TSMC(TSM)の2026年第3四半期決算を読む。売上467億ドルは月次どおり、2ナノが8%になっても粗利率は1.3ポイントしか下がらなかった

過去の発表日は2026年10月15日。決算日の一覧


前の記事を10月10日に出して、5日後の10月15日にTSMCの第3四半期決算が出ました。前の記事の最後に「見る所がどうなったかを別の記事に書く」と書いたので、これがその記事です。

使うのは、10月15日にSECへ出た6-K(プレスリリースと説明会のスライド)、同じ日の決算説明会の書き起こし(TSMCのIRサイトに置かれたLSEG版)の2つです。会社の説明は前の記事に書いたので繰り返しません。半導体の受託製造で、売上の3分の2がデータセンター向け、それだけ分かっていれば読めます。

前の記事で見ると書いた所

前の記事で5つ挙げました。順に答えます。

  • 粗利率は65〜67%のどこに落ちたか: 66.4%。前期の67.7%から1.3ポイント下げ、予想の中央値66%より上。7月に会社が言っていた「2ナノだけで3〜4ポイント下げる」より、下げ幅は小さかった
  • 第4四半期の予想と通年の成長率: 第4四半期の売上予想は523〜543億ドル(前期比+14%)、粗利率65〜67%。2026年通年の成長率は7月の「40%をやや上回る」から「約44%」に上がった
  • 設備投資の600〜640億ドルの枠: 据え置き。第3四半期は138億ドル使った(第2四半期は157億ドル)。2026〜2028年の3年間は「過去3年よりさらに大幅に多くなる」と言った
  • 2ナノの比率: 3%から8%へ。説明会では「2027年に2ナノ系の年間能力を2倍以上にする」
  • CoWoSの能力の数字: 出なかった。CEOは「後工程に少し不足がある」と認め、グローバルファウンドリーズからインターポーザーを調達する契約を説明した。数字は資料に無い

5つのうち、数字が出て当たり外れを言えるのは上の4つ。粗利率は「会社の見積もりが保守的だった」側に出ました。CoWoSは今回も数字で語られず、代わりに「レティクル5倍のサイズを量産していて、9倍と14倍を開発中」という技術の話で返ってきました。

TSMC 四半期の売上と粗利率2025年第2四半期から2026年第3四半期まで、売上は米ドル換算0160320480640800億ドル300.72025Q23312025Q3337.32025Q43592026Q14022026Q2467.22026Q358.6%59.5%62.3%66.2%67.7%66.4%54%63.5%73%売上粗利率出所: TSMC 各四半期の決算プレスリリース(Form 6-K)

今回の決算の数字

  • 売上: 1兆4,942億台湾ドル(467.2億米ドル)。前年比 +50.9%(米ドルでは +41.2%)、前期比 +17.6%
  • 粗利率: 66.4%。前期 67.7%、前年同期 59.5%
  • 営業利益率: 58.7%。前期 60.3%
  • 純利益: 7,631億台湾ドル。前年比 +68.7%、前期比 +8.0%
  • EPS: 29.43台湾ドル(ADR 1株 4.60米ドル)
  • 設備投資: 138億米ドル。四半期で
  • 営業キャッシュフロー: 9,198億台湾ドル。フリーキャッシュフロー 4,766億
  • 手元資金: 4兆台湾ドル(1,260億米ドル)。現金と有価証券

売上の1兆4,942億台湾ドルは、前の記事で月次を3つ足した1兆4,943億とほぼ同じです。四捨五入の差だけで、サプライズはありませんでした。米ドルでは前の記事で「およそ470億」と書いて、実績は467.2億。会社予想の上限458億を2%超えています。

純利益が前期比で8%しか増えていないのは、営業外の利益が958億台湾ドルから346億に減ったからです。営業利益は14%増えています。営業外が何だったかの説明は、プレスリリースにも説明会にもありません。前の期の為替差益の反動だと思いますが、資料に無いのでここまでにします。

2ナノが8%になっても、粗利率は1.3ポイントしか下がらなかった

今回いちばん見たかった所です。

7月の説明会で会社は、第3四半期の粗利率を65〜67%と予想して、2ナノの立ち上げが3〜4ポイント押し下げると言っていました。実際は1.3ポイントの低下で、66.4%。CFOは下げの理由を「主に2ナノの立ち上げによる希薄化」とだけ言っていて、3〜4ポイントの見積もりがどう1.3になったかの内訳は出ていません。

ヒントは別の所にありました。海外工場の希薄化です。7月には「立ち上げ初期で2〜3ポイント」と言っていたものを、今回は「2026年通年で2%に近い」に下げています。理由は会社の規模が大きくなったことと、コスト改善。つまり2ナノの3〜4ポイントの一部を、海外工場の希薄化が小さくなった分と、稼働率と、CFOが説明会で言った「ノードをまたいだ能力の最適化」で埋めた、ということです。

もう一つ、数字を見て気づいたことがあります。ウエハの出荷枚数は12インチ換算で447.6万枚、前期比+3.2%。売上は台湾ドルで+17.6%です。枚数が3%しか増えていないのに売上が18%増えたのは、1枚あたりの単価が上がったからです。2ナノと3ナノの比率が上がったミックスの効果と、値上げの両方が入っているはずで、説明会でもアナリストが値上げについて聞いています。CEOの答えは「価格戦略は市場セグメント、場所、技術による」「米国で作るものは台湾とは少し違う」。否定はしていません。

第4四半期の予想は粗利率65〜67%で、中央値は66.0%。2ナノの立ち上げが「急な」段階に入るのと海外工場の分で、0.4ポイント下がる予想です。2ナノの比率が8%からさらに上がる四半期で0.4ポイントの低下なら、立ち上げの痛みはもう峠を越えつつある、と読みました。

第4四半期は売上533億ドル、前期比14%増

第4四半期の売上予想は523〜543億ドル。中央値で前期比+14%、前年同期比+58%です。第3四半期の実績が467億ドルだったので、1つの四半期で66億ドル積み上がる計算です。

通年の成長率は「約44%」。7月に「40%をやや上回る」に引き上げたばかりで、3か月でまた上がりました。前の記事で「顧客の言い分を割り引いた上で、まだ40%を超える」と書きましたが、割り引いても足りなかった、ということです。

一方で、CEOの原稿には前と違う言葉が入っていました。「消費者向けと価格に敏感な分野は、部品価格の上昇と経済の不確実性で引き続き厳しい」「2027年に向けた事業計画では慎重でいる」。AI向けの需要は「極めて堅調で、鈍化の兆しは見ていない」と言い切った同じ原稿の中にあります。先端は足りない、それ以外は弱い。この二つが同時に書いてある決算でした。

用途別で見ると、HPCが前期比+22%で売上の68%。スマートフォンは+10%で21%。前の四半期に4%減っていたスマートフォンが戻っています。車載は+23%ですが、売上の4%なので規模は小さい。

TSMC 製造プロセス別のウエハ売上構成(2026年第3四半期)3ナノ33%5ナノ28%7ナノ10%2ナノ8%16/20ナノ6%28ナノ6%出所: TSMC 第3四半期決算説明会スライド

工場は20近く建設中、場所はテキサスも

設備投資の枠は据え置きでしたが、工場の話は7月より具体的になっています。CEOが言った数字は「世界で20近い工場が建設中」。台湾で先端と後工程の13棟、海外で5〜6棟。

3ナノの工場を3つ追加します。台南の新工場が2027年前半、台南にもう1つ2028年前半、アリゾナの第2工場が2027年第3四半期で、これは「前の予定より少し早い」。日本の第2工場で3ナノを使う計画は2028年。会社は「ノードが目標の能力に達したら、そのノードには追加投資をしない」のが過去のやり方だったと自分で言った上で、3ナノはその例外にすると言っています。

アリゾナ以外の候補として、テキサスに評価チームを送ったこともCEOが明かしました。顧客の一社が建てようとしている工場(Terafabと名前を出しています)の能力を使えないかも協議中で、「ただし工場はTSMCが運営する」が条件。まだ結論は無いそうです。

A14は2027年にリスク生産、2028年に量産。CEOは「A14への顧客の関心は、同じ時期の2ナノより多い」「A14は2ナノより大きなノードになる」と言いました。2ナノが売上の8%になったばかりの四半期に、次の次の話が「2ナノより大きい」で語られています。

次の決算で見る所

第4四半期の決算は、前回が2026年1月15日だったので、2027年1月中旬のはずです。日付は読んだ資料に出ていません。その前に11月10日ごろに10月の月次売上が出て、12月10日が第2四半期分の配当(7台湾ドル)の権利落ち日です。

  • 第4四半期の売上。523〜543億ドルの予想に対して、月次を3つ足した数字がどこに来るか。10月、11月の月次で先に分かる
  • 粗利率。予想の中央値66.0%に対し、2ナノの比率が上がる四半期でどこまで持つか
  • 2027年の設備投資。「2026〜2028年は過去3年よりさらに大幅に多い」の最初の年の数字が、1月に出るはず
  • 2027年の成長率の見通し。「慎重でいる」と言った上で何%を出すか
  • 2ナノの比率。8%の次

使った資料

株価は書いた日のものです。ADRの終値は決算前日の10月14日が430.00ドル、15日が422.25ドル、16日が412.61ドル、20日が427.92ドルでした。売上が予想の上限を超え、粗利率が中央値を上回り、通年の成長率が上がった決算で、株価は2日で4%下げています。前の記事で「見ているのは別の所だ」と書きましたが、その別の所がどこなのか、今回の資料を読み終えても私にはまだ分かっていません。