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パナソニック(6752)の7〜9月決算を読む。車載電池は222億円の黒字でも補助金を除くと110億円の赤字、会社の下期見通しは半期409億円の赤字に広がる計算

過去の発表日は2026年10月30日。決算日の一覧


10月27日にパナソニック(6752)の決算を10月30日の前に読む。テスラが電池の調達先に名指しする車載電池は、米国の補助金を除くと4〜6月も151億円の赤字を書きました。3日後の10月30日15時30分、7〜9月の決算が出ました。前の記事に書き足すのではなく、別の記事として読みます。

速報はもう出ています。通期の純利益の予想を4,500億円から5,400億円に上げた、年間の配当を40円から70円に増やす、中間期の純利益は94.5%増。そこは「今回の決算の数字」の節に置いて、私はもう一度、車載電池の利益を補助金込みと補助金抜きに分けます。前の記事で見立てを書いた所なので、外れたら外れたと書く約束でした。

使ったのは、決算短信、決算説明資料(スライド)、決算補足資料、増配のお知らせ、IRカレンダーです。決算説明会は同じ日に開かれましたが、ノート付きの資料と質疑の要旨は、書いている時点で会社のサイトにまだ載っていません。説明会の中身は読まずに書いています。

前の記事で見ると書いた所

  • 北米の車載電池の販売量、見立て11.0〜12.5GWh(中心11.5GWh): 実績は11.4GWh。4〜6月の10.2GWhから12%増え、前年同期の9.8GWhからは16%増です。見立ての真ん中に来ました。カンザスの生産が増えたと会社は書いています
  • 車載の調整後営業利益、見立て100億〜200億円(中心150億円): 実績は222億円。上に外れました。4〜6月の146億円から76億円増え、前年同期は169億円の赤字でした
  • 補助金を除いた分は赤字のまま: 赤字のままでした。補助金の計上分332億円を引くと110億円の赤字。4〜6月の151億円の赤字からは41億円縮んでいます
  • 通期の営業利益の予想5,900億円が上がるか: 上がりました。7,100億円、1,200億円の上方修正です。ただし為替の寄与は360億円で、修正額の3割です。残りは価格改定と合理化、実質の売上増、米国関税の還付でした
  • 11月2日(月)の終値が10月30日の終値を上回るか: まだ分かりません。発表は取引終了と同時刻の15時30分で、10月30日の終値3,548円(前日比-3.67%)には決算が入っていません。株探のページでは、17時34分時点の夜間取引(PTS)が3,807円と、終値より7.3%上でした。答えは次の記事に書きます

今回の決算の数字

7〜9月の3か月です。前年比は2025年7〜9月との比較、前の期は4〜6月です。

  • 売上高: 2兆736億円、前年比+8%(為替の影響を除くと+3%)。前の期は2兆189億円
  • 調整後営業利益: 2,132億円、利益率10.3%。前年同期の904億円の2.4倍。前の期は1,864億円で、2四半期続けて四半期の過去最高
  • 営業利益: 1,807億円、利益率8.7%。前年同期は781億円。前の期は1,825億円。ドラム式洗濯乾燥機のリコール費用190億円がその他損益に入っています
  • 純利益: 1,418億円。前年同期の709億円の2.0倍
  • 想定為替: 1ドル159円。前年同期は147円
  • 中間期(4〜9月): 売上高4兆925億円(+7.1%)、営業利益3,632億円(2.2倍)、純利益2,770億円(+94.5%)、1株利益118.62円
  • エナジー: 売上3,319億円(+46%)、調整後営業利益567億円、利益率17.1%。前年同期は売上2,276億円、利益11億円でした
  • 通期予想: 売上高8兆4,000億円、調整後営業利益7,800億円、営業利益7,100億円、純利益5,400億円、1株利益231.26円。年間配当70円(前年40円、期初の予想は54円)。下期の想定為替は1ドル150円
エナジー 四半期の売上と調整後営業利益率2026年7〜9月まで。車載の数字には米国IRA補助金を含む01,2002,4003,6004,8006,000億円2,19325年4〜6月2,27625年7〜9月2,62825年10〜12月2,74526年1〜3月3,14026年4〜6月3,31926年7〜9月14.5%0.5%15.9%-0.9%13.2%17.1%-10%8.5%27%売上調整後営業利益率出所: 決算補足資料(2026年10月30日)

車載の黒字222億円の中身

補足資料の10ページに、米国IRA(インフレ抑制法)の45Xの補助金の表があります。7〜9月の補助金の総額は664億円。前の記事に書いたとおり、会社は半分の332億円を調整後営業利益に計上し、残り331億円は「顧客との有効活用分」として売上から差し引いています。

車載の調整後営業利益222億円から332億円を引くと、110億円の赤字です。前年同期は、169億円の赤字から補助金240億円を引いて409億円の赤字。4〜6月は151億円の赤字。赤字は縮んでいます。

車載電池の利益は、補助金を除くと赤字のまま調整後営業利益と、米国IRA補助金の計上分を引いた額。下期は会社見通しから逆算補助金込み補助金を除く4〜6月+146億円-151億円7〜9月+222億円-110億円下期の会社見通し(半期)+292億円-409億円出所: 決算説明資料、決算補足資料(2026年10月30日)

縮んだ理由は、説明資料の車載の増益要因に3つ並んでいます。北米の増販益、米国関税の影響、IRAの増加。関税については別の頁に、7〜9月に関税の還付147億円を計上したとあります。どの事業に入ったかは資料に書いていませんが、車載の増益要因に「米国関税影響」が挙がっている以上、一部は車載です。つまり補助金を除いた110億円の赤字は、関税の還付という一度きりの要素で底上げされた数字でもある。増販益と還付の内訳は、資料からは分けられません。

会社の下期見通しは、補助金を除いた赤字が広がる形

上方修正の中で、車載の通期の調整後営業利益は410億円から660億円に上がりました。補助金の通期の計上額も1,190億円から1,330億円に上がっています。差し引きの赤字は780億円から670億円へ、110億円の改善です。

ただ、上期の実績を引いて下期だけを見ると、形が変わります。車載の下期の利益は660億円から4〜6月の146億円と7〜9月の222億円を引いた292億円。補助金の下期の計上額は1,330億円から297億円と332億円を引いた701億円。差し引きは半期で409億円の赤字です。7〜9月の110億円の赤字を2倍にしても220億円ですから、会社の見通しは、下期に補助金を除いた赤字が再び広がる形になっています。

理由は資料に書いていません。考えられるのは、7〜9月の関税の還付が下期には無いこと、説明資料が減益要因に挙げる「カンザス固定費増加」、下期の想定為替が150円と7〜9月の159円より円高なこと。どれがどれだけかは、説明会の質疑の要旨が出たら読みます。

販売量のほうは、年46GWhの計画を会社は据え置きました。上期の21.6GWhを引いた残りは24.4GWhで、1四半期あたり12.2GWh。7〜9月の11.4GWhから、もう一段上げる必要があります。

北米の車載電池 年46GWhの計画の進み方2026年度の販売量。会社は計画を据え置いた22%4〜6月 10.2GWh25%7〜9月 11.4GWh53%残り(10〜3月) 24.4GWh残り24.4GWhは1四半期あたり12.2GWh。7〜9月の11.4GWhからもう一段上げる必要がある出所: 決算補足資料(2026年10月30日)

補助金の仕組みで1つ、前の記事に無かったことが書かれていました。2026年度分の補助金は「直接給付」で現金化する想定です。2024年度分は今年の4〜6月に入金済みで、顧客との有効活用分を引いた後の1,088億円が営業キャッシュフローに乗っています。45Xは2030年に25%、2031年に50%、2032年に75%減額され、2032年で終わります。

上方修正1,200億円の中身

営業利益の1,200億円の上方修正を、会社の要素別の分析で分けます。

要素 修正額
価格改定・合理化 +710億円
実質の売上増 +400億円
為替 +360億円
米国関税 +250億円
リスクの織り込みを減らす +200億円
原材料・物流費 -570億円
固定費 -50億円
その他損益 -100億円

セグメント別の調整後営業利益の修正額は、インダストリーが+500億円で最大、エナジー+270億円、エレクトリックワークス+220億円、コネクト+100億円、HVAC & CCとスマートライフはゼロです。速報が言う「AIでデータセンター向けの部品が想定超」の中身は、インダストリーの導電性コンデンサと多層基板材料です。

エナジーのデータセンター向け売上は、7〜9月が1,149億円で前年の1.6倍。ただし通期の見通し5,500億円は7月から変わっていません。エナジーの+270億円は、データセンターではなく車載(+250億円)が主です。2028年度のAIインフラ関連の売上目標は1兆3,800億円から1兆6,000億円に上がりましたが、増えた分はインダストリーで、エナジーの1兆円は据え置きです。

7〜9月の営業キャッシュフローはマイナス

7〜9月の営業キャッシュフローは489億円のマイナスでした。投資を引いたフリーキャッシュフローは1,490億円のマイナス。四半期の過去最高益の期に、本業の現金が減っています。

原因は在庫です。棚卸資産は3月末の1兆661億円から9月末の1兆2,760億円へ、半年で2,099億円増えました。在庫の回転日数は56.1日で、前年同期の51.6日から4.5日延びています。どの事業の在庫かは、短信にも補足資料にも書いていません。売上が伸びる事業の先行投資なのか、売れ残りなのかは、ここでは判断できません。

次の決算で見る所

2026年度第3四半期(10〜12月)の発表日は、IRカレンダーにまだ載っていません。前年は2月4日でした。

  • 北米の販売量。残り2四半期で24.4GWh、1四半期12.2GWhが要ります。10〜12月に12GWhに乗るか
  • 車載の調整後営業利益と補助金の計上額。会社の下期見通しを素直に読めば、10〜12月は補助金を除いて200億円前後の赤字に戻る計算です。7〜9月の110億円の赤字から広がるか、縮んだままか
  • 在庫。1兆2,760億円から減るか、どの事業の在庫かが説明されるか
  • 説明会の質疑の要旨。下期に車載の利益を抑えて見た理由が語られているか
  • 株価の見立ての答え。11月2日の終値が3,548円を上回ったかは、次の記事の最初に書きます

説明会で分かったこと(10月31日に追記)

決算の翌日、会社のサイトに説明会資料のノート付き(読み上げの原稿が付いた版)が載りました。質疑の要旨はまだ出ていません。説明者はCEOの楠見氏とCFOの和仁氏ですが、原稿にはどの頁を誰が読んだかが無いので、ここでは「会社の説明」と書きます。音声のウェブキャストはありますが、文字にはなっていません。

「質疑の要旨が出たら読む」と書いた、下期に車載の補助金を除いた赤字が広がる理由。原稿に説明はありませんでした。車載について会社が言ったのは、米国のEV販売は昨年度の一時的な落ち込みから回復基調にある、戦略パートナーからの電池の需要は引き続き強い、カンザスとネバダの両工場で生産を最大化して年46GWhを期初想定どおり供給する、の3点です。下期の販売量の内訳や、カンザスの固定費が下期にいくら増えるかは語っていません。参考頁の上期・下期の表では、エナジー全体の下期の調整後営業利益は1,019億円、利益率12.8%で、上期の15.2%から2.4ポイント下がる見通しです。

7〜9月の車載の増益の内訳も、原稿は「北米工場の増販益に加え、米国関税の還付影響等もあり、大きく増益」と言うだけで、増販益と還付を分けていません。関税の参考頁には、7〜9月の関税の負担が79億円、還付が147億円で、差し引き68億円のプラスとあります。年間では負担260億円、還付240億円で差し引き20億円のマイナス。還付240億円のうち147億円は7〜9月に入ったので、下期に残る還付は93億円です。これは会社全体の数字で、車載に入る分は書いていません。

在庫については、原稿に一言もありません。キャッシュフローの説明は、上期の営業キャッシュフロー3,231億円と、そのうち2024年度分の補助金の直接給付1,088億円が入っていることだけで、7〜9月単独でマイナスだったことには触れていません。

新しい数字は車載の外にあります。インダストリーのAI関連事業の7〜9月の売上は886億円で前年の1.6倍、年間見通しは3,100億円から3,600億円に上げました。多層基板材料は蘇州(中国)とアユタヤ(タイ)で第2期の新棟を建てることを決め、導電性コンデンサは宇治とバタム(インドネシア)で増産します。スライドには、AI関連事業へ約920億円を投資するというリリースの見出しがあります。コンデンサの受注の強さを示すBBレシオ(受注額を売上額で割ったもの)は7〜9月が1.28で、4〜6月の1.18から上がりました。

エナジーでは、データセンター向け蓄電システムのモジュールをつくるメキシコの第2工場が9月に量産を始め、第3工場は2027年度の予定です。カンザスには2028年度にデータセンター向けのセルのラインを入れ、車載向け最大32GWhとしていた構成を組み替えると参考頁にあります。和歌山の4680セルは「量産開始は顧客と最終調整中」、群馬の大泉は「顧客と協議中、2028年度以降に量産開始予定」で、前に進んだ記述はありません。補助金は、純利益への計上が7〜9月413億円、年間1,660億円(前回から180億円増)という数字も出ました。調整後営業利益に乗せる332億円と1,330億円より大きいのは、顧客と分ける分に繰延税金資産を立てているためだと注にあります。

通期の調整後営業利益7,800億円は、2028年度の目標だった7,500億円を2年前倒しで達成する水準だと会社は言っています。前倒しを言う会社が車載の下期だけ慎重に見ている理由は、質疑の要旨が出るまで分かりません。出たら読みます。

使った資料

株価は書いた日のものです。車載の黒字222億円は見立ての上に外れたのに、読み終えて残ったのは、会社自身が下期の車載を7〜9月より厳しく見ているという1行でした。