エヌビディア(NVDA)の2027年度第2四半期決算を一次ソースで読む。粗利率は下がると会社が先に言い、「循環取引と呼ばれるのは分かっている」とも言った


順番で来ました。3本のファンドを組入比率の高い順に回ると決めて最初に当たったのが、グロース・オポチュニティの組入1位、9.3%のエヌビディア(NVIDIA、ティッカー NVDA)です。所長は何も言っていません。持っている投資信託の中でいちばん大きい銘柄なので、言われなくても読む順番でした。

この会社は資料が多く、どこを読んでも誰かがもう書いています。なので数字の大きさを追いかけるのはやめて、会社が自分で「下がる」「そう呼ばれるのは分かっている」と言った所だけを読みます。

使うのは、2026年8月26日の2027年度第2四半期(2026年5月〜7月)の決算プレスリリース、CFOの書面コメント(9ページ)、決算説明会の書き起こし(16ページ)、SECに出した10-Qです。

どんな会社か

会計上のセグメントは2つで、売上の92%が「コンピュート&ネットワーキング」です。

セグメント 売上 構成比 営業利益 中身
コンピュート&ネットワーキング 883億ドル 92% 627億ドル データセンター向けのGPU、CPU、ネットワーク機器、ソフト、車載
グラフィックス 79億ドル 8% 39億ドル GeForce、ワークステーション用RTX

もう一つ、会社が使っている市場別の切り方があります。データセンターが890億ドルで、その中をハイパースケール(大手クラウド)487億ドルと、ACIEと呼ぶその他(AIクラウド、産業、企業、政府)403億ドルに分けています。ACIEの方が伸びが速く、前年比+138%。CEOはこのハイパースケーラー以外が事業の約半分で、年100%で伸びていると言っていました。エッジ(PC、ワークステーション、車、ロボット)は72億ドルです。

エヌビディア 市場別の売上構成(2027年度第2四半期)データセンター890億ドルの内訳(ハイパースケール/ACIE)とエッジハイパースケール(大手クラウド)487億ドルACIE(AIクラウド、産業、企業、政府)403億ドルエッジ(PC、ワークステーション、車、ロボット)72億ドル出所: 2027年度第2四半期CFOコメント

直近の決算の数字

項目 2027年度第2四半期 備考
売上 962億ドル 前年比+106%、前期比+18%
粗利率 75.0% 前年同期は72.4%
営業利益 637億ドル 前年比+124%。営業利益率66%
純利益(GAAP) 597億ドル うち株式の評価益が78億ドル
EPS(非GAAP) 2.22ドル 前年比+120%
フリーキャッシュフロー 213億ドル 前期は486億ドル
株主還元 260億ドル 自社株買い197億ドル、配当60億ドル
現金と債券 566億ドル 四半期中に社債250億ドルを発行

売上が前年の2倍で粗利率75%。引っかかったのは下の方の行です。フリーキャッシュフローが前の四半期の半分以下になったのは、売掛金が1四半期で223億ドル増えたからで、回収日数(DSO)は45日から60日に伸びました。CFOの説明は「投資適格の大口顧客に、複数四半期にまたがる契約で支払い猶予を与えた」です。10-Qには「90日から最長1年」と書いてあります。売った相手に、1年待ってあげている。

もう一つ。現金が566億ドルある会社が社債を250億ドル出しています。用途は「一般的な会社の目的」としか書いてありません。

エヌビディア 四半期の売上と粗利率FY26Q1(2025年2〜4月)〜FY27Q2(2026年5〜7月)。FY27Q3は会社予想(1,080億ドル±2%、粗利率74%)。FY26Q1はH20の評価損で粗利率が低い04008001,2001,6002,000億ドル441FY26Q1467FY26Q2570FY26Q3681FY26Q4816FY27Q1962FY27Q21,080FY27Q3予60.5%72.4%73.4%75%74.9%75%74%53%68%83%売上粗利率(GAAP、%)出所: SEC XBRL(10-Q/10-K)、2027年度第2四半期CFOコメント

粗利率は下がる、と会社が先に言った

マイクロンの回で、メモリの値段が前年比で大幅に上がり、2027年の供給分は契約済み、と書きました。今回はその反対側です。

CFOは説明会で「メモリは極端な価格状況にあり、値上がりの幅は我々の以前の想定を超え、来年に向けてさらに上がる」と言いました。そして「今日、期待値をリセットする」。第3四半期の粗利率は74%、第4四半期に71〜72%で底を打ち、2028年度は72〜73%。半年で3〜4ポイント下がる、と会社が先に言っています。製品の値上げは2028年度第1四半期(2027年2月〜4月)から効く、とも。

ここで面白いと思った所が2つあります。

一つは、値上げを飲む顧客がいることを会社が前提にしている点です。粗利率が72〜73%で止まるのは、メモリの値上がりを製品価格に転嫁するからで、転嫁できなければもっと下がります。それをさらっと言えるのは、供給が足りていないからです。CFOは2028年度の売上を前年比約70%増と予告し、「供給制約のある見通し」「顧客の予測では需要は倍」と言っています。1年先の売上を予告したのは初めてだそうです。

もう一つは、サプライヤーへの約束の額です。10-Qの「供給と生産能力」の確約が、前の四半期の1,190億ドルから2,790億ドルに、1四半期で2.3倍になりました。主にメモリの調達です。年度別に見ると2027年度の残りが920億、2028年度が870億、2029年度が880億で、3年にほぼ集中しています。マイクロンの原稿にあった「顧客からの預託金320億ドル」と「2030年までの売上の35%超を縛る契約」の買い手側が、ここにいるはずです。はず、と書くのは、マイクロンもエヌビディアも相手の名前を書いていないからです。

将来の確約(2026年7月26日時点) 金額
供給と生産能力(主にメモリ) 2,790億ドル
クラウドサービス契約 290億ドル
データセンターの賃借(未開始) 250億ドル
出資 250億ドル
設備投資 80億ドル
合計 3,660億ドル

「循環取引と呼ばれるのは分かっている」

CFOの説明会の原稿に、こういう一節があります。「フロンティアのAIラボは、バランスシートと信用力が追いつかないほど速く成長している」「我々はこの支援の規模を認識しており、一部の人がこれを循環取引と呼ぶことも分かっている。我々は違う見方をしている」。

会社が自分で言っているので、何をしているのかを資料から並べます。

  • AIラボに累計で約500億ドルを出資した。CEOは「唯一の後悔は、もっと早く、もっと多く出さなかったこと」
  • Apollo、BlackRock、Blackstone、Brookfield、Goldman Sachs、KKRと組み、5,000億ドル超の第三者資本を集める仕組みを作る
  • オハイオ州のSB Energyの敷地(4.25GW)で、OpenAIが20年契約で使うデータセンターの土地・電力・建屋に、最大1,050億ドルの保証を付けた。保証は施設が稼働するにつれ段階的に発効し、最初は2029年度。1世代ごとに約150万個のGPU、1,500〜2,000億ドルの売上になる、と会社は見積もっている
  • 別のAIラボ1社に、約2GW分の信用補完を行う
  • AI専業クラウドには、施設の一部の容量を take-or-pay で引き受ける代わりに、その上の売上の分け前を受け取る。CFOの言葉で「我々は2回払ってもらう。1回はハードの売上、もう1回はレンタル売上の分け前」

そして「来年の事業のおよそ4分の1は、我々がバランスシートを使って支えるAIラボからの需要になる」。

私の読み方はこうです。この会社は、顧客に売り、顧客に出資し、顧客の借金を保証し、顧客の家主の家賃を保証し、顧客の売上の分け前を取る。全部が同じ顧客に向いています。10-Qは「1社のAI研究開発企業が、我々の顧客からクラウドサービスを買う形で、売上の相当な部分に寄与した」と書いています。社名は書いてありません。

会社の反論は「NVIDIAの計算基盤は代替性と耐久性があり、他の顧客に振り向けられる」「我々は融資はしていない」です。前者は本当だと思います。GPUは転売できます。ただ、転売先の需要も同じAIの需要の上に乗っているので、崩れるときは一緒に崩れます。後者は言葉の問題で、保証も出資も支払い猶予も、融資ではないがお金を貸しているのと同じ効果を持ちます。

GAAPの純利益597億ドルのうち78億ドルは株式の評価益で、上半期では237億ドルです。非上場株の残高は半年で223億ドルから512億ドルに増えました。出資したラボの評価額が上がれば利益に乗り、その評価額を押し上げているのは、ラボがエヌビディアから買う計算資源です。これが循環と呼ばれる理由だと思います。会社はそう呼ばれることを分かった上で、やると言っています。

気になっていること

1ギガワットあたりの売上です。CEOは、Hopperの世代で1ギガワットあたり約180億ドル、Blackwellで250億ドル、Vera Rubinで400億ドル、その次はもっと高い、と言いました。CPU、ネットワーク、Groqと、同じ電力に対して売るものを増やしているからです。顧客から見れば、同じ電力枠で払う額がBlackwellからVera Rubinで1.6倍になります。「投下資本の回収が1年以内だと聞いた」とCEOは言いましたが、聞いた、です。

中国は、Hopperの旧世代品を四半期のデータセンター売上の1%未満出荷しただけで、見通しにはゼロで入っています。10-Qには、米国政府の許可を得たH200の販売が中国政府側で制限され、4億ドルの評価損を計上し、許可された分も米国内で検査を受けるため25%の関税がかかり、転嫁できない、と書いてあります。第3四半期の見通し1,080億ドルに、この国は入っていません。

株価は10月9日の終値で229.28ドル(stockanalysis.com で確認)、52週の高値は243.37ドル、PERは29倍前後でした。売上が2倍になった会社にしては高くない、とも読めますが、その利益の中に評価益が入っていることと、粗利率が3〜4ポイント下がると会社が言っていることは、覚えておきます。

次の決算で見る所

次の説明会は11月17日です。書き起こしの末尾に予定が書いてありました。

  • 売上1,080億ドル(プラスマイナス2%)に対して、どこに落ちたか。Vera Rubinがデータセンター売上の約20%になる予定
  • 粗利率74%(プラスマイナス0.5ポイント)。「第4四半期に71〜72%で底」の予告が維持されるか、さらに下がるか
  • 供給の確約2,790億ドルが、さらに増えるか。増えるなら、メモリの値上がりはまだ終わっていない
  • 売掛金の回収日数。60日からさらに伸びるなら、支払い猶予の相手が増えている
  • 保証と出資の合計。CFOコメントの表に新しい行が増えていないか

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

会社が自分から「そう呼ばれるのは分かっている」と言う決算を、私は初めて読みました。分かっていてやる、と言われると、こちらにできるのは数字を数え続けることだけです。