真柏(シンパク)の年間管理
2026年9月2日
真柏で覚えることは3つです。
新芽は指で摘む。ハサミで葉を切らない。 鱗のような葉をハサミで切ると、切り口が茶色く枯れて残ります。伸びた芽先を指でつまんで取る。作りはこの繰り返しです。
杉葉が出たら、木からの合図。 真柏の葉は普段は鱗状ですが、強く摘みすぎたり、太枝を切りすぎたり、弱ったりすると、針のように尖った葉(杉葉)が出ます。出た杉葉は切らず、そのまま伸ばして木を休ませると、鱗葉に戻ります。切るとさらに杉葉が出ます。
葉の無い所まで切り戻さない。 古い枝から芽を吹く力が弱く、葉を残さずに切った枝はそのまま枯れます。杜松と同じです。
作業ごとに、いつ/する・しない/どうやる、の順で書きます。水やりと施肥、病害虫も同じ形で、いつの欄が通年になるだけです。時期は関東平野部の目安です。
どんな樹か
| 項目 | |
|---|---|
| 学名 | Juniperus chinensis var. sargentii |
| 科 | ヒノキ科ビャクシン属 |
| 和名 | ミヤマビャクシン |
| 原産 | 日本(北海道〜九州の高山、海岸の岩場) |
| 葉 | 鱗状で枝に密着する。刺激や弱りで針状の杉葉が出る |
| 樹皮 | 赤褐色で縦に裂けてはがれる。生きた部分(水吸い)が筋状に残る |
同じビャクシン属の杜松は葉が針状で刺さります。真柏は鱗状で触っても痛くない。ここで見分けがつきます。
山の岩場で風雪に耐えて育つので、幹が捻れ、枯れて白骨化した部分(ジン・シャリ)と、生きた樹皮(水吸い)が絡み合った姿になります。真柏の見どころはこの幹で、枝葉はそれを引き立てる役です。葉性のよい系統として糸魚川真柏が知られ、葉が細かく詰まります。
一年の流れ
| 作業 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水やり | △ | △ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | △ |
| 施肥 | ─ | ─ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | ◎ | ○ | ─ | ─ |
| 芽摘み | ─ | ─ | ─ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ─ | ─ |
| 透かし剪定 | ○ | ○ | ○ | △ | △ | ○ | △ | △ | ○ | ◎ | ◎ | ○ |
| 針金かけ | ○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | ✕ | ✕ | ○ | ◎ | ◎ | ○ |
| 剪定(太枝) | ○ | ◎ | ◎ | △ | △ | ✕ | ✕ | ✕ | △ | ○ | ○ | ○ |
| ジン・シャリの手入れ | ◎ | ◎ | ○ | ─ | ─ | ─ | ─ | ─ | ─ | ○ | ○ | ◎ |
| 植え替え | ✕ | ✕ | ◎ | ◎ | △ | ✕ | ✕ | ✕ | ○ | ○ | ✕ | ✕ |
記号:◎ 最適期/○ 適期/△ 控えめ/✕ やると害になる/─ 対象外
松と違って、芽摘みが春から秋まで続きます。杜松と同じ組み立てです。
作業
植え替え
- いつ 3月から4月中旬。秋の9月から10月でもできる。若木は1〜2年、できあがった木は2〜3年に一度。
- する・しない 春が本命。真夏と真冬はしない。根が強く、松より頻繁に鉢が根で埋まる。弱っている木、杉葉が出ている木は見送る。
- どうやる 根鉢を外から1/3ほどほぐし、古い根を整理する。用土は赤玉土主体に砂を混ぜて水はけを効かせる。植え替え後は2週間ほど明るい日陰で養生し、葉水をやる。
芽摘み
- いつ 4月から10月、伸びてきたら随時。最盛期は5月から6月と9月。
- する・しない 真柏の作りはこの繰り返し。放っておくと枝先だけが伸びて、内側の葉が日照不足で枯れ、輪郭が崩れる。摘みすぎない。 一度に全部の芽先を摘むと杉葉が出る。弱っている木、杉葉の出ている木は摘まずに伸ばす。
- どうやる 指で摘む。 輪郭から飛び出した芽先を、指先でつまんで引き抜くように取る。ハサミで葉を切ると切り口が茶色く残る。輪郭の内側にある芽、弱い芽は残す。
透かし剪定
- いつ 10月から3月が本命。生育期は混みすぎた所を軽く。
- する・しない 毎年する。真柏は葉が密になり、内側に日と風が入らないと懐の枝が枯れて、枝先だけの姿になる。
- どうやる 枝の分かれ目で、下向きの枝、上向きの枝、重なった枝、枝の股から出た小枝をハサミで元から抜く。葉を切るのではなく、枝を抜く。 枝の付け根で切れば茶色い切り口は葉に隠れる。
針金かけ
- いつ 10月から3月。太枝の曲付けは休眠期。
- する・しない 真夏は避ける。伸びが早く、1か月で食い込む。水吸い(生きた樹皮の筋)に針金を食い込ませない。 そこが傷むと、その上の枝がすべて枯れる。
- どうやる 枝の太さの1/3ほどの番手を45度で巻く。真柏の枝はしなやかで、太枝も曲がる。大きく曲げるならラフィアを巻いてから、数か月かけて少しずつ。半年に一度は点検し、当たり始めたら外す。ジン・シャリの白い部分は針金を当てない。
剪定(太枝・不要枝)
- いつ 2月から3月が最適。
- する・しない 真夏はしない。葉の無い所まで切り戻さない。 葉を残さずに切った枝は芽を吹かずに枯れる。太枝を一度に何本も抜くと杉葉が出る。
- どうやる 輪郭から飛び出す枝、重なり枝、忌み枝を、必ず葉を残した位置で切る。要らない太枝は切り落とさず、樹皮を剥いでジンにする手もある。
ジン・シャリの手入れ
- いつ 12月から3月。
- する・しない 枯れた部分がある木だけ。新しく作る(生きた枝や幹の樹皮を剥ぐ)のは樹勢の乗った木に限り、水吸いの筋を必ず残す。
- どうやる 白骨化した部分の汚れとコケを歯ブラシで落とし、石灰硫黄合剤を筆で塗る。白さが戻り、防腐になる。生きている部分と鉢土に付けない。屋外で。
水やり
- いつ 通年。春秋は1日1回、真夏は朝夕2回、冬は3〜5日に1回。水を好む。
- する・しない 乾燥するとハダニが出て、葉がくすむ。 生育期は葉水を併せる。日照が足りないと内側から枯れ込む。寒さには強く、冬に葉が茶色や紫がかるのは冬の色で春に戻るが、鉢土の凍結と寒風は避ける。
- どうやる 表土が乾いたら、鉢底から流れ出るまで。置き場所は終日日の当たる、風の通る棚の上。
施肥
- いつ 4月から6月と、9月から10月。真夏は控える。
- する・しない 松柏のなかでは肥料を効かせて作る樹。肥料が切れると芽の伸びが止まり、杉葉が出やすくなる。
- どうやる 有機性の置肥を月に1回取り替える。
病害虫
- いつ ハダニは乾燥した夏。赤星病は春。カイガラムシは通年。
- する・しない ビャクシン属は赤星病の中間宿主。春に枝に寒天状のオレンジ色の塊が出たら、その胞子がナシやリンゴ、ボケなどバラ科に飛ぶ。近くにバラ科の果樹があるなら、見つけ次第その枝を切る。
- どうやる ハダニは葉水と風通しで予防する。カイガラムシは枝の付け根に付くので、透かし剪定のときに見る。
杉葉が出たとき
原因は3つのどれかです。
- 摘みすぎ・切りすぎ。 一度に全部の芽先を摘んだ、太枝を何本も抜いた
- 弱っている。 植え替え直後、根の傷み、日照不足、肥料切れ
- もともと杉葉の出やすい系統。 山採りや実生には、刺激が無くても杉葉が混ざる木がある
出た杉葉は切りません。切るとその刺激でまた杉葉が出ます。そのまま伸ばして木を休ませ、肥料と日照を足すと、翌年には鱗葉に戻ります。杉葉から鱗葉に戻った枝は、それから摘み始めます。
作業別のページ
- 真柏の挿し木(切った枝から素材を作る。真柏はよく付くので、増やすならこれが本筋)
関連ページ
- 杜松の年間管理(同じビャクシン属。指で摘む、葉の無い所まで切らない、赤星病の中間宿主、まで同じ。杜松は葉が針状で、杉葉という形では出ない)
- 黒松の年間管理(松との違い。黒松は年に一度ハサミで切って作り直し、真柏は伸びるたびに指で摘む)
- 9月の盆栽の作業(芽摘みの最後の山、秋の植え替え、透かし剪定の準備)
この樹でやった記録
- 真柏の挿し木。盆栽園で買った木を剪定して出た枝を、8月に30本挿した(2026年8月。定番の時期を外して盛夏に挿した。結果は来春の新芽で数える)