テスラ(TSLA)の2026年第3四半期決算を一次ソースで読む。設備投資は47億ドルに減って年間見込みは200億ドルへ、現金は支払いの繰り延べで19億ドル増
次の決算は2027年1月27日ごろの見込みです(推定。前年の同じ時期から)。過去の発表日は2026年10月21日、7月22日、4月22日、1月28日。決算日の一覧
2日前にテスラ(TSLA)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。営業利益4億ドルの四半期に設備投資58億ドル、300億ドルの借入枠を組んだ理由を書きました。10月20日に書いて、翌21日の引け後に第3四半期の決算が出ています。前の記事に書き足すのではなく、別の記事にします。
使うのは、10月21日にSECへ8-Kの添付として出た Q3 2026 Update(32ページ)、10月19日に出た委任状(12月3日の株主総会向け)、それと決算直後の報道2本です。10-Qはまだ出ていません。決算説明会は日本時間の22日朝に始まったばかりで、書き起こしも無く、実況で拾えたのは冒頭の発言だけでした。そこは実況と断って書きます。
前の記事で見ると書いた所
- 設備投資が84億ドル前後に乗ったか: 乗っていません。47億ドルで、第2四半期の58億ドルから減りました。1〜9月の累計は130億ドル。前の記事で引いた10-Qの「2026年は250億ドル超」は、今回の資料には一文もなく、説明会でCFOが「設備投資の見込みを200億ドルに改める」と言いました(実況から)。200億ドルなら、第4四半期は70億ドルです。84億ドル前後という私の計算は、250億ドル超を前提にしていたので、前提ごと外れました
- フリーキャッシュフローが2四半期連続のマイナスか: 違いました。+15億ドルです。営業キャッシュフロー63億ドルから設備投資47億ドルを引いた残り。現金と短期投資は435億ドルから454億ドルへ、19億ドル増えました
- 借入枠を引いていないか: 引いていません。親会社が返済義務を負う借入は9月末も200万ドルのままです。財務キャッシュフローに「債務発行費用」4,900万ドルが出ていて、前の四半期は400万ドルでした。9月に組んだ300億ドルの枠の手数料とみられますが、資料に用途は書いてありません
- エネルギーの粗利率: 33.1%。第2四半期の20.4%から戻りました。保証引当は一時的だった、と読めます。ただし売上は28.8億ドルで前年比-16%、資料は「関税に関する顧客への返金」を理由に挙げています。粗利の額は9.5億ドルで、前年同期の10.7億ドルに届いていません。設置量は13.7GWhで前年比+10%なので、量は伸びて金額が減った四半期です
- 規制クレジットを除いた自動車の粗利率が16.3%からさらに下がるか: 下がらず、18.1%に上がりました。会社は地域と車種の構成の改善と、FSDの売上の増加を理由に挙げ、平均単価の下落が一部を相殺したと書いています。規制クレジットそのものは1.1億ドルで前年比-73%。消えたまま戻っていません
- Optimusの生産開始の文言: 「フリーモントの量産ラインで生産を始めた」と書いてあります。「出てきたのは初めての量産品質の個体」とも。ただし説明会の冒頭でCEOは、社外への納入は2027年末になる、Optimusへの期待は抑えたい、と言っています(実況から)
6つのうち、設備投資の読みが大きく外れました。使うと思った四半期に使わず、年間の見込みそのものが下がりました。
今回の決算の数字
- 売上: 280億ドル。前年比-0.2%、前の期は282億ドル。市場予想は281億ドル(stockanalysis.com)で、予想どおりの横ばいです
- 粗利率: 19.6%。前年同期は18.0%、前の期は16.8%
- 営業利益: 7.2億ドル。前年比-56%。営業利益率2.6%、前の期は1.4%
- 純利益(GAAP): 7.9億ドル。前年比-43%。EPSは0.22ドル
- EPS(非GAAP): 0.48ドル。前年比-4%。市場予想は0.45ドル(stockanalysis.com)で、上振れ7%。Zacksの集計は0.22ドルで、これはGAAPのEPSとぴったり同じなので、GAAP基準の予想だったようです。基準が違うので非GAAPとは比べません
- 営業キャッシュフロー: 63億ドル。前年比+0.4%、前の期は47億ドル
- 設備投資: 47億ドル。前年比+110%、前の期は58億ドル
- フリーキャッシュフロー: 15億ドル。前年同期は40億ドル、前の期は-11億ドル
- 現金と短期投資: 454億ドル。前の期から+19億ドル
- 納車台数: 486,532台。前年比-2%。累計1,020万台
- FSDの有効加入: 174万人。前年比+67%。北米の新車納車の75%超がFSD付きで、前の期の55%超から20ポイント上がりました
営業キャッシュフローの中身
63億ドルの営業キャッシュフローは、前年同期と同じ水準です。純利益は14億ドルから8億ドルに減っているので、どこかで埋めています。
キャッシュフロー計算書の運転資本の行を見ると、「買掛金と未払費用の増加」が40億ドル、「前受収益の増加」が13億ドルでした。前の期はそれぞれ19億ドルと2億ドル。仕入先への支払いを遅らせ、顧客からの前受けを増やした分で、53億ドルが入っています。資料に載っている支払サイトは、第2四半期の58日から66日に伸びました。
フリーキャッシュフローの15億ドルは、支払いの繰り延べで作った数字です。それが悪いとは言いません。設備投資を減らして、年間の見込みも250億ドル超から200億ドルに下げて、支払いを遅らせて、現金を19億ドル積んだ。300億ドルの借入枠を組んだ会社が、その直後の四半期に守りに入っている。CFOは説明会で、設備投資は主に営業キャッシュフローで賄い、300億ドルは将来の設備投資のために確保した短期の資金だと言っています(実況から)。前の記事で「やると決めている会社だ」と書いた私の読みより、慎重な会社でした。
売上は横ばいで、中身が入れ替わった
280億ドルという数字は前年と同じですが、内訳は違います。
- 自動車: 206億ドル、前年比-3%。構成比73%
- サービスその他: 46億ドル、前年比+33%。粗利は7.3億ドルで過去最高
- エネルギー: 29億ドル、前年比-16%
自動車の中で、FSDの売上が増えたと資料は2か所で書いています。金額は今回も分けて出ていません。会社は「電池の供給が台数を増やす上での制約になり続けた」「乗用車の受注残は4年で最大」と書いていて、売れないのではなく作れない、という説明です。納車が生産を2万2千台上回って在庫は11日分まで減っているので、数字はその説明と矛盾しません。ただ、作れない会社が平均単価を下げる理由は、資料に書いてありません。
もう一つ、CEOが説明会の冒頭で「2030年頃に年500万台を目指す」と言ったそうです(実況から)。今年の納車は9月までで132万台です。
SpaceXの評価益が評価損になった
前の記事で気にしていた所です。第2四半期の純利益11億ドルのうち10億ドルがSpaceX株の評価益でした。第3四半期は、同じ行が1.4億ドルの評価損です。純利益が8億ドルに減った理由の一つはこれで、本業とは関係がありません。
それより大きい話が資料の外にあります。決算の前日、CEOはSpaceXの決算説明会で、両社の合併は「良い考えだと思う」と言い、両社の取締役会が特別委員会を作ったと述べました(CNBCの報道)。テスラの決算資料には、合併の話は一文もありません。
委任状の関連当事者の節には、2025年にテスラがSpaceXへ車を1.4億ドル、xAI(2026年2月にSpaceXの子会社になった)へMegapackを4.3億ドル売った、とあります。前の記事で書いた第2四半期のMegapack 3.2億ドルも含めて、エネルギー事業の顧客として、SpaceXの系列は小さくありません。合併すれば、この売上は内部取引になって消えます。
次の決算で見る所
次の発表日は資料にありません。前年は1月28日に第4四半期の決算と10-Kが出ているので、同じ頃だと思っています。
- 2026年の設備投資。10-Qに「200億ドル」が書かれるか。書かれていれば第4四半期に70億ドル使う。2027年の見込みが出るか
- 買掛金の増加が続くか。66日に伸びた支払サイトが戻れば、営業キャッシュフローから出ていく
- エネルギーの売上。設置量は増えているので、返金が終われば金額も戻るはず
- Optimusの「2027年末に社外へ納入」が資料の文言になるか
- SpaceXとの合併の特別委員会について、テスラ側から何か出るか
使った資料
- Tesla, Q3 2026 Update(Form 8-K Exhibit 99.1、2026年10月21日)
- Tesla, Form 8-K(2026年10月21日、本体)
- Tesla, 2026 Proxy Statement(DEF 14A、2026年10月19日)
- Tesla Q3 2026 決算の報道(Electrek、2026年10月21日)
- Tesla Q3 2026 決算の報道(CNBC、2026年10月21日)
- 決算説明会の実況(Shacknews、2026年10月21日)
株価は書いた日のものです。10月21日の終値は386ドルで、決算の前日から3%上がっています。時間外は横ばい(CNBC)。説明会の途中でOptimusの話が出た所で380ドルまで下がったと実況にあって、資料より口頭の一言で動く株なのだと思いました。