オーロラ・イノベーション(AUR)は売上200万ドルの四半期に時価総額107億ドル。決算と投資家デーを読む。200台と3万台の算数、ウーバーが半分売った株


8本目も順番で来ました。フィジカルAIの組入2位、7.7%のオーロラ・イノベーション(Aurora Innovation、ティッカー AUR、NASDAQ上場)です。所長はこの銘柄について何も言っていません。テキサスで運転席に誰も乗っていない大型トラックを走らせている会社で、私はこの記事を書くまで「ウーバーの自動運転部門だった所」くらいの認識でした。

使うのは、2026年7月29日の第2四半期決算の株主レター(SECに出した8-Kの添付)と同じ日の10-Q、決算説明会の書き起こし、9月23日のアナリスト・投資家デーの発表資料(これも8-Kの添付)、会社のプレスリリース4本、SECのXBRLデータ、それとウーバーがSECに出した大量保有報告書の変更(13D/A)3本です。最後の1つは読むつもりがなくて、提出書類の一覧を眺めていたら見つけました。

先に数字を2つ並べます。この会社の第2四半期の売上は200万ドルです。書いた日の時価総額は約107億ドルです。通期の売上予想1,500万ドルの約700倍の値段が付いている会社を、売上で読んでも仕方がないので、今回は「台数の算数」を読みます。

どんな会社か

事業は1つしかありません。自社開発の自動運転システム「Aurora Driver」を載せた大型トラックで、テキサスを中心に荷物を運んでいます。2025年4月に運転席無人の商業運行を始め、2026年6月末までの無人走行距離は約44万マイル、9月23日時点で50万マイル超。人が乗って監視していた期間も含めた商業走行は累計600万マイル超です。事故はゼロだと会社は言っています。

ただし、今の稼ぎ方と、会社が本命と言っている稼ぎ方は別物です。

TaaS(今) DaaS(2027年から)
正式名称 Transportation as a Service Driver as a Service
トラックの持ち主 オーロラ 顧客の運送会社
顧客が払うもの 運賃(1マイル約2ドル、燃料サーチャージ込み) システムの利用料(1マイル0.85ドル以上)
1台の年間走行 約20万マイル 約25万マイル
台数の上限 500台以下 数万台

今の売上は全部TaaSです。オーロラがトラックを買い、保険に入り、運送会社として荷物を運んで運賃をもらう。10-Qにも「その後は自分で大量の車両を持つつもりはない」と書いてあります。2027年からは運送会社が自分でトラックを買い、オーロラはシステムの利用料だけを取る。会社がこれを「資産を持たない、高い利益率の売上」と呼ぶ理由です。

顧客はハーシュバック、マクレーン、ワーナー、シュナイダー、デトマー、今期契約したバリュートラックとチャージャー・ロジスティクス。トラック本体はインターナショナル製で改造はラウシュ、ボルボは自社工場で組み込んで2027年第1四半期から無人運行、その先にパッカーとAUMOVIO。会社自身は「自分たちはソフトとセンサーを作り、トラックを作るのも荷物を運ぶのも他社」と言い切っています。

オーロラ・イノベーション 2026年第2四半期の費用と売上研究開発費2.1億ドル販管費0.5億ドル売上原価0.1億ドル売上0.0億ドル出所: 株主レター、10-Q

直近の決算の数字

項目 2026年第2四半期 前年同期
売上 0.02億ドル(200万ドル) 100万ドル
売上原価 0.07億ドル(700万ドル) 500万ドル
研究開発費 2.11億ドル 1.90億ドル
販管費 0.50億ドル 0.36億ドル
営業損失 2.66億ドル 2.30億ドル
純損失 2.70億ドル 2.01億ドル
1株損失 0.14ドル 0.11ドル
営業キャッシュフロー(上期) マイナス3.84億ドル マイナス2.86億ドル
現金と短期投資 約12億ドル 2025年末は12.8億ドル

売上200万ドルに対して売上原価が700万ドルなので、粗利はマイナスです。営業損失は前の四半期の2.44億ドルから2.66億ドルに広がりました。研究開発費の中には株式報酬が0.47億ドル入っています。

オーロラ・イノベーション 四半期の営業損失2024年第3四半期から2026年第2四半期まで。売上は各四半期0〜200万ドル00.81.62.43.24億ドル2.02024Q32.02024Q42.12025Q12.32025Q22.22025Q32.42025Q42.42026Q12.72026Q2営業損失出所: SEC XBRLデータ、株主レター

通期の売上予想は1,400万〜1,600万ドルで据え置き。2025年通期が300万ドルなので中間値で5倍ですが、第4四半期だけで通期の半分以上を稼ぐ計画で、上期の実績は300万ドルです。四半期の現金使用は平均1.9億〜2.2億ドル。第2四半期は2.25億ドル使い、会社は「賞与の現金払い0.63億ドルを除けば目標の範囲内」と説明しています。

引っかかったのは、その賞与の原資です。この四半期に会社は市場で3,000万株を平均7.50ドルで売り、手取り2.15億ドルを得ました(ATMという、取引所で少しずつ株を売る仕組みです)。株主レターは「そのうち一部を賞与と、従業員の株式報酬の納税に充てた」と書いています。賞与を株の売却で払う会社を読むのは初めてでした。

200台、1,000台、3万台の算数

会社が出している台数の絵はこうです。

  • 2026年末に無人トラック200台。売上の年率換算で約8,000万ドル
  • 2027年末に1,000台超。2027年の売上2億ドル
  • 2030年に3万台超。売上50億ドル超、粗利率約60%

算数を確かめました。200台に1台20万マイル、1マイル2ドルを掛けると8,000万ドルで、会社の数字と合います。3万台に25万マイル、0.85ドルを掛けると64億ドルなので、50億ドルは掛け算の範囲に入っています。数字の作り方は隠していない、ということです。

問題は出発点です。決算説明会でアナリストに「今の台数は」と聞かれ、会社側は「25台程度で、うち数台が新型」と答えています。7月末で25台、9月末で第2世代が20〜25台、年末で200台。つまり第4四半期の3か月で175台を増やす計画で、その供給元が改造業者ラウシュの「10月に年産1,000台ペース」です。

ここで面白いやりとりがありました。「年産1,000台なら四半期250台のはずで、なぜ200台で止めるのか」という質問に対する答えは「作れるならもっと作る。需要はある。ただ生産ラインの立ち上げにはならしの期間がある」でした。別のアナリストが「前の四半期は『200台超』だったのが今回は『200台』になった。何か変わったか」と聞くと、CFOのデビッド・マデイ氏は「深読みしないでほしい。201台か205台かは問題ではない」。私は、200台が「保証された数」ではなく「ラインが順調なら届く数」だと読みました。

1マイル2ドルが85セントになる

本命のDaaSに移ると、オーロラの取り分は1マイル2ドルから0.85ドルに下がります。会社はこれを、トラックと保険と燃料を顧客が持つのだから当然で、利益率は上がる、と説明しています。投資家デーの資料には、運送会社から見た1マイル当たりのコストの比較が載っています。

費目 従来のトラック オーロラのトラック
運転手(間接費込み) 0.87ドル 0.85ドル(Aurora Driverの利用料)
保険 0.11ドル 0.08ドル
燃料 0.48ドル 0.41ドル
車両、整備など 1.03ドル 0.65ドル
合計 約2.50ドル 約2.00ドル

この表を見て気づいたのは、0.85ドルという値段が人間の運転手1マイル分とほぼ同じ、ということです。顧客が節約するのは運転手の人件費ではなく、燃料と保険と、同じトラックを2倍走らせることで薄まる車両費です。資料の別のページには、フォートワースとフェニックスの間でトラック1台を1年走らせた場合の試算があり、売上が34万ドルから68万ドル、利益が3万ドルから19万ドルになる、とあります。

人間の運転手には労働時間の上限があり、無人トラックにはない。会社の商売の根拠は突き詰めるとこの1点で、マクレーンとワーナー向けの実績として年率22.5万マイル超、従来の2倍以上の稼働と書かれています。説明会では「5年後に我々のものを使っていない会社は長距離輸送で競争できない」とまで言っています。ただ、0.85ドルが人件費と同じ値段なら、運送会社にとってこれは「安い運転手」ではなく「休まない運転手」への投資です。2倍走らせる荷物があるかどうかは、運送会社の側の問題になります。

気になっていること

1つ目はウーバーです。SECの提出書類の一覧に、6月、8月、9月とウーバーの13D/Aが3本並んでいました。中身は全部ブロック売却の報告で、6月2日に6,750万株を7.10ドル、8月17日に7,200万株を6.55ドル、9月15日に2,937万株を6.205ドルで売っています。合わせて約1.69億株、私の計算で約11億ドルです。売る前の持ち株は約3.26億株だったので、3か月半で半分を手放し、残りは1.57億株、9.2%になりました。売る前の持ち株は4月末時点の発行済みクラスA株の2割近くで、13D/Aを出す義務のある筆頭級の株主でした。売るたびに値段が下がっているのも、この順番で並べると目に入ります。

2つ目は株数です。6月末の発行済み株式は19.98億株で、2025年末の19.43億株から半年で2.8%増えました。損失1株当たりを計算する加重平均株数は前年同期比で10.7%増。ATMの枠は2025年7月に14.21億ドルまで広げられ、その時点で10億ドルが残っていました。10-Qには「規模を拡大するには機会を見て追加の資本調達が必要になる」と書いてあります。手元の12億ドルを四半期2億ドルずつ使うと6四半期分で、会社の絵では2028年末にようやくフリーキャッシュフローが年率換算で黒字です。間の穴を埋めるのは株の売却で、その売り値が7.50ドルから、書いた日の5.34ドルまで下がっています。

3つ目はハーシュバックの500台です。4月30日のプレスリリースは「拘束力のない覚書」で、「正式契約は年内に締結の見込み」とありました。9月23日の投資家デーの発表でも「500台を保有・運行する意向」のままで、10月13日までのSEC提出書類に正式契約の8-Kはありません。投資家デーの資料の注意書きには「拘束力のない覚書は正式契約に至らない可能性がある」と、会社自身が書いています。2027年末の1,000台の絵の、半分に当たる台数の契約です。

4つ目は、気にならなかったこと。無人トラックの安全性については、会社の言い分を疑う材料を一次資料の中に見つけられませんでした。無人走行50万マイルで事故ゼロ、第三者監査2件。読んだ限りで心配なのは技術ではなく、台数と株数の方です。

次の決算で見る所

第3四半期の決算は10月28日の引け後です。見る所は4つ。

  • 9月末の第2世代トラックが20〜25台に届いたか。年末200台の前提になる数字です
  • 第3四半期の売上。通期1,400万〜1,600万ドルで第4四半期が半分超なら、第3四半期は多くて400万〜500万ドルのはずです
  • ハーシュバックの正式契約。年内と言っていた期限まで2か月です
  • ATMで何株売ったか、いくらで売ったか

株価は書いた日の前日、10月13日の終値が5.34ドルで、前日の5.66ドルから5.7%下げました。投資家デーの日は6.32ドル、52週高値は8.57ドル、安値は3.60ドルです。時価総額は10-Qの表紙にある株数(クラスA 17.08億株とクラスB 2.96億株)に終値を掛けた私の計算で、約107億ドルです。

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

算数は全部合っていました。合っているのが算数だけなのかどうかは、10月28日に25台が何台になったかで分かります。