スペースX(SPCX)の2026年第3四半期決算を読む。売上146億ドルで黒字転換、AIの売上は3倍、次の設備投資は350〜400億ドル
次の決算は2026年11月3日(米国時間・推定)、日本時間では11月4日の朝です。過去の発表日は2026年10月20日、8月4日。決算日の一覧
スペースX(SPCX)の上場後はじめての決算を一次ソースで読む。売上78億ドルの2割は1社から、設備投資184億ドルの86%はAIのデータセンターを書いたのが10月17日。その3日後の10月20日に、第3四半期(7〜9月)の決算が出ました。前の記事で「11月の上旬だと思っています」と書いた予想は外れで、会社が発表日を告知したのは4営業日前の10月16日です。早すぎて、前の記事を書いた時点では予定が無かった。
フィジカルAIの組入3位、7.5%の会社です。どんな会社かは前の記事に書いたので繰り返しません。
使うのは、10月20日にSECへ出た決算プレスリリース(8-K別紙99.1)と、同じ日の決算説明会の書き起こし、それと報道2本です。第3四半期の四半期報告書(10-Q)は今日の時点でまだ出ていないので、顧客の集中や関連当事者の注記は読めていません。読んだら、前の記事で立てた物差しが、2か月半で小さすぎる物差しになっていました。
前の記事で見ると書いた所
前の記事の末尾に挙げた5つを、今回の数字で答えます。
- AIインフラの売上: 前の記事での見立て 月12.5億ドルの契約が満額で入れば3か月で37.5億ドル。AI事業の売上が40億ドル台に乗っているか。乗っていた、どころではない。AI事業(会社は今回から「SI」と呼ぶ)の売上は75.6億ドル、前期比+195%。うち「ソリューション・インフラ」が70.2億ドル。Cursorの6.1億ドルを除いても64.1億ドルで、前期の21.9億ドルの2.9倍
- 顧客Bの比率: 前の記事での見立て 19.5%からさらに上がるか。67億ドルの新契約の相手は同じ会社か。資料に無い。顧客の集中は10-Qの注記で、10-Qがまだ出ていない。プレスリリースと説明会では「追加のクラウド契約を結んだ」としか言っていない
- 設備投資が180億ドル前後で続いたか。現金はいくら減ったか: 前の記事での見立て 「次の2四半期も同じくらい」というCFOの言葉どおりなら180億ドル前後。当たった。195.9億ドルで、うちSIが164.4億ドル(84%)。現金と有価証券は1,000億ドルから898.6億ドルへ、101億ドル減
- Cursorの連結: 前の記事での見立て 8月14日からの1か月半分が、どの行にいくら入るか。「SIソリューション・インフラ」の行に6.1億ドル。それと株式報酬が四半期で12.2億ドル
- 12月のARR 1,000億ドルへの距離: 前の記事での見立て 12月1か月の売上83億ドルが要る。第2四半期は月平均26億ドル。第3四半期は月平均48.6億ドル。CFOは「12月のARR 1,000億ドルは予定どおり」と言った
3番目の設備投資だけが当たりで、1番目は見立ての方向は合っていたけれど桁の置き方が違っていました。
今回の決算の数字
- 売上: 2026年第3四半期 145.8億ドル、前の期(第2四半期) 78.1億ドル。前年比+161%、前期比+87%
- 営業利益: 2026年第3四半期 27.9億ドル、前の期(第2四半期) -1.4億ドル。営業利益率19.1%
- 純利益: 2026年第3四半期 44.0億ドル、前の期(第2四半期) -5.4億ドル。前年同期は-10.5億ドル。EPSは希薄化後0.35ドル
- 調整後EBITDA: 2026年第3四半期 88.1億ドル、前の期(第2四半期) 35.4億ドル。売上比60%。前の期は45%
- 設備投資: 2026年第3四半期 195.9億ドル、前の期(第2四半期) 183.7億ドル。前年同期は68.8億ドル
- 現金・有価証券: 2026年第3四半期 898.6億ドル、前の期(第2四半期) 1,000億ドル。9月末
- 有利子負債: 2026年第3四半期 388.4億ドル、前の期(第2四半期) 394億ドル。うち129億ドルは関連当事者からのリース
- 受注残: 2026年第3四半期 630億ドル、前の期(第2四半期) 475億ドル。67%は1年以内に売上になる。175億ドルは前受金として計上済み
事業別では、Connectivity(Starlink)が売上52.5億ドルで営業利益23.7億ドル、SIが売上75.6億ドルで営業利益4.3億ドル、Space(ロケット)が売上17.7億ドルで営業損失0.07億ドル。細かく割ると、SIのソリューション・インフラ70.2億ドルの次が、Starlinkの消費者向け31.2億ドル、法人・政府向け21.3億ドル、打ち上げサービス11.3億ドル、打ち上げ・開発6.4億ドル、Xの広告5.4億ドルの順です。前の記事で「儲けているのはStarlinkだけ」と書いた構図は、1四半期で崩れました。SIは黒字化し、Spaceは12回の顧客向け打ち上げで損益がほぼゼロまで戻っています。
ただし純利益44.0億ドルのうち、営業利益は27.9億ドルです。残りの16.1億ドルは、受取利息8.7億ドル、その他収益10.3億ドル、法人税の戻り3.9億ドルを足して支払利息6.8億ドルを引いたもの。その他収益10.3億ドルのうち5.6億ドルは「関連当事者」と注記されていて、中身は10-Qを待たないと分かりません。
2か月半で、設備投資の見通しが2倍になった
前の記事で一番気にしていたのは、売上の2割を払う名前の無い顧客Bと、90日前通知で解約できる契約でした。今回はその話が決算資料に出てきません。代わりに出てきたのは、投資の規模が1段上がった話です。
8月の説明会でCFOのブレット・ジョンセン氏は、設備投資は「次の2四半期も今の四半期と同じくらい」と言っていました。第3四半期は195.9億ドルでそのとおり。ところが今回の説明会で、第4四半期の設備投資は「350〜400億ドル」に変わりました。第3四半期の1.8〜2.0倍です。理由は「今四半期に追加の計算能力が立ち上がるから」。計算能力(ネームプレート)は9月末で1.7GW、10月末に2.2GW、12月末に2.5〜3GWという見通しで、マスク氏は「2027年に10GW追加するのはかなり自信がある」「電力と冷却は2027年に20GW分を目指す」と言っています。8月の「2027年末は5GWより10GWに近い」から、ここも上がりました。
お金の出方で言うと、第3四半期の営業キャッシュフローは96.3億ドル(9か月累計131.0億ドルから上半期の34.7億ドルを引いた値)で、設備投資195.9億ドルの49%。上半期の12%からは大きく改善しましたが、それでも半分です。9か月で前受金が49.2億ドル増えていて、営業キャッシュフローの3分の1以上は顧客の前払いです。CFOは資金源として「営業キャッシュフロー、投資適格の格付けを使った社債、ベンダーと顧客の両側との提携」を挙げていて、説明会のあいだ「投資適格を保つ」と繰り返しました。350〜400億ドルを四半期ごとに使って、現金が898.6億ドルなら、本業と借入が追いつかなければ2四半期で底が見えます。会社はそれを「回収は1年未満だから自分で資金を生む」と説明しています。
計算能力の貸し出し価格は「1ワット当たり30〜50ドルという8月に話したレンジの上限を少し超えている」とCFO。マスク氏は長期契約を結ばず「スポット市場の価格で短期契約にする」方針で、「社内利用と外販を半々にする」「短期契約の更新は、1ワット当たりの単価が上がる方向で来ている」と言いました。前の記事で「約束されているのは次の90日」と書いた契約構造は、会社の側からは「むしろ短期のほうが得」という理屈に変わっています。需要が強いあいだは正しい理屈で、需要が止まった時には逆に回る理屈です。
2027年第1四半期の売上見通し、330〜370億ドル
今回の説明会で一番驚いた数字です。第3四半期の売上が145.8億ドルで、その2四半期先の見通しが330〜370億ドル。月に110〜123億ドルです。CFOは理由を「今後6か月の計算能力の契約パイプラインがはっきり見えてきたから」と言いました。第4四半期の売上の見通しは出ていません。
12月のARR 1,000億ドルは12月の売上83億ドルという意味で、第3四半期の月平均48.6億ドルの1.7倍が3か月後に要ります。それを会社は「予定どおり」と言い、さらにその先の3か月で月110億ドルを超えると言っている。信じるかどうかより、前の記事で「4年で53倍の予測」と書いたマスク氏の数字が、今回は「2027年末のARRは1,000億ドルから1兆ドルのどこか」になっていました。幅が10倍ある予測は、予測とは呼びません。CFOがその直後に「とんでもない前置きのあとで」と言って自分の説明を始めたのが、この説明会で一番まともな場面でした。
Cursorの600億ドルの中身が、少し見えた
前の記事で「600億ドルの買い物の中身は資料では分からない」と書きました。今回のプレスリリースで、株式価値600億ドルのうち、会計上の取得対価は425億ドルで、残りの234億ドルは「買収後の勤務に対する株式報酬」として分けて計上されると出ています。CFOによれば約3年で費用化。第3四半期はその12.2億ドルが費用に入っていて、SIの営業利益4.3億ドルは、これを除くと16.5億ドルです。
Cursorの売上は8月14日から9月末までの1か月半で6.1億ドル。年率にすると約49億ドルで、600億ドルはその12倍です。利益は書いてありません。それと、説明会でCOOのグウィン・ショットウェル氏が「Grokの企業顧客のうち年100万ドル超の顧客はCursorを含めて前期比+50%」と言っていましたが、顧客数そのものは出ていません。
気になっていること
Starlinkの月額ARPUは69ドルで、前期の66ドルから5%戻しました。前年同期の83ドルからは17%減。契約者は1,360万で、1四半期に160万増えました。CFOは「先進国での伸びが主」と言っていて、前の記事に書いた「国が広がると単価が下がる」の逆が1四半期だけ起きています。Connectivityの粗利率55%には関税の還付が約3ポイント入っていて、CFOは第4四半期の会社全体の粗利率は「第2四半期に近い水準に戻る」と言いました。
テスラとの合併は、説明会で聞かれてマスク氏が「両社の取締役会が株主の求めで独立取締役の特別委員会を作った。私は利害関係者なので議論に入れない」「良い考えだと思うが、テスラ側は発行済み全株の50%の賛成が要るので高いハードルだ」と答えました。合併の条件は何も決まっていません。プレスリリースには1行も無く、説明会のQ&Aだけの話です。
株価は10月20日の終値で147.79ドル。前の記事の10月16日の146.03ドルからほぼ動いていません。決算のあとの時間外取引で約5%上がったと報道にあります。発表を聞いてから書くまでの1日で市場が開いていないので、決算への反応はまだ分かりません。
次の決算で見る所
次の発表日は会社から出ていません。今回が10月20日で、告知は4営業日前でした。
- 第4四半期の設備投資が本当に350〜400億ドルだったか。それと現金・有価証券が898.6億ドルからいくら減ったか。借入が増えていれば、その利率
- 第3四半期の10-Qが出たら、顧客Aと顧客Bの比率。今回の資料では読めなかった
- 12月のARR 1,000億ドル。第4四半期の売上が250億ドル前後に無ければ、12月だけで83億ドルは厳しい
- 2027年第1四半期の330〜370億ドルという見通しを、会社が据え置くか変えるか
- Starlinkの契約者とARPU。69ドルへの戻りが1四半期の「顧客構成」で終わるか
使った資料
- SpaceX 2026年第3四半期決算プレスリリース(Form 8-K 別紙99.1、2026年10月20日)
- 同じ8-Kの本文(2026年10月20日)
- 第3四半期決算説明会の書き起こし(Benzinga、2026年10月20日。自動書き起こしなので、数字はプレスリリースで照合しました)
- 決算発表日の告知(2026年10月16日)
- CNBCの決算の実況(2026年10月20日。時間外の株価と合併の話)
- Yahoo Financeの決算の実況(2026年10月20日。市場予想との比較)
前の期の数字は前の記事と同じ資料から引いています。組入比率は投資信託のデータと同じ2026年8月31日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。
前の記事で「売上の2割を1社が払っている」と書いたのが、2か月半で「2四半期先の売上が今の2.3〜2.5倍」の話に置き換わりました。読む側の物差しが追いつく前に、次の数字が来ます。