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キオクシア(285A)の7〜9月は売上2.48兆円で+40%、同じ工場のサンディスクは+23%。10〜12月の予想は+3%と+11〜14%で立場が入れ替わる

過去の発表日は2026年10月30日。決算日の一覧


キオクシアの7〜9月期決算が10月30日の18時45分に出ました。4日前の10月26日にキオクシア(285A)の決算を10月30日の前に読む。7〜9月の会社予想は売上2.39兆円・営業利益率79.5%、同じ工場のサンディスクは+18%しか見込んでいないを書いて、売上と利益の見立てを数字で置いたので、その続きです。前の記事の最後に、同じ工場のウエハーが片方では+35%、もう片方では+18%の売上になる差を2社の決算で確かめる、と書きました。サンディスクの決算は米国時間の10月29日に出ています。

使うのは、キオクシアの決算短信、配当と子会社の合併の適時開示、7月31日の業績推移データ、サンディスクの決算のプレスリリース(SECの8-K)です。決算説明会のスライドと質疑応答集は、書いている時点でサイトから取れませんでした。説明会の発言はロイターの配信記事から1本だけ借ります。

前の記事で見ると書いた所

項目 私の見立て 実績 判定
売上収益 2兆3,500億円 2兆4,800億円 外れ
Non-GAAP営業利益 1兆8,650億円 1兆9,883億円 外れ
営業利益率 79%前後 80.2% ほぼ当たり
平均為替 159円台 161円 外れ
  • 売上は見立ての幅(2兆2,800億〜2兆4,300億円)の上限を500億円超えた。 会社予想の2兆3,900億円も3.8%上。私は平均為替を159.3円と見ましたが、会社の平均レートは161円。ドル建てでも154.0億ドルで、会社予想の147.5億ドルを4.4%上回っています。為替の目減りを見込みすぎました
  • Non-GAAP営業利益も幅(1兆7,950億〜1兆9,350億円)の上限超え。 会社予想に対して+4.6%です
  • IFRSの営業利益はNon-GAAPより100億円ほど下、と見たが逆だった。 1兆9,947億円で、Non-GAAPより64億円上。4〜6月期に194億円の費用だった株式報酬が、7〜9月期は64億円の戻し入れになりました。短信に理由は無く、株価で評価額が動く業績連動型の報酬が株価の下落で戻った、と私は読んでいます。利益が株価の下落で増える、という小さな皮肉です
  • サンディスクが自分の予想の上限108億ドルを超えるか、は超えた。 110.3億ドルで上限を2.1%上回りました。当たりです
  • 10〜12月の会社予想を売上2兆7,000億〜2兆9,000億円(中心2兆8,000億円)と置いたが、会社は2兆5,000億円。 外れです。「2兆5,000億円を下回ったら逆に下げると見る」と書いた線の、ちょうど上に乗りました
  • 株価の見立て(11月2日の終値が10月30日の終値を上回る)は、まだ判定できない。 10月30日の終値は13,470円で、発表は取引終了後です

今回の決算の数字

7〜9月期(第2四半期)の単独の数字です。前年同期は2025年7〜9月。

  • 売上収益: 2兆4,800億円。前四半期比+40.3%、前年同期(4,483億円)の5.5倍。用途別はSSD & ストレージ1兆6,160億円(+37.6%)、スマートデバイス7,889億円(+50.1%)、その他752億円(+12.7%)
  • Non-GAAP営業利益: 1兆9,883億円、営業利益率80.2%。会社予想は1兆9,000億円・79.5%
  • 営業利益(IFRS): 1兆9,947億円、利益率80.4%
  • 純利益: 1兆3,557億円、会社予想の1兆2,700億円を6.7%上回った
  • 平均為替: 161円。会社の想定は162円
  • 10〜12月の会社予想: 売上2兆5,000億円(+0.8%)、Non-GAAP営業利益2兆円(+0.6%、利益率80.0%)、純利益1兆3,600億円。想定為替157円。短信の説明は、データセンター向けの需要は旺盛だが為替の悪化を見込むため同水準、です
  • 配当: 中間90円(分割前。分割後なら30円)、総額479億円。上場後初めてです。方針は、ネットキャッシュを維持し、自社株買いと累進配当を基本に、余剰となった資金の100%を株主に戻す

1年前からの並びは、2025年7〜9月が売上4,483億円でNon-GAAP営業利益率19.4%、10〜12月が5,436億円で26.6%、2026年1〜3月が1兆29億円で59.7%、4〜6月が1兆7,671億円で75.0%。5四半期で売上が5.5倍。会社は、次の四半期をここで止める予想を出しました。

同じ工場で+40%と+23%。10〜12月は立場が入れ替わる

サンディスクの7〜9月期(10月2日まで)は売上110.3億ドル、前四半期比+23.0%。キオクシアは円で+40.3%、ドルに直して+39.5%。7月の時点では会社予想がドル建て+33.6%と+14.9〜20.5%(中央値+17.7%)で倍近い差があり、実績でもそのまま残りました。どちらも自分の予想を上回り、差は縮まっていません。

利益率はほとんど同じです。サンディスクのNon-GAAP営業利益率は80.4%、キオクシアは80.2%。粗利率は85.0%と82.8%(4〜6月期は80%)で差がありますが、キオクシアは販管費が売上の2.3%しかなく(サンディスクは5.4%)、営業段階で並びます。偶然も1つ。自社株買いは、キオクシアが8月に8,000億円(161円で49.7億ドル)、サンディスクが7〜9月に50億ドル。別々に決めた2社が、同じ四半期にほぼ同じ額を使いました。

同じ工場の2社、売上の前四半期比の伸びキオクシアはドル建て(4〜6月160円、7〜9月161円、10〜12月157円で換算)。サンディスクの予想は中央値キオクシアサンディスク7月時点の会社予想(7〜9月)33.6%17.7%7〜9月の実績39.5%23%10〜12月の会社予想3.4%12.4%出所: キオクシア決算短信、Sandisk 8-K(2026年10月29日)

ここからが今回の話です。10〜12月のサンディスクの予想は122億〜126億ドル、前四半期比+10.6〜14.2%(中央値+12.4%)。キオクシアの2兆5,000億円を想定為替157円で割ると159.2億ドル、+3.4%。7月は「キオクシアが倍速」、10月は「サンディスクが3倍速」です。

為替だけでは説明がつきません。会社の感応度(1円で売上140億円)で161円に戻しても2兆5,560億円、+3.1%。ドル建てで伸びがほぼ止まる前提です。ロイターの配信によると、説明会で副社長は2027年の生産能力は全て割り振り済みと話し、「スーパーサイクルに入っている」と言ったそうです。能力が埋まっているなら伸びは値段しか残らず、値段の上昇を予想に織り込まないのがキオクシアのいつもの出し方です。ただ、同じ値段の環境にいるサンディスクが+10%超を出している以上、慎重さの差だけでは片付きません。能力の割り振りが寄ったのか、次に書くスマートデバイスの反動なのか。

スマートデバイスが+50%で、SSDより伸びた

SSD & ストレージが+37.6%、スマートデバイスが+50.1%。率で伸びたのはスマートフォンや車載に組み込むメモリの方で、売上に占める比率は30%から31.8%に上がりました。

7〜9月の売上収益2兆4,800億円の用途別の内訳前四半期比の伸びは、スマートデバイスがいちばん大きい65%SSD & ストレージ 16,160億円32%スマートデバイス 7,889億円その他 752億円前四半期比: SSD & ストレージ +37.6%、スマートデバイス +50.1%、その他 +12.7%同じ期間のサンディスク: データセンター +61%、Edge +7%、Consumer -29%出所: キオクシア決算短信、Sandisk 8-K

サンディスクは区分が違いますが、データセンター向けが+61%で売上の44%、スマートフォンやPCを含むEdgeが+7%、Consumerが-29%。スマートフォン向けを含む区分が+7%の期間に、キオクシアのスマートデバイスは+50%でした。

7〜9月はスマートデバイス向けも季節の要因で増える見込み、と会社は7月に言っていました。売上の2割を占めるAppleの新機種の立ち上がりと重なる期間です。顧客別の数字は短信に無いので、ここは私の推測です。この+50%が季節で10〜12月に戻るなら、会社予想の+0.8%の理由の一部になります。

「余剰資金の100%」の余剰は、まだ手元に無い

配当のお知らせにある「余剰となった資金の100%を株主還元」を、短信のキャッシュフロー計算書で測ります。上期の営業キャッシュフローは2兆3,796億円。ただし売掛金の増加に1兆144億円が吸われ、9月末の売掛金は1兆6,484億円、3月末の2.5倍です。出ていったのは自社株買い8,003億円、借入金の返済5,231億円、設備投資1,353億円、Nanya Technologyの株式取得782億円。9月末の現金は1兆3,973億円、社債と借入金は6,039億円で、差し引き7,934億円のネットキャッシュ。3月末は借入が現金を5,769億円上回っていたので、半年で借金側から現金側に移りました。

ただ、負債に未払法人所得税が9,747億円あります。3月末は1,045億円。上期の法人所得税費用1兆55億円のうち、払ったのは1,107億円です。ネットキャッシュの7,934億円は、この未払いの税金より小さい。売掛金が回収されれば埋まる額ですが、「余剰資金」と呼べる現金は9月末にはまだ無い、と私は読みます。中間配当の479億円は上期の純利益2兆1,979億円の2.2%、自社株買いと合わせて38.6%。「100%」までの距離を決めるのは、税金の支払いと設備投資です。

設備投資は、上期の有形固定資産の取得による支出が1,353億円。前年同期の1,431億円より少なく、減価償却の1,535億円も下回っています。今年度4,500億円の計画なので下期に寄るのでしょうが、「スーパーサイクル」と言いながら上期は減価償却の範囲で投資している、というのが数字の方の事実です。北上工場のキオクシア岩手を2027年4月1日に本体へ吸収合併する開示も同じ日に出ました。

次の決算で見る所

次の決算の日付はまだ出ていません。

  • 10〜12月の売上がドル建てで+3.4%に収まるか。 2兆6,000億円を超えれば予想が慎重だった話で済み、2兆5,000億円前後なら能力か顧客の側に理由があります
  • スマートデバイスが前四半期比で減るか。 減るなら季節要因で、Appleの比率の高さがそのまま出た形です
  • 未払法人所得税9,747億円を払った後に、ネットキャッシュがいくら残るか。 「余剰資金の100%」の初めの金額が見えます
  • 設備投資が下期に積み上がるか。 上期1,353億円に対して年4,500億円の計画です
  • 期末配当。 副社長は中間を上回る水準と話したと報じられています
  • 株価の見立ての判定。 11月2日の終値が13,470円を上回るかどうか

説明会で分かったこと(10月31日に追記)

説明会のスクリプト付き資料と質疑応答集が、10月30日付でキオクシアのサイトに出ました。記事で説明会待ちにしていた所を、これで埋めます。どちらの資料も発言者の名前を書いていないので、以下は会社の説明と質疑応答集の回答として引きます。

10〜12月の売上がドル建てで+3.4%にしか伸びない理由は、質疑応答で聞かれています。回答は、GB単位の出荷量は7〜9月から大きく変わらない、でした。理由は2つで、一部を7〜9月に前倒しで売ったことと、製品の構成がリードタイムの長いデータセンター・エンタープライズ向けに寄り、出荷が1〜3月にずれる分があること。為替が161円から157円になる約550億円のマイナスを吸収したうえで約1%の増収、という組み立てです。平均単価は、スマートデバイスの比率が相対的に高くなるので緩やかに上がる見立て。記事で「能力の割り振りが寄ったのか、スマートデバイスの反動か」と書いた問いの答えは、どちらでもなく出荷の時期のずれでした。1〜3月はGB出荷が大きく増える、と会社は言っています。サンディスクとの差は、同じ工場でも出荷の時期の置き方が違う、という所までしか分かりません。

スマートデバイスの+50%は、季節要因ではなく値段でした。スクリプトには、販売価格が大幅に上昇し当四半期の増収の大半を牽引、とあります。7〜9月全体の平均単価は全製品の平均で20%台半ばの上昇、同じ製品で比べると30%台前半の上昇、出荷量は10%台前半の増加。顧客別の話は出ていないので、Appleの比率の推測は推測のままです。

設備投資は増えました。下期の総額は3,300億円、年間で4,700億円の見込みです。上期の支出が1,353億円なので、下期に2.4倍を積む形。質疑応答では、今年度は急ぐ必要があるので3年計画のうち来年度分の一部を前倒ししている、3年間の総額は大きく変えない、との回答でした。北上工場の第3製造棟(K3)は建設予定地の整備を始め、稼働は2029年度中の予定です。

余剰資金と税金の話も聞かれています。自社株買いを今回やらなかった理由は、8月の8,000億円の後で下期の投資を見極めるためで、今後多額の税金の支払いが予定されているので手元の現金を増やしている、と会社が自分で言いました。未払法人所得税9,747億円がネットキャッシュより大きい、と記事で書いた読みは、会社の説明と合っています。なお会社が出したネットキャッシュは、外貨建て社債をスワップレートで換算した8,127億円です。余剰資金の100%還元は、戦略投資(M&A)の状況次第で余剰が増えた場合、という条件付き。配分は当面、自社株買いが中心で累進配当も続ける、です。期末配当は資料では「未定、ただし実施する予定」。中間を上回る水準という報道の言い方より控えめでした。

受注の数字も出ました。2027年暦年の生産能力は割り当て済みで、資料にはSOLD OUTとあります。2028年は複数年の長期契約(LTA)でGB出荷量の50%を大きく上回る分を確約済み、2029年と2030年の枠組みも顧客と話し始めたそうです。2027年を通して供給不足が続き、単価は上昇傾向、が会社の見方。研究開発費は通期で2,000億円に増やします。

使った資料

株価は書いた日のものです。見立ては売上も利益も上に外れ、10〜12月の予想は下に外れました。同じ工場の2社が同じ額の自社株買いをして、次の四半期の見方だけが分かれた。その分かれ目の理由を、説明会の資料が出たら読み直します。

この会社は半導体の地図の「メモリ」にいます。