盆栽の健全な成長と美しい姿を維持するためには、適切な施肥が欠かせません。施肥は樹に力をつけさせ、花つきや芽立ちを良くする目的で行います。本記事では、松柏類、花もの、実もの、雑木類など30樹種の施肥について、その適期、手順、樹種ごとの違いを解説します。
施肥とは
施肥は、盆栽の生育に必要な養分を肥料によって補う作業です。適切な施肥により、樹勢の維持や向上が期待できます。
具体的には、春の芽立ちを良くし(長寿梅)、花つきを向上させ(ドウダンツツジ)、実を付けさせ(オリーブ)、葉の成長を促す(大島桜)といった効果があります。また、芽切り(赤松・黒松)や開花(桜)、収穫(ブルーベリー)などで消耗した樹の体力を回復させる役割も担います。
適期の見極め
施肥の時期は、樹の生育サイクルに合わせて見極めます。多くの樹種では、活発に成長する春と、冬に備えて力を蓄える秋が主な施肥期間です。
春(3月〜6月)は、新芽が動き出す時期に合わせて施肥を開始します。
五葉松は芽出し前後の4月中旬頃から、黒松は3月初め頃から与えます。桜や梅などの花ものは、開花後にお礼肥として与えるのが基本です。
夏(7月〜8月)は、多くの樹種で施肥を控えるか中止します。
特に白梅は、6月から8月の花芽分化期に施肥を中止します。五葉松やケヤキも真夏の施肥は避けます。
秋(8月下旬〜11月)は、樹が冬越しや翌春の芽出しのためのエネルギーを蓄える重要な時期です。
長寿梅や紅梅は、秋にしっかり肥料を与えることで春の芽立ちが良くなります。五葉松の秋肥は、春肥の2〜3割増しを目安にします。
冬(12月〜2月)は、寒肥を与える時期です。
ブルーベリー、ドウダンツツジ、ハナミズキ、オリーブなどでは、この時期に有機肥料や緩効性肥料を与えることで、春の芽吹きが促進されます。
手順と判断基準
施肥には、土の上に固形肥料を置く「置き肥」と、水で薄めた液体肥料を水やり代わりに与える「液肥」があります。樹種や目的に応じて、肥料の種類や与え方を選択します。
肥料の種類には、油かすなどの有機肥料、効果がゆっくり現れる緩効性肥料、即効性のある化成肥料や液体肥料などがあります。例えば、オリーブの寒肥には根への負担が少ない緩効性肥料を、長寿梅の新芽が出始めた頃には水肥のハイポネックスを少量与えるといった使い分けをします。
与える量の目安は樹の大きさや状態によって異なります。白梅では4号鉢にティースプーン2〜3杯、大島桜では新梢が伸びる時期に他樹種の3〜5割増しといった基準があります。ケヤキのように月1回交換するものから、パンダガジュマルのように10〜15日に1回液肥を与えるものまで、頻度も様々です。
樹種別の違い
施肥の考え方は、樹の性質によって異なります。
- 松柏類(黒松、赤松、五葉松、真柏、杜松)
黒松や赤松で芽切りを行う場合は、事前に十分な肥料を与えて樹に力をつけておきます。真柏は、大きく成長させたい場合に窒素濃度の高い肥料が有効です。杜松は肥料を多く必要とする樹種で、春と秋に多めに与えます。
- 花もの(梅、桜、椿など)
梅や桜の仲間は、花後のお礼肥が基本です。白梅や紅梅は、夏の花芽形成期に肥料を与えすぎると花つきが悪くなるため注意が必要です。椿も花芽ができる6月〜7月は肥料を控えめにします。
- 実もの(ブルーベリー、老爺柿、オリーブ、ナンテンなど)
ブルーベリーやオリーブは、収穫後のお礼肥で樹勢を回復させます。オリーブは年に3回(2月、6月、10月など)の施肥が基本です。ヒメナンテンやキンシナンテンは、9月頃に追肥すると花つきが良くなります。
- 雑木類(モミジ、ケヤキなど)
イロハモミジやヤマモミジは肥料をあまり必要とせず、与えすぎると枝の繊細さが失われることがあります。モミジは秋肥を9月には終了させ、美しい紅葉を促します。ケヤキやニレケヤキは、春から秋の成長期に定期的な施肥を行います。
- その他(パンダガジュマルなど)
パンダガジュマルのような観葉植物は、生育期である5月〜10月の間に施肥し、成長が緩慢になる冬は与えません。
こんなやり方は要注意
花芽形成期の施肥
白梅は7月下旬から8月が花芽形成期にあたります。この時期に肥料を与えすぎると、翌年の花つきが悪くなるため避けてください。椿も花芽ができる6月から7月は肥料を控えめにします。
肥料の与えすぎ
ヤマモミジは肥料を与えすぎると枝が太くなり、持ち味である繊細さが失われることがあります。肥料は控えめに与えるのが基本です。
植え替え直後の施肥
パンダガジュマルは、植え替え直後に施肥してはいけません。根が弱っている可能性があるため、約2週間は肥料を与えないでください。
実践のコツ
作業とセットで施肥する
赤松や黒松の芽切り前には、十分に肥料を与えて樹の力を蓄えさせます。桜や枝垂れ梅は、花がら摘みや剪定の後に肥料や活性剤を与えると、樹の体力回復に効果的です。
肥料の種類を使い分ける
桜の翌年の花付きを良くするためには、リン酸分を多く含んだ肥料が効果的です。真柏を大きく成長させたい場合は、窒素濃度の高い肥料が有効です。有機肥料は、化学肥料に比べて肥料焼けの心配が少ないとされます。
季節に合わせた調整
長寿梅や紅梅は、秋(9月〜11月頃)にしっかり肥料を与えることで、春の芽立ちと花つきが向上します。ブルーベリーやハナミズキなどの寒肥は、春の芽吹きを促進する重要な作業です。


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