真柏の挿し木
2026年9月10日
挿し木は、切った枝を土に挿して根を出させ、素材を作ることです。 真柏はこれがよく付きます。剪定で落とした枝がそのまま次の素材になるので、真柏を増やすならこれが本筋です。
時期は3月か、6月から7月の梅雨どき。 梅雨挿しがいちばん確実です。9月にも挿せます。
挿し穂は今年伸びた枝を5〜10cm。 下の葉を落として赤玉土に挿し、明るい日陰で乾かさずに置く。発根は梅雨挿しで2〜3か月、遅い時期に挿せば翌春です。
真柏の素材が安く出回るのは、この作り方が効くからです。松は挿し木がまったく付かないので種か接ぎ木になります(黒松の実生)。同じ盆栽の樹でも、素材の作り方はここで分かれます。
実生・取り木・接ぎ木との違い
| やること | 真柏で | できる素材 | 年数 | |
|---|---|---|---|---|
| 挿し木 | 枝を切って土に挿し、根を出させる | よく付く | 親と同じ性質の木。数を作れる | 短い |
| 取り木 | 枝に根を出させてから親から切り離す | 付く | 枝の太さのまま素材になる。1本ずつ | 1年 |
| 実生 | 種をまいて苗から育てる | できる | 性質は親と揃わない | 長い |
| 接ぎ木 | 台木に別の木の枝を接ぐ | できる | 接ぎ目が残る。真柏では出番が少ない | 短い |
挿し木は親のクローンです。 葉性も枝の出方も、切ってきた木のものがそのまま出ます。いい木の枝を挿せばいい素材になり、そうでなければそこまでです。素材の質は、どの木から枝を取るかで半分決まります。
実生は性質が揃わないうえ年数がかかるので、真柏ではあまりやりません。取り木は枝の太さをそのまま使えるので、幹を太らせる年数を飛ばしたいときの手です。
いつ
- 3月 芽が動く前。冬に切った枝を使える。
- 6月から7月 梅雨どき。湿度が高く、挿し穂が乾きにくい。いちばん確実な時期です。
- 9月 秋挿し。暑さが抜けてから。発根は翌春になることが多い。
盛夏と真冬は外します。 真夏は気温が高く、根が無いまま葉から水が出ていくので、発根する前に消耗します。真冬は根が動きません。
剪定の都合で時期がずれることはあります。真柏は付きやすい樹なので、外れた時期でも全滅はしません。ただし成功率は落ちると見ておきます。
どうやる
挿し穂を取る
- 今年伸びた、充実した枝を選ぶ。徒長した弱い枝と、古く硬くなった枝は付きにくい。
- 長さは5〜10cm。長いほど葉から水が出るので、発根前に消耗しやすくなる。
- 下の3分の1から半分の葉を落とす。 土に埋まる部分に葉があると腐ります。真柏は葉をハサミで切ると切り口が茶色く枯れるので、指で下へしごいて落とす。
- 切り口はよく切れる刃で斜めに切り直す。潰れた切り口からは根が出ません。
- 30分から1時間、水に浸けて水を上げる。
- 粉の発根促進剤を切り口に付ける。これは発根を早める薬で、枯れるのを止める薬ではありません。
用土と鉢
赤玉土の小粒を単用します。鹿沼土でも、両方を混ぜても構いません。肥料分の入っていない、清潔な土を使うこと。 発根前の切り口に肥料が当たると傷みます。
鉢は深さのあるプラスチックポットで足ります。1つに何本かまとめて挿して問題ありません。水はけの穴が開いていることを確かめます。この穴が、あとで発根を確かめる窓になります。
挿す
- 割り箸などで先に穴を開けてから挿す。土に直接押し込まない。 切り口が潰れ、付けた発根促進剤も削れます。
- 深さは挿し穂の3分の1から半分。
- 挿したら土を寄せて挿し穂を固定し、鉢底から流れるまで水をやる。
- 挿したあとは動かしません。 揺らすと出かけた根がちぎれます。
挿したあと
置き場所と水
明るい日陰。 直射に当てません。根が無いので水を吸えないのに、日と熱で葉から水が出ていきます。
乾かさない。 ただし常に濡れているのも切り口が腐るので、表土が乾きかけたらやる、を続けます。葉水を併せると乾きにくくなります。
肥料はやりません。 根が出るまで効きませんし、切り口を傷めます。
発根したかを見る
枯れていないことは、成功の証拠になりません。 挿し穂は根が出ていなくても、体内に残った水分でしばらく緑を保ちます。数か月そのままのこともあります。緑だから付いた、とは言えません。
見るのはこの3つです。
- 鉢底の穴。 白い根が覗いていれば発根が確定します。壊さずに見られるのはこれだけです。
- 新芽が動くか。 これが決定的です。根が水を吸えるようになって初めて新しい芽が伸びます。
- 軽く引いて抵抗があるか。ただし引くのは春以降にします。
抜いて確かめるのはしません。 挿し木でいちばんやってはいけないのがこれです。出かけた根は動かすとちぎれ、そこで終わります。
発根が確認できたら、1週間から2週間かけて少しずつ明るい場所へ移し、最後は日向に戻します。真柏は本来よく日に当てる樹で、日陰のままだと徒長して細く弱くなります。急に直射へ出すと葉が焼けるので、段階を踏みます。
冬を越す
発根したばかりの根は浅く、量もありません。凍らせないこと。 霜柱で持ち上げられると根が切れて終わります。軒下、棚の下、簡易のフレームで風と凍結を避けます。
暖かい室内には入れません。 休眠しないまま春を迎えると、翌年の芽が動きません。
鉢上げ
翌春、3月から4月。 動いたものを1本ずつポットに上げます。このとき初めて根が見えます。
根はまだ細いので、土を落とさずそのまま移します。上げたあとは2週間ほど明るい日陰で養生し、根が動き出してから肥料を始めます。
何年で何ができるか
| 年 | やること | 見えるもの |
|---|---|---|
| 1年目 | 挿して発根させる。伸ばすだけ | 根が出たかどうか |
| 2年目 | 1本ずつ鉢上げ。肥料を効かせて伸ばす | 幹が太り始める |
| 3年目から | 針金で模様を付ける。芽摘みを始める | 樹形の方向が決まる |
| 5年目から | ジン・シャリを考えられる太さになる木が出る | 素材としての形 |
黒松を実生から作ると小品の形が見えるまで10年かかりますが、真柏の挿し木はその半分ほどです。挿し穂の時点である程度の太さがあり、真柏自体の伸びも早いためです。
太らせる途中は切りません。 早く形にしようとして切ると、太らないまま細い枝が増えた木になります。
つかない・枯れるとき
- 挿し穂が茶色くなって乾いた。 水が足りなかったか、日に当てた。発根前は日陰と湿度が全てです。
- 土際が黒く柔らかい。 過湿で腐りました。水はけの悪い土か、常に濡らしすぎです。
- 緑のまま何も起きずに春が来た。 発根しないまま貯えが尽きたということです。挿し穂が古い枝だった、切り口が潰れていた、時期が外れていた、のどれかを疑います。
- 杉葉が出た。 挿し木の若い木には出ます。切らずにそのまま伸ばします。 木が落ち着けば鱗葉に戻ります(真柏の年間管理)。
真柏は付きやすい樹なので、条件を大きく外していなければ、何本かは必ず付きます。全滅したなら本数の問題ではなく、置き場所か水か時期のどれかが外れています。
よくある勘違い
枯れていないから付いている。 挿し穂は根が無くても緑を保ちます。1か月や2か月では何も分かりません。
抜いて見れば分かる。 分かりますが、そこで終わります。見るのは鉢底の穴と、春の新芽です。
早く育てたいから日に当てる。 発根前の挿し穂に日は害です。水を吸えないのに蒸散だけ増えます。
肥料を入れておけば根が早く出る。 出ません。切り口が傷むだけです。肥料は鉢上げのあとからです。
太い枝のほうが早く素材になる。 太い枝も挿せますが、発根率は落ちます。確実さを取るなら鉛筆より細い枝です。
関連ページ
- 真柏の年間管理(一年の流れ。根が回れば、あとはここに書いた管理に入る)
- 黒松の実生(松は挿し木が付かないので種から作る。同じ「素材を自分で作る」でも手が違う)
- 杜松の年間管理(同じビャクシン属。杜松も挿し木で増やせる)
- 9月の盆栽の作業(秋挿しができる月。真柏は芽摘みの最後の山)
この作業でやった記録
- 真柏の挿し木。盆栽園で買った木を剪定して出た枝を、8月に30本挿した(2026年8月。定番の時期を外して盛夏に挿した。結果は来春の新芽で数える)