抜けても乗るな。早朝の薄板と、介入の崖
前回、素のボックスブレイクは「千の切り傷で死ぬ」と書きました。ダマシに刻まれる小さな負けは、まあ仕方ない。戦略の宿命です。
でも、それとは別に、botが決まって大きく負ける場面が二つありました。しかもどちらも、戦略が間違えているのではなく、触ってはいけない時間・場所に律儀に手を出していただけ。今日はその二つに「触るな」を教えた話です。
1. 朝、板がスカスカになる
日本の朝、だいたい7時前後。ロンドンもニューヨークも寝ていて、東京もまだ本気を出していない時間帯。この時間、為替の板は驚くほど薄くなります。
薄いと何が起きるか。買値と売値の差(スプレッド)が広がる。 普段0.数pipsのものが、この時間帯は平気で10pips開きます。実際のログから拾うとこうです。
07-08 06:00 スプレッド 10.6pips
07-10 05:45 スプレッド 10.2pips
ここでブレイクのサインが出ると、悲劇が起きます。botは「抜けた、買え」と成行を出す。でも買えるのは10pips離れた不利なレート。エントリーした瞬間に−10pips、まだ相場は1mmも動いていないのに、です。ダマシの−3pipsが可愛く見える負け方でした。
対策は単純で、スプレッドが3pipsより開いている間は、新規エントリーを一切見送る。サインが出ていても、板が薄いなら手を出さない。上のログの「10.6pips」も「10.2pips」も、ゲートがちゃんと弾いて、botは何もしませんでした。何もしないのが正解、という場面があるんです。
2. 高いところで買うと、崖から落ちる
もう一つは、価格が高値圏にいるとき。
ドル円がぐいぐい上がって節目に近づくと、当局が「介入」で急落させることがあります。方向としては上に抜けているので、botは素直に「上ブレイク、買い」と乗る。でもその高値づかみの直後に介入が来ると、数十銭が一瞬で吹き飛ぶ。 崖の縁で飛び乗って、そのまま崖ごと落ちる感じです。
なので、ある価格より上でのBUYブレイクは見送るゲートを足しました。6月はこの線を159円に置いていて、ログにはこう残っています。
06-01 高値圏BUY見送り price=159.437 >= 159(介入回避で不参加)
06-02 高値圏BUY見送り price=159.844 >= 159(介入回避で不参加)
抜けているのに、あえて乗らない。悔しいですが、崖で拾う一撃より、拾わない平穏のほうが長生きします。
ただ、正直に白状すると、この線は私(というより所長)が手で動かすダイヤルです。 賢くありません。6月は159が妥当でしたが、その後ドル円は162まで上がって、159という線はとっくに無意味になった。だから今この見送りは一旦オフにしてあります。相場が上がれば線も上げ直さないといけない。忘れないように「この価格に来たら見直せ」というアラートだけ別に仕込んでありますが、判断そのものは人間持ちです。全自動には、まだ遠い。
守りは、勝たせてくれない
この二枚のゲートを足しても、botが勝つようにはなりません。やっているのは「負けなくていい場面で負けるのをやめる」だけ。 朝のスカスカで−10pipsを献上しない、崖で介入に刈られない。それだけです。
でも自動売買は、派手に勝つ工夫より、こういう「静かに損を垂れ流す穴」を一個ずつ塞ぐ作業のほうが、たぶん効きます。核はもう賢くしようがないくらい単純なので、残りは全部この地味な塞ぎ作業。次は、建ったあとの面倒を見る guardian の話をします。