レーザーテック(6920)の決算を10月30日の前に読む。TSMCは今年の設備投資を600億〜640億ドルに置き、レーザーテックは今期の受注を3,000億〜4,000億円と見込む

過去の発表日は2026年10月30日。決算日の一覧


組入銘柄とつながる日本株の4本目は、レーザーテックです。半導体のマスクを検査する装置の会社で、有価証券報告書の主要な顧客の1位はTSMCでした。保有投信に入っているTSMCの設備投資が、どこまでレーザーテックの受注に届いているかを読みます。

決算はパナソニックと同じ10月30日です。東京エレクトロンとキオクシアも同じ日で、半導体の決算が並びます。並ぶのは分かっていて書いています。

使ったのは、レーザーテックの決算短信、決算説明会の資料と書き起こし、会社のFAQ、有価証券報告書、製品ページ、それとTSMC・ASML・インテル・KLAがSECなどに出した資料、株価と信用残の公開ページです。株価は10月26日(月)の終値で書きます。

どんな会社か

半導体の回路の原版、フォトマスクの欠陥を見つける装置の会社です。露光装置はマスクの模様をウエハに焼き付けるので、マスクに傷があれば、そのマスクで作るチップ全部に同じ傷が写ります。

主力のACTISは、EUVの光(波長13.5nm)でEUVマスクを検査する装置です。会社は2019年に、EUVの光を使うパターンマスクの欠陥検査装置を世界で初めて開発しました。露光と同じ波長で検査するので、露光のときに写ってしまう欠陥を見つけられる、というのが売りです。もう1つの柱MATRICSは、DUVの光でマスクを検査する装置です。

前期(2026年6月期)の売上は2,304億円、営業利益は1,052億円で、営業利益率は45.7%。売上のうち、ACTISが705億円、MATRICSが512億円です。

顧客は3社で6割

名前が出る顧客の売上有価証券報告書の主要な顧客。3社とも減り、上位3社の割合は79.4%から62.2%へ2025年6月期2026年6月期TSMC660億円492億円Intel837億円477億円Samsung500億円465億円出所: レーザーテック 有価証券報告書(2026年6月期)

有報の主要な顧客は3社です。2026年6月期はTSMCが492億円で21.4%、インテルが477億円で20.7%、サムスン電子が465億円で20.2%。前の期の最大の顧客はインテルで837億円、33.3%でした。3社とも売上が減って、上位3社の割合は79.4%から62.2%に下がっています。

地域別の売上では台湾向けが458億円で、TSMC向けの492億円より少ない。地域は顧客の所在地で分けているので、TSMCの台湾以外の拠点向けが別の地域に入っている可能性があります。「台湾向け=TSMC向け」とは読めません。

受注は戻った

受注高の推移と、今期の見通し今期の見通しは会社の幅(中央値3,500億円)01,0002,0003,0004,000億円3,23722年6月期1,86523年6月期2,72724年6月期1,05225年6月期2,37526年6月期3,000〜4,00027年6月期見通し出所: レーザーテック 決算説明会資料・決算短信

売上は減りましたが、受注は戻りました。前期の受注は2,375億円で、前の期の1,052億円から2.3倍です。会社は、2ナノと3ナノ相当の先端品の生産を増やすためにマスク検査装置の需要が戻った、と説明しています。

中身にも変化があります。受注はACTISが620億円、MATRICSが772億円で、DUVのMATRICSがEUVのACTISを上回りました。前の期のACTISの受注はマイナス105億円で、取り消しや変更の調整が新しい注文を上回っていました。ACTISは受注から出荷まで1年強かかるので、その穴が今の売上に出ています。

今期の会社予想は、売上2,900億円(+25.8%)、営業利益1,250億円(+18.8%)。受注の見通しは3,000億〜4,000億円で、中央値は3,500億円です。社長は、上限の4,000億円はファブ向けの新しい装置ACTIS A200HiTが顧客の工場で良い結果を出して追加の注文が入った場合で、その上振れ約500億円は精査した値ではない、と説明会で話しています。

A200HiTは、A150の3倍の速さで検査できる、ウエハ工場向けのモデルです。まず2ナノに入れて、結果を見て3ナノへ。本格的な導入は早くて年明け、今期の下期からだと会社は見ています。

TSMCの設備投資は前年の1.5倍

TSMCは10月15日の決算で、2026年の設備投資を600億〜640億ドルと示しました。2025年の実績は約409億ドルで、中央値で+51.6%です。4月の年次報告書の時点では520億〜560億ドルでした。説明会では、装置の供給がひっ迫していて、装置メーカーと前もって能力を準備していると話し、CFOは装置の値上がりが現実に起きていると答えています。

2ナノは2025年10〜12月に量産に入り、7〜9月のウエハ売上の8%になりました。7ナノ以下の先端品は79%です。2ナノの生産能力は2027年に2倍を超える見込みです。

マスクについては、ASMLとTSMCが9月8日に、次世代のHigh NA EUV向けに12インチの大きなマスクへ移る取り組みを発表しました。2031年までに試作ライン、2033年に先端品の生産です。High NA EUVは当面いまの6インチのマスクで量産に使うと書いています。ASMLのCEOは、半導体メーカーやマスクメーカーからの強い支持があると述べました。レーザーテックの名前は出てきません。ただ、マスクの大きさが変われば検査装置も変わります。

ASMLの7〜9月の売上は116億6,200万ユーロで過去最高、うちEUVが41億ユーロでした。2026年はEUVの売上が45%超伸びる見通しです。ただし用途で見ると、2026年に伸びるのはメモリー向け(約75%増)で、ロジック向けは約10%増です。EUVの伸びをそのままTSMC向けと読むことはできません。

インテルも2026年の設備投資を200億ドル超に引き上げ、2027年はさらに大きく上回る予定です。自社のマスク工場の能力も広げています。

株価と需給

株価は10月26日の終値で37,580円です。6月19日に日中の高値58,580円を付け、そこから35.8%下。年初からは+26.8%です。

株価と移動平均線(この1年)2025年10月27日〜2026年10月26日の終値(円)15,00030,00045,00060,00026年1月26年4月26年7月26年10月10月26日 37,580円終値25日線75日線200日線出所: Yahoo Finance の日足から作成

10月26日の終値は、25日線(41,735円)、75日線(39,876円)、200日線(39,022円)のすべての下にあります。

下げの大きな日は10月15日で、前日の45,370円から39,220円へ13.6%下げました。TSMCの決算説明会の日です。

信用取引の買い残は10月23日時点で139万4,600株、売り残は28万9,700株で、倍率は4.81倍(株探)。2週間前の10月9日は倍率1.24倍で、売り残のほうが多いくらいでした。下げの2週間で買い残が37.6%増えています。

過去4回の決算の翌営業日の値動きは、2025年10月が+8.31%、2026年1月が-13.96%、4月が+0.56%、8月が-13.55%でした。

7〜9月の見立て

決算は10月30日(金)15時45分の発表です。会社のIRカレンダーで確かめました。東証の取引は15時30分に終わっているので、株価の反応は週明けの11月2日(月)に出ます。その前に、KLAの決算が日本時間10月29日の朝、インテルの決算が10月30日の朝に出ます。

会社は通期の予想しか出しておらず、四半期の受注も2025年6月期から開示していません。7〜9月に見るのは、売上と、受注見通しの3,000億〜4,000億円が動くかどうかです。

項目 前年の7〜9月 7〜9月の見立て
売上高 541億円 560億〜700億円
営業利益 267億円 240億〜310億円
受注見通し(通期) - 3,000億〜4,000億円のまま

中心は売上620億円、営業利益270億円です。

組み立ては3段です。

  1. 売上は前年並みからやや上と見ます。通期予想2,900億円を4で割ると1四半期725億円ですが、A200HiTの本格導入は早くて下期からなので、7〜9月はそこまで届かないと見ています。前期の四半期売上は413億〜741億円と大きく振れたので、幅を広く取りました
  2. 営業利益率は会社予想の43.1%前後と見ます。研究開発費を200億円に増やす計画で、利益率は前期の45.7%より下がる予想です
  3. 為替はほとんど効きません。会社の感応度は1ドル1円の円安で営業利益が年10億円増える程度です。取引は円建てが原則だと有報に書いています

株価の見立ては、11月2日の終値が10月30日の終値を上回る、です。条件は、受注見通しの下限の3,000億円が上がること。据え置きなら、今年の2回と同じように下げると見ます。KLAとインテルの決算でも半導体株は動くので、その分も混ざったまま判定します。外れたら外れたと次の記事に書きます。

気になっていること

顧客がばらけたことです。前の期は上位3社で79.4%、前期は62.2%。3社とも買う額が減り、ほかの顧客が増えました。会社は説明会で、中国はEUVの装置を出せないので割合は高くないが、MATRICSの引き合いが非常に強く、実額は倍近くを見込むと話しています。受注でMATRICSがACTISを上回ったのは、この話と重なります。EUVの検査で世界初をうたう会社の受注の伸びを、DUVの装置が引っ張っている。悪いことではありませんが、ACTISの次の山はA200HiTがTSMCのような先端の工場で採用されるかにかかっています。

使った資料

その後の決算は「レーザーテック(6920)の7〜9月は売上403億円。出荷時に受け取る前受金は3か月で427億円増え、受注見通しは4,000億〜5,000億円に」で読みました。

この会社は半導体の地図の「製造装置」にいます。