半導体はどうなっちゃうの?日経平均-1,369円の中身と、まだ増えている設備投資。キオクシアのPER4倍は安いのか、マイクロンの2018年度で考える
10月30日の日経平均は前日比1,369円安の63,290円で終わりました。取引時間中には1,948円安まで下げています。半導体の株が大きく売られた日で、「半導体はもう終わりなのか」と不安になった人も多いと思います。このブログでは10月に入って、半導体を買う会社、作る会社、作る道具を売る会社の決算を20社近く読んできました。その数字を並べ直して、いま何が起きているのかを整理します。株価がこれからどうなるかの予想や、売り買いの判断は書きません。
株価は日本・韓国・台湾の会社が10月30日の終値、米国と欧州の会社が10月29日の終値です。東京エレクトロン、レーザーテック、キオクシアは30日の取引が終わったあとに決算を出したので、30日の終値は決算の前の値段です。
要点
- 日経平均の下げは、ほぼ数社の分。 7社の値下がりだけで、日経平均の下げ幅の約95%になる計算です(日経平均の算出のルールから自分で計算した値)。日経平均は株価の高い銘柄の影響を受けやすい指数です
- 半導体に流れるお金は、まだ増えている。 クラウド4社の7〜9月の設備投資は前年比+84%。TSMCの1〜9月の売上は前年比+41.1%
- 株価が下がるのは、伸びが鈍ることへの反応。 ラムリサーチは過去最高の決算の翌日に11.8%下げ、インテルは次の四半期の売上予想が7〜9月を下回って、時間外で23%下げた
- メモリの値上がりは続いているが、鈍っている。 汎用DRAMの契約価格の上がり方は、1〜3月の前期比+90〜95%から、10〜12月は+10〜15%の見通しに
- キオクシアのPER4倍は、利益の山を4倍した数字。 マイクロンは2018年度に利益の山でPER4.6倍、そこから2年で1株利益が79%減った。メモリの株は、どこも「この利益は続かない」という値段が付いている
10月30日、何が起きたか
日経平均は、225銘柄の株価に「株価換算係数」を掛けて足し、「除数」で割って出す指数です。日経自身が、価格の指数なのでハイテク株などの値がさ株の影響を受けやすい、と説明しています。9月30日時点のウエートは、アドバンテストが12.4%、東京エレクトロンが8.9%、ファーストリテイリングが8.5%、ソフトバンクグループが7.7%で、上位5社で40.1%を占めます。
この日の値下がりを、前日比の値幅×株価換算係数÷除数で計算すると、アドバンテストが-468円、東京エレクトロンが-263円、ソフトバンクグループが-230円、イビデンが-202円でした。キオクシア、レーザーテック、ディスコを足した7社で-1,305円、日経平均の下げ幅1,369円の約95%です。ファーストリテイリングは+2.1%で、日経平均を125円押し上げています。指数の下げ幅ほど、日本株の全体が崩れたわけではありません。
イビデンは15.2%安で、制限値幅いっぱいの1,500円安、ストップ安の8,359円で引けました。28日に決算と上方修正を出し、29日は高値で+6.4%まで上がったあとの下げです。
半導体に流れるお金は、減っていない
半導体の売上のもとをたどると、AIのデータセンターを建てているクラウドの会社に行き着きます。
7〜9月の設備投資は、マイクロソフトが452億ドル、アルファベットが514億ドル、メタが349億ドル、アマゾンが773億ドル。4社で2,087億ドル、前年同期の約1,132億ドルから+84%です。ただし定義がそろっていません。マイクロソフトとメタはファイナンス・リースを含み、アルファベットとアマゾンは現金で払った分です。マイクロソフトの前年同期は、会社が言う前年比+30%から逆算した概算です。
2026年の見通しは、マイクロソフトが約1,700億ドル(1,750億ドルから下げた。外部のデータセンターの引き渡しが遅れたため)、アルファベットが1,950〜2,050億ドル、メタが1,350〜1,450億ドル、アマゾンが約2,200億ドル。真ん中で足すと約7,300億ドルです。2027年について、アルファベットとアマゾンは「大幅に増える」と言い、メタはまだ計画を作っている段階で数字を出していません。4社とも2027年の金額は出していないので、ここから先は会社の言葉しかありません。調査会社のTrendForceは、大手クラウド9社の2027年の設備投資の伸びの予想を+50%から+60%に上げています。
作る側の数字も同じ向きです。TSMCの9月の売上は前年同月比+54.65%、1〜9月の累計は+41.1%。10〜12月の売上予想は523億〜543億ドルで、2026年の設備投資の枠600億〜640億ドルは据え置き、2026〜2028年は過去3年より大幅に多くなると説明しています。TSMCの10月の月次売上は11月10日に出ます。
それでも株価が下がる理由
好決算でも株価が下がった例が、この2週間に続きました。
ラムリサーチ(製造装置の米国の大手)は、7〜9月の売上が82.2億ドルで過去最高、前年比+54%でした。10〜12月の予想は86億ドルで、前の四半期からは+4.6%にとどまります。翌日の株価は11.8%安。その後、10月29日には254.39ドルまで戻しています。
インテルは、7〜9月の売上・利益が会社予想を上回った一方、10〜12月の売上予想150億〜160億ドルは7〜9月の165億ドルを下回りました。PCの在庫の調整が理由です。時間外取引で23%下げました(売買の少ない時間帯の値です)。インテルの決算は別の記事で読んでいます。
株価は、今の利益よりも、次の四半期にどれだけ伸びるかで動きます。製造装置の株には、実績PERで30〜40倍台の値段が付いています(後の表)。高い値段は、高い伸びが続く前提です。伸びが鈍る見通しが出ると、利益が増えていても売られる。10月30日に起きたのは、需要が消えたことへの反応ではなく、伸び方の鈍化への反応だと私は見ています。
メモリは別の動き方をする
メモリ(DRAMとNANDフラッシュ)は、製造装置やロジック半導体とは値段の動き方が違います。TrendForceの汎用DRAMの契約価格の見通しは、1〜3月が前期比+90〜95%、4〜6月が+58〜63%、7〜9月が+13〜18%、10〜12月が+10〜15%。各回の中央値を積み上げると、2025年10〜12月から約4.0倍です。NANDは同じ計算で約3.6倍。値上がりは続いていますが、上がり方は落ちています。
その結果、メモリの会社の利益率はそろって80%前後まで来ました。SKハイニックスの7〜9月の営業利益率は80%、キオクシアは80.4%、マイクロンの6〜8月の粗利率は87.0%、サンディスクの7〜9月の粗利率は85.0%です。
10月30日の夜に出たキオクシアの決算は、7〜9月が売上2兆4,800億円、営業利益1兆9,947億円で、7月の会社予想をそれぞれ3.8%、5.5%上回りました。10〜12月の予想は売上2兆5,000億円(+0.8%)、営業利益1兆9,950億円で、7〜9月と同じ水準です。データセンター向けの需要は強いが、為替の前提を、7〜9月の1ドル161円から157円に置いた、という説明です。
2027年の見通しは、DRAMとNANDで分かれています。TrendForceは、DRAMは2027年も供給が需要に追いつかず、新しい工場が本格的に効くのは2028年と見ています。NANDは2027年後半に新しい生産能力が立ち上がり、値下がりの圧力が強まる見通しです。中国のメーカーの生産が増え、NANDの世界の生産に占める中国の割合は2027年に19%近くになると予想しています。
キオクシアのPER4倍は安いのか
キオクシアの10〜12月の会社予想の1株利益は851.11円(分割後)です。4倍すると3,404円で、10月30日の終値13,470円で割るとPERは約4.0倍。成長が続くなら、確かに激安に見えます。ただ、この4倍という数字は、利益率80%の四半期をそのまま4倍したものです。
同じ計算を、メモリ以外とも並べます。比べやすいように、直近12か月の実績の1株利益で割ったPERにそろえました。
| 会社 | 実績PER | 直近の年換算PER | PBR |
|---|---|---|---|
| キオクシア | 8.1倍 | 4.0倍(10〜12月予想) | 7.3倍 |
| SKハイニックス | 5.3倍 | 6.3倍(7〜9月実績) | 3.8倍 |
| サンディスク | 10.7倍 | 5.9倍(10〜12月予想) | 10.6倍 |
| マイクロン | 12.6倍 | 6.2倍(9〜11月予想) | 7.6倍 |
| 東京エレクトロン | 30.5倍 | 24.9倍(通期予想) | 9.9倍 |
| アドバンテスト | 44.0倍 | 33.9倍(通期予想) | 22.0倍 |
メモリの会社はどこもPERが低く、製造装置やエヌビディア、TSMCは20〜50倍台です。市場は、メモリの利益は山で、装置やロジックの利益は伸び続ける、という値段を付けています。キオクシアだけが安いのではなく、メモリの会社がまとめて同じ扱いを受けています。
マイクロンの2018年度
メモリの株で、利益の山のときにPERが低く見えた例があります。
マイクロンの2018年度(9月初めまでの1年)の1株利益は11.51ドルで、年度末の株価52.76ドルでPERは4.6倍でした。翌2019年度の1株利益は5.51ドルで52%減、2020年度は2.37ドルで2018年度から79%減りました。2018年度末の株価を、実際に出た翌年の利益で割り直すとPERは9.6倍、2年後の利益なら22.3倍です。4.6倍は、そのあとの減益を値段にすでに入れた数字で、見た目ほど安くはありませんでした。株価は2018年度末から2019年度末に15%下げています。
今回は前と何が違うか
違う点もあります。
- 契約で先の数量を決めている。 サンディスクは、顧客と数年分の数量を決める契約で、まだ売上になっていない分が598億ドルあります(サンディスクの記事)。マイクロンも同じ形の契約が2030年までの売上の35%超です(マイクロンの記事)。値段が下がる局面で、この契約がどこまで効くかはまだ試されていません
- 買い手がAIのデータセンター。 TrendForceは、大手クラウドの設備投資に占めるDRAMとNANDの割合が2026年の47%から2027年は68%になると見ています。2018年のころの主な買い手はスマホとPCでした
- 同じ点もある。 新しい工場が立ち上がれば供給は増えます。NANDの2027年後半の見通しは、まさにその形です
PER4倍が安いかどうかは、10〜12月の利益が2027年、2028年にどれだけ残るかで決まります。今の値段は「かなり減る」に賭けた値段です。減らなければ安く、マイクロンの2018年度のように減れば安くありません。どちらになるかの答えを、私は持っていません。持っているのは、確かめる日程のほうです。
これから何を見ればいいか
| 日付 | 何が出るか | 何を見るか |
|---|---|---|
| 11月10日 | TSMCの10月の月次売上 | 前年同月比の伸びが50%前後を保つか |
| 11月18日朝 | エヌビディアの8〜10月期決算 | 次の四半期の売上予想の伸び |
| 年明け以降 | クラウド4社の10〜12月期決算 | 2027年の設備投資の金額(4社ともまだ出していない) |
| 四半期ごと | TrendForceのメモリ価格の見通し | DRAMとNANDの値上がり幅がさらに縮むか、マイナスになるか |
メモリの会社では、キオクシアの次の会社予想(1〜3月)が、10〜12月と同じ水準を保つかが最初の手がかりになります。
使った資料
- マイクロソフト、アルファベット、メタ、アマゾン: 2026年7〜9月期の決算発表、10-Q、説明会の書き起こし
- TSMC: 月次売上(台湾証券取引所の公開情報)、2026年7〜9月期の決算と説明会
- TrendForce: DRAM・NANDの契約価格の見通し(2026年1月、2月、3月、7月、9月の発表)、クラウドの設備投資とメモリの需給の見通し
- ラムリサーチ、インテル、マイクロン、サンディスク、SKハイニックス、サムスン電子、エヌビディア、ASML、アプライドマテリアルズ、KLA: 決算発表、10-K、10-Q
- キオクシア、アドバンテスト、東京エレクトロン、レーザーテック、ディスコ、イビデン: 決算短信、決算説明資料
- 日経平均: 日経の算出要領、株価換算係数、除数、ウエート(9月30日時点)、よくある質問
- 株価: Yahoo!ファイナンス(日足)、東証の制限値幅
- 寄与度とPERは、上の資料から私が計算した値です