カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ(CP)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。増収13%の半分は燃料、下期は営業係数60%割れを約束


順番で来た銘柄です。世界のベスト(インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>毎月決算型)の組入2位、4.4%。第3回のロールス・ロイスと同じファンドで、あちらより上に入っている銘柄です。所長はこの会社について何も言っていません。

カナダの鉄道会社です。読む前の私の知識は「カナダの貨物鉄道がアメリカの鉄道を買った」で止まっていました。買ったのは2021年、経営を握ったのが2023年4月。まだ3年の会社でした。

使うのは、2026年7月29日の第2四半期決算のプレスリリース(SECに提出された8-K)、同じ日の決算説明会の書き起こし、10-Q、2月の10-K、1月28日の2025年通期決算(2026年のガイダンスが出ている)、10月2日の穀物輸送の記録の発表です。通貨は断りが無ければカナダドルです。

どんな会社か

カナダ、アメリカ、メキシコの3カ国を1本の線路でつなぐ、唯一の貨物鉄道です。線路の総延長は約2万マイルで、カナダ8,400、アメリカ8,800、メキシコ3,100。カナディアン・パシフィック(CP)がカンザスシティ・サザン(KCS)を2021年12月に買い、アメリカの陸上交通委員会(STB)が2023年3月に承認して、4月に一つの会社になりました。

メキシコの区間は自分の線路ではありません。政府から2047年6月までの営業権を借りていて、線路も建物も政府のもの。毎年、売上の1.25%を政府に払います。10-Kには「政府が取り消したら補償は無い」と書いてあります。

何を運んでいるかは、第2四半期の貨物収入の内訳が一番分かりやすいです。

品目 売上 前年比 輸送量(トンマイル)の前年比
穀物 9.25億 +24% +19%
エネルギー・化学品・プラスチック 7.77億 +9% +6%
インターモーダル(コンテナ) 7.58億 +11% 0%
金属・鉱物・消費財 5.24億 +18% +7%
自動車 4.03億 +22% +8%
石炭 2.09億 -18% -29%
林産品 1.98億 +2% -2%
カリ(肥料の原料) 1.84億 +10% -2%
肥料・硫黄 1.10億 +12% +1%

貨物収入の合計は40.9億で、貨物以外の0.76億が乗って総売上41.6億です。穀物が最大で、カナダの豊作とメキシコ向けで記録を作りました。石炭はカナダの鉱山の生産が落ちて3割減。この表で気づくのは、売上の伸びが輸送量の伸びを全部の品目で上回っていることです。理由は次の節です。

CPKC 品目別の貨物収入(2026年第2四半期)穀物9.2億カナダドルエネルギー・化学品・プラスチック7.8億カナダドルインターモーダル7.6億カナダドル金属・鉱物・消費財5.2億カナダドル自動車4.0億カナダドル石炭2.1億カナダドル林産品2.0億カナダドルカリ1.8億カナダドル肥料・硫黄1.1億カナダドル出所: 2026年第2四半期決算プレスリリース

直近の決算の数字

項目 2026年第2四半期 備考
売上 41.6億 前年比 +13%
営業利益 14.7億 +10%
営業係数(報告ベース) 64.6% 前年同期は63.7%
営業係数(会社調整後) 61.6% 前年同期は60.7%
純利益 10.2億 -17%
希薄化後EPS 1.15 -14%
会社調整後EPS 1.27 +13%
営業キャッシュフロー 17.3億 前年同期は13.6億
調整後フリーキャッシュ 10.0億 前年同期は6.05億
自社株買い 12.8億(四半期で) 上期で19.6億。株数は前年比4%減

純利益が17%減っているのに「増益」と会社が言うのは、前年同期に持分投資の売却益3.33億が入っていたからです。それを外した「会社調整後」では13%増。ここは納得できます。

営業係数は鉄道業界の物差しで、営業費用を売上で割った数字です。低いほど良い。この会社は「調整後」で2025年第4四半期に55.9%という自社の記録を出していて、第2四半期の61.6%は前年より0.9ポイント悪い。会社がいちばん大事にしている指標が悪化した四半期です。

増収13%の半分以上は燃料だった

10-Qを読んで分かったことです。

貨物の売上には燃料サーチャージが含まれています。ディーゼルの値段が上がると、荷主に上乗せして請求する仕組みです。第2四半期の燃料サーチャージ収入は6.08億で、前年同期の3.50億から2.58億増えました。74%増です。

売上全体の増加は4.65億。そのうち2.58億がサーチャージなので、半分以上は燃料の値上がりを荷主に転嫁した分です。サーチャージを除いた貨物収入で前年と比べると、私の計算で6%増。輸送量が4%増なので、値上げと運ぶ距離の伸びで2ポイント、という感じになります。13%という見出しの数字とは、だいぶ印象が違います。

燃料費の方は6.18億で、前年の4.05億から53%増。機関車の燃料の平均価格が1ガロン4.19ドル、前年は2.77ドルでした。51%上がっています。

面白いのは、サーチャージが営業係数を悪くする点です。CFOが説明会で「サーチャージ収入は営業係数100%で入ってくる」と言っていました。転嫁した分は売上と費用に同じ額が乗るので、利益は増えないのに比率は悪化する。しかも請求には時間差があり、燃料が上がる局面では費用が先に出る。燃料価格の変化だけで営業係数が1.3ポイント悪くなった、年末までにこの時間差は逆に効いてくる、とCFOは言っています。

燃料が下がれば、売上の伸びは見た目で鈍り、営業係数は良くなる。この会社の数字は、ディーゼルの値段を横に置かないと読めません。

営業係数と、下期の「60%を切る」という話

四半期の売上と調整後の営業係数を並べます。

四半期 売上 営業係数(調整後)
2025年第1四半期 38.0億 62.5%
2025年第2四半期 37.0億 60.7%
2025年第3四半期 36.6億 60.7%
2025年第4四半期 39.2億 55.9%
2026年第1四半期 37.0億 63.0%
2026年第2四半期 41.6億 61.6%
CPKC 四半期の売上と営業係数(調整後)2025年第1四半期から2026年第2四半期まで。営業係数は低いほど良い01632486480億カナダドル382025Q1372025Q236.62025Q339.22025Q4372026Q141.62026Q262.5%60.7%60.7%55.9%63%61.6%52%59.5%67%売上営業係数(調整後、%)出所: 各四半期のプレスリリース

第1四半期は売上が2%減って営業係数が悪化、第2四半期は売上が13%増えてまた悪化。燃料とは別の理由もあります。CFOは、事故関連の費用と株式報酬と業績連動報酬で1.5ポイント分、EPSで5セント分の逆風があり、それが無ければ「60%に近かった」と言いました。

アナリストが「下期は60%を切るという意味か」と聞いて、CFOの答えは「それは妥当だと思う」。輸送量が上期より大きく加速し、事故費用は減る、という見立てです。

2026年通期のガイダンスは1月に出たもので、調整後EPSが2025年の4.61から「10%台前半の伸び」。上期の調整後EPSは2.30で、前年同期の2.18から5.5%しか伸びていません。10%に届くには下期に2.77が要り、前年下期の2.43から14%増です。会社は説明会で「ガイダンスを達成するか上回る」と言いました。下期の14%増を約束したことになります。

鉄道の合併に反対している

説明会の質疑の半分くらいが、他社の合併の話でした。

ユニオン・パシフィック(UP)とノーフォーク・サザン(NS)が合併を申請していて、STBが審査中です。CPKCは反対しています。第2四半期にこの件の分析と意見提出のための助言費用を1,400万、上期で2,700万使っていて、これは「調整後」から外している費目です。

CEOのキース・クリール氏の発言を拾います。「私は追加の鉄道統合に断固として反対だ」。合併後のUPは43州で貨物の4割を1社で動かすことになり、その1社がシステム障害で止まったらどうなるか。前日にアメリカン航空の全便が止まったニュースを見た、と言って「大きすぎて潰せない」と。それと、過去の鉄道合併で荷主が受けた混乱の記憶。「30年前にそれを経験した人たちが今は荷主の上の立場にいて、今でも夜眠れない」。

ただし、同じ質疑でこうも言っています。「もし強行されれば、我々は黙っていない」「UPとNSが一緒になれば、時間の問題で次の統合が来る」。相手は言わないが、複数の候補と組める、と。BNSFとCSXとは「今ほど近かったことは無い」。

反対と言いながら、通ったら自分も動くと言っている。業界の地図が変わる局面で、この会社の株を持つというのはそういう話でもあります。

気になっていること

一つ目は「調整後」の中身です。調整後EPSの1.27と報告の1.15の差は12セント。そのうち11セントがKCS買収時の資産の時価評価による償却で、毎四半期ほぼ同じ額(今回は9,300万)が出ます。会社も「耐用年数にわたって償却し続ける」と書いています。一時的な費用ではありません。この11セントは消えません。

二つ目は安全です。従業員の人身事故率が20万労働時間あたり0.96で、前年の0.73から32%上がりました。列車事故率も1.00で、前年の0.97から微増。COOは「失望している」と言っています。「列車事故率で3年連続業界最低」を看板にしてきた会社です。

三つ目は借金と自社株買いです。有利子負債は251.5億で、1年前の222.7億から29億増えました。純負債のEBITDA倍率は3.2倍で、1年前は3.0倍。一方で上期に19.6億の自社株買いをし、9月28日には借り換えのために18億の社債を出しました。借金を増やしながら自社株を買っている。純利息費用は2.37億で、前年比14%増です。

株価は10月14日の終値で86.13米ドルです。52週高値は96.90ドル、安値は68.42ドルで、1カ月前の89.02ドルから3%ほど下げています。直近4四半期の調整後EPSは4.73カナダドル、為替1.38で3.43米ドル。株価はその25倍です。私の計算です。

10月28日に見る所

第3四半期の決算は10月28日の取引終了後、説明会は東部時間午後4時30分です。

  • 穀物。10月2日に、9月と第3四半期の穀物輸送がカナダ、アメリカともに記録を更新したと発表しています。カナダは9月に294万トン、30,324両。アメリカは251万トン、26,236両。輸送量の加速は、ここまでは会社の言うとおりです
  • 営業係数が60%を切ったか。CFOが「妥当」と言った数字です
  • 燃料サーチャージの時間差。第2四半期に1.3ポイントの逆風だったものが、燃料価格次第で追い風に変わります
  • 通期ガイダンス。下期14%増が要る計算で、第3四半期で足りなければ、ここで何か言うはずです

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

鉄道の決算を初めて読みましたが、営業係数と燃料サーチャージの2つを知らないと、増収13%も増益13%も読めませんでした。知ってしまえば、見るのは下期の14%です。