり進んでいて、そこには新しいマスクが要る、という所までです。

もう1つ、逆向きの話も同じ資料にあります。クライアント向けのウエハ投入を減らし、PC向けの18Aのウエハはサーバーに回す。装置を買う金額は増えても、工場の稼働は場所によって減ります。「インテルの設備投資が増える」を「日本の装置会社に一様に良い」と読むのは雑だと思っています。

気になっていること

お金の出どころです。 7〜9月の調整後フリーキャッシュフローは16億ドル。2027年は設備投資が大幅に増え、CFOは「フリーキャッシュフローがプラスになる状況ではたぶん無い」と答えました。それでも使えるのは、8月に230億ドルの増資をしたからです。発行済みの株数は12月末の49.9億株から53.1億株に6.3%増えました。日本の取引先にとっての客は、自分の稼ぎではなく株主のお金で基板と装置を買う客です。CFOは「顧客の需要の証拠に確信が無ければ1ドルも使わない」と言っていますが、確信が外れたとき、前払いした9.34億ドルは全額は戻らないかもしれないと10-Kが注記しています。

イスラエルの工場の重さです。 事故で約2週間止まり、10〜12月に約3億ドル、1〜3月も同程度の減収。10-Qには、Intel 7の製品が売上のかなりの部分を占め、この工場は戦争による操業停止の保険に入っていない、と書いてあります。止まったら何が起きるかは、これで一度数字が出ました。

18Aの稼働率です。 質疑でCFOは、18Aの稼働が望む水準に無いと認めました。PC向けの需要が落ちた分、最新のプロセスの工場が空く。「今後2四半期で2社ほど発表できる」と言った外の客の名前はまだありません。

次の決算で見る所

10〜12月の決算の日付はまだ出ていません。レーザーテックの7〜9月の決算は今日の15時45分に出ます。見るのは受注見通しの3,000億〜4,000億円が動くかです。

インテル側で見る所です。

  • クライアントの売上の減り幅。20%超と言った減少がそこで止まるか。在庫調整は1〜3月まで、場合によっては4〜6月まで続くとCFOは言っている
  • データセンターの売上が約84億ドルに届くか。イスラエルの3億ドルを引いた数字で
  • 2027年の設備投資の金額。年末に決めると言っている。アナリストが出した300億ドルに何と答えるか
  • 基板の能力40%増の時期。2027年の後半と言った時期が前に来るか後ろに行くか
  • 14Aの1.0版PDKと、ファウンドリの外の客の名前

結果は別の記事で書きます。

使った資料

レーザーテックとイビデンの顧客別の売上は、それぞれの記事で読んだ有価証券報告書の数字です。株価は書いた日のものです。

「足りない」と言われた側に日本の会社がいて、その客は株主のお金で買いに来ている。この組み合わせが続くかどうかは、客の決算より先に、仕入先の受注の数字に出ると思っています。

この会社は半導体の地図の「製造」にいます。