TSMC(TSM)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。第3四半期の売上は月次でもう出ていて、10月15日に見るのは粗利率


1本目のマイクロンを出したあと、所長に2本目の候補を2つ出したら「TSMやな」の一言で決まりました。理由は聞いていませんが、グロース・オポチュニティ・ファンドに4.9%、SOX指数に10%で入っている銘柄なので、順当です。所長の日報で、1社で動かす幅がいちばん大きいのがこの銘柄です。

使うのは、2026年7月の第2四半期決算のプレスリリース(SECに提出された6-K)、同じ日の決算説明会の書き起こし、10月8日に出た9月の月次売上です。TSMCは毎月10日前後に前月の売上を公表する会社で、これが今回の記事の軸になります。

どんな会社か

半導体の受託製造、ファウンドリです。自社の製品は持たず、エヌビディアやアップルやAMDが設計したチップを、設計図どおりに作って納めます。マイクロンがメモリを自分で設計して自分で作って自分で売るのと、立ち位置が逆です。

第2四半期の売上の構成を2つの切り口で書きます。

切り口 構成
製造プロセス別 2ナノ 3%、3ナノ 30%、5ナノ 33%、7ナノ 11%。7ナノ以下の先端が77%
用途別 HPC(AIとデータセンター)66%、スマートフォン 22%、IoT 5%、車載 4%、家電 1%

HPCは前の四半期から20%伸び、スマートフォンは4%減りました。2年前までこの会社の最大の顧客はスマートフォンで、今は3分の2がデータセンターです。2ナノが3%で初めて数字に出たのもこの四半期です。

TSMC 用途別の売上構成(2026年第2四半期)HPC(AI・データセンター)66%スマートフォン22%IoT5%車載4%家電1%出所: TSMC 第2四半期決算説明会

第2四半期の数字

項目 2026年第2四半期 備考
売上 1兆2,704億台湾ドル(402億米ドル) 前年比 +36.0%(米ドルでは +33.7%)、前期比 +12.0%
粗利率 67.7%
営業利益率 60.3%
純利益 7,066億台湾ドル 前年比 +77.4%
EPS 27.25台湾ドル(ADR 1株 4.31米ドル)
設備投資 157億米ドル 四半期で

マイクロンの粗利率87%を見たあとだと、67.7%は普通に見えます。普通ではありません。受託製造でこの粗利率を出している会社は他にありません。差が出る理由はこのあと書きますが、一言で言えば、TSMCは儲けの多くを工場に使っていて、マイクロンは今、使う前の数字が出ている段階だからです。

TSMC 四半期の売上と粗利率2025年第2四半期〜2026年第2四半期、売上は米ドル換算0160320480640800億ドル300.725Q233125Q3337.325Q435926Q140226Q258.6%59.5%62.3%66.2%67.7%54%63.5%73%売上粗利率出所: TSMC 各四半期の決算プレスリリース(Form 6-K)

粗利率は下がる、と会社が先に言っている

第3四半期の会社予想は、売上446〜458億米ドル(前期比 +12%)、粗利率65〜67%、営業利益率56〜58%。粗利率は第2四半期の67.7%から下がる予想です。理由を会社は3つ挙げています。

  • 2ナノの立ち上げ。新しいプロセスは立ち上げ初期に歩留まりが低く、第3四半期だけで粗利率を3〜4ポイント押し下げる
  • 海外工場。アリゾナ、熊本、ドレスデンは台湾より費用が高く、立ち上げ初期で2〜3ポイント、拡張が進んだ段階で3〜4ポイント、粗利率を薄める。これは一時的ではなく、数年続く
  • 為替。予想は1米ドル=32台湾ドルの前提で、台湾ドル高はそのまま粗利率を削る

つまり、売上が12%伸びて、粗利率は1〜3ポイント下がる、というのが会社の見立てでした。

第3四半期の売上は、もう分かっている

ここがこの記事を書きたかった理由です。

TSMCは月次で売上を出します。7月が4,676億台湾ドル、8月が5,148億、9月が5,119億。足すと1兆4,943億台湾ドルです。9月は8月から0.6%減りましたが、前年同月比では54.6%増です。

会社予想の446〜458億米ドルを、予想の前提だった1米ドル=32台湾ドルで直すと、1兆4,272億〜1兆4,656億台湾ドル。実績はその上限を2%ほど超えています。9月の実勢レートで米ドルに直すと、およそ470億ドルです。

決算発表は10月15日ですが、売上の欄にサプライズはありません。上振れも含めて、月次を足せば出ます。だから15日に見るのは売上ではなく、そのあとの行です。

10月15日に見る所

  • 粗利率。65〜67%のどこに落ちたか。2ナノの3〜4ポイントの希薄化を、値上げと稼働率でどこまで埋めたか。67%を超えていれば、会社の希薄化の見積もりが保守的だったことになる
  • 第4四半期の予想。10〜12月の売上と粗利率。2026年通年の成長率は7月に「40%をやや上回る」に引き上げられていて、これがまた上がるか
  • 設備投資。通年600〜640億米ドルの枠が変わるか。内訳は先端プロセスに70〜80%、特殊プロセスに約10%、先端パッケージとマスクに10〜20%
  • 2ナノの比率。第2四半期に3%だったものが、第3四半期にいくつになったか
  • CoWoS。AI向けチップを積むパッケージ技術で、第2四半期の説明会でCEOは「顧客の成長を制限するほど逼迫している」と言っていた。能力の数字が出るか

設備投資とアリゾナ

2026年の設備投資は600〜640億米ドル。7月に上限を引き上げました。理由は「構造的な需要が続いていること」と「装置の値上がり」。第2四半期だけで157億ドルを使っています。

アリゾナには追加で1,000億ドルを投じると発表し、累計で2,650億ドル。前工程と後工程を合わせて4つ以上の工場を追加する計画ですが、時期は「市場の状況と顧客の需要による」と言っています。言い換えると、まだ決めていません。

次の世代のA14は、2027年に生産準備、2028年に量産の予定です。説明会ではデバイス性能とSRAMの歩留まりが約90%に達したと言っていました。2ナノの次が、もう数字で語られています。

マイクロンの記事で「工場を建てても不足が終わらない理由」を書きました。TSMCは逆で、建てる計画は出し続けていて、足りないのは工場ではなく、AI向けチップを積む後工程の能力です。同じAIの需要が、メモリではウエハの不足に、ロジックではパッケージの不足に出ています。

気になっていること

第2四半期の説明会でCEOが、需要予測について「顧客の要望を全部聞いて合算しても真実にはならない」と言っていました。顧客はいつも多めに言う、という意味です。それでも通年の見通しは引き上げました。顧客の言い分を割り引いた上で、まだ40%を超える、ということになります。

もう一つ。エージェント型AIでCPUの役割が戻ってきた、という発言がありました。GPUだけでなくCPUもXPUも全部TSMCで作られるので、どれが勝ってもTSMCに来る。この構造が、粗利率を3ポイント削ってでも海外に工場を建てられる理由です。他に作れる所が無い。

所長の日報では、10月8日にTSMが3.01%下げて、SOXの寄与度で下から3番目でした。マイクロンの日と同じ日です。月次売上が予想の上限を超えた日に、株価は下げています。売上はもう織り込まれていて、見ているのは別の所だ、ということだと思っています。

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

10月15日の決算が出たら、この記事の「見る所」に答えを書き足します。答え合わせをしない予想記事は、noteの導入部と同じになるので。