バーティブ(VRT)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。受注残150億ドル、前受金は半年で倍。それでも売上は予想の下限で、詰まったのは自社の供給網

次の決算は2026年10月28日(米国時間・確定)、日本時間では同じ日の夜です。過去の発表日は2026年7月29日、4月22日、2月11日、2025年10月22日。決算日の一覧


番外編です。保有投信の組入上位を1社ずつ読む順番の外から、1本だけ挟みます。

きっかけは有料noteの導入部でした。米国のデータセンターは建設中の容量が過去最高なのに、電力が足りない、建設が遅れる、資金調達の金利が上がる、だからAI半導体株が警戒されている、という話です。ハイパースケーラー4社の2026年の設備投資で見たのは、お金を出す側の数字でした。建てたデータセンターを予定どおり動かすための電源と冷却を納めている側の数字は、まだ見ていません。それがバーティブ(Vertiv Holdings、ティッカー VRT、NYSE上場)です。所長の投資信託には入っていません。

使うのは、2026年7月29日の第2四半期決算のプレスリリース(SECに出た8-K)と10-Q、2025年の年次報告書(10-K)、2月の第4四半期決算、9月2日の買収の発表、それと決算説明会の書き起こしです。

どんな会社か

データセンターの建物の中で、サーバー以外のほぼ全部を作っている会社です。元は1965年に世界で初めてコンピュータ室用の空調を作ったリーバート社で、エマソン・エレクトリックの一部門を経て2016年に独立、2020年に上場しました。本社はオハイオ州。

売上は製品とサービスの2つに分けて出ます。2026年第2四半期の内訳です。

  • 製品: 26.1億ドル、前年比+23%、売上の80%。UPS(無停電電源装置)、スイッチギア、ブスバーなどの電源まわりと、空冷と液冷の冷却機器、チラー、それらをまとめたプレハブのモジュール
  • サービスと補修部品: 6.7億ドル、+29%、売上の20%。300か所超の拠点と約5,000人の現場エンジニアで、据え付け、保守、液冷の配管の洗浄まで
  • 地域別: 米州20.7億ドル(+29%)、アジア太平洋7.2億ドル(+29%)、欧州・中東・アフリカ4.8億ドル(+2%)

顧客はデータセンター(ハイパースケール、コロケーション、ネオクラウド、企業の自社設備)、通信会社、産業用です。10-Kが例に挙げるのは Microsoft、AWS、Google Cloud、CoreWeave、Nebius。顧客の種類ごとの売上の割合は資料にありません。競合は Schneider Electric、Eaton、Legrand、Huawei です。

第2四半期の数字

  • 売上: 32.7億ドル、前年比+24%。内訳は自力の成長が+18%、買収が+5%、為替が+1%
  • 粗利率: 37.7%、前年同期は34.0%
  • 営業利益(GAAP): 6.4億ドル、+44%、営業利益率19.5%
  • 調整後営業利益: 7.4億ドル、+51%、調整後営業利益率22.6%、前年同期から4.1ポイント改善
  • EPS: 希薄化後1.27ドル(+53%)、調整後1.52ドル(+60%)
  • 営業キャッシュフロー: 11.0億ドル。調整後フリーキャッシュフローは9.3億ドル、+234%
  • 手元資金: 現金と短期投資で31.1億ドル、長期負債29.4億ドル。ネットキャッシュになった
バーティブ 四半期の売上と調整後営業利益率2026年第2四半期まで。第3四半期は会社予想の中央値01224364860億ドル20.724Q323.524Q420.425Q126.425Q226.825Q328.825Q426.526Q132.726Q237.526Q3予20.1%21.5%16.5%18.5%22.3%23.2%20.8%22.6%24.5%12%20.5%29%売上調整後営業利益率出所: 各四半期のプレスリリース、10-K、10-Q

通期の予想は3回目の引き上げです。売上は2月の132.5〜137.5億ドルから4月に135〜140億ドル、7月に138〜142億ドルへ。中央値の140億ドルは2025年の102.3億ドルから37%増です。調整後EPSは6.65〜6.75ドル。

バーティブ 地域別の売上(2026年第2四半期)米州20.7億ドルアジア太平洋7.2億ドル欧州・中東・アフリカ4.8億ドル出所: 2026年第2四半期プレスリリース

注文は積み上がり、前受金は倍になり、売上は予想の下限

受注残は2025年末で150億ドル、1年前の72億ドルから109%増。第4四半期だけで受注が前年比252%増、受注と売上の比率が約2.9倍です。10-Kは大半を「確定で、12〜18か月以内に出荷する」と書いています。2025年の売上1年分より多い注文が、年初に手元にありました。

前受金はもっと急です。貸借対照表の前受収益(deferred revenue)は2025年末の18.1億ドルが、6月末に36.3億ドル。半年で倍です。第2四半期だけで11.7億ドル増えました。CFOは説明会で「注文時の前払いの預かり金」と説明しています。この四半期の営業キャッシュフロー11.0億ドルは前払いが11.7億ドル入ったからで、それを除くと現金はむしろ出ています。在庫も同じ半年で14.6億ドルから25.2億ドルに増えました。

それだけ積んで、第2四半期の売上32.7億ドルは会社予想の32.5〜34.5億ドルの下限でした。自力の成長率18%は、予想の20〜24%を下回っています。プレスリリースの説明は「一時的なサプライチェーンの混雑と、案件が大きく複雑になって納入が何段階かに分かれることによる、わずかな時期のずれ」。説明会でアナリストに突かれたCEOの答えは、「サプライチェーンといっても、バーティブの内側の供給網であることがよくある」でした。ずれた金額は聞かれても出していません。下期に解消する、とだけ。

株価は決算の日に269.56ドルから223.04ドルへ、1日で17%下げました。通期予想を上げた日に、です。

第3四半期の予想は売上36.5〜38.5億ドル、自力の成長率34〜36%。第2四半期からずれた分が戻ってくる前提の数字です。中央値の37.5億ドルなら前年同期比+40%。

電力が足りないなら、電力の手前を買う

noteが心配していたのは、電力が足りなくてデータセンターが動かせないことでした。7月29日の説明会の書き起こしを読む限り、送電網の制約や電力が確保できない話は、質問にも回答にも出てきません。電源の話題は交流か800ボルト直流かという方式の話だけでした。

その5週間後、9月2日に UtilityInnovation Group(UIG)の買収を発表しています。現金で約14.5億ドル、それに加えて12か月と24か月のEBITDAの目標を達成したら最大11.5億ドル。2027年のEBITDA見込みの約13倍。UIGは2020年設立で、売っているのはマイクログリッドの制御装置と専用のスイッチギア、それと電力会社との接続点から建物に入るまでの電源の設計です。発表文の言葉は「送電網との接続待ちに依存せずに電力を手に入れる」「送電網だけでは足りない分まで敷地の容量を増やす」。CEOは「敷地を決めてから最初のトークンを出すまでの速さ」が顧客の競争力だと言っています。

面白いのは「発電の方式や供給者に縛られない」と念を押している所です。その敷地で許可が取れて燃料と資金が付く発電手段を並べて制御する、という立場です。ロールス・ロイスの回で読んだのは発電機そのものを売る側で、バーティブはその発電機を含めて束ねる側に回ろうとしています。

買収は今年これで5件目です。4月にプレハブの鉄骨の BMarko と液冷の冷却板の Strategic Thermal Labs、6月にイタリアの熱交換器の ThermoKey、9月にダブリンで液冷の配管洗浄をする King Environmental Services。2025年12月には PurgeRite を11.4億ドルで買っています。工場もマレーシアのジョホール、米州5か所、欧州のチラーで増やしていて、今年の設備投資は5.5〜5.7億ドル。2025年上期は0.8億ドルでした。

気になっていること

欧州・中東・アフリカです。第2四半期の売上は+2%ですが、買収と為替を除くと-2%。上期で見ると-15%です。通期の予想はこの地域を「自力で1桁前半の成長」と置いているので、下期に大きく戻らないと届きません。説明会では「受注残が形になってきている」としか言っていません。なぜ欧州だけ減っているのか、資料に説明は無いです。

もう一つは、前払いの36.3億ドルは顧客のお金だということです。手元の流動性56億ドルと聞くと潤沢に見えますが、まだ納めていない製品の代金が3分の2です。10-Kのリスクの項には、大口顧客は「納期遅れに多額の違約金を課すことがある」と書いてあります。自社の供給網が詰まって売上がずれた四半期に読むと、落ち着きません。受注残は「確定」と書いてあっても、同じ段落に「顧客は取り消しや時期の変更ができる」とも書いてあります。

UIGの値段も引っかかります。上乗せの11.5億ドルは本体の8割です。「全額払う場合は倍率が大幅に下がる」と書いてありますが、それは分母のEBITDAがそれだけ伸びる前提の言い方です。

株価は9月8日の290.83ドルから10月20日の203.56ドルまで、6週間で30%下げています。52週高値は379.94ドル。この間に会社が出した悪い知らせは、資料の範囲では見当たりません。今年の会社予想の調整後EPS 6.70ドルで割ると30倍。注文は過去最高で、その納め先が本当に建つのかを市場は疑い始めている、というのが私の見方です。資料にはありません。

10月28日に見る所

第3四半期の決算は10月28日の寄り付き前、説明会は日本時間で29日の午前0時です。

  • 売上が36.5〜38.5億ドルに入るか。第2四半期の「一時的」なずれが戻ってくる予定の四半期なので、下限を割ったら一時的ではなかったことになる
  • 受注残の数字を出すか。2月の決算では150億ドルと出しましたが、7月の決算では数字を出していません
  • 前受収益が36.3億ドルからさらに増えているか。減り始めていれば、消化が注文を上回り始めたということ
  • 欧州・中東・アフリカの自力の成長率。第3四半期の予想は10%台半ば
  • UIGの買収が第4四半期に閉じる見込みのままか

使った資料

株価は書いた日のものです。データセンターが遅れる理由をnoteは3つ並べていましたが、「電源と冷却を納める会社の工場が詰まる」は入っていませんでした。私も読むまで入れていませんでした。