黒松の鉢上げと若枝づくり(年3〜5) — 種から完成樹までの道筋
この段階の俯瞰
種まきから3〜5年が経過し、単なる苗木から「盆栽」としての骨格を形成し始める時期に該当します。ホームセンター等で入手できる安価な黒松の苗(樹高5cm程度のものなど)を購入し、ここからミニ盆栽の作成をスタートさせることも可能です。この段階の主な目的は、初めての鉢上げ(植え替え)による根の整理と、将来の樹形を決定づける幹元への強い曲付け、そして枝数を増やすための若枝づくりにあります。
やる作業
植え替え(鉢上げ)と根の整理
黒松の若木は、成長に合わせて2〜3年に1回の頻度で植え替えを行います。最適な時期は春の3月20日から4月中旬にかけて、あるいは秋のタイミングです。
ポット苗などで育った黒松の苗木を鉢から抜き、根を整理してミニ盆栽用の鉢に仕立て直します。この鉢上げ作業によって根の張りをコントロールし、盆栽としての細かな根を作っていく第一歩となります。
針金による曲付け(方向付け)
まだ曲の入っていない直幹状の苗木に対し、針金を掛けて幹模様をつける作業を行います。
若木のうちから幹模様をつけておくことで、将来幹が太くなってから曲げるよりも木への負担が少なく、その後の樹作りが格段に楽になります。
曲付けの際は「根元から曲げる」ことが最大のポイントです。苗木のうちに幹元を極端に強く曲げ込んでおくと、成長して幹が太る過程で曲げた部分同士が癒着します。この癒着を利用することで、短い期間で立ち上がり(根元から最初の枝までの幹)が太く力強い素材を作ることができます。
剪定と若枝づくり
黒松は新芽が勢いよく伸びる春の時期には剪定を控え、まずは樹勢を落とさないよう肥料と水を十分に与えることが育成の基本です。
将来の枝数を増やすためには、幹の近くに生えている「ふところ枝」を枯らさずに維持することがカギとなります。間延びした枝先だけでなく、幹に近い位置にある芽や小枝を保護しながら日照を確保し、若枝を育てていきます。
水やり
盆栽の水やりは基本中の基本でありながら、枯らす原因となることが最も多く、プロの世界でも「水やり3年」と言われるほど奥の深い作業です。
水を与える際の適切な量は、鉢の底から水がチョロチョロと漏れてくる状態が合格のサインです。使用する道具は、ホームセンターで数百円程度で購入できる一般的なジョーロで十分対応できます。
季節ごとの水やりの目安は以下の通りです。
* 春・秋:1日1回(または1〜2日に1回)
* 夏(7月〜8月):乾燥が早いため、1日2回(朝・夕)
* 冬:3〜5日に1回程度
また、葉に直接水をかける「葉水」を行う場合、夕方に実施すると葉が長くなる原因になるため、日中の時間帯に行うのが適しています。
道具・用土・環境
* 日照管理
黒松は赤松に比べて葉が硬く、濃い緑色をしているのが特徴です。この特有の色味と力強い質感を維持するためには、年間を通じて日当たりの良い場所で管理し、十分な日照を確保します。
* 病害虫予防
夏場は乾燥しやすく、また風通しが悪いと病害虫が発生しやすくなります。朝夕の水やりを徹底するとともに、定期的な殺菌剤の散布を行って予防に努めます。
判定基準(次段階に進めるか)
この段階を終え、次のステップ(枝棚の形成や葉すかし等)へ進むための目安として、以下の点を観察します。
* 幹元の曲と癒着:根元に掛けた針金による強い曲が定着し、幹が太るにつれて曲げた部分の癒着が始まっているか。立ち上がりに太さを感じるようになっているか。
* ふところ枝の維持:幹の近くにある「ふところ枝」が枯れ落ちずに残っており、将来の枝の分岐点となる芽数が十分に確保されているか。
* 樹勢の回復:鉢上げ(植え替え)や針金掛けの負担から回復し、春に力強い新芽を展開しているか。
失敗例とリカバリー
* 太ってからの無理な曲付けによる枝折れ
幹が太く硬くなってから無理に模様をつけようとすると、木への負担が大きくなり、最悪の場合は幹や枝が折れてしまいます。曲の入っていない苗木を入手したら、若く柔軟なうちに根元からしっかりと曲を入れておくことでこの失敗を回避できます。
* 夕方の葉水による葉の徒長
良かれと思って夕方に葉水を与え続けると、黒松の葉が間延びして長く伸びてしまい、引き締まった姿が崩れてしまいます。葉水は必ず日中に行い、夕方以降は葉が乾いた状態で夜を迎えさせるようにします。
* 水切れによる枯死
特に真夏は小さな鉢ほど乾きが早く、1日でも水やりを怠ると致命傷になります。夏場は朝夕2回の水やりを徹底し、鉢底から水が抜けるのを確認するまでたっぷりと与えます。

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