パナソニック(6752)の決算を10月30日の前に読む。テスラが電池の調達先に名指しする車載電池は、米国の補助金を除くと4〜6月も151億円の赤字

過去の発表日は2026年10月30日。決算日の一覧


組入銘柄とつながる日本株の3本目は、パナソニック ホールディングスです。保有投信に入っているテスラは、年次報告書(10-K)のリスクの欄で、電池セルの調達先をこう書いています。

Currently, we rely on suppliers such as Panasonic and Contemporary Amperex Technology Co. Limited (CATL) for these cells.

調達先として名前が出るのはパナソニックとCATLの2社だけです。同じ欄で、認定した供給元はごく少なく、切り替えの自由もほとんど無いとも書いています。

所長には「どんどん書いてどんどん出して」と言われています。パナソニックの決算は10月30日。半導体の記事が同じ日に並ぶのを避けて、こちらを先に書きました。

使ったのは、パナソニックの決算短信・決算説明資料・補足資料・質疑の要旨、有価証券報告書、10月に出たCFOと投資家の対話の記録、テスラがSECに出した書類、韓国LGエナジーソリューションと中国CATLの開示、それと株価と信用残の公開ページです。株価は10月26日(月)の終値で書きます。

テスラの名前は、パナソニックの資料に出てこない

先に断っておくことがあります。パナソニックの決算資料には「テスラ」という名前が出てきません。出てくるのは「戦略顧客」「戦略パートナー」です。有価証券報告書の主要な顧客の欄は、売上の10%を超える相手がいないので記載を省いています。有報の中で「テスラ」の文字があるのは、CFOの経歴にある昔の部署名「テスラエナジー事業部」だけでした。

逆に、テスラの7〜9月の四半期報告書(10-Q)にはパナソニックの名前が一度も出てきません。名前が出るのは年次報告書だけです。2社の書類を突き合わせても、テスラがパナソニックからどれだけ買っているかは分かりません。この記事で「テスラ向け」と言い切れる数字はありません。分かるのは、パナソニックの北米の車載電池の数字と、テスラがパナソニックを名指ししている、という2つです。

どんな会社か

パナソニック ホールディングスの2025年度(2026年3月期)の売上高は8兆487億円、営業利益は2,364億円でした。電池の事業はエナジーという部門で、2025年度の売上は9,842億円。そのうち車載電池の外部向けの売上は4,314億円で、会社全体の売上の約5.4%です。エナジーの売上の約76%が米州向けです。

エナジーの中は「車載」と「産業・民生」に分かれます。4〜6月の売上は車載が1,417億円、産業・民生が1,707億円で、もう産業・民生のほうが大きい。産業・民生の伸びを引っ張っているのは、データセンター向けの蓄電システムです。会社はデータセンター向けの売上を、2026年度に5,500億円、前年の約1.7倍と見込んでいます。

4〜6月の数字

  • 売上高: 2兆189億円。前年同期比+6.4%
  • 営業利益: 1,825億円。前年同期の2.1倍。調整後営業利益1,864億円は四半期の過去最高
  • エナジー: 売上3,140億円(+43.2%)、調整後営業利益414億円
  • 車載: 売上1,417億円(+33.3%)、調整後営業利益146億円
  • 想定為替: 1ドル159円。前年同期は145円

会社は7月30日に通期の予想を上げました。営業利益は5,500億円から5,900億円で、1984年度の5,757億円を42年ぶりに上回る過去最高の水準です。ただ、エナジーの予想は修正額がゼロでした。

車載電池は、補助金を除くと赤字

米国のIRA(インフレ抑制法)の45Xという制度で、米国内の工場で作った電池セルには1kWhあたり35ドルの補助が出ます。パナソニックのネバダとカンザスの工場が対象で、日本の工場は対象外です。

パナソニックはこの補助金の扱いを決めています。総額の半分を利益に計上し、残りの半分は「顧客との有効活用分」として売上から差し引く。有報では、顧客を通してEVの利用者へ還元が見込まれる額を、顧客に払うまで「返金負債」として載せていると書いています。2025年度の補助金の総額は2,134億円で、利益に入れたのが991億円、売上から引いたのが1,143億円でした。

補足資料の車載の利益から、補助金の分を引いてみました。

車載電池の利益は、補助金を除くと毎四半期赤字エナジーの「車載」。会社の数字から補助金見合いの分を引いた-600-400-2000200400億円182-6125年4-6月-169-4097-9月125-10110-12月-257-53926年1-3月146-15126年4-6月米国の補助金(IRA)の分補助金を除いた損益会社が出している調整後営業利益出所: パナソニック HD 決算補足資料から計算

4〜6月は、補助金297億円を除くと151億円の赤字です。2025年度は通年で約1,110億円の赤字でした。会社の2026年度の見通しは、車載の調整後営業利益410億円に対して補助金が1,190億円で、除くと約780億円の赤字になります。補助金を除いて黒字になる時期は、会社は示していません。

この形はパナソニックだけではありません。LGエナジーソリューションの7〜9月の速報では、営業利益7,560億ウォンのうち、北米の生産補助金を除いた分は3,391億ウォン。補助金が営業利益の約55%を占めています。補助金の控除額は2030年から減り始め、2032年で終わります。

北米の販売量

北米の工場の車載電池の販売量は、2024年度38.1GWh、2025年度38.7GWhでほぼ横ばいでした。2026年度の計画は46GWhです。4〜6月は10.2GWhで、計画に届いていません。カンザス工場の既存ラインの本格稼働が遅れたためで、会社は7月の質疑で、苦戦の原因は材料や設備ではなく社内のオペレーションの習熟だと答えています。

年46GWhの計画を守るなら、残り3四半期で35.8GWh、1四半期あたり約11.9GWhが要ります。会社は7〜9月以降でネバダとの生産を連携させて挽回すると言っています。

需要の側について、会社は「戦略顧客からは、車両ミックスの変更あるも、デマンドは依然高い水準を継続」と書いています。テスラの7〜9月の株主向けレターも、電池の調達が台数を増やすうえでの制約だと書いていました。テスラの7〜9月の納車は486,532台で前年比-2%、自動車の売上は205億6,000万ドルで-3%です。米国での売上は124億9,500万ドルで、前年同期から14.4%減りました。台数が伸びない中で、テスラは電池が足りないと言っている。電池が足りない理由のどこまでがパナソニックの供給の遅れなのかは、どちらの資料からも分かりません。

テスラは自社でもセルを作っています。テキサスの4680セルは年40GWh超で生産中、ネバダのLFPセルは年7GWhで立ち上げの初期です。パナソニックの和歌山の4680セルは、量産の開始を「顧客と最終調整中」と書いたままです。

カンザスの電池は、データセンターに回る

会社は10月の投資家との対話で、カンザス工場はEV向けに建てたが、EVの伸びが鈍った一方でデータセンターのバックアップ電源(BBU)の需要が急に増えたので、EV向けの投資をBBUに回す好機だと話しています。カンザスには2028年度にデータセンター向けのラインを入れます。BBUの主な顧客は米国のハイパースケーラーで、10年近く導入と実証を重ねてきたそうです。

一方で、BBU向けのセルは用途や設計が違うので、今のところIRAの補助は受けにくいとCFOは答えています。車載のラインをデータセンター向けに回すと、売上は伸びても、1kWhあたり35ドルの補助は付かない可能性がある。補助金を除くと赤字の車載から、補助金の無いデータセンター向けへ。カンザスの使い道の変更は、利益の出方を変えます。

株価と需給

株価は10月26日の終値で3,581円です。8月14日に日中の高値4,982円を付け、そこから28.1%下げました。年初からは+77.0%です。

株価と移動平均線(この1年)2025年10月27日〜2026年10月26日の終値(円)1,0002,0003,0004,0005,00026年1月26年4月26年7月26年10月10月26日 3,581円終値25日線75日線200日線出所: Yahoo Finance の日足から作成

10月26日の終値は、25日線(4,272円)と75日線(4,274円)の下、200日線(3,458円)の上です。

過去4回の決算の翌営業日の値動きは、2025年10月が-6.52%、2026年2月が+8.41%、5月が-3.82%、7月が+19.53%でした。7月は通期予想を上げた決算です。

信用取引の買い残は10月23日時点で268万3,400株、売り残は36万8,200株で、倍率は7.29倍(株探)。高値を付けた8月14日の週の買い残168万3,500株から、59.4%増えています。株価が下がる中で買い残が積み上がっている形で、決算で上げたときには戻り売りが出やすいと思います。

7〜9月の見立て

決算は10月30日(金)の発表です。会社のIRカレンダーに時刻は書かれていません。直近の四半期決算はどれも15時30分に開示されていて、東証の取引が終わる時刻と同じです。株価の反応は、週明けの11月2日(月)に出ると見ています。

四半期の会社予想はありません。会社は通期の予想しか出していません。

項目 4〜6月の実績 7〜9月の見立て
北米の車載電池の販売量 10.2GWh 11.0〜12.5GWh
車載の調整後営業利益 146億円 100億〜200億円
うち補助金を除いた分 -151億円 赤字のまま

中心は北米の販売量11.5GWh、車載の調整後営業利益150億円です。

組み立ては3段です。

  1. 販売量は戻るが、計画の1四半期あたり11.9GWhには少し届かないと見ます。会社は挽回すると言っていますが、カンザスの遅れは社内の習熟の問題で、1四半期で取り戻せる種類のものではないと思うからです
  2. 車載の利益は、補助金が販売量に比例して増える分だけ上がり、補助金を除いた赤字は続くと見ます。補助金は1kWhあたり35ドルなので、販売量が増えれば補助金も増えます。カンザスの固定費は本格的にかかり始めています
  3. 会社全体では為替が上に振れます。通期の前提1ドル145円は、4〜6月の実績159円を含めた平均なので、残りの3四半期は平均140円台前半の円高を置いている計算です。7〜9月のドル円は、Yahoo!ファイナンスの日々の終値の平均で159.33円でした。会社の感応度は、1円の円高で年間の調整後営業利益が30億円減るというものです

株価の見立ては、11月2日の終値が10月30日の終値を上回る、です。条件は、通期の営業利益の予想が5,900億円から上がること。為替の分だけでも上げる余地があると見ています。予想が据え置きなら、積み上がった買い残が売りに回って下げると見ます。外れたら外れたと次の記事に書きます。

気になっていること

補助金の半分を「顧客との有効活用分」として売上から差し引いている点です。2025年度で1,143億円。有報の書き方では、顧客を通してEVの利用者に還元する額です。この顧客が誰なのか、資料には書かれていません。北米の工場の車載電池の大口の顧客として、テスラがパナソニックを名指ししている以上、多くはテスラに渡っていると考えるのが自然です。ただ、それは私の推測で、資料のどこにも書いていません。

もう1つは、45Xが2030年から減ることです。補助金を除くと年1,000億円前後の赤字の事業が、補助金の縮小までにどこまで改善するか。会社は「2026年度以降は収益改善に向けて進展していく見通し」としか書いていません。カンザスをデータセンター向けに回すのは、その答えの1つなのだと思います。

使った資料

その後の決算は「パナソニック(6752)の7〜9月決算を読む。車載電池は222億円の黒字でも補助金を除くと110億円の赤字、会社の下期見通しは半期409億円の赤字に広がる計算」で読みました。