アドバンテスト(6857)の7〜9月期決算を読む。売上4,777億円で営業利益率55.9%、通期予想は1兆8,630億円に上げたが、増やしたのはSoCテスタだけ
過去の発表日は2026年10月28日。決算日の一覧
前の記事を書いたのは10月26日、決算発表の2日前でした。アドバンテスト(6857)の決算を10月28日の前に読む。7〜9月の会社予想は売上4,345億円で前期比+18%、同業のテラダインは減収を見込んでいるで、7〜9月の売上を4,550億〜4,950億円、営業利益を2,350億〜2,580億円と見立てて、通期予想は1兆8,000億〜1兆8,500億円に上がる、と書き残しました。
決算は今日10月28日の15時30分に出ました。売上4,777億円、営業利益2,668億円。売上は見立ての幅に入り、営業利益は上に外れました。通期の売上予想は1兆8,630億円で、これも私の幅の上を抜けています。読み違えた方向が全部「上」なので、この記事は見立ての修正というより、どこを低く見ていたかの記録になります。
使ったのは、今日出た決算短信、決算説明会のスライドとスライド&ノート、日本時間の今朝出たテラダインの7〜9月期のプレスリリースです。アドバンテストの質疑応答要旨は、書いている時点でまだ公開されていません。株価は10月28日の終値で書きます。決算は取引終了と同じ時刻に出たので、今日の終値に決算の反応は入っていません。
前の記事で見ると書いた所
- 売上4,550億〜4,950億円、中心4,750億円: 実績は4,777億円。幅の中で、中心との差は27億円。会社予想の4,345億円は+9.9%上回りました
- 営業利益2,350億〜2,580億円、中心2,480億円: 実績は2,668億円で、幅の上限を88億円超えました。外れです。会社予想の2,245億円に対しては+18.8%
- 営業利益率は52%前後: 55.9%でした。粗利率が71.1%まで上がり、「続かない」と会社が言っていた4〜6月の69.5%を超えています。一番読めていなかった所です
- 為替は159円台: 会社の期中平均レートは161円でした。方向も幅も、ほぼ見立てどおり
- 通期の売上予想を1兆8,000億〜1兆8,500億円に上げる: 1兆8,630億円に上がりました。みんかぶのアナリスト平均1兆7,610億円も超え、前の記事で株価が上がる条件に置いた「1兆8,000億円以上」は満たされました
- 2026年のテスタ市場の見通しが下がらないこと: 据え置きで、130億〜145億ドルのままです。SoCテスタは「上限の115億ドル近辺」、メモリテスタは「25億〜30億ドルの中央値」と、幅の中の位置も示されました
- 当期利益は評価益で振れる: 7〜9月の金融収益は147億円で、4〜6月の約447億円より小さくなりました。当期利益1,933億円が会社予想の1,632億円を上回った分の大半は、営業利益の上振れです
- テラダインが予想の上限13億ドルを超え、10〜12月の見通しを上げてくるか: 売上13.06億ドルで、上限を600万ドル超えました。10〜12月の予想は12.5億〜13.5億ドルで、中心は7〜9月の実績と同じ。上げてきた、とは言えません。4〜6月の13.29億ドルからは1.7%の減収で、減収の予想は当たっています
- 10月29日の終値が28日の終値を上回る: 判定は明日です。28日の終値は34,930円で、前日から+3.2%、前の記事を書いた26日の31,070円からは2日で+12.4%上がって決算を迎えました
今回の決算の数字
- 売上: 4,777億円。前年比+81.7%、前期比+30.0%。四半期の過去最高
- 売上総利益率: 71.1%。前期から+1.6ポイント、前年から+8.9ポイント
- 営業利益: 2,668億円、営業利益率55.9%。前年比+146%
- 当期利益: 1,933億円、1株利益267.75円
- 事業別: SoCテスタ3,533億円(前期比+36%、前年比+103%)、メモリテスタ534億円(+11%、+22%)、その他システム299億円、サービス他411億円
- キャッシュフロー: 営業で1,698億円の収入、投資で1,083億円の支出、フリーキャッシュフローは615億円。投資有価証券の残高は4,326億円で、3月末の679億円から6倍以上
- 株主還元: 中間配当49円(前年29円)。自己株式の取得を新たに上限2,800億円、1,100万株、10月29日から2027年3月24日まで
- 通期予想: 売上1兆8,630億円(7月時点は1兆7,140億円)、営業利益9,670億円(8,460億円)、営業利益率51.9%(49.4%)、当期利益7,415億円、1株利益1,027.08円。下期の為替前提は150円
数量は読めて、利益率は読めなかった
前の記事の組み立ては、為替で上に振れ、数量で少し上に振れ、利益率は会社予想並み、の3段でした。
会社予想の4,345億円を、前提の150円から161円に直すと4,664億円。実績の4,777億円との差は113億円で、数量の上振れは+2.4%でした。私は+3%を中心に置いていたので、ここはほぼ合っています。生産能力の上限で売上が決まる、という読みもそのままです。
外れたのは利益率です。会社予想の営業利益率は51.7%、私は52%前後。実績は55.9%でした。粗利率が71.1%まで上がったのが理由で、会社の説明は「収益性の高いハイエンドSoC向けテストシステムの売上が伸長したことを主因に」の一文だけです。7月の質疑では、4〜6月の69.5%には棚卸資産の評価損の戻入れが乗っていて続かない、と言っていました。私はそれを信じて52%に置きました。会社の方が自分の製品ミックスを低く見ていたことになります。
営業利益の上振れ423億円のうち、為替と数量で説明がつくのは、会社の感応度で試算して200億〜250億円です。次の予想を読むときは、売上より粗利率の前提を疑う方がいいと思いました。
1,490億円の上方修正のうち、1,315億円がSoCテスタ
通期の売上予想は1,490億円上がりました。事業別の内訳を7月時点と比べると、SoCテスタが1兆2,435億円から1兆3,750億円で+1,315億円。メモリテスタは2,270億円から2,290億円で+20億円。上方修正はほぼSoCテスタの話で、メモリテスタは据え置きと言っていい幅です。
前の記事で、メモリテスタはテラダインが伸びていて、アドバンテストは市場の広がりを6割取れていない、と書きました。テラダインは今朝のプレスリリースで、メモリの検査装置の売上が過去最高だったと書いています。アドバンテストのメモリテスタは534億円で前期比+11%、前年比+22%。SoCテスタは+36%と+103%です。会社がメモリテスタ市場を「中央値近辺」、SoCテスタ市場を「上限近辺」と言ったのも同じ構図です。
ただ、通期予想の内訳から上期の実績を引くと、メモリテスタの下期は1,276億円、四半期あたり638億円になります。7〜9月の534億円から+19%伸びる前提です。SoCテスタの下期は四半期あたり3,811億円で、7〜9月から+8%。据え置いたメモリテスタの方が、下期に高い伸びを要求されている。会社はDRAM後工程向けと不揮発性メモリ向けの増収を見込むと書いていますが、7〜9月の数字にその加速はまだ見えません。
下期の営業利益率50.1%は、7月と同じ話の先送り
通期の営業利益率予想は51.9%ですが、上期が54.0%なので、下期は50.1%です。7〜9月の55.9%から5.8ポイント下がる前提。通期の粗利率を「68%程度」と言っているので、上期の70.4%から逆算すると下期は約66%になります。
前の記事で気にしていたのは、7月の通期予想から逆算した残り3四半期の粗利率が65〜66%だったことでした。7〜9月はその前提を5ポイント超えたのに、下期の前提はまた66%です。理由も7月と同じで、メモリ半導体を中心とする部材コストの上昇。7月にも織り込んだと言っていて、7〜9月の数字には出ませんでした。出なかったのか、ハイエンドSoCのミックスが隠したのか、質疑応答要旨が出るまで分かりません。
為替も同じです。下期の前提は150円で、今日のドル円は157円台。1円の円安で通期の営業利益が58億円増えると会社は言っています。数量も利益率も為替も控えめに置いた予想を、また控えめだと読むか、今度こそ部材コストが出ると読むか。私は前者に寄っていますが、7〜9月の利益率を外した直後なので、自分の読みの重みは軽くしておきます。
次の決算で見る所
次の決算は2027年1月の予定で、IRカレンダーには月だけで日付はまだありません。その前に、11月12日にサプライチェーンをテーマにしたIR Fireside Chatがあります。
- 10月29日の終値: 前の記事の見立ての判定。条件にした通期売上1兆8,000億円以上と、テスタ市場の見通しの据え置きは満たされました。29日の朝にはアルファベットとマイクロソフトの決算とFOMCの結果も混ざります
- 10〜12月の粗利率: 下期前提の約66%に下がるのか、70%台が続くのか。部材コストが本当に出てくるかの判定になります
- メモリテスタの四半期売上: 下期の前提から逆算した638億円に届くか。届かなければ、テラダインに取られている話が続きます
- 質疑応答要旨: 公開されたら、粗利率と部材コストの説明と、SoCテスタ年間1万台の目標時期を確かめます。スライドには「当初の計画から大幅な前倒し」とだけあって、年は示されていません
- 投資有価証券: 4,326億円は時価で動くので、相場しだいで当期利益が振れます
今日の終値34,930円を新しい会社予想の1株利益1,027.08円で割ったPERは34.0倍です。前の記事の時点では34.1倍だったので、株価が12%上がった分を、予想の引き上げがちょうど吸収しました。
使った資料
- アドバンテスト、2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年10月28日、PDF)
- 同、2026年度第2四半期 決算説明会資料(スライド、PDF)
- 同、スライド&ノート(PDF)
- アドバンテスト、投資家の皆様へ(本日のお知らせ一覧)
- アドバンテスト、IRカレンダー
- Teradyne、2026年第3四半期決算のプレスリリース(2026年10月27日)
- Teradyne、Financial Results(決算資料の一覧)
- アドバンテスト 株価ページ(Yahoo!ファイナンス)
- 米ドル/円(Yahoo!ファイナンス)
株価は書いた日のものです。会社予想を10%上回る売上を当てても、利益率を外せば営業利益は幅の外に出る。装置の会社の決算で読みにくいのは台数ではなく、何を何台売ったかの中身なのだと、今回で覚えました。
この会社は半導体の地図の「試験・後工程」にいます。