アイオンキュー(IONQ)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。売上は4倍、粗利率は6割から25%へ、15か月で3回のワラント付き増資

次の決算は2026年11月5日(米国時間・確定)、日本時間では11月6日の朝です。過去の発表日は2026年8月5日、5月6日、2月25日、2025年11月5日。決算日の一覧


順番で来た銘柄です。フィジカルAIの組入6位、4.7%。量子コンピューターの会社がフィジカルAIのファンドに入っている理由は、ファンドの月次レポートからは読み取れませんでした。所長はこの銘柄について何も言っていません。

使うのは、2026年8月5日の第2四半期決算のプレスリリースと決算説明会の書き起こし、8月10日に出た四半期報告書(10-Q)、2025年の年次報告書(10-K)、それと9月と10月に続いた3本の8-K(通期予想の引き上げ、Elisity買収、20億ドルの増資)です。株価の動きについては報道を1本だけ使います。

どんな会社か

イオントラップ方式の量子コンピューターを作って売る会社です。2021年にニューヨーク証券取引所に上場、本社はメリーランド州カレッジパーク、2025年末の従業員は1,132人。

稼ぎ方は2つに分けて開示されています。

  • 量子ハードウェア: 量子コンピューター本体の販売。第2四半期の売上4,647万ドル、全体の58%。韓国のKISTIとスイスのQuantumBaselに第5世代機「Tempo」を納めたのがこの四半期の中心
  • プラットフォーム・コンサルティング・サポート: クラウド経由の計算時間の販売(AWS、Azure、Googleの3つから使える)、量子鍵配送(QKD)などのセキュリティ製品、センサー、衛星からのデータ販売。3,358万ドル、42%

顧客の所在地を百万ドル単位で分けると、米国38.2、韓国17.8、その他の海外15.2、スイス8.8。米国外が半分を超えたのはKISTIとQuantumBaselの納入が重なったからで、CFOも「この四半期は特に高い」と言っていました。

セグメントは1つで、「計算機でいくら、セキュリティでいくら」は資料からは分かりません。

目立つのは、この1年半で買った会社の数です。2025年に6社を合計26.6億ドルで、うち25.4億ドルは自社株で買いました。2026年7月31日には米国の半導体受託製造SkyWater Technologyを約18億ドルで買い終え、10月12日にはゼロトラスト・セキュリティのElisityを全株式交換で最大13億ドルで買うと発表しました。6月末の総資産67.8億ドルのうち、のれんが21.9億ドルです。

アイオンキュー 顧客所在地別の売上(2026年第2四半期)米国38.2百万ドル韓国17.8百万ドルその他海外15.2百万ドルスイス8.8百万ドル出所: Form 10-Q

直近の決算の数字

2026年第2四半期(4〜6月)、SkyWaterを含まない数字です。

  • 売上: 8,005万ドル、前年比+287%。会社予想の中央値を20%上回った
  • 売上原価(減価償却を除く): 6,011万ドル。売上の75%
  • 営業損失: 3.37億ドル。研究開発費1.61億ドル、一般管理費1.18億ドル、株式報酬は費用全体で1.42億ドル
  • 純損失: 18.68億ドル、EPSは-5.08ドル。うち16.49億ドルはワラントの評価損(後述)
  • 調整後EBITDA: -1.20億ドル。前年同期は-0.37億ドル
  • 残存履行義務(受注残、RPO): 4.85億ドル。1年前は1.22億ドル。約半分を今後12か月で売上にする見込み
  • 現金と投資: 29.6億ドル(6月末)。SkyWater買収で10.6億ドルを使い、会社の言い方で「プロフォーマ20億ドル」
  • 上半期の営業キャッシュフロー: -2.55億ドル

通期の売上予想は、5月に2.6〜2.7億ドル、8月に2.8〜2.9億ドルと上げ、9月8日の投資家説明会でSkyWaterの8〜12月分を足して4.5〜4.6億ドルになりました。差の1.7億ドルがSkyWaterの5か月分ということになります。

アイオンキュー 四半期の売上と粗利率2026年第2四半期まで。粗利率は売上原価(減価償却を除く)から筆者が計算。SkyWaterは含まない0306090120150百万ドル7.62025Q120.72025Q239.92025Q361.92025Q464.72026Q180.12026Q243%60%47%30%24%25%6%42%78%売上粗利率(減価償却除く原価で計算)出所: Form 10-Q、Form 10-K、SEC XBRL

粗利率は、6割から25%に落ちている

ここが、私が一番長く見ていた所です。

この会社は粗利益を開示しません。損益計算書に「売上原価(減価償却を除く)」があるだけで、プレスリリースにも説明会にも「粗利率」という言葉は一度も出てきません。なので自分で引きました。

四半期の売上を百万ドル単位で並べると、2025年第1四半期から順に7.6、20.7、39.9、61.9、64.7、80.1。売上から売上原価(減価償却を除く)を引いた率は、43%、60%、47%、30%、24%、25%です。売上が4倍になった1年で、粗利率は6割から4分の1に落ちました。

10-Qの説明は1文です。「契約を履行するための人件費の増加と、量子製品の材料費の増加」。売上の中心がクラウドの計算時間から、機械そのものを作って運んで据え付ける仕事に移ったので、原価の重い売上に入れ替わった、と読めます。CFOは説明会で「クラウド経由の計算サービスは非常に高い利益率の事業」と言っていましたが、その比率は言っていません。

増資の仕組みと、18億ドルの「損失」

この会社は2025年7月、2025年10月、2026年10月と、15か月で3回、J.P. Morganを単独の引受人として大型の増資をしています。3回とも同じ形で、普通株に加えて、7年間有効のワラント(決まった価格で株を買う権利)を無償で付けています。

回 株の価格 調達額 ワラント行使価格
2025年7月 55.49ドル 9.8億ドル 99.88ドル、3,604万株
2025年10月 93.00ドル 19.8億ドル 155.00ドル、4,301万株
2026年10月 40.00ドル 20.0億ドル 69.46ドル、1億株

このワラントは会計上「負債」として貸借対照表に載り、四半期ごとに時価で評価し直します。株価が上がるとワラントの価値が上がって負債が膨らみ、損失が出る。株価が下がると利益が出る。第1四半期は10.6億ドルの「利益」、第2四半期は16.5億ドルの「損失」でした。6月末のワラント負債は30.5億ドルで、純資産33.4億ドルとほぼ同じ大きさです。

CFOは「事業の実態を映していない」と言い、それはそのとおりです。ただ、株価が行使価格を超えるとワラントが行使され、会社に現金が入る代わりに株数が増えます。6月末の発行済み株式は3.81億株で、ワラントだけで1.8億株分が外に出ています。

10月14日の増資は、前日終値34.73ドルに対して40ドルで売ったので、売った価格そのものは市場より高い。それでも当日の株価は9.5%下げました。2025年10月と2026年10月の買い手はHeights Capital Managementという1社だと報道されていますが、8-Kには買い手の名前はありません。

SkyWaterで何が変わるか

買収の理由は、CEOの説明ではひとつです。イオントラップの制御をレーザーから電子制御(2025年9月に買ったOxford Ionicsの技術)に替え、量子チップを半導体の工程で量産する。その工場を自社で持つ。SkyWaterは米国内だけに工場を持つ受託製造で、IonQはすでに最大の顧客だったそうです。

IonQは2026年にSkyWaterへ約1.2億ドルを払う予定だった。買収後はこれが連結で消える。SkyWaterの2026年売上をアナリストは約6.1億ドルと見ていたので、その2割がIonQからの支払いだったことになります。

CEOが繰り返していたのは「マーチャント・サプライヤー」という言葉で、SkyWaterの工場を競合の量子企業にも開放する、どの方式が勝ってもIonQが作る、という話でした。

気になっていること

競合について、10-Kは超伝導方式のGoogle、IBM、光子のPsiQuantum、同じイオントラップのQuantinuumなどを名指しで挙げ、「競合からの矛盾したマーケティングが顧客を混乱させることがある」と書いています。説明会でCEOは「当社は量子セクター全体の売上の半分を占めているはず」と言いましたが、資料にその根拠はありません。

「オーガニック成長」の定義も読み直しました。プレスリリースの脚注によると、オーガニック売上とは量子コンピューター製品と「2024年12月31日より前の買収」から来る売上のことで、2025年以降に買った6社は入りません。第2四半期のオーガニック成長132%は計算機事業の伸びで、全体の287%との差の大半が買収で足された分です。

10-Qの流動性の項は「6月末の現金と投資は今後12か月の運転資金と設備投資に十分」と書いています。その2か月後に20億ドルを増資し、その2日前に最大13億ドルの株式交換で会社を買っています。十分なら、なぜ、とは思います。

10月23日の終値は31.27ドル、52週高値は73.65ドル。1年前に93ドルで増資に応じた投資家は、155ドルのワラントを持ったまま、株価が3分の1になるのを見ています。

次の決算で見る所

第3四半期の決算は、昨年は11月5日でした。今年の日程は書いた日の時点で発表されていません。SkyWaterを2か月分含む初めての四半期です。

  • 粗利率。半導体受託製造の原価構造が混ざるので、「売上原価(減価償却を除く)」の率が25%からどう動くか。会社は言わないので自分で引く
  • 合算した通期予想4.5〜4.6億ドルの維持。SkyWaterの5か月分として逆算した1.7億ドルが、連結消去後の実力かどうか
  • RPO。4.85億ドルがSkyWaterの受注残を足してどこまで増えるか。AndurilとSandiaの覚書は「RPOに1ドルも入っていない」とCFOが明言していたので、契約に変わったか
  • ワラント評価損益。株価が6月末から下がっているので、第3四半期は「利益」が出るはず。黒字になっても事業の数字ではない、と先に書いておきます

結果は別の記事で書きます。

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年9月30日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

売上が4倍になった会社の決算で、一番知りたかった「1台売るといくら残るか」が、どこにも書いてなかった。それが今回の記録です。