中外製薬(4519)の決算を10月27日17時の前に読む。リリーの飲む肥満症薬は4〜6月に9,800万ドル売れ、中外はロシュ以外のロイヤルティを下期に305億円見込んでいる
過去の発表日は2026年10月27日。決算日の一覧
イビデンの次は中外製薬です。組入銘柄とつながる日本株を一覧にしたとき、イーライリリーの行に入っていたのが中外でした。リリーの飲む肥満症薬Foundayo、一般名オルホルグリプロンは、中外が作った薬です。
所長に「取材シート作り始めて」と言われて調べ始めたら、中外の7〜9月期の決算が今日の17時に出ると分かりました。決算を待ってから書こうと言ったら、「2Qは出しておいて、3Q出たらまた書けばいいじゃん」。もっともなので、この記事は4〜6月までの数字で書き、7〜9月の見立てを置いておきます。決算の結果は別の記事で書きます。
イビデンと同じく、記事の数字は先に一次資料から取材シートに並べ、出典の原文と照合してから書いています。使ったのは、中外の決算短信と補足資料、決算説明会の質疑、有価証券報告書、適時開示、リリーとノボ ノルディスクがSECに出した書類、それと株価と信用残の公開ページです。株価は10月26日(月)の終値で書きます。
どんな会社か
親会社はスイスのロシュです。ロシュは自己株式を除く発行済株式の61.10%を持っています。2001年に結んだ基本契約で、ロシュが過半数を持つ一方、中外は上場を保ち、研究から販売までを独自に行う形になりました。中外はロシュの開発品について日本での第一選択権を持ち、ロシュは中外の開発品について日本の外での第一選択権を持っています。
2025年の売上収益はCoreで1兆2,579億円、Core営業利益は6,232億円です。中外はIFRSで決算を出していて、そこから会社が非経常と見るものを除いた「Core」の数字も開示しています。業績予想はCoreで出ているので、この記事の営業利益は、断りが無ければCoreです。2026年1〜6月のCore営業利益は3,291億円、IFRSでは3,196億円で、差は無形資産の償却と事業再構築費用などです。
売上の半分近くは、ロシュ向けの輸出を含む海外製商品です。有報の主要な顧客では、ロシュ向けの販売高が7,241億円、売上収益の57.6%。親会社が最大の顧客です。輸出の柱はヘムライブラで、1〜6月のロシュ向け輸出は1,704億円でした。
4〜6月までの数字
- Core売上収益: 1〜6月で6,633億円。前年同期比+14.7%
- Core営業利益: 1〜6月で3,291億円。前年同期比+21.0%
- 4〜6月だけ: Core売上収益3,416億円(+17.8%)、Core営業利益1,659億円(+25.2%)
- その他の売上収益: 1〜6月で968億円。前年同期比+44.5%。ロイヤルティと一時金が増えた
- 為替: 1〜6月の計上レートは1ドル150.86円。会社の想定は151円
通期の会社予想は1月に出したままで、Core売上収益1兆3,450億円、Core営業利益6,700億円です。1〜6月の営業利益は通期予想の49.1%に達していて、前の年の同じ時点は43.6%でした。CFOは1月の説明会で、不確実性のあるものは合理的な範囲で保守的に予測するのが会社の考え方だと言っています。予想は上振れしやすい作りだと私は見ています。
オルホルグリプロンは、中外の数字のどこに入るか
経緯から書きます。中外は2018年9月27日に、OWL833という開発番号の薬の全世界の開発・販売の権利をリリーに渡しました。中外が2型糖尿病の薬として創製した、飲むタイプのGLP-1受容体作動薬です。契約一時金は5,000万ドルで、開発の進み具合に応じて追加の支払いがあり、発売後は売上に応じたロイヤルティを受け取ります。このOWL833がオルホルグリプロンです。
米国のFDAは2026年4月1日(米国時間)に、Foundayoを肥満症の成人などを対象に承認しました。リリーの発表では、治験で最高用量を続けた人の体重は平均12.4%減り、プラセボは0.9%でした。自費で買う場合、最低用量は月149ドルからです。
リリーの4〜6月の決算で、Foundayoの売上は9,800万ドルでした。発売から最初の四半期で、リリーの売上229億7,400万ドルの0.43%です。リリーの売上の64.7%はMounjaroとZepboundの2つで、Foundayoはまだ小さい。
中外の側では、Foundayoのロイヤルティは4〜6月から計上が始まりました。ただ、金額は出ていません。会社は個別の内訳を開示しておらず、説明会でFoundayoの売上を聞かれたCEOは「イーライリリーに問い合わせてほしい」と答えています。
手がかりはリリーの10-Qです。中外は全世界の売上に対して段階的なロイヤルティを受け取り、料率は一桁台半ばから10%台前半、と書かれています。開発の節目ごとのマイルストンの権利は「重要でない」とされています。
料率を5%と置くと、4〜6月の9,800万ドルに対するロイヤルティは約490万ドル、1〜6月の計上レートで約7.4億円です。13%と置いても約19.2億円。中外の四半期のCore営業利益1,659億円に比べると、今はまだ誤差の大きさです。
実際、補足資料から計算すると、ロシュ以外からのロイヤルティ等は1〜3月が41億円、4〜6月も41億円で、増えていません。アナリストがこれを説明会で聞き、CFOは「料率がティアードなので四半期ごとに変わる部分がある」と答えるにとどめました。ロシュ以外の大半は、オルホルグリプロンと、NEMLUVIOという薬のロイヤルティだとCFOは1月に説明しています。どちらがいくらかは答えていません。
それでも、会社の通期予想にははっきり出ています。ロイヤルティ及びプロフィットシェア収入の予想2,172億円から、ロシュからの1,785億円を引くと、ロシュ以外は387億円。上期の実績82億円を引くと、下期に305億円を見込んでいる計算になります。上期の3.7倍です。
この305億円がどこまでFoundayoかは分かりません。ただ、ロシュ以外のロイヤルティは2024年に27億円、2025年に94億円で、2026年の387億円は桁が1つ上がります。7〜9月にこの数字が動き始めているかが、今日の決算で一番見たい所です。
飲む肥満症薬では、ノボが先に出ている
ノボ ノルディスクの飲むWegovy pillは、2025年12月22日に米国で承認され、2026年1月5日に発売されました。4〜6月の売上は32億1,800万デンマーククローネで、上期は54億7,400万クローネ。4〜6月の処方は約290万件、発売からの合計は500万件を超えたとノボは書いています。
Foundayoはこれより3か月遅れて出ました。リリーはFoundayoについて、肥満症か2型糖尿病で40を超える国で申請を済ませています。米国では2型糖尿病への適応拡大も申請中で、中外のCEOは7月の説明会で、年内の米国での2型糖尿病への適応拡大と、米国の外での発売を見込むと話しました。
中外自身の肥満症の開発品GYM329は、9月28日に肥満症での開発を止めています。治験の中間解析で、臨床的に意味のある体重減少の達成が難しいと判断したためです。
株価と需給
株価は10月26日の終値で6,897円です。2月25日に日中の高値10,700円を付け、そこから35.5%下。10月2日に日中の安値5,974円を付けて、そこから15.5%戻しました。年初からは-16.3%です。
10月26日の終値は、25日線(6,355円)と75日線(6,773円)の上にあり、200日線(7,829円)の下です。
決算の翌営業日の値動きは、2025年10月が-2.1%、2026年1月が+5.9%、4月が-15.8%、7月が-7.7%でした。今年に入ってからの2回は、どちらも大きく下げています。4月の決算は、Foundayoの承認から3週間後でした。FDAの承認が出た後の最初の取引日、4月2日は+2.2%、翌日は-4.6%です。
信用取引の買い残は10月23日時点で136万700株、売り残は6万9,100株で、倍率は19.69倍(株探)。10月2日の買い残225万3,800株から、3週間で約4割減りました。安値の近くで買った人が戻りで売っているのだと思います。
7〜9月の見立て
決算は10月27日(火)17時に発表、説明会は18時です。会社のIRカレンダーで確かめました。株価の反応は28日(水)に出ます。
四半期の市場予想は、Core営業利益では無料で見られるページがありませんでした。株予報のコンセンサスは経常利益で、1〜9月の累計が4,985億円です。中外の会社予想はCore営業利益なので、比べる物差しが違います。
| 項目 | 4〜6月の実績 | 7〜9月の見立て |
|---|---|---|
| Core売上収益 | 3,416億円 | 3,300億〜3,550億円 |
| Core営業利益 | 1,659億円 | 1,620億〜1,800億円 |
| ロシュ以外のロイヤルティ等 | 41億円 | 45億〜70億円 |
中心はCore売上収益3,420億円、Core営業利益1,700億円、ロシュ以外のロイヤルティ等55億円です。
組み立ては3段です。
- 営業利益は4〜6月の水準を少し上回ると見ます。前の年の7〜9月は1,785億円で、2025年の4つの四半期で一番多かった。4〜6月の1,659億円とその間に中心を置き、幅を広めに取りました
- ロシュ以外のロイヤルティ等は、増え始めると見ます。下期の305億円を2四半期で割れば1四半期150億円を超えますが、7〜9月にいきなりそこまでは届かないと思います。Foundayoの売上が4〜6月の9,800万ドルから倍になっても、料率5%なら増えるのは約7億円です。55億円はNEMLUVIOの伸びを含めた数字です
- 通期予想は上げると見ます。1〜6月で営業利益の進捗が49.1%あり、会社自身が保守的に予想を置くと言っているからです
株価の見立ては、10月28日の終値が10月27日の終値を上回る、です。条件は、通期のCore営業利益の予想が6,700億円から上がること。上がらなかったら、今年の2回と同じように下げると見ます。外れたら外れたと次の記事に書きます。
気になっていること
ロイヤルティの数字を、中外が出さないことです。Foundayoが売れても、中外の決算からその分は読めません。分かるのは「ロシュ以外」の合計だけで、中にはNEMLUVIOも入っています。リリーの7〜9月の決算は10月29日で、Foundayoの売上はそこで出ます。その数字に料率の幅を掛けて、中外の「ロシュ以外」と突き合わせるしかありません。中外の株を、自分の決算ではなくリリーの決算で読む、という少し変な形になります。
もう1つは、ロシュとの関係です。売上の57.6%が親会社向けです。オルホルグリプロンはロシュではなくリリーに渡した薬で、ロシュの外から入ってくる収入です。下期の305億円が本当に入ってくれば、中外の稼ぎ方が少しだけロシュの外に広がることになります。
使った資料
- 中外製薬、2026年12月期 第2四半期 決算短信(2026年7月24日、PDF)
- 同、補足資料(PDF)
- 同、決算説明会資料(PDF)
- 同、決算説明会の質疑(PDF)
- 同、ニュースリリース(2026年7月24日、PDF)
- 中外製薬、2025年12月期 決算短信(2026年1月29日、PDF)
- 同、決算説明会の質疑(PDF)
- 中外製薬、有価証券報告書(2025年12月期、PDF)
- 中外製薬、Foundayoの米国承認についてのお知らせ(2026年4月2日)
- 中外製薬、GYM329の肥満症での開発中止(2026年9月28日、PDF)
- 中外製薬、OWL833のライセンス契約の適時開示(2018年9月27日、PDF)
- 中外製薬、IRカレンダー
- Eli Lilly、Foundayoの承認の発表(2026年4月1日)
- Eli Lilly、Form 10-Q(2026年6月30日までの四半期、SEC EDGAR)
- Eli Lilly、2026年第2四半期の決算発表(SEC EDGAR)
- Eli Lilly、第3四半期の決算日の告知
- Novo Nordisk、Wegovy pillの米国承認(2025年12月22日、SEC EDGAR)
- Novo Nordisk、2026年上期の決算報告(SEC EDGAR)
- 株探、中外製薬の信用残
- 株予報、中外製薬のコンセンサス
その後の決算は「中外製薬(4519)の7〜9月期決算を読む。ロシュ以外のロイヤルティは74億円に増えたが、通期の387億円には10〜12月に230億円が要る」で読みました。
この会社は医療の地図の「新薬の会社」にいます。