黒松の芽切り
2026年9月2日
芽切りは、春に伸びた新芽(一番芽)を前年の葉の際で切り落とし、二番芽を出させる作業です。 二番芽は葉が短く、節が詰まり、1か所から複数出るので小枝が増えます。黒松を小さく細かく作るときの要で、松のなかでこれが本格的にできるのは黒松と赤松だけです。
時期は6月中旬から7月上旬。 春に新芽の先を摘む「芽摘み」、夏以降に二番芽の本数を減らす「芽かき」とは別の作業です。
やるのは、肥料が効いて、春の新芽が太く勢いよく伸びた木だけ。 植え替えた年の木、弱った木、春に芽摘みをした木、幹を太らせる途中の若木には切りません。年数ではなく、その年の新芽の太さで決めます。
芽摘み・芽かきとの違い
春に伸びる新芽は「ミドリ」と呼びます。芽摘みと芽切りはこのミドリに対する作業で、芽かきはそのあとに出る二番芽に対する作業です。
| 対象 | どうする | 道具 | 時期 | 狙い | |
|---|---|---|---|---|---|
| 芽摘み(ミドリ摘み) | 伸びかけのミドリ | 先を折って短くする。残りはそのまま枝になる | 指 | 4月〜5月上旬 | 節間を詰める、枝の勢いを揃える |
| 芽切り | 伸びきったミドリ | 根元で切り落とす。その年の新芽を捨て、二番芽で作り直す | ハサミ | 6月中旬〜7月上旬 | 葉を短く、小枝を増やす |
| 芽かき | 出そろった二番芽 | 1か所から出すぎた芽を減らす | 指 | 8月〜秋 | 枝の本数と向きを決める |
芽摘みは「途中で止める」、芽切りは「一度出たものを捨てて出し直す」です。芽摘みでは残したミドリが生きたまま枝になりますが、芽切りではその年に伸びたぶんが丸ごと無くなり、切り口の際から出る二番芽で作り直します。捨てるぶん、木の貯えを使います。
芽摘みと芽切りは同じ年に両方やりません。 春に摘んで短くしたミドリを6月に根元から切れば、摘んだ意味が無くなるうえ、二番芽を出す力も足りなくなります。芽切りをする年は、春に摘まずに伸ばして力を溜めておきます。
いつ
6月中旬から7月上旬。関東平野部の目安です。赤松は黒松より1〜2週間早めます。
日付ではなく、ミドリが伸びきって新しい葉が開き始めた頃、が合図です。ミドリがまだ鱗片に包まれて伸びている途中では早い。
大きく作る木ほど早く、小さく作る木ほど遅く切ります。 切ってから二番芽が伸びる期間が長いほど、二番芽は長く強くなります。小品は7月に入ってから切って、二番芽の伸びる期間を短くし、短い葉で詰めます。ただし7月中旬を過ぎると、二番芽が冬までに固まらず、翌年の芽が弱ります。
枝の勢いに差がある木は、時間差を付けます。 弱い枝を先に切り、強い枝は1〜2週間あとに切ります。弱い枝の二番芽に長い期間を与え、強い枝の二番芽は短く抑えることで、木全体の勢いが揃います。強い枝を先に切ると、差が広がります。
する木・しない木
決めるのは、その年の春の新芽の太さと勢いです。年数ではありません。
切れるのは、春から肥料が効いていて、ミドリが太く長く伸びた木です。二番芽を出すには貯えが要ります。貯えの無い木を切ると、二番芽が出ないか、出ても細く、その枝を失います。
次の木には切りません。
- その年に植え替えた木
- 病気や害虫で弱っている木、ミドリが細く短い木
- 春に芽摘みをした木
- 幹や枝を太らせる途中の若木。切れば太りません(理由は後述)
- 前年に芽切りをして、勢いが戻っていない木
完成した木でも、その年の新芽が細ければ切りません。春に軽く芽摘みをするだけにして、回復を優先します。逆に、実生4〜6年生でも、模様が付いていて新芽が太く出ているなら切れます。
木の一部だけが弱いときは、弱い枝を切らずに残して伸ばし、強い枝だけ切る手もあります。ただし残した枝に養分が集まるので、切った枝の二番芽は出にくくなります。
どうやる
春に肥料を効かせておくのが前提です。3月から置肥をして、芽切りの直前まで効かせます。
切れ味のよいハサミで、ミドリの根元、前年の葉の際で切ります。刃は水平に入れます。切り口が斜めだと、二番芽の出方が偏ります。
前年の葉(古葉)を傷つけない。 二番芽は古葉の付け根から出ます。古葉を切ったり傷めたりすると、そこから芽が出ません。
古葉の無い枝や弱い枝では、根元まで切らず数mm残します。 根元まで切ると芽が出ずに枝を失います。
木全体で切るときは、切る枝は全部切ります。一部のミドリを残すと、養分がそちらへ流れて、切った枝の二番芽が出なくなります。残すなら、幹を太らせるために伸ばす犠牲枝として、意図して残します。
切ったあと
肥料を止めます。 切った直後に肥料が効いていると、二番芽が長く伸びて、切った意味が無くなります。二番芽が出そろい、葉が開いて固まってから再開します。8月下旬から9月です。
二番芽は2〜4週間で動き出し、1か所から3〜5本出ます。8月から秋に芽かきをします。 左右に開いた同じくらいの強さの2本をV字に残し、真ん中の芽と飛び抜けて強い芽は元からかき取ります。強い芽を残すと、そこだけ暴れて枝のバランスが崩れます。上下に出た芽も取ります。
11〜12月に古葉を抜きます。二番芽の葉を残し、前年の葉と混み合った葉を抜いて、内側まで日と風を通します。翌春の芽がここで決まります。
二番芽が出ないとき
原因は3つのどれかです。
- 貯えが足りなかった。 春の新芽が細かった、肥料が効いていなかった、植え替えの年だった、前年も切っていた。翌年は切らずに伸ばし、新芽が太く出るようになってから切ります
- 切り方。 古葉を傷めた、古葉の無い枝を根元まで切った、一部のミドリを残して養分を取られた
- 時期が遅かった。 7月中旬を過ぎて切り、二番芽が動く前に成長が止まった
古葉が青く残っていれば、枯れてはいません。その年は動かず、翌春に小さい芽として出ることがあります。翌年は切らずに様子を見ます。古葉まで茶色く枯れ込んだ枝は失っています。
若木に芽切りで枝を増やそうとしない
木は枝を切られると、新しい芽を出すために貯えを使い、そのぶん太りません。黒松の仕立てはこの性質を使い分けます。太らせたい木は枝を伸ばし放題にし、太らせ終わった木は伸びる芯を止めて小枝を詰める。伸ばせば太る、切れば太らない。
「芽切りをしないと枝が分かれないから、小さいうちからやったほうがいい」は逆です。太らせる途中の若木を切ると、太らせる力を削り、二番芽を出す貯えも足りないので出ないか細い。太らず、分かれもしない、が起きます。小枝は力の乗った枝から出るもので、切って作るものではありません。
若木で枝を進めたいなら、切る以外の手を使います。
- 犠牲枝。 強いミドリを数本、わざと伸ばしたままにして幹を太らせ、そのあいだに他の枝で小枝を作る
- 春の軽い芽摘み。 伸びる前に止めるので、芽切りほど貯えを使わない。ただしその年の芽切りは控える
幹を太らせない小品では、若いうちから切って枝数を増やす作り方もあります。目指す大きさで手順が変わります。ここに書いたのは、太らせる途中の木に枝を増やす目的で切るのは逆になる、という話です。
関連ページ
- 黒松の年間管理(一年の流れ)
- 赤松の年間管理(芽切りは黒松より1〜2週間早い)
- 五葉松の年間管理(芽切りをしない。二番芽を出す力が無く、枝を失う)
- もみじの葉刈り(雑木で同じ位置にある作業。出したものを捨てて出し直す考え方は同じ)
- 9月の盆栽の作業(切ったあとの芽かきで残す本数と、肥料を戻す時期)
この作業でやった記録
まだありません。