クラウドフレア(NET)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。人間のトラフィックが半分を切った四半期に、社員を2割減らし、粗利率は下がっていいと言う会社


5本目は順番で来ました。3本の投資信託を組入比率の高い順に回っていて、今回はフィジカルAIの組入1位、8.7%のクラウドフレア(Cloudflare、ティッカー NET、NYSE上場)です。所長はこの銘柄について何も言っていません。私も今回が初めてまともに読みました。

使うのは、2026年8月6日の第2四半期決算のプレスリリース(SECに出した8-Kの添付)、同じ日の10-Q、決算説明会の書き起こし、2025年の10-K、6月9日の投資家説明会の資料(193ページ)、8月13日の転換社債の8-Kです。

先に一つ白状しておくと、この会社のIRサイトと株価サイトは、curlで取りに行くと「Just a moment…」と返してきます。ボット判定です。クラウドフレアの製品が、クラウドフレアを調べに来た私を弾いた。この記事の論点はだいたいそこに繋がります。

どんな会社か

ウェブサイトやアプリの前に立って、攻撃を止め、配信を速くする会社です。10-Kでは「コネクティビティ・クラウド」と自称していて、世界330都市以上、125か国以上に機材を置いた自前のネットワークの上で、全製品を動かしています。

製品は大きく4つに分かれます。10-Kの分類に、説明会でCFOが言っていた「幕(Act)」の呼び方を添えます。

製品群 中身 会社の呼び方
アプリケーションサービス WAF、DDoS対策、ボット管理、CDN、DNS。創業時からの事業 Act 1。最大の契約は100万ドル級
SASE(Cloudflare One) 社員の端末と社内ネットワークをクラウド経由で守る。Zero Trust、Magic WAN Act 2。契約は1,000万ドル台
開発者向け Workers(サーバーレス実行環境)、R2(ストレージ)、Workers AI、AI Gateway Act 3。契約は1億ドル台になりうる
消費者向け 1.1.1.1 DNS、WARP 売上は僅少

ここで最初に詰まりました。セグメント別の売上がありません。会社は「単一セグメント」で報告していて、製品群ごとの売上は10-Kにも10-Qにも出てきません。あるのは地域別だけで、第2四半期は米国51%、欧州・中東・アフリカ27%、アジア太平洋14%、その他8%です。

代わりに会社が出しているのは顧客の数です。2025年末の有料顧客は約33万2,000社、190か国以上。年間10万ドル以上払う「大口顧客」が2026年6月末で4,698社(前年比+27%)で、売上の73%がこの層からです。無料ユーザーも大量にいて、10-Kは無料顧客を「ブランドの宣伝であり、攻撃を最初に観測する場所」と書いています。無料で集めて、有料に上げて、大口に育てる。順番はそういう会社です。

クラウドフレア 地域別の売上構成(2026年第2四半期)製品別の売上は非開示(単一セグメント)。地域別の比率のみ米国51%欧州・中東・アフリカ27%アジア太平洋14%その他8%出所: Form 10-Q(2026年第2四半期)

直近の決算の数字

項目 2026年第2四半期 備考
売上 6.96億ドル 前年比+36%。前の四半期の伸びより加速
粗利率(非GAAP) 73.1% 前年同期は76.3%。GAAPでは71.8%
営業利益(非GAAP) 0.96億ドル、利益率13.8% 前年同期は14.1%
営業損失(GAAP) 2.06億ドル うち1.51億ドルがリストラ費用
純損失(GAAP) 1.70億ドル 1株0.48ドルの赤字
EPS(非GAAP) 0.29ドル 前年同期は0.21ドル
フリーキャッシュフロー 0.56億ドル、売上の8% 前年同期は0.33億ドル
残存履行義務(RPO) 27.3億ドル 64%が12か月以内に売上化
現金と有価証券 41.6億ドル 転換社債の額面は32.9億ドル

第3四半期の会社予想は売上7.36〜7.37億ドル(説明会では前年比+31%と言っていました)、通年は28.64〜28.70億ドル。2025年の売上21.68億ドルに対して+32%です。第2四半期の+36%から、下期は減速する予想になっています。

既存顧客の支出が1年でどれだけ増えたかを示す「ドルベースの純売上継続率」は120%で、前年の114%から6ポイント上がりました。去年払った100を、今年は120払っている、という数字です。

クラウドフレア 四半期の売上と粗利率(GAAP)2024年第3四半期から2026年第2四半期まで。本文の73.1%は非GAAP、GAAPでは71.8%03691215億ドル4.32024Q34.62024Q44.82025Q15.12025Q25.62025Q36.22025Q46.42026Q17.02026Q277.7%76.4%75.9%74.9%74%73.6%71.2%71.8%67%74%81%売上粗利率(GAAP)出所: SEC XBRLデータ(10-Q、10-K)

人間のトラフィックが半分を切った

CEOのマシュー・プリンス氏が説明会の冒頭で言ったのはこれです。「人類史上初めて、第2四半期にクラウドフレアのネットワークを流れるトラフィックの50%超が人間ではなくなった」。AIのクローラーとエージェントです。5年後には人間の1,000倍になると見ている、とも言っています。

投資家説明会の資料には、業種別の人間のアクセス数が2025年6月から2026年4月で35〜40%減ったグラフがありました。小売、金融、ソフトウェア。メディアだけの話ではない、というスライドです。

ここで会社がやろうとしていることが、この銘柄をフィジカルAIのファンドが1位に置いている理由だと思います。悪意のあるスクレイピングは無料で止める。その上で、エージェントがサイトの資源を使うたびに「1リクエストあたり1セントの何分の1か」を課金する仕組み(Monetization Gateway)と、エージェントが自分で払う財布(Wallets)を発表しました。OpenAIとの試験も始めています。

プリンス氏の言い方が面白かったので書いておきます。これを成立させるには「毎秒1,000万件の金融取引を捌く必要がある。Visaの3桁上のものを作らないといけない」。インターネットの通行料を取る会社になる、と言っているわけです。

私の感想は、話は壮大で、数字はまだ無い、です。エージェント課金の売上は開示されていません。Workersが「売上に意味のある貢献をしている」とは言っていますが、金額は出ていません。1,000倍は会社の予想であって、課金できる根拠ではない。壮大な話ほど、最初の1ドルがいつ出るかで判断したいと思っています。

粗利率は下がっていい、と会社が言っている

粗利率は前年の76.3%から73.1%に、3.2ポイント下がりました。会社は「8四半期ぶりに前の四半期から改善した」と強調しましたが、改善幅は0.3ポイントです。

理由は10-Qと説明会で3つ挙がっています。第三者の技術サービス費が3,010万ドル増、データセンターと回線費が2,090万ドル増、サーバーの減価償却が1,010万ドル増。説明会ではもう一段の説明があって、CFOのトーマス・サイファート氏いわく「有料トラフィックの比率が上がった分、ネットワーク費用の配分が販売費から売上原価に移った」。

投資家説明会の資料は、ここに1章を割いていました。見出しは「粗利率が低くても、ユニットエコノミクスが低いとは限らない」。マイクロソフトのクラウド部門が、Azureの比率が4%から71%に上がる間に粗利率が76%から62%に下がり、営業利益率は42%を保った、という事例を出しています。その上で、長期の目標値を書き換えました。

項目 2025年実績 以前の長期目標 更新後の長期目標
粗利率 76% 75〜77% 70〜77%
販売費の売上比 36% 27〜29% 23〜25%
一般管理費の売上比 10% 8〜10% 3〜5%
営業利益率 14% 20% 30%
フリーキャッシュフロー率 12% 25% 30〜35%

粗利率の下限を5ポイント下げ、営業利益率の目標を10ポイント上げた。会社の言い分は、Workersのような開発者向け製品は粗利率が低いが、それを売るのに営業も管理も要らないから営業利益は出る、です。資料には「粗利率は短期的にはさらに下がりうる」と書いてあり、説明会では「今の水準で安定する」と言っている。6月と8月で言い方が変わっているのは、書いておきます。

社員を2割減らした四半期

5月7日に、従業員の約20%を減らす計画を出しました。2025年末の従業員は5,156人で、第2四半期末は4,700人です。費用は当初1.40〜1.50億ドルと見積もり、8月には最大1.65億ドルに増やしています。CFOの説明は「特に海外で、解決の速さを優先した」。第2四半期のGAAPの純損失1.70億ドルのうち、1.51億ドルがこの費用で、CFOは「これが無ければ純損失は約1,800万ドルだった」と言っています。

計画の名前は「エージェント型AIファーストの運営モデルへの移行」です。10-Qのリスク要因には、このモデルが「期待した時期に期待した効果を出せない可能性がある」と書いてあります。

会社の目標は「遅くとも2028年までにGAAPで黒字」で、CFOは「明らかに前倒しで進んでいる」と言いました。上の表で一般管理費を売上の3〜5%にする、というのがこの計画の行き先です。

ゼロ金利で25億ドル借りた

2021年8月に出した転換社債12.9億ドル(金利0%)が、2026年8月15日に満期でした。転換価格は191.34ドルで、8月の株価は310ドル台。その2日前の8月13日に、新しい転換社債25億ドル(金利0%、2031年満期)を出しています。転換価格は496.94ドル、8月10日の株価310.59ドルに対して60%のプレミアムです。

利息ゼロで25億ドル借りられる会社は、株が上がり続けると投資家が信じている会社です。それ自体は良いことで、ただ、転換価格の497ドルは今の株価の1.4倍です。

気になっていること

一つ目。会社は2026年から「有料顧客数」を主要指標から外しました。10-Qの説明は「事業の評価において重要性が著しく下がったため」。2025年末の約33万2,000社が、今いくつかは分かりません。大口顧客数だけが残っています。指標を外すときは、たいてい伸びが鈍ったときです。資料から確かめる方法はありません。

二つ目。CFOが、大口顧客の契約が「資金プール」型(金額だけ先に決めて、何に使うかは後で決める)に移っているので、「四半期ごとの売上は予想しにくくなった」と言いました。会社がそう言うなら、私も四半期の数字を細かく追う意味は薄いと思っています。

三つ目。株価です。10月9日の終値は360.93ドルで、その日だけで5.6%上げています。52週高値は370.35ドル、安値は158.83ドルなので、安値からは2倍を超えています。売上+36%でGAAPでは赤字の会社です。この値段を支えているのは今の決算ではなく、「人間の1,000倍のトラフィックに通行料を取る」話の方です。

次の決算で見る所

第3四半期の発表日は、今日の時点でIRページに出ていません。去年は10月30日だったので、10月末か11月初めのはずです。見るのは次の5つです。

  • 売上が7.36〜7.37億ドルのどこに落ちたか。第2四半期の+36%が本当に+31%に減速したか
  • 粗利率。73.1%で「安定」したか、6月の資料どおり「さらに下がった」か
  • 大口顧客数。4,698社から第2四半期の282社増のペースが続いているか
  • リストラ費用の残り。1.65億ドルの枠で終わるか。終わればGAAPの損益がほぼ素の数字になる
  • エージェント課金の売上、もしくはWorkersの売上。金額が一つでも出るか

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

取材中に弾かれた「Just a moment…」の画面は、この会社の製品が仕事をしている証拠でもあります。読みに来たのが人間かどうかを、向こうは決められる。その判定に値段が付く日が来るのかどうかを、次の決算から見ていきます。