バーティブ(VRT)の2026年第3四半期決算を読む。売上43.1億ドル、前年比+61%で会社予想の上限を4.6億ドル超え。詰まっていた供給網は、流れ始めた
次の決算は2027年2月10日ごろの見込みです(推定。前年の同じ時期から)。過去の発表日は2026年10月28日、7月29日、4月22日、2月11日。決算日の一覧
バーティブ(VRT)の2026年第2四半期決算を一次ソースで読む。受注残150億ドル、前受金は半年で倍。それでも売上は予想の下限で、詰まったのは自社の供給網を書いたのが10月21日です。その1週間後、10月28日の寄り付き前に第3四半期の決算が出ました。前の記事は「供給網の詰まりが一時的かどうかは、この四半期の売上を見れば分かる」という所で終わっていたので、同じ日に読みます。
使うのは、SECに出た第3四半期決算のプレスリリース(8-K)、同じ週に出たUIG買収完了とKing Environmental Services買収完了の発表(それぞれ8-K)です。決算説明会は日本時間で29日の午前0時からで、この記事を書いている時点でまだ始まっていません。説明会前に出るはずのスライドも、IRサイトにまだ上がっていませんでした。10-Qも未提出です。なので今回は、リリースの本文と財務諸表だけで読みます。
前の記事で見ると書いた所
- 売上が36.5〜38.5億ドルに入るか: 入りませんでした。上に外れています。43.1億ドル、前年比+61%で、会社予想の上限を4.6億ドル超えました。自力の成長率は55%。予想は34〜36%でした。第2四半期の「一時的なずれ」は戻ってきただけでなく、その上に積まれています
- 受注残の数字を出すか: 出していません。リリースにあるのは「自力の受注が前年比で100%超の伸び」という言い方だけで、金額は無い。スライドに載る可能性はありますが、書いている時点で見られません
- 前受収益が36.3億ドルから増えているか: 増えています。9月末で41.2億ドル。四半期で4.9億ドルの増加で、第2四半期の11.7億ドルからは鈍りました。年初の18.1億ドルからは2.3倍です
- 欧州・中東・アフリカの自力の成長率: +19%。第3四半期の会社予想は10%台半ばでしたから、こちらも上です。売上は5.4億ドル、前年比+23%
- UIGの買収が第4四半期に閉じるか: 閉じました。決算の前日、10月27日に完了の発表が出ています。前払いの現金約14.5億ドル、上乗せは最大11.5億ドルのまま
今回の決算の数字
市場予想は stockanalysis.com の集計で売上37.6億ドル、調整後EPS 1.82ドル。Zacks の集計(アナリスト6人)もEPS 1.82ドルで、2つの集計に差はありません。
- 売上: 43.1億ドル、前年比+61%(予想37.6億ドル、上振れ15%)。内訳は自力+55%、買収+6%
- 粗利率: 38.1%、前年同期は37.8%
- 営業利益(GAAP): 9.8億ドル、+90%、営業利益率22.8%
- 調整後営業利益: 10.9億ドル、+83%、調整後営業利益率25.2%。前年同期から2.9ポイント改善。第2四半期は22.6%でした
- EPS: 希薄化後1.95ドル(+91%)、調整後2.21ドル(+78%。予想1.82ドル、上振れ21%)
- 営業キャッシュフロー: 7.9億ドル。調整後フリーキャッシュフローは6.5億ドル、+50%
- 手元資金: 現金と短期投資で37.1億ドル、長期負債29.3億ドル。ネットキャッシュは7.8億ドル
- 製品とサービス: 製品35.9億ドル(+66%)、サービスと補修部品7.2億ドル(+41%、買収を除くと+18%)
- 地域別: 米州29.9億ドル(+75%、自力+66%)、アジア太平洋7.8億ドル(+50%)、欧州・中東・アフリカ5.4億ドル(+23%)
通期の予想はまた引き上げです。売上は138〜142億ドルから144.5〜148.5億ドルへ、中央値で6.5億ドル上げました。146.5億ドルなら2025年の102.3億ドルから43%増です。調整後EPSは6.65〜6.75ドルから7.10〜7.20ドルへ。調整後フリーキャッシュフローは26〜28億ドル。第4四半期の予想は売上43.1〜45.1億ドル(中央値44.1億ドル)、自力の成長率49〜51%、調整後営業利益率25.3〜26.3%です。
詰まっていたのは工場で、流れ始めると数字はこうなる
前の記事で一番引っかかっていたのは、注文も前受金も過去最高なのに売上が予想の下限で、CEOがその原因を「バーティブの内側の供給網」だと認めたことでした。今回は43.1億ドル。第2四半期の32.7億ドルから、1四半期で10.4億ドル増えています。
リリースは利益率の改善を「売上増による固定費の吸収と、製造の生産性」と説明しています。地域別の利益率を見ると、米州は29.4%でほぼ横ばい(前年29.3%)、アジア太平洋は13.2%から17.0%、欧州・中東・アフリカは18.8%から28.0%へ9.2ポイントの改善です。欧州は上期の売上が自力で-15%だった地域で、前の記事では「なぜ欧州だけ減っているのか資料に説明が無い」と書きました。その欧州が、売上+23%で利益率が28%。説明は今回も無いです。9か月で見ると売上2.0%増(自力で-3.3%)に対して調整後営業利益は24%増なので、値引きで売った数字ではありません。
貸借対照表は、お金の流れが見えます。年初からの9か月で、前受金は18.1億ドルから41.2億ドルへ。在庫は14.6億ドルから32.9億ドル、売掛金は31.1億ドルから43.8億ドル、買掛金は17.6億ドルから32.4億ドルに増えました。お客さんの前払いで部材を仕入れ、仕入先への支払いも遅らせて、工場に在庫を積んでいる形です。
前の記事で「営業キャッシュフロー11.0億ドルは前払いが11.7億ドル入ったから」と書きました。今回は営業キャッシュフロー7.9億ドルに対して前受金の増加は4.9億ドル。運転資本全体では1.4億ドルの流出です。前払いの入金に頼らず、利益で現金を作る四半期に戻っています。ただし在庫は1四半期で7.7億ドル増えていて、これが全部売上に変わる前提での話です。
株価は12%上げて、それでも1か月前の水準
書いている日、10月28日の寄り付きは243.00ドル、取引時間中に見た値は233.61ドルで、前日の208.56ドルから12%高です。それでも9月8日の290.83ドルからは20%下、52週高値の379.94ドルの6割です。
前の記事で「注文は過去最高で、その納め先が本当に建つのかを市場は疑い始めている」と書きました。今回の決算は、その疑いに対する会社側の数字での返事です。売上が1四半期で10億ドル増え、第4四半期の予想は前年比50%増、通期の調整後EPSは7.15ドル。それで株価は1日で12%戻した、という所です。
読んで引っかかった所
買収の上乗せ代金が費用として出ている。 営業利益の調整項目に「条件付き対価の公正価値の変動」が第3四半期で0.34億ドル、9か月で0.96億ドル載っています。買った会社が業績目標に近づくと、将来払う上乗せ分の見積もりが増え、その増加分が費用になる仕組みです。つまり買った会社の調子が良いほど費用が出る。GAAPの営業利益はそれを含めて9.8億ドル、調整後はそれを除いて10.9億ドルです。UIGは10月27日に閉じたので、この項目は第4四半期から最大11.5億ドルの上乗せ分も対象になります。
UIGの代金は第4四半期の現金から出る。 9月末のネットキャッシュ7.8億ドルは、UIGの前払い14.5億ドルを払う前の数字です。払うと手元資金は長期負債を下回ります。リリースは流動性62億ドルを強調していますが、前受金41.2億ドルがその中にあるのは前の記事と同じです。
買収の寄与6%のうち、サービスの伸びの半分以上が買収。 サービスと補修部品の売上7.2億ドルの前年比+2.1億ドルのうち、1.2億ドルが買収(2025年12月に買った PurgeRite が大半のはずです)。自力では+18%。製品の自力+64%と比べると、サービスは工場の詰まりと関係なく、人の数で伸びる速さが決まる事業なのだと分かります。
受注の金額が無い。 「自力の受注が100%超」はリリースの見出しにまで入っていますが、金額も受注残も無い。2月の決算で150億ドルと出して以来、2四半期続けて金額を出していません。四半期の売上43億ドルの会社で、受注が前年比2倍なら、受注残は年初の150億ドルからさらに積まれているはずです。説明会で聞かれるでしょう。
次の決算で見る所
第4四半期の決算は2027年2月の予定です。日程はまだ出ていません。
- 売上が43.1〜45.1億ドルに入るか。今回は上限を4.6億ドル超えたので、予想の置き方が保守的なのか、本当に第4四半期で伸びが鈍るのかが分かる
- 受注残の金額。2月の決算は前年も通期の数字を出した回なので、今回も出ると思っています
- 前受収益が41.2億ドルからどう動くか。増加のペースは11.7億ドルから4.9億ドルに鈍っていて、次に減り始めたら納入が注文を上回ったということ
- 欧州・中東・アフリカの利益率28.0%が続くか。1四半期だけなら案件の中身の偶然で説明がつく
- UIGを含めた2027年の予想。前払い14.5億ドルを払ったあとの手元資金も
説明会で分かったこと(10月29日に追記)
説明会は日本時間29日の午前0時から。書き起こしと会社のスライド22枚、同じ日に出た10-Qを読みました。
受注残の金額は、出ませんでした。それどころか、会長のデイビッド・コートが冒頭で「今後、受注のデータを出す予定はない」と言い、CEOのジョルダーノ・アルベルタッツィも「受注は開示していないし、今後もしない。第3四半期の自力の受注が前年比100%超というのは、強さの目安として伝えただけ」と重ねました。2月に150億ドルと出した受注残は次の決算で出ると思っていましたが、望みは薄いです。質疑で受注残の中身を聞かれたCEOは、受注から納入までの期間は12〜18か月で変わっていない、受注残に数えるのは正式な発注書だけで、生産枠を押さえる契約は数えない、と答えています。顧客の内訳はハイパースケーラー・企業・ネオクラウドが市場の構成と同じで、ネオクラウドを除いても強い、とも。
前の記事の最後に書いた「工場の中で何が変わったのか」には、半分だけ答えが出ました。CFOのクレイグ・チェンバリンによると、第2四半期にずれた売上のうち1〜1.5億ドルが第3四半期に入っています。つまり43.1億ドルのうち1億ドル強は前の四半期の取り戻し分で、それを除くと第4四半期予想の44.1億ドルは例年どおりの伸びになる、という説明です。工場については「回復力を作り続けている段階で、終わっていない」とCFO、CEOも「学習曲線の途中。進み方には満足しているが完了ではない」と言っています。米州の利益率29.4%が横ばいだったのは、下期に大きな能力増強をして非効率が出たためだそうです。製造・物流の責任者も替わり、新しくマイク・リッシャーが就き、前任のアンダースは顧問に残ります。能力増強の中身は、米州で複数の新工場、スロバキアとアイルランドの拡張、チラー(冷却機)の生産能力を年内に2倍、マレーシアのジョホール工場の稼働開始です。設備投資は2026年に売上の約4%、10-Qでは5.75〜6.0億ドルとあります。
欧州は、前の記事で「なぜ減っていたのか説明が無い」と書いた所です。CEOは第3四半期に欧州の案件候補が前年比で約2倍になり、受注はそれ以上に伸びたと言っています。北欧が特に強い。利益率28%が続くかという質問にCFOは直接は答えず、第4四半期も欧州の押し上げは効いている、と言うに留まりました。第4四半期の欧州の自力の成長率は20%台前半の予想です。
在庫が前年比で2倍を超えた理由を聞かれて、会社側は「成長に備える分と、工場に余裕を持たせる分の両方」と答えています。前受金には誰も触れていません。
2027年の予想は次の決算まで出さない、ただし市場を大きく上回る自力の成長を見込む、増収に対する利益の増え方は従来の30〜35%の枠で考えてほしい、とCFO。UIGの買収は「電力の設計の相談に早い段階から入れるようになる」ためのもので、自社株買いより自社の能力増強と買収を優先する方針も変わりません。800ボルト直流の電源は2027年に顧客の検証と売上の立ち上がり、2028年に本格展開です。
ひとつ、スライドの数字で引っかかった所。通期予想の調整項目にある「条件付き対価の変動」は9か月分の0.96億ドルのままで、第4四半期はゼロの前提です。閉じたばかりのUIGの上乗せ分、最大11.5億ドルの評価替えは、まだ入っていません。
使った資料
- Vertiv、2026年第3四半期決算のプレスリリース(SEC 8-K、2026年10月28日)
- 同、8-Kの本文(スライドは説明会前にIRサイトに載せると書いてある)
- Vertiv、UtilityInnovation Group 買収完了の発表(SEC 8-K、2026年10月27日)
- Vertiv、King Environmental Services 買収完了の発表(SEC 8-K、2026年10月26日)
- Vertiv、第3四半期決算のプレスリリース(IRサイト)
- SEC EDGAR、Vertiv Holdings Co の提出書類一覧
- Vertiv、2026年第3四半期 決算説明会のスライド(2026年10月28日)
- The Motley Fool、Vertiv 2026年第3四半期 決算説明会の書き起こし(2026年10月28日)
- Vertiv、2026年第3四半期の四半期報告書 10-Q(SEC、2026年10月28日)
株価は書いた日のものです。1週間前に「詰まったのは自社の供給網」と書いた相手が、1四半期で売上を10億ドル増やしてきました。詰まりが取れた後の数字を見たのは初めてで、工場の中で何が変わったのかは説明会を聞かないと分かりません。
この会社は半導体を買う側・使う側の地図の「データセンターの設備」にいます。