AIAグループ(1299)の2026年第3四半期を読む。会社は四半期でなく「9月」で語り、香港の本土客は「横ばい」から「様子見」になった

過去の発表日は2026年10月30日。決算日の一覧


前の記事AIAグループ(1299)の2026年上期決算を一次ソースで読む。香港の中国本土客は「横ばい」、タイは「前年が異常」、それでも利益は目標超えを書いたのは10月18日でした。そこで「次は10月30日の第3四半期の新契約の発表」と書いた、その日が今日です。朝に香港取引所へ7ページの発表が出ました。

今回出るのは新契約価値(VONB)だけで、利益も配当も出ません。説明会もありません。発表の末尾に「この四半期の発表では、メディアと投資家向けの電話会議は行わない」とあり、前年の同じ発表にも同じ一文があるので、今回だけ逃げたわけではない。ただ、今回は電話会議が無いことが効く内容でした。理由は後で書きます。

使うのは今日の第3四半期の発表、比較用の前年第3四半期(2025年10月31日)の発表、4月30日の第1四半期の発表、8月20日の上期決算、3月19日の2025年通期決算です。VONB などの言葉の説明は前の記事に書いたので繰り返しません。所長はこの決算について何も言っていません。

前の記事で見ると書いた所

  • 香港の本土客。「6月が最も多い月」の勢いが7〜9月に続いたか: 続きませんでした。香港の VONB は7〜9月で-3%。会社の説明は「2025年7月の例外的な販売」が主因で、8月と9月を合わせると+20%。本土客については「海外投資をめぐる広範な報道の中で、一部の客が様子見の姿勢を取った」と書かれています。上期の「概ね横ばい」から言い方が変わりました。
  • タイ。反動は第2四半期で終わり、第3四半期は素直に伸びるか: 当たりました。+9%。代理人と銀行の両方が伸び、保障と変額(ユニットリンク)の商品が VONB の93%。医療・重大疾病・変額の市場シェアは50%超のままです。
  • 中国本土の銀行経由。「報行合一」の移行期がどう出るか: 悪い方に出ました。銀行経由の VONB は「前年比で高い2桁の減少」。ただし四半期の中で月を追って回復し、9月の販売量は「前年をわずかに下回る程度」。「報行合一」という言葉は今回の発表に出てきません。
  • グループ全体で、第2四半期の+8%程度から戻るか: 戻らず、-5%でした。7〜9月の VONB は14.15億ドル、前年同期は14.76億ドル。ただし9月単月は「+25%超」。1〜9月では46.27億ドル、+5%です。

4つのうち素直に当たったのはタイだけで、あとの3つには「四半期は悪いが、9月は良い」という同じ形の答えが返ってきました。

今回の決算の数字

四半期の発表なので項目は少なく、前年比は為替を固定したものです。

  • VONB(新契約価値): 14.15億ドル。前年比-5%。前の四半期(4〜6月)は14.6億ドル、1〜9月の累計は46.27億ドルで+5%
  • VONB利益率: 63.5%。前年同期は58.2%で、5.3ポイント上がった。1〜9月では58.9%
  • 年換算新契約保険料(ANP): 22.37億ドル。-13%。減ったのは「主に中国本土」
  • 保険料収入(TWPI): 128.92億ドル。+7%
  • 市場別の VONB の前年比: 香港-3%、中国本土-33%、タイ+9%、シンガポール+22%、マレーシア+10%、その他11市場+14%。香港と中国本土を除くと+18%
  • 利益の目標: 2023〜2026年の OPAT の1株あたり成長率「年9〜11%」は「超える見込み」のまま

市場別の金額は出ていません。四半期の発表は伸び率だけです。

利益率が5ポイント上がったのは、保険料が13%減ったのに VONB が5%しか減っていないからです。前年の7〜8月に中国本土で「9月1日の業界一斉の料率改定」の前に駆け込みがあり、今年はその分が落ちた。残ったのは利益率の高い方で、中国本土の代理人が売った VONB の46%が保障商品です。会社は「中国本土の商品と販路の構成が有利に動いた」と書いていますが、利益率の低い売上が消えた結果でもあります。

AIAグループ 四半期の新契約価値(VONB)2026年第3四半期まで。第2四半期は上期から第1四半期を、第4四半期は通期から1〜9月を引いた値0510152025億ドル152025Q113.42025Q214.82025Q3122025Q417.62026Q114.62026Q214.22026Q3VONB(新契約価値)出所: 各期の新契約の発表、2025年通期・2026年上期の決算発表

四半期ごとに並べると、今年の7〜9月の14.2億ドルは4〜6月の14.6億ドルとほぼ同じ水準です。落ちたのは今年ではなく、前年の7〜9月が14.8億ドル(当時+25%)と突出していた。会社の「前年が異常」という説明は、数字の上では筋が通っています。

会社が「9月」で語り始めた

今回の発表で引っかかったのは、数字より語り方です。8月の説明会で CEO は「四半期の数字に注目しすぎないでほしい」と言っていました(前の記事に書きました)。今回の発表は、その四半期がマイナスになった途端、月の数字を並べています。グループは「9月に+25%超」、香港は「8〜9月で+20%」、中国本土の代理人は「9月に優れた伸びに戻った」、銀行経由は「9月の販売量は前年をわずかに下回る程度」。冒頭の要点4つのうち1つが9月の話で、CEOのコメントの最初の段落も9月で締めています。

7月については「2025年7月の例外的な販売」としか書いていません。香港の7〜9月が-3%で8〜9月が+20%なら、7月はかなり落ちています。どのくらいかは資料に無い。前年の第3四半期の発表を開くと香港は+40%で「四半期の記録」とあり、7月が異常に高かったという説明とは合います。ただ、それなら8月20日の上期決算の時点で「7月は前年の反動で落ちた」と言えたはずで、当時の説明会で下期の伸びを聞かれた CEO の答えは「4つの成長エンジン」でした。

電話会議が無いので、「7月は何%だったか」「8月と9月のどちらが強いのか」を聞く場がありません。月の数字を会社が選んで出し、こちらは聞き返せない。四半期の数字の方が、まだ公平です。

AIA香港 7〜9月の新契約価値、客の2つの層香港全体は-3%。住民向けは強いまま、中国本土から来る客は「様子見」。会社は8〜9月と9月の数字で語る伸び続ける海外投資の報道で様子見香港の住民非常に強い伸びが続くAIA香港7〜9月のVONB -3%中国本土から来る客一部が「様子見」7月は前年が「例外的」、8〜9月は前年比+20%本土客の7〜9月は「2024年のどの四半期より2桁%高い」グループ全体: 7〜9月 -5%、9月だけなら +25%超上期の発表では本土客は「概ね横ばい」だった出所: 2026年第3四半期の新契約の発表、2026年上期決算の発表

本土客、「横ばい」から「様子見」へ

香港の中身です。香港の住民向けは「第3四半期も非常に強い伸びが続いた」。中国本土から来る客(会社は CMV と呼ぶ)は「海外投資をめぐる広範な報道の中で、一部の客が様子見の姿勢を取った」。上期の発表は「前年の高い水準に対して概ね横ばい」で、説明会では「税金が香港の長期保険の需要を動かしたことは一度も無い」でした。2か月で「横ばい」が「様子見」になった。

会社が「需要は底堅い」と言う根拠も変わりました。上期は「新規顧客25,000人超、継続率99%」。今回は「第3四半期の本土客の VONB は、2024年のどの四半期よりも2桁%高い」。比べる相手が前年ではなく2年前です。2025年と比べて書けないから2024年と比べている、と私は読みました。報道が何を指すのかは資料にありません。前の記事で調べなかった837号令も、今回の発表には出てきません。

前の記事の上期は、住民向けが+23%、本土客が「横ばい」で、香港全体が+10%でした。住民向けが強いままなら、香港の数字は本土客次第です。そして本土客の数字を、会社は四半期では出してくれません。

AIAグループ 市場別のVONB前年比、前年と今回2025年7〜9月と2026年7〜9月。前年に大きく伸びた香港と中国本土だけがマイナス。その他11市場の前年は横ばい(0%)2025年7〜9月2026年7〜9月グループ+25%-5%香港+40%-3%中国本土+27%-33%タイ+20%+9%その他11市場0%+14%出所: 2025年・2026年の第3四半期の新契約の発表(為替固定)

発表の奥、金利の節が増えて、投資の節が消えた

今回の発表には前年の同じ発表に無い節があります。「米国金利への感応度」。「最近の米国金利の上昇を受けて」、米国の金利曲線が0.5%平行に上がるとグループの EV(保有契約の価値)が1%下がり、株主資本比率はわずかに上がる、と書いてあります。

前の記事で、上期決算の感応度は「金利が0.5%上がると-1.7億ドル(-0.2%)」と書きました。今回は-1%で、6月末の EV 805.6億ドルに当てると8億ドル前後。5倍違います。上期の表は全通貨の金利を一斉に動かした数字で、注記に「市場ごとに向きと大きさが違い、合算すると相殺される」とあります。米国の金利だけが上がると相殺が効かない。会社がわざわざ米国だけの数字を出したのは、聞かれる前に答えたということでしょう。それでも1%なら小さい、という会社の言い分には同意します。

代わりに、前年の第3四半期の発表にあった投資ポートフォリオの節(中国本土の地方政府の融資平台16億ドル、不動産9億ドル、格下げの額など)は今回ありません。4月の第1四半期の発表にも無かったので、四半期の発表から外したようです。聞かれなくなったから外したのか、出したくないから外したのかは分かりません。

株価です。10月30日の終値は75.40香港ドルで、前日比+5.2%。前の記事を書いた10月16日の73.30から+2.9%で、1月29日の高値90.95からは-17%です。四半期が-5%でも株が上がったのは9月の+25%超が効いたのだと思いますが、理由は私の推測です。

次の決算で見る所

次は2027年3月の2026年通期決算です。会社の財務カレンダーに2027年の日付はまだ出ていません。

  • 10〜12月の VONB。会社は「比較の正常化で第4四半期は強い勢い」と言っています。前年の10〜12月は12.0億ドルで、2025年で一番低い四半期なので、9月の+25%超が続けば通期は+10%前後に戻ります
  • 香港の本土客。通期決算では市場別の金額と本土客の顧客数が出ます。「様子見」が数字でどのくらいか
  • 中国本土の銀行経由。9月に「前年をわずかに下回る程度」まで戻ったのが、10〜12月でプラスになるか
  • OPAT の目標超えの確定と、2026年分の自社株買いの額

使った資料

組入比率は投資信託のデータと同じ2026年9月30日の月次レポートです。株価は書いた日のものです。

四半期が悪い時に月を出す会社は、四半期が良い時には月を出しません。前年の第3四半期の発表を読み返して、7月の数字がどこにも無いことを確かめた時に、そう思いました。

この会社はお金の地図の「保険」にいます。