ドアダッシュ(DASH)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。取扱高331億ドルのうち純利益は0.6%。インスタカート買収の報道で7営業日に13%安

次の決算は2026年11月4日(米国時間・確定)、日本時間では11月5日の朝です。過去の発表日は2026年10月29日、8月5日、5月6日、2月18日。決算日の一覧


順番で来ました。ドアダッシュ(DoorDash、ティッカー DASH)。フィジカルAIの組入9位、4.5%です。所長はこの銘柄について何も言っていません。料理の宅配の会社がなぜ「フィジカルAI」のファンドにいるのか、そこから読み始めました。

使うのは、2026年8月5日の第2四半期決算のプレスリリース(SECに8-Kの添付として出ている16ページのもの)、同じ日の10-Q、2025年通期の10-K、決算説明会の書き起こし、先週末から出ているインスタカート買収の報道です。

どんな会社か

注文を受けて、店から人の所へ物を運ぶ。それを3つのブランドでやっています。米国などの DoorDash、北欧・中欧の Wolt、2025年10月に37億ドルで買った英国の Deliveroo。40か国以上、2025年12月の月間利用者は5,600万人、有料会員(DashPass、Wolt+、Deliveroo Plus)は3,500万人。

稼ぎ方は、1件ごとに店から手数料を取り、客からも配達料とサービス料を取る。それに広告が乗ります。会社は事業セグメントを分けて開示していないので、分けられるのは地域だけです。

  • 米国: 2026年第2四半期の売上34.6億ドル。2025年通期では114.6億ドルで、全体の84%
  • 米国以外: 同じ四半期で10.0億ドル。内訳は Deliveroo が3.8億ドル、残りの国で6.1億ドル。前年の4.6億ドルから倍以上になったのは Deliveroo の分
  • Commerce Platform: 店が自前のサイトで受けた注文を運ぶ「Drive」や、予約管理の SevenRooms。売上の内訳は開示が無い
ドアダッシュ 地域別の売上(2026年第2四半期)米国34.6億ドル米国以外(Deliveroo除く)6.1億ドルDeliveroo3.8億ドル出所: Form 10-Q、決算プレスリリース

直近の決算の数字

2026年第2四半期(4〜6月)です。括弧の中は会社が出している Deliveroo を除いた伸びです。

  • 注文件数: 9.7億件、前年比+27%(+17%)
  • 取扱高(Marketplace GOV): 331億ドル、+36%(+23%)
  • 売上: 44.5億ドル、+36%(+24%)。取扱高に対する比率は13.5%
  • GAAP純利益: 2.0億ドル、前年比-30%。希薄化後EPSは0.46ドルで、前年の0.65ドルから下がった
  • 調整後EBITDA: 9.14億ドル、+40%。取扱高の2.8%
  • フリーキャッシュフロー: 7.42億ドル。直近12か月では21.4億ドル
  • 手元資金: 現金44.2億ドルと投資有価証券18億ドル。転換社債が27.2億ドル
  • 自社株買い: 今年に入って8月5日までに680万株、10.5億ドル
ドアダッシュ 四半期の売上と調整後EBITDAの取扱高比率2025年第1四半期から2026年第2四半期まで01632486480億ドル30.32025Q132.82025Q234.52025Q339.62025Q440.42026Q144.52026Q22.6%2.7%3%2.6%2.4%2.8%1%2.5%4%売上調整後EBITDA(取扱高比、%)出所: 2026年第1・第2四半期決算プレスリリース

取扱高の2.8%しか残らない商売

331億ドル分の食事や食料品が動いて、売上になるのは13.5%、調整後EBITDAは2.8%、GAAPの純利益は0.6%です。会社自身が費用を取扱高に対する比率で書いているので、そのまま並べます。

  • 配達の原価(Dasherへの支払いなど): 6.4%
  • 販売とマーケティング: 2.5%
  • 研究開発: 1.6%
  • 一般管理費: 1.6%

調整後EBITDAが40%増えたのに、純利益が30%減った理由も、この表の外にあります。株式報酬が3.49億ドル(前年2.82億ドル)、減価償却と無形資産の償却が2.95億ドル(前年1.59億ドル)。償却が倍になったのは Deliveroo 買収で計上した無形資産で、2026年通年で約4.5億ドルと会社は言っています。それに法務・税務・規制関連の費用が0.98億ドル。前年の0.29億ドルの3倍です。

調整後EBITDAは、これを全部足し戻した数字です。私は足し戻す前の方を見ます。

会員を増やすと粗利率が下がる、と会社が書いている

プレスリリースで一番長いのは DashPass(有料会員)の話です。直近12か月の米国の有料会員の増加は、その前の24か月の合計より多い。米国の食料品・小売の注文の約75%は会員が出している。

その中に、はっきりこう書いてあります。「DashPass は消費者の手数料を下げるので、注文頻度と継続率は上がるが、会員でない注文より粗利率は低い。顧客の生涯価値が増えるなら、この取引を喜んで受け入れる」。会員が増えるほど1件あたりの利益率は下がる、と自分で言っている。それでも喜ぶ理由は、会員になると注文が増えて辞めなくなるからです。本当かどうかは、会員の増加が止まった時の数字でしか分かりません。

もう一つ。説明会でCFOが、食料品などの新しいカテゴリーは「2026年下期に粗利がプラスになる見込み」と言っています。裏返すと、今まで食料品の配達は1件運ぶごとに粗利の段階で赤字だった、ということです。その注文の75%は粗利率の低い会員の注文です。食料品の黒字化は、会員の値付け次第ということになります。

ロボットとドローン

ファンドが「フィジカルAI」と呼ぶ理由は、たぶんここです。

会社は「Dot」という陸上の配達ロボットと、「DoorDash Air」というドローンを持っています。プレスリリースに書いてあることを全部書きます。Dot は稼働台数と1台あたりの配達件数を増やしていて、年末までに最大のテスト市場(説明会によるとフェニックス)で注文の「一桁台後半のパーセント」を運ぶ見込み。Air は連邦航空局から Part 135 の航空運送事業者の認証を取った。そして、「Dasher が物流網の背骨であり続ける期間は、とても長い」。

台数も1件あたりの費用も書いてありません。説明会でアナリストが Dot の採算を聞いていますが、答えは「進み方は指数関数的」「天井を決めるのは実行」で、数字は出ていません。研究開発費が前年比+52%、前の四半期から+34%と急に増えていて、会社はその理由を「人件費と外部ソフトウェア費」とだけ書いています。

1つの都市で一桁台後半のパーセント、が今の実績です。ファンドの組入9位に置かれるほどのフィジカルAIかどうかは、資料からは判断できませんでした。

気になっていること

先週の金曜日、10月23日に The Information が「インスタカートが売却を検討していて、ドアダッシュとウーバーと予備的な協議をした」と報じました。同じ日の夜に Bloomberg が「ウーバーは協議から降りた」と伝えています。残ったのはドアダッシュだけです。株価はその日に3.5%、週明けの10月26日にさらに6.1%下げて168.44ドル。10月15日の193ドルから7営業日で13%下です。

インスタカートの時価総額は報道の時点で131億ドル。買収の上乗せを3〜4割とすれば160〜170億ドル、というのが The Information の試算です。ドアダッシュの手元資金は投資有価証券を入れて62億ドル、転換社債を引けば35億ドル。今年もう10億ドルを自社株買いに使っています。現金では買えません。株で買うなら希薄化、借りるなら利払い。2025年に Deliveroo を37億ドルで買って、その償却で純利益が削られている最中に、その4倍以上の買い物です。会社は何も言っていません。市場は2日で9%下げて先に反応しました。

それとは別に、会社が自分で「下がる」と言っている所があります。第4四半期の調整後EBITDAの取扱高比率は第3四半期から下がる。理由は、冬場の Dasher の費用の増加、保険料の年次の値上がり、そして新しい技術基盤とロボットへの投資。2026年のフリーキャッシュフローは、加盟店への支払いのタイミングが年末にずれる分で7〜8億ドル減る、とも書いています。

法務費用0.98億ドルの中身は書いてありません。10-Qには、カリフォルニア州の雇用開発局が Dasher の個人事業主扱いについて2023年に課税処分を出し、会社は争いながら引当金を積んでいる、とあります。金額は非開示です。あと、9月18日に法人登記をデラウェア州からネバダ州に移しています。8-Kには事業への影響は無いとあります。

次の決算で見る所

第3四半期の決算は11月4日の米国市場の引け後、日本では11月5日の朝です。会社予想は取扱高330〜340億ドル、調整後EBITDA 9.5〜11.0億ドル。結果は別の記事で書きます。

  • Deliveroo を除いた取扱高の伸び。第2四半期は+23%。第4四半期からは前年の数字にも Deliveroo が入り、上乗せが消える
  • 第4四半期の予想。EBITDA比率がどれだけ下がるか
  • 食料品などの新しいカテゴリーが「下期に粗利プラス」になったかどうか
  • フェニックスで Dot が運んだ割合
  • 法務・税務・規制の費用が0.98億ドルから戻るか。インスタカートについて会社が何か言うか

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年9月30日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

読み終わって残ったのは、ロボットの話ではなく、取扱高の0.6%という数字でした。

その後の決算は「ドアダッシュ(DASH)の2026年第3四半期決算。インスタカート買収170億ドルの契約書に、議決権ゼロのClass C株で払う選択肢と、独禁法で止まれば12.5億ドルの違約金」で読みました。