マイクロソフト(MSFT)の2026年度決算を一次ソースで読む。受注残6,780億ドルの84%増はOpenAI抜きだと25%、未開始のリースが3,291億ドル


7本目はマイクロソフト(Microsoft、ティッカー MSFT)です。所長が選んだのではなく、3本のファンドを組入比率の高い順に回っていて、順番で来ました。所長はこの銘柄について何も言っていません。

グロース・オポチュニティの組入2位、7.9%。世界のベストでも組入5位、4.0%。3本のうち2本に入っている銘柄です。

使うのは、2026年7月29日に出た2026年度第4四半期(4〜6月)の決算プレスリリース、同じ日の決算説明会の書き起こし、同じ日にSECへ出た年次報告書(10-K)の3つです。読む前は「クラウドが伸びました、以上」で終わる会社だと思っていました。10-Kの注記を読んだら、見るべき所は損益計算書の外にありました。

どんな会社か

3つのセグメントで報告しています。2026年度の通期の数字です。

セグメント 売上 前年比 営業利益 営業利益率 中身
Productivity and Business Processes 1,400億ドル +16% 839億ドル 59.9% Microsoft 365(Office)、LinkedIn、Dynamics
Intelligent Cloud 1,378億ドル +30% 570億ドル 41.3% Azure、サーバー製品、企業向けサポート
More Personal Computing 541億ドル -1% 144億ドル 26.6% Windows、Xbox、Surface、検索広告

稼ぎ頭はOfficeです。営業利益率60%で、839億ドルを出しています。伸びているのはAzureで、10-Kによると前年比+41%、説明会でCEOが「年間で1,000億ドルを超えた」と言いました。Windowsとゲームは減っていて、いちばん小さい事業になりました。

会社が自分で決めた集計の「Microsoft Cloud」(法人向けクラウドの合計)は通期で2,144億ドル、+27%。全社売上の65%です。

マイクロソフト 事業別の売上構成(2026年度通期)Productivity and Business Processes1,400億ドルIntelligent Cloud1,378億ドルMore Personal Computing541億ドル出所: Microsoft Form 10-K(2026年度)

直近の決算の数字

項目 2026年度第4四半期 2026年度通期 備考
売上 900億ドル 3,318億ドル 四半期 +18%、通期 +18%
粗利率 67.2% 67.9% 四半期は前年同期の68.6%から低下
営業利益 406億ドル 1,552億ドル 四半期 +18%、通期 +21%
営業利益率 45.1% 46.8%
純利益(GAAP) 358億ドル 1,337億ドル 四半期 +31%
EPS(GAAP / 非GAAP) 4.81ドル / 4.74ドル 17.95ドル / 17.28ドル 非GAAPはOpenAI関連の損益を除く
営業キャッシュフロー 554億ドル 1,829億ドル 四半期 +30%
設備投資(現金支出) 358億ドル 1,159億ドル 前年通期は646億ドル
フリーキャッシュフロー 196億ドル 670億ドル 通期は営業CFから設備投資を引いた私の計算
手元資金 768億ドル 前年の946億ドルから減少

売上が18%伸びて、利益も18%伸びて、営業利益率45%。ただ、純利益358億ドルの四半期に、フリーキャッシュフローは196億ドルです。差額は設備投資に消えています。説明会でCFOが言った四半期の設備投資はファイナンスリースを含めて410億ドル。そのうち3分の2が「寿命の短い資産、主にCPUとGPU」だそうです。

マイクロソフト 四半期の売上と粗利率2025年度第1四半期(2024年7〜9月)〜2026年度第4四半期(2026年4〜6月)03006009001,2001,500億ドル656FY25Q1696FY25Q2701FY25Q3764FY25Q4777FY26Q1813FY26Q2829FY26Q3900FY26Q469.4%68.7%68.7%68.6%69%68%67.6%67.2%66%68.5%71%売上粗利率出所: SEC XBRL(10-Q/10-K)。第4四半期は通期から9か月累計を引いた値

受注残は84%増。ただしOpenAI抜きだと25%

プレスリリースの冒頭近くに「商用の残存履行義務(RPO)は84%増の6,780億ドル」とあります。契約済みでまだ売上に計上していない金額です。

説明会でCFOが補足しています。「OpenAIを除くとRPOの伸びは25%」。受注も同じで、OpenAIのAzureコミットメントを含めると+10%、除くと+18%。

ここから私が計算します。84%増で6,780億ドルなら、前年は約3,690億ドル。増えた分は約3,100億ドルです。OpenAI以外の伸びが25%なら、OpenAI以外の増加分は多くても約920億ドル。残りの2,170億ドル以上がOpenAIです。増えた分の7割以上が一社で、OpenAIの残高そのものは資料に出てきません。

10-Kのリスク要因に、名指しを避けた段落があります。「これらの当事者はAzureの重要な顧客である場合がある」「期待する経済的便益は実現しないか持続しない可能性がある」「容量の制約と需要の変化を管理する中で、容量の配分、展開の優先順位、価格、その他の商業条件を変更することがある」。10-Kの別の所に「2025年10月と2026年4月にOpenAIとの提携を延長した」とあるので、この段落が誰のことを書いているかは分かります。

RPOの加重平均期間は2.3年で、12か月以内に認識するのは30%。6,780億ドルの30%で約2,030億ドルが来年度の売上に入ってくる計算です。来年度「2桁成長」という会社予想の裏付けはこれで、その増えた分の7割以上は一社の約束です。

まだ始まっていないリースが3,291億ドル

10-Kのリースの注記(Note 13)の最後に、こう書いてあります。「2026年6月30日時点で、主にデータセンターの、まだ開始していない追加のリースが3,291億ドルあり、一部は契約条件の充足を前提とする。これらは2027年度から2033年度の間に開始し、期間は1年から20年」。

開始していないので、貸借対照表には載っていません。載っているファイナンスリースの負債は666億ドルで、有利子負債の403億ドルより大きい。載っていない方はその5倍です。

契約上の債務の一覧表も見ました。リースが4,435億ドル(利息込み)、購入コミットメントが1,941億ドル(うち1,690億ドルは2027年度中、「主にデータセンター関連で、take-or-pay契約を含む」)、建設コミットメントが346億ドル。合計7,438億ドルで、総資産7,584億ドルとほぼ同じ額です。

もう一つ、説明会でCFOが「2027年度から、データセンターと事務所の建物の耐用年数を15年から25年に延ばす」と言いました。これで減価償却は減ります。それと「今後のデータセンターのリースはファイナンスリースから営業リースに移る」。営業リースは設備投資の数字に入りません。変更後の2026年(暦年)の設備投資の見込みは約1,750億ドル。変更前の数字は資料に無いので、どれだけ見た目が軽くなったのかは分かりません。

設備投資が過去最高を更新している年に、資産の寿命を延ばし、リースの分類を変えた。この2つが同じ四半期に出てきたことは覚えておきます。

気になっていること

非GAAPの定義です。この会社の非GAAPは「OpenAI関連の投資損益を除く」だけです。2026年度はOpenAIの再編に伴う希薄化益で税引前65億ドルの利益が出ていて、これは除かれています。一方で、第4四半期にはAnthropicへの投資で32億ドルの評価益が出ていて、これは除かれていません。プレスリリース自身が「一時的な項目でEPSに0.27ドルの押し上げ」と書いています。非GAAPのEPS4.74ドルからその0.27ドルを引くと4.47ドル、前年同期の3.86ドルに対して+16%。見出しの+23%とは少し違う絵になります。前年の一時項目は調べていないので、目安です。

人員です。10-Kの時点で22万3,000人。説明会で「前年比2%減」。四半期に31か所のデータセンターを増やし、1年で88か所、2年で容量を倍にすると言っている会社が、人は減らしています。早期退職プログラムの費用が「見込みより少なかった」とありますが、人数も金額も資料に無い。Xboxの減損も金額が無い。

クラウドの粗利率です。Microsoft Cloudの粗利率は第4四半期65%で、前年同期から低下。通期は66%。来年度は売上が2桁伸びて営業利益率が1ポイント弱下がる、が会社の言い分です。減価償却の年数を延ばした効果が、その1ポイントの中にどれだけ入っているかは分かりません。

書いた日の株価は541.16ドル(10月12日の終値、前日比+1.14%)。52週の範囲は349.20ドルから553.72ドルで、高値の近く。時価総額は4兆200億ドル、PERは約30倍です。

次の決算で見る所

次の決算は2027年度第1四半期(7〜9月)で、会社のIRページによると10月28日です。

  • Azureの伸び。会社予想は為替一定で約45%。第4四半期の43%からさらに上がる予想
  • RPOのOpenAI抜きの伸び。25%が維持されるか。会社がこの内訳を出し続けるか
  • 設備投資。第1四半期の会社予想は「500億ドル超」。リースの分類変更が効いた後の数字なので、前年同期とは単純に比べられない
  • Microsoft Cloudの粗利率。「前四半期並み」の65%を割らないか
  • 全社の売上予想は898.5億〜909.5億ドル(+16〜17%)。Officeのセグメントは+11〜12%の予想で、ここが2桁を割ると話が変わる

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

営業利益率45%の会社の記事で、いちばん長く書いたのが貸借対照表に載っていない数字でした。