メルカドリブレ(MELI)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。売上の18%のアルゼンチンが直接利益の40%、売上の54%のブラジルは利益率10%

次の決算は2026年11月4日(米国時間・確定)、日本時間では11月5日の朝です。過去の発表日は2026年8月5日、5月7日、2月24日、2025年10月29日。決算日の一覧


順番で来た銘柄です。フィジカルAIの組入10位、4.5%。所長はこの銘柄について何も言っていません。

メルカドリブレは中南米のネット通販と決済・融資の会社で、本社はウルグアイ、上場はNASDAQです。第3四半期(7〜9月)の決算はまだ出ていません。昨年は10月29日でしたが、今年は11月1日の時点で会社からの予定の発表が見つかりません。なので今回読むのは、8月5日に出た第2四半期(4〜6月)の株主レター(SECの8-Kに付いているもの)、同じ四半期の10-Q、2025年の10-K、9月の社債発行の8-K、Motley Foolに載った決算説明会の書き起こしです。

速報は「売上101.7億ドルで+50%、4年ぶりの伸び」「営業利益は-17%で利益率6.7%」「経営陣は長期を優先すると言った」で埋まっています。この記事は10-Qの国別の表を読みます。利益がどの国から来ているかが、速報の印象と違う形をしていたからです。

どんな会社か

売上は2本立てです。4〜6月の101.7億ドルの内訳で書きます。

  • コマース: 57.6億ドル(+50%)。マーケットプレイスの手数料、自社で仕入れて売る1P、配送料、広告、MELI+という会員制。流通総額(GMV)は219億ドル、売れた点数は7.95億点
  • フィンテック: 44.1億ドル(+49%)。決済のメルカドパゴの手数料、融資の金利、クレジットカード、運用口座。決済総額(TPV)は1,010億ドル、月間利用者は8,800万人、貸出残高は164億ドル(+75%)

国別ではブラジルが55.3億ドルで54%、メキシコ23.4億ドル、アルゼンチン18.4億ドル、その他4.6億ドル。従業員は2025年末で123,670人、うちブラジルが61,139人です。ロボットという言葉は10-Kにも株主レターにも出てきません。フィジカルAIのファンドが何を見てこの会社を入れたのかは、会社の資料からは分かりませんでした。

直近の決算の数字

2026年4〜6月です。

  • 売上: 101.7億ドル、前年比+50%。為替の影響を除くと+43%。ブラジルが+59%、メキシコ+55%、アルゼンチン+20%
  • 粗利率: 40.9%。前年同期の45.6%から4.7ポイント下がりました。ブラジルの送料無料のしきい値の引き下げと配送費の増加が主因と10-Qにあります
  • 貸倒引当金の繰入: 12.8億ドル。前年同期の6.9億ドルから85%増
  • 営業利益: 6.83億ドル(-17%)、利益率6.7%。前年同期は12.2%
  • 純利益: 4.66億ドル(-11%)、EPS 9.19ドル。前年同期は10.31ドル
  • 調整後フリーキャッシュフロー: 4〜6月で2.14億ドル。1〜6月では1.58億ドルで、前年同期の5.12億ドルから7割減
  • 純有利子負債(会社の定義、リース債務を含む): 6月末64.3億ドル。昨年末の46.8億ドルから18億ドル増

第3四半期の会社予想は資料にありません。

メルカドリブレ 四半期の売上と営業利益率2025年1〜3月から2026年4〜6月まで。売上は4年ぶりの伸び、営業利益率は半分04080120160200億ドル59.425Q167.925Q274.125Q387.625Q488.526Q1101.726Q212.9%12.2%9.8%10.1%6.9%6.7%3%9.5%16%売上営業利益率出所: SEC XBRL Company Facts(10-Q、10-K)。25Q4の営業利益は通期から9か月を引いた値

利益はアルゼンチンから来ている

10-Qの注記6に、国別の「直接利益(direct contribution)」があります。その国の売上から、配送、倉庫、貸倒引当金、資金調達費、給与、マーケティングといった国に直接ひもづく費用を引いたもので、本社の間接費を引く前の数字です。

国 売上 直接利益 利益率
ブラジル 55.3億ドル 5.5億ドル 10.0%
メキシコ 23.4億ドル 3.1億ドル 13.1%
アルゼンチン 18.4億ドル 6.2億ドル 33.9%
その他の国 4.6億ドル 0.7億ドル 13.9%
メルカドリブレ 国別の売上と直接利益(2026年4〜6月)売上の18%のアルゼンチンが直接利益の40%。売上の54%のブラジルは利益率10%売上直接利益ブラジル55.3億ドル5.5億ドルメキシコ23.4億ドル3.1億ドルアルゼンチン18.4億ドル6.2億ドルその他の国4.6億ドル0.7億ドル出所: Form 10-Q(2026年第2四半期)注記6

売上の18%しかないアルゼンチンが、直接利益の40%を出しています。4つの地域の直接利益を足すと15.4億ドルで、そこから本社の間接費8.6億ドルを引いた営業利益が6.8億ドル。アルゼンチン1国の直接利益6.2億ドルと、会社全体の営業利益がほぼ同じ大きさです。言い換えると、ブラジルとメキシコとその他の国の直接利益を足した9.2億ドルは、間接費を払うとほとんど残りません。

今期だけの形ではありません。10-Kの3年分では、アルゼンチンの直接利益は2023年16.8億ドル、2024年16.8億ドル、2025年24.8億ドルで、利益率は47%、44%、42%。ブラジルは18.6億、22.9億、20.8億ドルで、利益率は24%、20%、14%。2025年はブラジルが減り、アルゼンチンが8億ドル増えて、会社全体の増分9.7億ドルの大半を1国で作りました。

利益率が高い理由は売上の構成にあります。アルゼンチンの売上18.4億ドルのうちフィンテックが11.8億ドルで64%。ブラジルは40%、メキシコは38%です。物を運ぶより、お金を動かして金利と手数料を取る比率が高い。10-Qの注記では、この国の年間のインフレ率は33%、現地の借入金利は20〜25%です。

その稼ぐ国の伸びが鈍っています。4〜6月の売上は前年比+20%で、ブラジルの+59%、メキシコの+55%と比べて一番低い。現地通貨では+48%ですが、ペソが1年で22.5%安くなり、ドルに直すと削られます。GMVはドル建てで+13%。株主レターは「厳しい消費環境」と書き、直接利益は前年同期の6.6億ドルから6.2億ドルに減りました。利益率は43.3%から33.9%へ、1年で9ポイント下がっています。

ブラジルで伸ばし、アルゼンチンで稼ぐ。稼ぐ側が鈍り、伸ばす側はまだ利益率10%。速報の「売上+50%」と「営業利益-17%」が同時に起きる理由は、この表にありました。

貸倒引当金が営業利益の2倍

貸出残高は6月末で164億ドル(引当前)。内訳はクレジットカード76.8億ドル、個人向けローン57.7億ドル、事業者向け25.4億ドル、担保付き3.9億ドル。貸倒引当金は43.8億ドルで、残高の27%を貸し倒れの見込みとして積んでいます。1〜6月に実際に償却した額は13.7億ドルでした。

メルカドリブレ 貸出残高の内訳(2026年6月末、164億ドル)47%クレジットカード 76.8億ドル35%個人向けローン 57.7億ドル16%事業者向けローン 25.4億ドル担保付き 3.9億ドル引当前の残高。貸倒引当金は43.8億ドルで残高の27%クレジットカードの未使用の与信枠は別に140億ドル(昨年末90億ドル)出所: Form 10-Q(2026年第2四半期)注記5

4〜6月の引当金の繰入は12.8億ドル。営業利益6.8億ドルの約2倍です。会社は「貸出残高が+75%で売上の+50%より速く伸びているから、引当金が売上比で2ポイント増えるのは当然」と書き、「融資の収入から引当金を引いた額は、売上比でむしろ少し増えた」とも書いています。たぶん正しい。ただ、この会社の営業利益は、引当金の見積もりひとつで倍にも半分にもなる大きさになりました。

クレジットカードは貸出残高の47%を占めるようになり(4年前は2割)、その利ざや(NIMAL、融資の収入から引当金と調達費を引いたもの)は-2.5%。前年同期は損益ゼロでした。会社の説明は「4〜6月に260万枚を新規発行し、前年の160万枚から増やした。新しい顧客は最初は赤字だから」。説明会でフィンテック部門の責任者は「各コホートは12〜18か月で損益分岐に達する」と言いましたが、「残高の大半はこの2年に発行したもの」で、カード全体がいつ黒字になるかは言いませんでした。

もう1つ、10-Qの注記に、カードの「未使用の与信枠」が140億ドルとあります。昨年末は90億ドル。顧客がまだ使っていないが、使えば会社が貸すことになる枠です。残高76.8億ドルの倍近くが、まだ引き出されていません。

お金の出どころ

1〜6月の営業キャッシュフローは57.4億ドルと大きく見えますが、顧客から預かったお金の増加が入っています。会社が「自由に使える現金」として出す調整後フリーキャッシュフローは、貸出の増加40.7億ドルと設備投資7.1億ドルを引き、フィンテック向けの借入の純増12.2億ドルを足し戻して、1〜6月で1.58億ドル。前年同期は5.12億ドルでした。

メルカドリブレのお金の流れ(2026年1〜6月)営業キャッシュフロー57.4億ドルの大半が貸出の増加に回り、残りは1.58億ドル。9月に社債10億ドル営業CF 57.4億ドル貸出の増加 40.7億ドル社債 10億ドル設備投資 7.1億ドル純増 12.2億ドル顧客・加盟店メルカドリブレ稼ぐ・借りる・貸す貸出残高164億ドル(+75%)社債の投資家(9月、利率5.85%)倉庫・設備預金・証券化(貸出の原資)調整後FCF 1.58億ドル(前年同期5.12億)。純有利子負債 64.3億ドル(年初46.8億)出所: Form 10-Q(2026年第2四半期)キャッシュフロー計算書、株主レターの非GAAP表、2026年9月の8-K

足りない分は借りています。純有利子負債は昨年末の46.8億ドルから6月末に64.3億ドルへ。そして9月に、10年の無担保社債を10億ドル、利率5.85%で出しました。格付けはBBB-とBaa3で、投資適格の一番下です。使い道は「一般的な事業資金」。貸出の原資はこれとは別で、ブラジルの預金証書や、貸出債権を担保にした証券化(6月末で35.9億ドル)で賄っています。

倉庫は、まだ増える

フィジカルAIの話に戻ります。10-Qの注記8に、まだ稼働していない新しい倉庫の賃貸契約が22.5億ドル分あります。ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、チリで、期間は2〜16年。4〜6月の設備投資は4.4億ドルで、1〜6月の7.1億ドルのうち4.5億ドルが配送拠点と事務所です。配送の半分以上は自社の倉庫から出ています。

一方で、技術の費用は下がっています。製品開発費は売上の7.2%で、前年の8.4%から下がりました。AIへの投資を前年比で8,000万ドル増やしたのに、です。10-Kには「本番に入るコードの約30%はAIを使って書かれた」とあり、半年後の株主レターでは「人が書いたコードの方が例外」になり、「エンジニアを前のペースで増やさずに済んでいる」と続きます。倉庫は増やし、エンジニアは増やさない。資料から読める「フィジカル」はそこまでです。

メキシコの決済端末の話を1つだけ。端末の費用が上がった理由を、会社は「メモリチップの値上がり」と書いています。第1回で読んだマイクロンの値上げが、この会社の費用の欄に出てきました。

気になっていること

利益が一番出ている国が、一番伸びていない国。 アルゼンチンの直接利益率は1年で9ポイント下がって、まだ34%。ブラジルが10%から上がる前に、アルゼンチンが20%台に下がったら、営業利益はもう一段減ります。

利益の減少を「エンゲージメント」で説明している。 株主レターの前半は、1人あたりの購入点数+14%、日次と月次の利用者の比率が過去最高、通販と決済の両方を使う顧客は利益が「足し算ではなく掛け算」で増える、という話が続きます。たぶん全部本当です。ただ、利益が減った四半期に利益以外の指標で語る文章は、どの会社も同じ書き方をします。10-Qで検証できるのは直接利益の表の方です。

株価はブラジルの選挙で動いた。 10月25日の大統領選の決選投票で現職が勝った翌日、10月26日に株価は7.8%下げて1,668.72ドル。ブラジルのETFは20%下げたと報道にあります。売上の54%がブラジルで、ブラジルで稼いだレアルがドル建ての決算を左右します。4〜6月の+50%のうち7ポイントは為替の追い風でした。

次の決算で見る所

第3四半期(7〜9月)の決算の予定日は、11月1日の時点で会社から出ていません。昨年は10月29日でした。

  • アルゼンチンの直接利益。6.2億ドルを保てるか、利益率が30%を割るか
  • ブラジルの直接利益率。10.0%から上向くか。PIX割引と手数料引き下げの効果を会社は「エンゲージメント」で説明するはずなので、数字の方を見ます
  • 貸倒引当金の繰入。12.8億ドルの次。残高の伸び+75%が続くなら、引当金も同じペースで増えます
  • クレジットカードのNIMAL。-2.5%が上を向くか
  • 純有利子負債。社債10億ドルが入ったあとの数字

結果は別の記事で書きます。

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年9月30日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。10月30日の終値は1,624.53ドルで、1年前の10月30日の2,360.76ドルから31%下です。

売上が4年ぶりの伸びで、利益はアルゼンチン頼み。この2つが同じ10-Qの同じ四半期に入っているのが、私にはこの決算でいちばん面白い所でした。速報は前者しか書きません。

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