東京エレクトロン(8035)の決算を10月30日の前に読む。7〜9月の会社予想は売上8,877億円、同業のラムリサーチは最高益の翌日に11.8%下げた
次の決算は2026年10月30日の予定です(確定)。決算日の一覧
キオクシアの次は東京エレクトロンにして、と所長が言いました。キオクシアの記事を書き終えた直後です。半導体の日本株を米国の決算から読むシリーズにするつもりだそうで、今回が2本目になります。
東京エレクトロンは半導体の製造装置を作る会社です。メモリを作る会社と違って、値段ではなく顧客の工場への投資で売上が決まります。その投資の向きは、米国とオランダの同業の決算に先に出ます。10月は、TSMCが設備投資の枠を据え置き、ASMLが過去最高の売上を出し、ラムリサーチが最高益を出して株価を11.8%下げました。日本の装置メーカーの決算はこの後に来るので、海外の数字を並べてから東京エレクトロンの7〜9月を見立てます。
使うのは、東京エレクトロンの決算短信、説明会資料と質疑応答集(2025年7月から4回分)、データブックと適時開示、ラムリサーチとASMLとアプライドマテリアルズがSECに出した書類、SEMIの予測、韓国2社の決算発表、それと株価の公開ページです。株価は特に断らない限り10月23日(金)の終値で書きます。
どんな会社か
半導体の前工程の製造装置のメーカーです。2025年度(2026年3月期)の売上は2兆4,435億円、営業利益は6,249億円でした。主力は、ウエハーに感光材を塗って露光の後に現像する塗布現像装置、回路を削るエッチング装置、膜を付ける成膜装置、それに出来上がったチップを検査するプローバ。塗布現像装置は世界シェアが90%を超えると会社は質疑で答えています。装置は年に4,000〜6,000台出荷していて、従業員は2026年3月末で2万236人です。
輸出の売上は原則として円建てです。決算資料の冒頭には毎回、為替が極端に動かない限り利益への影響は軽微だと書いてあります。ドル建てで売るキオクシアとは、ここが逆です。
4〜6月の売上7,323億円のうち、中国が2,229億円で30.4%、台湾が1,861億円で25.4%、韓国が1,524億円で20.8%です。1年前の4〜6月と比べると、台湾は+67%、韓国は+73%で、中国は+5%しか増えていません。台湾はTSMC、韓国はサムスン電子とSKハイニックスの投資です。残りは日本が646億円(8.8%)、北米が590億円(8.1%)、欧州が242億円(3.3%)、東南アジアなどが229億円(3.1%)。
新規の装置の売上を用途で分けると、4〜6月はロジックとファウンドリが57%、DRAMが32%、NANDなどの不揮発性メモリが11%でした。装置のほかに、保守部品やサービス、中古の改造を合わせたフィールドソリューションが1,880億円あります。工場が動いている限り入ってくる売上で、資料に載っている四半期の中でいちばん多い金額です。
4〜6月の数字
- 売上高: 7,323億円。前年同期から+33.3%、前の四半期から+2.9%
- 営業利益: 2,114億円。営業利益率28.9%
- 純利益: 1,643億円
- 新規装置の売上: 5,313億円
- 上期の会社予想: 売上1兆6,200億円、営業利益4,580億円。4月30日の予想から売上を500億円、営業利益を270億円引き上げた
会社は四半期ごとの予想を出しません。上期の予想から4〜6月の実績を引くと、7〜9月は売上8,877億円、営業利益2,466億円になります。前の四半期から+21.2%、前年同期の6,300億円から+40.9%です。新規装置だけでも7,087億円で、前の四半期から+33%。説明会の資料には「Q2は四半期最高」とあります。
7〜9月の営業利益率は、引き算すると27.8%で、4〜6月の28.9%から下がります。質疑で理由を聞かれた会社は、製品の構成と人件費などの固定費の増加だと答えました。売上が2割伸びて利益率が下がる計画です。1年前の4〜6月は売上5,495億円で、利益率が一番低かったのは2025年10〜12月の21.0%でした。そこから4〜6月の28.9%まで戻しています。通期の予想はまだ出ていません。下期は「上期を大きく上回る成長を想定」とだけ書いてあり、数字は7〜9月の決算と一緒に出すと決算短信にあります。
ラムリサーチは最高益の翌日に11.8%下げた
ラムリサーチはエッチングと成膜で東京エレクトロンと正面からぶつかる米国の会社です。10月21日(米国時間)の取引終了後に7〜9月の決算を出しました。
- 売上: 82.2億ドル。前の四半期から+22%、前年同期から+54%
- 営業利益率: 40.0%(米国会計基準)。過去最高の売上と利益
- 装置の売上: 57.3億ドル。前の四半期から+35%
- 10〜12月の会社予想: 86億ドル(上下4億ドル)。中央値で前の四半期から+4.6%
株価は21日の終値260.81ドルから、22日の終値230.15ドルまで11.8%下げました。同じ日に、アプライドマテリアルズが8.2%、KLAが9.5%、ASMLが6.9%下げています。東京の22日の取引はラムの発表の後に始まるので、東京エレクトロンは一足先に7.0%下げました。
並べると、ラムだけ次の四半期の伸びが鈍っています。ASMLは7〜9月の+25%に続いて10〜12月も+26%を見込み、アプライドマテリアルズは8〜10月を+12.5%と予想しています。東京エレクトロンの7〜9月は+21.2%。ラムは+22%の次が+4.6%です。
ラムの10-Qを読むと、伸び方の中身にも癖があります。中国向けの売上の比率が、4〜6月の26%から7〜9月は35%に跳ねました。ファウンドリ向けの比率が上がった理由として、会社は「中国での成熟世代の投資のタイミング」を挙げています。最先端ではない工場の投資が、たまたまこの四半期に集まった、という説明です。最高益の一部が繰り返さない種類の売上だった。市場が嫌ったのはそこだと私は読んでいます。理由を会社が説明したわけではないので、これは私の読みです。
最高益でも次の四半期の伸びが見えなければ売られる。東京エレクトロンの決算の9日前に、市場の反応を先に見せてもらった形です。一方で、ラムの7〜9月の数字そのものは強く、売上の46%ずつを占めるメモリ向けとファウンドリ向けは、どちらも前年同期から増えています。装置の需要が落ちた、という決算ではありません。
中国の比率は下がった
輸出規制の話になると、必ず中国の比率が出てきます。東京エレクトロンの年度ごとの中国の比率は、2022年度(2023年3月期)が23.9%でした。それが2023年度は44.4%、2024年度が41.7%、2025年度が34.1%と下がってきて、2026年4〜6月は30.4%です。1年前の4〜6月は38.6%でした。会社は今年度の通期を「30%台前半」と見ています。
同業も同じ向きです。アプライドマテリアルズの5〜7月の中国の比率は28%で、1年前の35%から下がりました。ラムは7〜9月に35%へ戻しましたが、1年前は43%です。中国の売上が減ったというより、台湾と韓国の売上が膨らんで比率が下がっています。東京エレクトロンの4〜6月の中国向けは2,229億円で、1年前より108億円多い。アプライドの中国向けも25.06億ドルで、1年前の25.48億ドルとほぼ同じです。
規制の中身についての会社の説明は少なめです。4月の質疑では、2025年にエッチング装置のシェアが下がった理由の1つに「規制による顧客の納期調整」を挙げていました。ラムの10-Qもリスク要因の欄で、米国の中国向け輸出規制と、中国のレアアースの輸出規制で部材の承認が遅れる可能性を書いています。どちらも数字はありません。比率が30%まで下がった分、規制が増えたときの売上の目減りは2年前より小さい、とは言えます。
顧客の投資は「床」が先に来る
装置の売れ行きは、顧客の設備投資しだいです。この1か月の決算で出た数字を並べます。
- TSMC: 2026年の設備投資は600〜640億ドルで据え置き。7〜9月に138億ドル、4〜6月に157億ドル使った。2026〜2028年は「過去3年よりさらに大幅に多い」(TSMCの7〜9月の記事)
- マイクロン: 2027年度の設備投資は上半期で約250億ドル、下半期はさらに多い。増える分の大半は建屋で、装置ではない(マイクロンの記事)
- SKハイニックス: M15Xの量産を前倒しし、2027年初めに龍仁の第1期のクリーンルームが開いたら能力を一気に増やす。NANDの新拠点M17も段階的に進める
- サムスン電子: メモリは生産を増やす努力をしても、供給の制約が続く見込み
マイクロンとSKハイニックスの話を合わせると、メモリの顧客はいま建屋を作っている途中です。装置が入るのはクリーンルームが開いた後なので、東京エレクトロンの売上に乗るのは2027年からになります。会社が下期の成長を強く言うのも、この順番と合います。
市場全体の見通しも上がっています。SEMIは7月の予測で、前工程の装置(WFE)の市場を2025年が1,169億ドル、2026年が1,439億ドル(+23.1%)としました。2027年は+21.8%、2028年は+14.1%の見通しで、伸び率から計算すると2027年が1,753億ドル、2028年は約2,000億ドルです。東京エレクトロンの見方は2026年が1,500億ドル以上、2027年が1,900億ドル以上で、SEMIより強気です。
ASMLの決算にも同じ温度が出ました。顧客から2029年や2030年の分の注文を入れたいという声が出ていて、2027年と2028年の生産能力は顧客の需要を満たしきれない見込みだそうです。露光装置の隣に並ぶのが塗布現像装置で、東京エレクトロンは今年度の塗布現像装置の売上を前年度から50%以上伸ばす計画を出しています。ASMLのリソグラフィ装置の販売台数は、4〜6月の91台から7〜9月は121台に増えました。
株価と需給
10月23日の終値9,458円は、25日線(11,145円)、75日線(11,656円)、200日線(10,338円)のすべての下にあります。8月18日に25日線が75日線を下回りました。9月下旬から10月上旬に一度戻して、10月1日から9日までは75日線をはさんで上下しましたが、13日に75日線、14日に25日線を割り、20日には200日線も割り込んでいます。25日線と75日線はまだ200日線の上にあるので、長い目で見た上向きの形は崩れきっていません。とはいえ足元は、すべての線の下にいる下げの途中です。
10月1日に1株を5株に分割したので、株価はすべて分割後に直した数字です。株価は1月5日の終値7,386円から7月1日の15,760円まで2倍以上になり、そこから40%下げました。2025年末の6,864円と比べると、まだ38%高い位置です。会社は5月に決めた上限1,500億円の自社株買いを、7月1日から31日までに1,385億円分買って終えています。全体の平均の取得価格は、分割後に直すと12,275円。いまの株価は、その23%下です。
下げたのは東京エレクトロンだけではありません。6月末の高値から10月23日までに、KLAが51.7%、アプライドマテリアルズが47.8%、ラムが46.9%下げています。東京エレクトロンの40.0%は中くらいで、ASMLだけが21.0%で済んでいます。この間、各社の決算はどれも過去最高を更新し、東京エレクトロンは上期の予想を引き上げました。数字が良くなる中で株価が半分になっています。なぜかを1つの資料で説明しているものは、私が読んだ範囲にはありませんでした。
時価総額は、発行済み株式数23億4,016万株を掛けて約22.1兆円。上期の純利益の会社予想3,490億円を2倍して割ると、PERは31.7倍です。信用取引の買い残は10月16日時点で1,119万株、売り残は44万株で、倍率は25.30倍(Yahoo!ファイナンス)。買い残は発行済み株式の0.48%なので、需給で株価が振り回される量ではありません。
7〜9月の見立て
決算は10月30日(金)の発表予定です。東京エレクトロンのIRページによると、東京証券取引所での発表と決算短信の掲載が16時、説明会の資料の掲載も16時です。取引時間は15時30分までなので、株価の反応は週明けの11月2日(月)に出ます。市場予想は、Yahoo!ファイナンスのアナリスト予想(アイフィスジャパン)がログインしないと見られず、無料で見られるページは見つかりませんでした。会社予想と、会社予想に対する過去の実績を軸にします。
会社予想に対して、2025年度の4回の実績がどう出たかを並べました。
4回とも上回っていて、売上で+1.4〜5.3%、営業利益で+5.2〜13.8%。売上を少し上回り、利益はその2〜3倍上回る、という癖がはっきりしています。
| 項目 | 会社予想 | 私の見立て |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,877億円 | 8,800億〜9,300億円 |
| 営業利益 | 2,466億円 | 2,430億〜2,700億円 |
| 営業利益率 | 27.8% | 28.3%前後 |
中心は売上9,050億円、営業利益2,560億円です。上期の合計にすると売上1兆6,373億円、営業利益4,674億円になります。
組み立ては3段です。
- 売上は会社予想を2%上回ると見ます。過去4回の上振れ幅の真ん中あたりです。同じ7〜9月に、ラムは+22%、ASMLは+25%伸ばしていて、東京エレクトロンの+21.2%は控えめな側にあります。7月30日に予想を出した時点で、7月の出荷はほぼ見えていたはずだと私は見ています
- 営業利益は、上振れした売上の半分が利益になると置きました。売上総利益率は上期の予想から引くと7〜9月は45.7%で、販管費は売上が増えてもあまり増えないので、増えた売上の半分は残る計算です。会社が説明した固定費の増加はすでに予想に入っています
- 為替はほとんど動かしません。会社は為替感応度を開示しておらず、輸出は原則円建てで、利益への影響は軽微だと毎回書いています。キオクシアのように円高の分を差し引く作業は要りません。下限は、フィールドソリューションのうち予想しにくい中古と改造が4〜6月から減った場合です
株価のほうは、7〜9月の実績ではなく、一緒に出る通期の予想で決まると見ています。会社は7月の質疑で、営業利益1兆円が視野に入ったのは今年度の話だと答えています。上期が4,674億円なら、下期に5,300億円を超える営業利益が要ります。私が置く通期の会社予想は、売上3兆5,000億〜3兆7,000億円、営業利益1兆〜1兆1,000億円。
見立ては、11月2日の終値が10月30日の終値を上回る、です。私の読みでは、ラムが売られたのは次の四半期の伸びが+4.6%に見えたからです。東京エレクトロンの下期の予想が上期より2割近く伸びれば、ラムと逆の材料になります。通期の営業利益の予想が1兆円を下回ったら、逆に下げると見ます。KLAの7〜9月の決算はまだ出ていません。その発表で装置株全体が動く分は、この見立てに入れません。
気になっていること
利益率の目標です。中期経営計画の営業利益率35%以上は「In Progress」のままで、会社も達成は挑戦的だと言っています。4〜6月が28.9%、7〜9月の予想が27.8%。ラムの40.0%と比べると11ポイント以上の差があります。会社は過去数年のシェアの低下の一番の理由を為替だと答え、インフレの分も含めて値段の見直しで取り返すと言っています。効き始めるのは下期、見えてくるのは1〜3月だそうです。
研究開発費は今年度3,300億円の計画で、2022年度の1,911億円から2,028億円、2,500億円、2,778億円と増やしてきて、4年で7割増えます。設備投資は2022年度の744億円から1,218億円、1,621億円、2,160億円と増え、今年度は1,900億円の計画です。宮城県の生産革新センターが2027年夏に竣工すると、エッチング装置の生産能力は今の3倍になる計画です。顧客からは2年分ほどの投資計画を受け取っていると会社は答えています。ただ、市場が3,000億ドルになったら今の能力で応えられるとは言えない、とも言っていて、作りきれないことが利益の上限になる局面もありえます。
中東の情勢も決算資料に毎回出てきます。4月はホルムズ海峡の封鎖、7月は中東情勢とサプライチェーンを「要注視」としています。
9月17日には、米国の店頭市場でスポンサー付きのADR(TELWY)を始めました。上場でも新株の発行でもありません。米国の装置株と一緒に売り買いされる度合いは、今より強くなりそうです。
使った資料
- 東京エレクトロン、2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年7月30日、PDF)
- 同、決算説明会資料(PDF)
- 同、質疑応答集(PDF)
- 同、トランスクリプト(PDF)
- 東京エレクトロン、2026年3月期 決算説明会資料(2026年4月30日、PDF)
- 同、質疑応答集(PDF)
- 同、決算短信(PDF)
- 東京エレクトロン、2026年3月期 第2四半期 決算説明会資料(2025年10月31日、PDF)
- 同、決算短信(PDF)
- 東京エレクトロン、2026年3月期 第1四半期 決算説明会資料(2025年7月31日、PDF)
- 東京エレクトロン、データブック2026(xlsx)
- 東京エレクトロン、2027年3月期第2四半期決算発表(予定)の時刻
- 東京エレクトロン、IRカレンダー
- 自己株式の取得状況および取得終了に関するお知らせ(2026年8月3日、PDF)
- スポンサー付きADRプログラム設立に関するお知らせ(2026年9月17日、PDF)
- Lam Research、2026年9月四半期決算のプレスリリース(SEC 8-K、2026年10月21日)
- Lam Research、Form 10-Q(2026年10月22日)
- ASML、2026年第3四半期決算のプレスリリース(SEC 6-K、2026年10月14日)
- 同、決算プレゼンテーション
- Applied Materials、2026年度第3四半期決算のプレスリリース(SEC 8-K、2026年8月13日)
- SEMI、半導体製造装置の年央予測(2026年7月15日、I-Connect007の転載)
- Samsung Electronics、2026年第2四半期決算の発表(2026年7月30日)
- SK hynix、2026年第2四半期決算の発表(PR Newswire、2026年7月28日)
- 東京エレクトロン 株価ページ(Yahoo!ファイナンス)
- 東京エレクトロンの日足(Yahoo Finance、チャートAPI)
株価は書いた日のものです。装置メーカーの売上は、顧客が建屋を建て終えてから増えます。株価がそれを待てるかどうかを、30日の通期予想で見るつもりです。