サンディスク(SNDK)の7〜9月決算を10-Kで読む。売上は1年で4.8倍、売上原価は+2%。工場を持たない会社の粗利率85%はキオクシアとの合弁から来ている

次の決算は2027年1月28日ごろの見込みです(推定。前年の同じ時期から)。過去の発表日は2026年10月29日、8月5日、4月30日、1月29日。決算日の一覧


キオクシアの決算は今日、10月30日の18時45分に出ます。キオクシアの決算を10月30日の前に読んだ記事で、四日市と北上の工場を共同で使うサンディスクの決算が前日の米国時間に出るので、それが先の手がかりになる、と書きました。出たので、順番の外の番外編として読みます。サンディスク(Sandisk、ティッカー SNDK)は2025年2月にウエスタンデジタルから分かれたNANDの会社で、所長の投資信託の組入上位にはいません。

使うのは、10月29日にSECへ出た決算のプレスリリース(8-Kの添付書類)、8月17日の年次報告書(10-K)、過去3四半期分のプレスリリースです。会社のIRサイトは私の環境からは403で開けず、決算説明会の資料と書き起こしは読めていません。説明会の話は要約記事から拾った範囲で、「要約記事によると」と断って書きます。

どんな会社か

NANDフラッシュメモリと、それを使ったSSD、メモリーカード、組み込み用メモリを設計して売る会社です。DRAMは作りません。売上の区分は用途で3つ。7〜9月の数字で書きます。

  • エッジ: 58.3億ドル、売上の53%。スマートフォン、PC、車載、産業機器に組み込むメモリ。前の四半期から+7%
  • データセンター: 48.0億ドル、44%。AIのサーバーに積む企業向けSSD。前の四半期から+61%、1年前は2.7億ドルだった
  • コンシューマー: 4.0億ドル、4%。店頭で売るメモリーカードやUSBメモリ。前の四半期から-29%。値上がりに買い手がついてこなくなった、という減り方です
用途別の売上(2026年7〜9月)エッジ58.3億ドルデータセンター48.0億ドルコンシューマー4.0億ドル出所: プレスリリース(SEC 8-K、2026年10月29日)

10-Kによると、売上の10%を超える顧客は無く、上位10社で44%です。工場は持っていません。これがこの記事の本題なので、節を分けます。

直近の決算の数字

2027年度第1四半期、2026年7月4日から10月2日までの数字です。

  • 売上: 110.3億ドル。前の四半期から+23%、前年比+378%。会社予想は103〜108億ドルで、上限を超えた
  • 粗利率: 85.0%(非GAAPは85.1%)。前の四半期の84.6%から0.4ポイント上がった。1年前は29.8%。粗利益は6.9億ドルから93.8億ドル
  • 営業利益: 87.8億ドル、営業利益率79.6%
  • 純利益: 81.0億ドル。EPSは52.60ドル(非GAAPは49.51ドル)。GAAPの方が大きいのは、持っている台湾のDRAM会社の株の評価益5.1億ドルが乗っているから
  • 営業キャッシュフロー: 63.6億ドル。設備投資は0.5億ドルで、フリーキャッシュフローは63.1億ドル
  • 現金: 51.4億ドル、有利子負債はゼロ。この四半期に50億ドルで320万株を買い戻した
  • 10〜12月の会社予想: 売上122〜126億ドル、粗利率84.4〜85.4%、非GAAPのEPS 55〜57ドル(分割前)

この1年の四半期の売上は、23.1億、30.3億、59.5億、89.7億、110.3億ドル。粗利率は29.8%、50.9%、78.4%、84.6%、85.0%です。

サンディスク 四半期の売上と粗利率2027年度第1四半期(2026年7〜9月)まで。第2四半期は会社予想の真ん中04080120160200億ドル23.1FY26Q130.2FY26Q259.5FY26Q389.7FY26Q4110.3FY27Q1124FY27Q2予29.8%50.9%78.4%84.6%85%84.9%2%57.5%113%売上粗利率(GAAP)出所: 各四半期のプレスリリース(SEC 8-K)

11月19日に1株を8株に分ける株式分割も同時に発表しました。株価は書いた日の前営業日、10月29日の終値で1,330.05ドル。前日の1,404.77ドルから5.3%下げた日で、決算はその引けの後に出ています。

売上は1年で4.8倍、売上原価は+2%

損益計算書の2行目だけ見ます。売上原価は1年前の7〜9月が16.2億ドル、今年の7〜9月が16.5億ドル。+2%です。その間に売上は23.1億ドルから110.3億ドルになりました。4.8倍です。

サンディスク 売上は4.8倍、売上原価は+2%2025年7〜9月と2026年7〜9月の比較。ウエハーはキオクシアとの合弁から原価で仕入れる2025年7〜9月2026年7〜9月売上23.1億ドル110億ドル売上原価16.2億ドル16.5億ドル粗利益6.9億ドル93.8億ドル出所: プレスリリース(SEC 8-K、2026年10月29日)

メモリは値段が上がっても作る費用は変わらない、という話はキオクシアの記事でも書きました。サンディスクの場合は、もう一段あります。この会社はウエハーを自分で作っていません。10-Kに「すべてのフラッシュメモリのウエハーはFlash Venturesから調達している」とあります。Flash Venturesは、キオクシアと作った合弁会社3社(Flash Partners、Flash Alliance、Flash Forward)をまとめた呼び名で、サンディスクの持ち分はそれぞれ49.9%。工場の建物は四日市に6棟、北上に2棟、全部キオクシアが所有しています。キオクシアが合弁会社に「原価で」ウエハーの製造サービスを提供し、合弁会社がそれを「原価に少しの上乗せ」で両社に売る、と書いてあります。

サンディスクのウエハーはどこから来るか2026年7〜9月期。10-Kの注記とプレスリリースから原価で製造原価に少しの上乗せSSD等を売るキオクシア四日市6棟・北上2棟を所有Flash Ventures合弁3社、サンディスク49.9%サンディスク(工場なし)売上110.3億ドル、原価16.5億ドル粗利率85.0%顧客上位10社で売上の44%固定費の半分はサンディスクが負担装置の借り入れの保証 9.2億ドルNBMの前払い15.3億ドル、預かり金16.0億ドル出所: Form 10-K(2026年度)、プレスリリース(2026年10月29日)

合弁の生産量は両社で半分ずつ。合弁はキオクシアの工場の生産能力の約80%を占めるので、サンディスクの取り分は工場全体の約4割です。キオクシアが5月の質疑で答えた「キオクシア60%、サンディスク40%」と合います。

製造装置は合弁が持つか借りていて、サンディスクは装置の借り入れの半分、9.2億ドル(1,490億円)を保証しています。一方でサンディスク自身の設備投資は、2026年度の1年で1.8億ドル、この四半期で0.5億ドル。売上の0.5%です。工場への投資は合弁への貸付と減価償却の前払いの形で出ていて、10-Kの資金需要の表では合弁関係の支払いが2027年度に26.3億ドル。売上110億ドルの会社の数字としては小さい。

この構造だと、ウエハーの市場価格が上がっても、サンディスクの仕入れ値は上がりません。原価は原価のままで、売値だけが上がる。粗利率が29.8%から85.0%まで上がった理由は、ここにあります。

逆も書いておきます。10-Kには、サンディスクは合弁の固定費の半分を「購入量にかかわらず」払う義務があり、合弁以外でフラッシュメモリを作ることも作らせることも禁じられている、とあります。稼働を落とした分の費用は2024年度に2.5億ドル、2025年度に0.8億ドル、2026年度に0.1億ドル。値段が下がる局面では、この固定費がそのまま赤字の元になります。1年前の粗利率29.8%は、そういう局面の終わりの数字です。

合弁の期限は今年1月の延長で3社とも2034年12月31日にそろい、その対価としてサンディスクは2026〜2029年にキオクシアへ直接12億ドルを払います。この支払いは売上原価に乗ります。

キオクシアの+35%と、サンディスクの+23%

キオクシアの7〜9月の会社予想は前の四半期から+35.2%、サンディスクの予想は+14.9〜20.5%で、同じ工場なのに倍近く違う、と前の記事で書きました。サンディスクの実績は+23%でした。自分の予想の上限は超えましたが、+35%には遠い。

差の中身で、プレスリリースから読めるのは用途別の内訳だけです。データセンター向けが+61%、エッジが+7%、コンシューマーが-29%。伸びたのはデータセンターだけで、売上の過半を占めるエッジはほとんど動いていません。要約記事によると、データセンター向けの増加分はおよそ6割が数量、4割が値段だったそうです。前の四半期は全体の増加分の3分の2が値段でした。これは8月のプレスリリースに書いてあります。

キオクシアが+35%を出すには、同じウエハーからサンディスクより高く売るか、多く出すかのどちらかが要ります。クリーンルームは同じなので、残るのは製品の構成と値段です。サンディスクの数字を見たあとだと、+35%はかなり高い所に置いた予想に見えます。結果は今日の夜に出て、別の記事で書きます。

預かり金で縛る契約が、半分を超えた

マイクロンの記事で書いたSCA(戦略的顧客契約)と同じものが、サンディスクにもあります。NBM(New Business Model)と呼んでいて、10-Kの説明では、複数年にわたって決めた数量を会社が納め、顧客が買い取る契約です。価格は固定と変動の組み合わせで、顧客が買わなかった時のために金銭的な保証が付いています。10-Kの注記にある数字です。

  • 契約で残っている売上(残存履行義務): 598億ドル。全部がNBM。うち次の12か月で売上になるのは約19%
  • 顧客からの前払い(契約負債): 7月3日時点で12.4億ドル。10月2日時点では15.3億ドル
  • 顧客からの預かり金(返金負債): 7月3日時点で15.0億ドル、10月2日時点で16.0億ドル。契約の終了時に顧客へ返す
  • 顧客が銀行に積んでいる担保: 50億ドル。顧客が契約を破った時だけサンディスクが取れる。バランスシートには載っていない

キャッシュフローの調整表には「NBMの前払いと預かり金の影響」という行があって、1〜3月に5.4億ドル、4〜6月に19.4億ドル、7〜9月に4.7億ドル。会社はこれを本業のキャッシュフローではないとして、調整後フリーキャッシュフローから除いています。マイクロンのCFOと同じ扱いです。この四半期の流入は前の四半期の4分の1に減りました。契約が頭打ちになったのか、前払いを取らない契約が増えたのかは、資料からは分かりません。

要約記事によると、説明会でCFOは、NBMが2027年度の出荷ビットの約50%、2028年度の約3分の2を占めると言ったそうです。マイクロンは2030年までの売上の35%超でした。比率ならサンディスクの方が深く、残存履行義務はマイクロンの約1,500億ドルに対して598億ドル。会社の大きさの差です。

気になっていること

買い戻しの速さ。 2四半期で600万株、発行済みの約4%を買い戻し、7〜9月だけで50億ドル。この四半期の営業キャッシュフロー63.6億ドルの8割です。余った現金の100%を株主に返すと説明会で言ったそうですが、合弁の固定費の半分を払う義務を負った会社が、現金を51億ドルしか持たずに無借金を続けるのは、上り坂でだけ成り立つ資本の使い方だと思います。

ナンヤの株。 2026年4月に台湾のDRAM会社ナンヤ・テクノロジーの株を9.7億ドルで3.9%買い、10月2日時点で22.9億ドルになっています。3年間売れない株で、出資の理由は10-Kに「DRAMの長期調達戦略を支えるため」としかありません。

合弁の決算。 10-Kにある合弁会社の合算は、2026年度の売上27.8億ドル、純損失0.9億ドル。ウエハーを原価で売る会社なので利益が出ない作りです。サンディスクが払ったウエハー代と貸付は年36億ドル。利益は全部、合弁の外、サンディスクとキオクシアの側で出ています。だから今日のキオクシアの決算で見るのは、同じ原価で作った同じウエハーが、向こうでいくらで売れたか、になります。

次の決算で見る所

次は10〜12月期で、前の年は1月29日に発表でした。日程はまだ出ていません。

  • 売上122〜126億ドル(真ん中は124億ドル)の予想に対して、どこに落ちたか。前の四半期からの伸びは+11〜14%で、+23%からさらに鈍る予想
  • 粗利率84.4〜85.4%。真ん中の84.9%は7〜9月の85.0%とほぼ同じで、1年上がり続けた数字に頭打ちの予想を出している
  • NBMの預かり金と前払いの流入が、4.7億ドルからさらに減るか
  • 1〜3月の会社予想。季節的に最も弱い四半期で、昨年はビットの出荷が前の四半期から19%減ったと説明会で言ったそうです。初めて下りの数字が出る所です

使った資料

株価は書いた日のものです。四日市の同じクリーンルームから出たウエハーが、米国側では+23%になりました。今日の18時45分に、日本側の数字が出ます。

この会社は半導体の地図の「メモリ」にいます。