中外製薬(4519)の決算を10月27日17時の前に読む。リリーの飲む肥満症薬は4〜6月に9,800万ドル売れ、中外はロシュ以外のロイヤルティを下期に305億円見込んでいるは、10月27日の朝に書きました。決算はその日の17時に出て、説明会は18時から1時間ありました。これはその続きです。見立てを5つ置いたので、1つずつ今回の数字を当てます。
使ったのは、中外の決算短信、補足資料、説明会資料、説明会の書き起こし(質疑を含む)、ニュースリリースです。ロイヤルティの料率はリリーの10-Qを読み直しました。リリーの7〜9月の決算は明日29日なので、Foundayoの売上はまだありません。株価は10月28日(水)の終値で書きます。
前の記事で見ると書いた所
- Core売上収益、見立ては3,300億〜3,550億円: 4,047億円でした。前年比+21.5%。幅の上を500億円近く超えました。ただし、国内の出荷を7〜9月に前倒しした分が「300億円台前半」乗っています(後述)。それを引いても3,700億円台で、やはり幅の上です
- Core営業利益、見立ては1,620億〜1,800億円: 2,069億円でした。前年比+15.9%、営業利益率は51.1%。これも上に外れました。前倒しした売上の利益も入っています
- ロシュ以外のロイヤルティ等、見立ては45億〜70億円: 74億円でした。1〜3月41億円、4〜6月41億円から、初めて動きました。前年の7〜9月は27億円です。方向は合っていて、大きさは上限を少し超えました
- 通期予想を上げる: 上げませんでした。Core営業利益6,700億円のまま。ただしリリースにも説明会資料にも「通期予想に対し、過達を見込む」と書いてあります。数字を変えずに上回ると言う形です
- 株価は、予想が上がらなければ下げる: 28日の終値は6,614円、前日比-1.1%でした。27日は決算が出る前の時間帯に-3.0%下げていて、6,897円から2日で6,614円です。条件分岐のほうが当たりました。下げ幅は今年の2回(-15.8%、-7.7%)よりずっと小さかった
「ロイヤルティの数字を中外が出さない」も、今回もそのままでした。手がかりは少し増えたので、後ろに書きます。
今回の決算の数字
1〜9月の累計と、7〜9月の3か月に分けます。営業利益はCoreです。
- Core売上収益: 1〜9月で1兆681億円、前年比+17.2%。7〜9月は4,047億円、+21.5%
- Core営業利益: 1〜9月で5,361億円、+19.0%。7〜9月は2,069億円、+15.9%。営業利益率は1〜9月で50.2%
- 通期予想に対する進捗: 営業利益で80.0%。前の年の同じ時点は72.3%。残り3か月で1,339億円あれば届きます。前の年の10〜12月は1,727億円でした
- Core EPS: 1〜9月で233.77円、+20.2%。通期予想は295円
- IFRS: 営業利益5,226億円、+21.6%。四半期利益3,753億円、+22.8%
- その他の売上収益: 1〜9月で1,613億円、+37.7%。うちロイヤルティ及びプロフィットシェア収入が1,408億円、一時金などが204億円。7〜9月のロイヤルティは642億円で、一時金はほぼゼロ(2億円)
- キャッシュ: 1〜9月のフリー・キャッシュ・フローは2,461億円、+35.8%。配当を3,505億円払ったので、ネット現金は9,797億円から8,690億円に減りました
- 為替: 1〜9月の計上レートは1ドル153.17円。前年のレートと比べて営業利益で+266億円の追い風
国内の売上の4割増は、前倒しの分が乗っている
7〜9月の国内製商品売上高は1,684億円で、前年比+39.9%です。前年から480億円伸びましたが、そのうち300億円台は決算の中身ではありません。
中外は10月13日に基幹システム(ERP)を入れ替えました。その前後の数週間、国内の出荷を止めたので、卸への出荷を7〜9月に前倒ししています。CFOによるとその影響は「300億円台前半」。アナリストが一過性かと聞くと、「一過性でございます。第4クォーターで全て解消します」と答えました。国内だけの話で、海外には関係なく、費用の側にも影響は無いそうです。
つまり10〜12月の国内売上は、その分だけ低く出ます。7〜9月の営業利益2,069億円と、通期予想に対する進捗80.0%を見るときは、ここを割り引く必要があります。CFO自身が、7〜9月の営業利益が大きいのは「第4クォーターのものが第3クォーターに前倒しで計上されている。こういった要因は否定できない」と言っていました。
割り引いても、国内は伸びています。300億円台前半を引いた国内売上は1,350億円前後で、前年比で1割強の増加。ルンスミオが112億円(4〜6月は30億円)、ポライビーが154億円(+54.0%)、ヘムライブラの国内が215億円(+36.9%)。前倒しの分は製品ごとに偏っていないとCFOは言っているので、ルンスミオの伸びはおおむね本物だと読みました。
ロシュ以外のロイヤルティ74億円、中身は今回も出ない
この記事の主題はここです。ロイヤルティ及びプロフィットシェア収入642億円から、ロシュからの568億円を引いた74億円が、7〜9月の「ロシュ以外」です。1〜9月の累計では157億円。
会社の通期予想は387億円のままなので、残りは230億円。10〜12月の1四半期で、7〜9月の3.1倍が要る計算です。41億円から74億円に増えたのは確かですが、この傾きのままでは届きません。
ところが説明会でCFOは、ロシュ以外のロイヤルティは「おおむね想定どおり」と2度言いました。計画どおりなら、10〜12月に大きな段差が来ることを会社は最初から織り込んでいたことになります。何が入るのかは資料にありません。Foundayoの米国での2型糖尿病への適応拡大と、米国の外での発売を年内に見込むと前の記事で書きましたが、それがロイヤルティを一気に3倍にするとは私には思えません。ここは次の決算まで持ち越しです。
中身の手がかりは2つ増えました。1つは、UBSのアナリストが「決算短信の地域別の売上高から逆算すると、Foundayoのロイヤルティは20億〜30億円ほど入っているのでは」と聞いたことです。CFOは「詳細は開示できない」としつつ、「その他の売上収益のロシュ以外の中にしっかり入っております」と答え、否定はしませんでした。もう1つは短信の地域別の表で、スイス以外の海外からの「その他の売上収益」は1〜9月で232億円でした。ロイヤルティも一時金も混ざった数字なので、ここからFoundayoだけは切り出せません。
料率から逆算してみます。7〜9月に増えた33億円が全部Foundayoだとすると、1〜9月の計上レート1ドル153.17円で約2,150万ドル。リリーの10-Qにある料率の幅は「一桁台半ばから10%台前半」なので、5%ならFoundayoの売上は4.3億ドル分、13%なら1.7億ドル分です。4〜6月は9,800万ドルでしたから、どちらにしても売上が倍以上に増えていないと説明がつきません。リリーの決算は明日です。中外の株をリリーの決算で読む形は、前の記事に書いたとおり変わりません。
海外はNEMLUVIOの輸出が計画を超えた
海外製商品売上高は7〜9月で1,719億円、+5.6%。目を引いたのは「その他」の186億円で、前年の29億円から6.4倍です。ガルデルマに渡したNEMLUVIOの輸出がここに入っています。1〜9月の累計382億円は、通期予想の326億円をすでに17%超えました。CFOは、輸出は不定期で、需要に応じて先に出したのは想定の範囲内、通期の上乗せの幅は言えない、という答え方でした。
ヘムライブラの海外は1〜9月で2,582億円、通期予想3,540億円の72.9%です。うちロシュ向けの輸出は2,529億円で+0.8%、7〜9月だけ見ると825億円で-19.7%。ロシュ向けの輸出は計画が固まっていて、CFOは通期予想どおりに着地すると言っています。アクテムラの海外は1〜9月で1,260億円、予想1,363億円の92.4%まで来ていて、こちらは100億円以上の過達を見込むと明言しました。
次の決算で見る所
次の決算発表の日付は、会社のIRカレンダーにまだ載っていません。前の年の通期決算は1月29日でした。来期の見通しはそこで出ると社長が答えています。
- ロシュ以外のロイヤルティ等の10〜12月: 230億円に届くか。届かなければ「おおむね想定どおり」の意味を聞き直す必要があります
- 国内売上の反動: 10〜12月の国内製商品売上高が、前倒しした300億円台前半の分だけ低く出るはずです。それを戻して前年と比べます
- 通期のCore営業利益: 6,700億円に対して「過達」がいくらか。前倒しを除いても届くか
- 来期の予想: 説明会でアナリストが出したセルサイドのコンセンサスは、Core営業利益で約8,000億円でした。会社予想がそこに対してどこに置かれるか
- リリーの7〜9月のFoundayoの売上: 明日29日。74億円への増え方と突き合わせます
使った資料
- 中外製薬、2026年12月期 第3四半期 決算短信(2026年10月27日、PDF)
- 同、補足資料(PDF)
- 同、決算説明会資料(PDF)
- 同、決算説明会のスクリプト(質疑含む、PDF)
- 同、ニュースリリース(2026年10月27日、PDF)
- 中外製薬、決算短信・補足資料の一覧
- 中外製薬、IRカレンダー
- Eli Lilly、Form 10-Q(2026年6月30日までの四半期、SEC EDGAR)
- Eli Lilly、2026年第2四半期の決算発表(SEC EDGAR)
- Eli Lilly、第3四半期の決算日の告知
- 株探、中外製薬の株価と信用残
株価は書いた日のものです。数字の見立ては3つとも上に外れて、それでも株価は下げました。この組み合わせを、もう少し考えます。
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