アップル(AAPL)の2026年度第3四半期決算を一次ソースで読む。粗利率50%の2ポイントは関税の払い戻し、次の四半期はメモリの「百年に一度の洪水」で下がる


順番で来た銘柄です。グロース・オポチュニティの組入4位、5.8%。所長はこの銘柄について何も言っていません。iPhoneの会社だということは、所長も読者も知っている。

ただ、決算を自分で読んだことは私もありませんでした。使うのは、2026年7月30日に出た2026年度第3四半期(4〜6月)のプレスリリース(SECに提出された8-K)、翌日に出た10-Q、決算説明会の書き起こし、2025年度の10-K、それとCEO交代を届け出た4月20日の8-Kです。この7月の説明会は、ティム・クック氏がCEOとして出た最後の回でした。

どんな会社か

iPhoneの会社です、で済ませたい所ですが、数字で見ると半分だけ正しい。2025年度(2024年10月〜2025年9月)の売上4,162億ドルのうち、iPhoneは2,096億ドルで50%。サービスが1,092億ドルで26%。残りがMac、iPad、ウェアラブルです。

第3四半期の区分別の売上です。

区分 2026年度第3四半期 前年比 中身
iPhone 542.5億ドル +22% Proモデルが牽引。6月期として過去最高
Mac 103.5億ドル +29% ノート。新しいMacBook Neoと MacBook Pro
iPad 61.9億ドル -6% iPad miniとiPad Airが減った
ウェアラブル・ホーム・アクセサリ 78.8億ドル +6% Apple Watch、AirPods、Vision Pro
サービス 307.4億ドル +12% App Store、広告、iCloud、AppleCare、Apple Pay、Apple TV

サービスの行が肝です。売上の28%ですが、粗利率が75.6%あります。製品は40.1%。この四半期の粗利548億ドルのうち232億ドルがサービスで、42%です。iPhoneを売って、そのiPhoneの上で手数料を取る。手数料の方が儲かる。

10-Kでは「広告」の中身が「第三者とのライセンス契約と、自社の広告プラットフォーム」です。前者は、10-Qのリスク要因に名前が出てくる、Googleの検索をiPhoneに載せる対価のことです。金額は資料のどこにも書いてありません。

地域別は、アメリカ大陸42%、欧州27%、中華圏17%、日本6%、その他アジア8%。中華圏は2025年度の通年で前年比-4%でしたが、この四半期は+22%でした。

アップル 区分別の売上(2026年度第3四半期、合計1,094億ドル)iPhone542.5億ドルサービス307.4億ドルMac103.5億ドルウェアラブル・ホーム・アクセサリ78.8億ドルiPad61.9億ドル出所: 第3四半期決算プレスリリース

直近の決算の数字

項目 2026年度第3四半期 備考
売上 1,094億ドル 前年比+16%。6月期として過去最高
粗利率 50.1% 関税の払い戻しで約2ポイント押し上げ。除くと48.1%
営業利益 357億ドル 前年比+27%
純利益 298億ドル 前年比+27%
EPS(希薄化後) 2.02ドル 前年比+29%。うち0.11ドルは関税の払い戻し
営業キャッシュフロー 344億ドル 四半期で。説明会でCFOが言った数字
自社株買いと配当 258億ドルと40億ドル 四半期で。年度の9か月で自社株買いは618億ドル
現金と有価証券 1,470億ドル 有利子負債は840億ドル

研究開発費が117億ドルで、前年比+32%。10-Qの説明は「インフラ関連の費用、AIへの投資を含む、と人員関連」です。売上が16%伸びて、研究開発費が32%伸びた。この差が、AIに払っている値段の、表に出ている部分です。

アップル 四半期の売上と粗利率2026年度第3四半期まで。第4四半期は会社予想の中央値。第3四半期の粗利率には関税の払い戻し約2ポイントを含む05001,0001,5002,0002,500億ドル1,243FY25Q1954FY25Q2940FY25Q31,025FY25Q41,438FY26Q11,112FY26Q21,094FY26Q31,127FY26Q4予46.9%47.1%46.5%47.2%48.2%49.3%50.1%47.5%44%48%52%売上粗利率出所: SEC XBRL(10-Q/10-K)、プレスリリース、説明会のCFOコメント。FY25Q4は通期から9か月を引いた値

粗利率50%のうち2ポイントは、関税の払い戻し

10-Qに書いてある経緯はこうです。2026年2月20日に米国の最高裁が、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の一部を無効と判断した。会社は税関に払い戻しを申請し、受け取った分を製品の売上原価の減額として計上した。それが粗利率で約2ポイント、EPSで0.11ドル、製品の粗利率では2.5ポイント超。

CFOは「この効果を除くと、前回出した予想レンジのちょうど中央だった」と言っています。つまり、会社の予想どおりだったものが、裁判所の判断で2ポイント上に出た。9月期にも約1ポイント残るそうです。

クック氏は「受け取った払い戻しは米国に再投資する」と言い、7月にブロードコムと結んだ300億ドル超の複数年契約を挙げていました。払った税金が戻ってきて、それを投資と呼ぶ。言い方としては上手いと思います。

「百年に一度の洪水」

説明会でいちばん時間を使っていたのはメモリの値段です。クック氏の言葉を並べます。

  • 12月期より3月期、3月期より6月期と、四半期ごとにメモリに払う金額が増えている。6月期は「大幅に」増えた
  • 9月期はさらに高くなる。持ち越し在庫の効果で一部は相殺できるが、その効果は9月期を過ぎると減っていく
  • 9月より先も、メモリの市場価格は上がり続けると見ている
  • iPadとMacの値上げは「渋々やった」。理由は「メモリ価格の百年に一度の洪水、指数関数的な値上がり」
  • DRAMの供給者は主に3社しかない。「選択肢を全部検討している」

CFOの数字で裏を取ると、粗利率は3月期の49.3%から6月期の48.1%(払い戻しを除く)に1.2ポイント下がり、9月期の予想は47〜48%で、払い戻しの1ポイントを除くと46.5%。1.6ポイントのさらなる低下。この2段の低下は、どちらも「100%以上がメモリのコスト増で説明できる」と言っています。為替はほとんど関係ない、と。

10-Qの貸借対照表に、これが形で出ています。部品の在庫が、2025年9月末の21億ドルから6月末に76億ドルへ、3.6倍。持ち越し在庫というのはこれです。高くなる前に買って積んだ。そしてリスク要因には「この傾向は強まると会社は予想している」と、わざわざ書いてあります。

このシリーズの1本目のマイクロンで、メモリの会社が粗利率87%を出し、顧客から320億ドルの預託金を受け取っている話を書きました。その裏側がここです。アップルの資料にマイクロンの名前は出てきませんが、同じ現象を反対側から見ている記事になりました。

作れないから、伸びない

9月期の売上の会社予想は、前年比+9〜11%です。前年の9月期が1,025億ドルなので、1,117〜1,137億ドル。6月期の+16%から5ポイント落ちます。内訳は、為替で2.5ポイント、残りが供給制約。説明会で最初に質問したアナリストは「市場は+12%で見ていた」と言っていました。

供給制約の中身は「SoCを作る先端プロセスの空き」です。6月期は主にMacで、9月期はiPhone、Mac、iPadの全部に広がり、「影響は大幅に増える」。クック氏の説明は「供給者の問題ではなく、需要予測の問題。iPhoneもMacも我々の予想よりはるかに売れている。供給を前倒しで引っ張ってきたが、限界がある。今期は供給側で走り回る四半期になる」でした。

2本目のTSMCで、2ナノの立ち上げとAI向けパッケージの逼迫を書きました。あの記事の顧客側が、これです。先端プロセスの枠をAIのチップと取り合っている、とは誰も言っていませんが、「サプライチェーンの柔軟性がいつもより低い」という言い方は、そう読めます。

サービスの12%の中身

サービスの伸びは、3月期の+16%から6月期の+12%に落ちました。CFOの説明では、主因は為替、次に去年の6月期にあったF1の映画の劇場公開、それとApp Storeのモバイルゲームの弱さ。9月期はさらに2.5ポイントの為替の逆風で、3月期から9月期まで累計5ポイント分を為替が削る計算です。

為替は会社のせいではありません。ただ、サービスの周りには為替以外の話が並んでいます。

  • App Storeの外部リンク決済について、米国では裁判所の命令の下で運営している。最高裁が上告を受理した
  • 一部の国でApp Storeのビジネスモデルを変更した
  • Googleとの検索ライセンス契約は、米国司法省の訴訟の対象。地裁の是正命令は双方が控訴中。「逆転すれば、Googleがアップルに商業条件を提示すること自体を禁じる是正策が課される可能性がある」と10-Qに書いてある
  • Siri AIはEUではiPhoneとiPadで出せていない。デジタル市場法(DMA)の対象外のMacでは出す。中国では説明会の時点で「先週、元々のApple Intelligenceの機能の承認を得た」段階で、Siri AIは「この先さらに作業が要る」

粗利率75.6%の事業の周りに、これだけ法律の話がある。為替だけ見ていると何かを見落とすと思います。

気になっていること

一つ目は、新しいCEOです。4月20日の8-Kによると、ジョン・ターナス氏(50歳、2001年入社、ハードウェア技術担当の上級副社長)が9月1日付でCEOと取締役になり、クック氏は執行会長に。7月の説明会にターナス氏も出ていて、アナリストから「OpenAIやスペースXがAI端末や電話を出すと言われているが、競争環境をどう見るか」と聞かれました。答えは「ティムが言ったとおりで、機会は大きい。我々は自分たちの計画に集中している」。これが、私が読めた新CEOの発言の全部です。11月2日の説明会が、本人の最初の回になります。

二つ目は、Siri AIの計算コストです。「利用が多い人向けにiCloud+の上位プランを用意する」とクック氏は言いましたが、「完全な計画があるとは言わない」とも言っています。10-Qのリスク要因には、「自社のデータセンターに加えて第三者のクラウド事業者に依存しており、十分な計算能力を妥当な条件で確保できない可能性がある」という段落があります。設備投資は年度の9か月で68億ドルで、前年の95億ドルより減っている。データセンターを建てる会社ではなく、研究開発費と借りたクラウドでAIをやる会社です。それが正しいかどうかは、Siri AIが使われてみないと分からない。

三つ目は、資料に説明が無い数字です。無形資産の取得原価が、2025年9月末の250億ドルから6月末に382億ドルへ、9か月で132億ドル増えています。10-Qに取得の説明はありません。何を買ったのか、何のライセンスなのか、読めませんでした。

株価は10月16日の終値で343.46ドル。8月12日の302.25ドルから14%上がり、この3か月の高値です。10-Qの発行済株式数146億株で掛けると、時価総額はおよそ5.0兆ドル。

11月2日に見る所

次の決算は報道によると11月2日です。

  • 売上。会社予想の1,117〜1,137億ドルに対し、供給制約でどこに落ちたか。iPhoneは「10%台半ば」の伸びが予想
  • 粗利率。47〜48%(関税の払い戻し約1ポイント込み)。12月期の予想で、メモリの影響がさらに大きくなると言うかどうか
  • 値上げの反応。iPadとMacの値上げに対する需要の変化は「結論を出すには早すぎる」とクック氏が言っていた。9月期はその答えが出る最初の四半期
  • Siri AIの提供範囲。EUと中国で動いたか。iCloud+の上位プランの値段
  • 新CEOが、クック氏と違うことを言うかどうか

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

マイクロンの記事を書いたとき、粗利率87%は誰かが払っている、と思いながら書きました。払っている側の決算を読んだら、「百年に一度の洪水」と呼んでいました。同じ水です。