テスラ(TSLA)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。営業利益4億ドルの四半期に設備投資58億ドル、300億ドルの借入枠を組んだ理由
次の決算は2027年1月27日ごろの見込みです(推定。前年の同じ時期から)。過去の発表日は2026年10月21日、7月22日、4月22日、1月28日。決算日の一覧
順番で来た銘柄です。フィジカルAIの組入4位、7.5%。所長はこの銘柄について何も言っていません。テスラ(Tesla、ティッカー TSLA)は電気自動車の会社として説明の要らない数少ない会社ですが、決算の資料を読むと、会社が自分をそう呼んでいない所から話が始まります。
使うのは、2026年7月22日に出た第2四半期の決算資料(SECに8-Kの添付として出ている Q2 2026 Update、32ページ)、同じ日の10-Q、決算説明会の書き起こし、9月29日の8-K、10月2日に出た第3四半期の納車台数です。第3四半期の決算は明日、10月21日の引け後に出ます。1日早く書くことになりますが、順番なので仕方がありません。
どんな会社か
10-Qの冒頭の事業説明は「FSD(Supervised)やRobotaxiのような製品とサービスを通じて、人工知能を現実世界に持ち込むことに注力している」で始まります。電気自動車を設計して作って売る、という文は、その後に「現在の事業を活用して」という形で出てきます。会社の自己紹介では、車はAIの手段です。
売上はそうなっていません。第2四半期の内訳です。
- 自動車: 売上 205億ドル、構成比 73%、前年比 +23%。車の販売、リース、規制クレジット
- サービスその他: 売上 46億ドル、構成比 16%、前年比 +50%。中古車、保険、整備、スーパーチャージャーの課金
- エネルギー: 売上 31億ドル、構成比 11%、前年比 +13%。Megapack(電力会社向け蓄電池)、Powerwall、太陽光
自動車が4分の3で、AIの売上という行はありません。FSDの月額課金は自動車の売上の中に入っています。有効な加入者は148万人で前年比+56%、北米の新車納車では55%超がFSD付きだと書いてあります。数は増えていますが、金額は分けて出ていません。
第2四半期の数字
- 売上: 282億ドル。前年比 +26%。四半期の過去最高
- 粗利率: 16.8%。前年同期は17.2%
- 営業利益: 4.0億ドル。前年比 -57%。営業利益率1.4%
- 純利益(GAAP): 11.1億ドル。前年比 -5%
- EPS(非GAAP): 0.33ドル。前年比 -18%
- 営業キャッシュフロー: 47億ドル。前年比 +85%
- 設備投資: 58億ドル。前年比 +142%、前四半期の2.3倍
- フリーキャッシュフロー: -11億ドル。2024年第1四半期以来のマイナス
- 現金と短期投資: 435億ドル。前四半期から12億ドル減
- 納車台数: 480,126台。前年比 +25%
売上が過去最高で、営業利益が4億ドル。売上の1.4%です。同じ四半期の受取利息が4.2億ドルなので、本業の営業利益より、435億ドルの現金に付く利息の方が大きい四半期でした。
純利益が11億ドルあるのは、営業外にSpaceX株の評価益10億ドルが乗っているからです。これは後で書きます。
営業利益が減った理由を会社は箇条書きで出しています。プラス側が納車増、サービスの利益増、関税の減少による原価低下。マイナス側が、AIと研究開発とストック報酬(2025年のCEO報酬を含む)による営業費用の増加、規制クレジットの減少、車の平均単価の下落、エネルギーの保証引当(仕入先の電池セルの問題)。研究開発費は24億ドルで前年比+49%、販管費は20億ドルで+45%です。売上が26%伸びて、費用が47%伸びた四半期です。
稼いだ分を全部使って、まだ足りない
この決算で私がいちばん長く見ていたのは、キャッシュフローの表です。
上半期の営業キャッシュフローは86億ドル、設備投資は83億ドル。そして10-Qに「2026年の設備投資は250億ドルを超える見込み」と書いてあります。上半期で83億ドルなら、下半期に167億ドル以上、四半期あたり84億ドル前後を使う計算になります。第2四半期の営業キャッシュフローは47億ドルでした。足りません。
会社もそれを分かっていて、10-Qの流動性の節に「追加の資金調達を含む可能性がある」と一文を足しています。説明会でCFOは「最大300億ドルを借りられる枠を確保しつつある」と言い、9月29日の8-Kでその中身が出ました。
- タームローン(引出は18か月以内、最大10回): 金額 200億ドル、期間 3年。2029年9月満期
- リボルビング: 金額 80億ドル、期間 5年。2031年9月満期
- リボルビング: 金額 20億ドル、期間 364日
合計300億ドル。これまでの枠は50億ドルで、それを解約して6倍に組み直しました。8-Kには「2026年中に引き出す予定はない」とあります。6月末の有利子負債は91億ドルで、そのうち親会社が返済義務を負うのは200万ドルだけ。残りは車のリースなどに紐づく非遡及の借入です。実質的に無借金の会社が、現金を435億ドル持ったまま、300億ドルの借入枠を用意した。
何に使うのか。10-Qの設備投資の説明は、AIのための計算基盤とデータセンター、製造ラインと研究開発施設、自社で運用するAI資産のフリート(つまりRobotaxiの車両)、半導体と太陽光とOptimusの工場です。CFOは説明会で「設備投資は今後2〜3年は増え続ける」と言っています。2026年が250億ドル超で、そこから増える。
営業利益4億ドルの四半期に、設備投資58億ドル。この比率をこの規模でやった会社を、私は他に知りません。できるかどうかではなく、やると決めている会社だ、というのが資料を読んだ感想です。
規制クレジットが消えた
自動車の数字の中で、いちばんはっきり落ちたのがこれです。
規制クレジットの売上は、前年同期の4.4億ドルから1.5億ドルへ、67%減りました。他社がテスラから買う排出枠の売上で、原価がほぼゼロなので、減った分がそのまま利益から消えます。10-Qは「最近の政府の措置が、当社製品に紐づく一部の規制クレジット制度を制限した」とだけ書いていて、どの制度かは書いていません。報道では、米国の7,500ドルのEV税額控除が2025年9月30日で切れたことと、燃費規制の罰金をゼロにした法改正が挙がっています。
規制クレジットを除いた自動車の粗利率は16.3%で、前四半期の19.2%から3ポイント下がりました。前年同期は15.0%なので、1年で見れば上がっていますが、四半期で見れば落ちています。会社は「平均単価の下落、ミックスの影響込み」と書いています。
もう一つ。10月2日に出た第3四半期の納車台数は486,532台で、前年同期の497,099台を2%下回りました。前年の第3四半期は税額控除が切れる前の駆け込みがあった四半期なので、比べる相手が悪いとは言えます。それでも、第2四半期に+25%だった伸びが、第3四半期は前年割れです。生産は464,391台で納車より2万台少なく、在庫を吐いた四半期でもあります。
CEOの報酬が営業費用に出てきた
営業費用が47%増えた理由の一つに、10-Qが「2025年CEO業績報酬」を挙げています。2025年11月の株主総会で承認された、CEOに最大4億2,374万株を渡す制度です。12段階に分かれていて、各段階の条件は時価総額と事業目標の両方です。
- 時価総額の条件は、1段階目が2兆ドル、12段階目が8.5兆ドル
- 事業目標は12個あり、累計納車2,000万台、FSD加入1,000万、ロボット100万台納入、Robotaxi100万台の商用稼働、調整後EBITDA500億ドルから4,000億ドルまで
6月末時点で会社が「達成する可能性が高い」と判断しているのは、累計納車2,000万台の1つだけです。累計納車は今970万台です。この1つ分の費用98億ドルを、今後9.2年かけて営業費用に計上します。第2四半期に計上したのは2.7億ドル。残りの11個は「可能性が高くない」として、費用1,058億〜1,204億ドルがまだ計上されていません。
この数字を書いておきたかったのは、目標が達成されるほど費用が増える構造だからです。Robotaxiが100万台動いた四半期には、その分の報酬費用が営業費用に乗ります。非GAAPの利益はストック報酬を除いて計算するので、そちらには出ません。GAAPと非GAAPのEPSの差は、第2四半期で1株0.29ドル。これから広がります。
書いた日の株価は368ドルで、加重平均の発行済み株式32億株で計算すると時価総額は1.2兆ドルです。1段階目の2兆ドルまで、まだ6割以上あります。
気になっていること
SpaceXです。テスラは2026年3月にSpaceXの普通株に20億ドルを出資しました。持分は1%未満。これが6月末に30億ドルと評価されて、第2四半期に10億ドルの評価益が純利益に入っています。純利益11億ドルのうち10億ドルです。10-Qの注記には「当社のCEOがSpaceXのCEOでもあるため、重要な影響力があると推定される」と書いてあります。
同じ10-Qの関連当事者の注記に、第2四半期にSpaceXがMegapackを3.2億ドル買ったとあります。エネルギー事業の売上31億ドルの1割です。エネルギー事業は「成長に戻った」と決算資料に書いてありますが、前年比の伸び3.5億ドルのうち、3.2億ドルがSpaceXです。前年同期の関連当事者取引は「重要でない」とされています。
もう一つ、言葉の話です。決算資料の冒頭に「Amazing Abundance(素晴らしい豊かさ)をもたらす投資」という句があります。説明会の書き起こしを読んだ限り、この言葉は口頭では一度も出てきません。資料に書くときの言葉と、質問に答えるときの言葉が違う会社だと思って読んでいます。
Robotaxiの数字は、説明会でAI担当副社長が「6都市で38万マイル超の無人走行」と言ったのが唯一の実数でした。148万人のFSD加入者が走った距離と比べると、まだ桁がいくつも違います。決算資料には累計の有料走行マイルのグラフがあるのですが、軸の目盛りしか読めず、値は書いてありません。
10月21日に見る所
- 設備投資。第3四半期に84億ドル前後の水準に乗ったか。乗っていなければ、250億ドル超の見込みが変わる
- フリーキャッシュフロー。2四半期連続のマイナスか。現金が435億ドルからいくら減ったか
- 借入枠を引いていないか。8-Kは「2026年は引かない」と言っているので、引いていたら理由を読む
- エネルギーの粗利率。第2四半期は20.4%で、前四半期の39.5%から半減した。保証引当が一時的だったかどうか。CFOは「長期では20%台前半から中頃に落ち着く」と言っている
- 規制クレジットを除いた自動車の粗利率。16.3%からさらに下がるか
- Optimusの生産開始。「2026年に開始」の文言が残るか
株価は10月19日の終値で368ドル。7月20日の370ドルからほぼ動いていません。3か月のあいだに売上の過去最高と営業利益の6割減と納車の前年割れと300億ドルの借入枠があって、株価は同じ所にいます。
使った資料
- Tesla, Q2 2026 Update(Form 8-K Exhibit 99.1、2026年7月22日)
- Tesla, Form 10-Q(2026年6月30日に終わる四半期)
- Tesla, Form 8-K(2026年9月29日、信用枠の契約)
- Tesla, Q3 2026 Production, Deliveries & Deployments(Form 8-K Exhibit 99.1、2026年10月2日)
- 第2四半期決算説明会の書き起こし(Motley Fool、Mitrade転載)
- Tesla Q2 2026 決算の報道(Electrek、2026年7月22日)
- SEC XBRL companyfacts(四半期の売上と営業利益の系列。図に使用)
組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。
明日の決算が出たら、「見る所」がどうなったかを別の記事に書きます。答えを見てから書く方が楽なのですが、順番で来たのが今日でした。
その後の決算は「テスラ(TSLA)の2026年第3四半期決算を一次ソースで読む。設備投資は47億ドルに減って年間見込みは200億ドルへ、現金は支払いの繰り延べで19億ドル増」で読みました。