投資信託の組入銘柄は運用会社の月次レポートで見る。第三者サイトは半年古かった
見に行くのは、運用会社が毎月出している月次レポートのPDFです。証券会社や第三者サイトに並んでいる「組入上位10銘柄」は、決算期の運用報告書から拾った数字であることがあり、そのぶん古い。
どれくらい古いか。ここで扱ったファンドをみんかぶで引いたら、基準日が2026年2月20日でした。半年前です。別コースは2025年8月20日で1年前。同じファンドの同じ「上位10銘柄」なのに、コースによって基準日が11か月ずれていました。しかも5位に載っていたETFは、最新の月次レポートでは上位10から消えています。
作業として面倒なのはPDFのほうで、テキストを抜くと表の行順が壊れます。その直し方と検算のしかたが、この記事の中身です。
銘柄の並びだけ見たい方は、常設ページの /funds/ にどうぞ。この記事と同じ台帳を置いてあり、株価は毎日取り直しています。以下は、そこに行き着くまでの話です。
所長の無茶ぶり
所長が「フィデリティ・グロースオポチュニティとフィジカルAIのファンド、調べて」と言い出しました。名前が似ているようで全然違う2本です。片方は2023年設定の世界成長株、もう片方は2026年4月設定のテーマ型。
基準価額と手数料はどこの証券会社のページにも載っています。問題はその次でした。
「組入上位は分かる? 何銘柄まで?」
第三者サイトの組入銘柄は、思ったより古い
みんかぶで組入銘柄を引いたら、上位10銘柄がきれいに並んでいました。エヌビディア9.51%、マイクロソフト8.14%、アルファベット7.78%。5位に「プロシェアーズ S&P 500 ダイナミック バッファー ETF」が6.56%で入っている。
基準日を見たら 2026年2月20日 でした。半年前です。
Bコースのほうを見ると今度は 2025年8月20日。1年前。どちらも決算期のデータで、運用報告書から拾ってきた数字です。同じファンドの同じ「組入上位10銘柄」なのに、コースによって基準日が11か月ずれている。
半年あればポートフォリオは変わります。実際、最新の月次レポートを見たらそのバッファーETFは上位10から消えていました。第三者サイトの数字をそのまま記事に書いていたら、存在しない構成を紹介するところでした。
運用会社が毎月出しているレポートを直接読むしかありません。
pdftotext が入っていない
大和アセットマネジメントの月次レポートPDFを落として、pdftotext を叩いたら command not found。このMacにpoppler が入っていませんでした。
brew install poppler を打とうとして、やめました。1本のPDFのために2分のビルドを待つのは順序が逆です。venv を切って pypdf を入れました。こちらは3秒。
抽出したテキストがこれです。
アメリカ 3.7%
アメリカ 3.9%
4.0%
アメリカ 4.2%
アメリカ
...
DOORDASH INC CLASS A
SPACE EXPLORATION TECHNOLOGIES COR
QXO INC
SAMSARA INC CLASS A
...
CLOUDFLARE INC CLASS A
TESLA INC
銘柄名の列、業種の列、国の列、比率の列が、それぞれ別のかたまりになって出てきます。しかも銘柄名の並びが「4位、5位、6位、7位、8位、9位、1位、2位、3位、10位」という順番。PDFの描画順がそのまま出ているだけで、表の行としては壊れています。
比率も10個ありますが、どれがどの銘柄のものか分かりません。
業種の列で組み直して、比率で検算する
最初、業種の列を手がかりに並べました。業種名は9個が固まって出ていて、その順番が素直にランク順に見えたからです。クラウドフレア8.7%、テスラ8.6%、メルカドリブレ6.6%。
もっともらしい。実際そう書きかけました。
念のため extract_text の visitor_text でY座標を拾い直したら、別の並びが出てきます。1位がオーロラ・イノベーション、2位がクラウドフレア、3位がテスラ6.6%。最初の読みと3位以下が全部ずれている。
どちらが正しいか。決め手は同じページの業種別構成比でした。
自動車・自動車部品 6.6%
このファンドの上位10銘柄で自動車セクターはテスラ1社だけです。セクター全体が6.6%なら、その中の1銘柄が8.6%であるはずがない。最初の読みは、ここで破綻します。
同じ検算を続けると、消費者サービス4.6%=ドアダッシュ1社、電気通信サービス4.4%=スペースX1社で、座標順の読みとぴったり一致しました。上位10の合計も53.6%で、レポート記載の53.7%と端数分だけ違う。座標順が正解です。
表の順番を目で見て決めるのは危ない、という当たり前の話でした。検算できる数字が同じ紙の上にあったのが救いです。
「ロックアップ解除」と書いてあった
組み直した フィジカルAI ファンドの6位に、Space Exploration Technologies Corp、4.4% が入っていました。スペースXです。
私はこれを未上場として台帳に載せました。ティッカーの欄を空にして、チャートの代わりに「未上場のため株価チャートはありません」と出るようにして、公募投信が未上場株を4%超で持っているのは珍しい、という一文まで添えて。
所長の返事は一行でした。
「スペースXはこの前上場したよ」
2026年6月12日、ナスダック上場。ティッカーは SPCX。調達額で史上最大のIPOです。
まずいのは、疑う材料を自分で引用していたことです。同じ月次レポートのファンドマネージャーのコメントに、7月にスペースXの株価が下がった理由として「ロックアップ解除による株式需給悪化への懸念」と書いてある。ロックアップ解除は、上場した会社にしか起きません。
読んで、引用して、そのうえで未上場と書きました。表の並びは3回検算したのに、自分が最初から持っていた前提のほうは一度も疑わなかった。実際の解除は8月6日から始まっていて、7月末のレポートはそれを織り込みにいく動きを記録していたことになります。
運用チームの位置づけは「スターリンクがAIを実装した工場や自動車、ロボットの円滑な稼働を支える通信インフラになる」。ロケット会社を通信インフラとして買っている、という理屈です。
配色を目で決めようとして怒られた
台帳ページを作るにあたって、2本のファンドを色で区別することにしました。世界成長株のほうを深緑、フィジカルAIを錆色。落ち着いていて、いい感じに見えました。
色覚多様性のチェッカーにかけたら FAIL。
[FAIL] CVD separation #8A4B2A ↔ #25604A ΔE 4.5 (protan)
緑と錆色は、P型・D型の色覚では区別がつきません。ΔE 4.5 は「ほぼ同じ色」です。見た目が上品だからといって、情報を色に載せていい理由にはならない。
青とオレンジに振り直して再実行。ΔE 20.5、全項目PASS。第一印象で決めた配色が機械に否定されるのは、悔しいですが健全です。
取りに行けるものと、投げるもの
株価を埋めようとして、Yahoo!ファイナンスも Stooq もこのマシンのIPから弾かれました。429と403。Stooqにいたっては、SHA-256を総当たりさせて「ブラウザであること」を証明させるbot対策が挟まっていて、CSVを1本落とすだけなのにえらい大仰なことになっていました。
素直に返してきたのは api.nasdaq.com の公開エンドポイントでした。APIキー不要、NYSE上場の銘柄も引ける。20銘柄ぶんの終値・前日比・時価総額・52週レンジが6秒で揃います。
チャートのほうは取りに行きません。TradingView の埋め込みウィジェットを、スクロールして見えたときだけマウントする。20枚のiframeを最初から全部読むとページが重くなるので、IntersectionObserver で近づいたものから順に。
結果として、このページには基準日の違う数値が2種類同居しています。組入比率と構成比は月次レポートの 7月31日、株価と基準価額は 8月26日 の終値。混ぜると意味が壊れるので、枠を分けて日付を明記しました。以下がその台帳です。
monthly report / 2026-07-31
投資信託のデータ
投資信託2本ぶんの基準価額と純資産の推移、組入上位銘柄20件。運用会社が出している月次レポートと日次の公表値から起こしていて、第三者サイトより新しい基準日で載せている。
フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド
日本を除く世界の成長株。実態は米国メガテックの塊。
追加型投信/海外/株式
マザーファンドを通じて、主に日本を除く世界の上場企業株式に投資する。世界の拠点のアナリストによる企業分析と直接面談を軸にしたボトム・アップ・アプローチで、成長性と株価の割安度の両面から銘柄を選ぶ。
直近 2026年9月9日
- Bコース
- 28,283円 +0.07%純資産 5,821億円
- Dコース
- 11,255円 +0.07%純資産 12,995億円
Bコース(為替ヘッジなし・年1回決算)
Dコース(為替ヘッジなし・毎月決算/予想分配金提示型)
分配金を受け取らず再投資したとすると 28,045円。基準価額 11,247円との差が、これまでに払い出されたぶん。
分配金の実績 Dコース(為替ヘッジなし・毎月決算/予想分配金提示型)
- 直近12回の合計
- 3,100円
- 基準価額(2026-09-08)に対する割合
- 27.6%
この割合は運用の利回りではありません。予想分配金提示型は、決算日前営業日の基準価額に応じてあらかじめ決めた金額を払い出す仕組みで、原資には元本の払い戻し(特別分配金)が含まれることがあります。分配金はそのぶん基準価額から差し引かれるため、受け取った金額だけ基準価額は下がります。運用の成果を見るには、上のチャートの「分配金再投資」の線を見てください。
| コース | 基準価額 | 純資産 | 1年 | 3年 | 設定来 | NISA |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A為替ヘッジあり | 19,657円 | 148.0億円 | +9.86% | +63.20% | +96.57% | 成長投資枠 |
| B為替ヘッジなし | 28,153円 | 5,503.4億円 | +23.04% | +114.43% | +181.53% | 成長投資枠 |
| C毎月決算・予想分配金提示型/為替ヘッジあり | 10,620円 | 63.7億円 | +10.58% | +63.73% | +96.20% | 対象外 |
| D毎月決算・予想分配金提示型/為替ヘッジなし | 11,389円 | 12,004.0億円 | +23.12% | +113.25% | +179.13% | 対象外 |
A・Bコースは NISA 成長投資枠の対象。C・Dコースは NISA の対象外。
- 運用会社
- フィデリティ投信
- 運用の委託先
- FIAM LLC(米国)
- 受託会社
- 三菱UFJ信託銀行
- 設定日
- 2023年3月29日
- 信託期間
- 無期限
- 購入時手数料
- 上限3.30%(税抜3.00%)
- 信託報酬
- 年1.6445%(税抜1.495%)
- 信託財産留保額
- なし
- 組入銘柄数
- 76銘柄
- 上位10銘柄で
- 52.2%
業種別
国・地域別
組入上位10銘柄
2026年7月31日現在株価・52週レンジ・時価総額は2026年9月9日の終値。各カードのチャートは TradingView の現在値(遅延)なので、そのあと市場が動いていれば上の株価とは一致しない。
エヌビディアNVIDIA
AI学習・推論用GPUで事実上の標準。CUDAという開発環境ごと押さえているのが競争優位の中身で、チップ単体の性能競争にはなっていない。このファンドの最大保有であり、上位10銘柄の1割弱を1社で占める。
アルファベット(クラスC)Alphabet Class C
Google検索・YouTube・Android、そしてクラウド。自社設計のTPUで学習基盤を内製している点が他のメガテックと違う。議決権のないクラスCでの保有。
マイクロソフトMicrosoft
Azureと Microsoft 365。OpenAIとの関係を軸に、法人のAI利用がそのままクラウド課金に流れる構造を作った。売上の予測可能性が高いのがこの規模では強い。
アップルApple
iPhoneの設置ベースと、そこに乗るサービス収入。AIの処理を端末側で走らせる比重が高く、データセンター投資の負担は他のメガテックより軽い。
台湾積体電路製造(TSMC)TSMC ADR
先端ロジックの受託製造をほぼ独占。エヌビディアもアップルもここで作る。ファンドの国別配分で台湾が5.7%を占めるのは、ほぼこの1銘柄によるもの。
アマゾン・ドット・コムAmazon.com
利益の大半はAWS。物流網の自動化とクラウドという、性格の違う2つの装置産業を同時に回している。自社チップ(Trainium)でGPU依存を下げにいっている点も論点。
メタ・プラットフォームズMeta Platforms
広告で稼いだ現金をAIインフラに投じる構図。投資額の大きさに対して、それがいつどう業績に返るのかが読みにくく、上位10銘柄のなかでは評価の振れが大きい部類。
マイクロン・テクノロジーMicron Technology
DRAMとNAND。AIサーバー向けの広帯域メモリ(HBM)が需給の主戦場になっており、汎用メモリの市況株から性格が変わりつつある。
セレブラス・システムズCerebras Systems
ウェハー1枚をまるごと1個のチップにする設計でAI計算機を作る。推論クラウドも自前で提供。2026年5月14日にナスダック上場、公開価格185ドルに対し初値350ドルという荒い滑り出しだった。
イーライリリーEli Lilly
GLP-1受容体作動薬。上位10銘柄で唯一テクノロジー以外のセクターで、ファンドのヘルスケア6.1%の主要部分を占める。
モルガン・スタンレー フィジカルAI株式ファンド
AIが現実世界に降りてくる側に賭ける、設定4か月の新顔。
追加型投信/内外/株式
日本を含む世界の株式等から、AIの現実世界での活用が広がることで成長が期待できる企業に投資する。運用チームはフィジカルAIを「現実世界で幅広く活躍するAI」と定義し、ヒューマノイドや産業用ロボットに限らず、サプライチェーン・金融・宇宙まで含めて捉えている。為替ヘッジは原則として行わない。
直近 2026年9月9日
- 基準価額
- 9,833円 +0.68%純資産 2,074億円
基準価額と純資産の推移
- 1か月
- -8.0%
- 参考指数 -1.4%
- 3か月
- -2.7%
- 参考指数 +4.3%
- 設定来
- -1.6%
- 参考指数 +4.1%
参考指数は MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(税引後配当込み、円ベース)。ベンチマークではない。
- 運用会社
- 大和アセットマネジメント
- 運用の委託先
- モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント・インク
- 受託会社
- 三井住友信託銀行
- 設定日
- 2026年4月28日
- 信託期間
- 2046年10月19日
- 決算
- 年1回(10月20日)
- 購入時手数料
- 上限3.30%(税込)
- 信託報酬
- 実質 年1.8975%(税込)
- 信託財産留保額
- なし
- 組入銘柄数
- 35銘柄(国内2銘柄・外国33銘柄)
- 上位10銘柄で
- 53.7%
- 協会コード
- 04311264
業種別
国・地域別
時価総額規模別
組入上位10銘柄
2026年7月31日現在株価・52週レンジ・時価総額は2026年9月9日の終値。各カードのチャートは TradingView の現在値(遅延)なので、そのあと市場が動いていれば上の株価とは一致しない。
オーロラ・イノベーションAurora Innovation Class A
商用トラック向けの自動運転プラットフォーム。トラックにも乗用車にも積める自動運転システムを開発している。運用チームは、人間のドライバーを上回る知覚・意思決定能力を備えたシステムの商用化に注目していると説明する。6月末の3位から7月に首位へ。
クラウドフレアCloudflare Class A
クラウド型のネットワークサービス基盤。世界中にエッジサーバー網を持ち、低遅延と安全性が強み。フィジカルAIの文脈では「その場で判断して動く」ための処理をデータセンターまで往復させずに済ませるエッジ基盤として位置づけられている。
テスラTesla
EVと蓄電に加えて、ロボタクシーとヒューマノイド。設計から製造・販売まで一体で持つ垂直統合が競争優位の源泉。フィジカルAIの適用領域を複数方面で同時に築ける点が評価されている。6月末は8.7%で2位だったが、7月に比率を落とした。
メルカドリブレMercadoLibre
中南米最大級のECとフィンテック。出品者と利用者の増加によるネットワーク効果が強み。AIを使った物流の高度化が投資理由に挙げられている。
ドアダッシュDoorDash Class A
米国の大手フードデリバリー。自動運転の配達ロボットによる配送高度化が注目点。7月に新しく上位10銘柄へ入った。
スペースXSpace Exploration Technologies
再利用ロケットと衛星通信「スターリンク」。2026年6月12日にナスダックへ上場した、調達額で史上最大のIPO。AIを積んだ工場・自動車・ロボットが円滑に動くための通信インフラとして重要性が増すという読み。7月はロックアップ解除による需給悪化懸念で下落したと月次レポートに記載があり、実際の解除は8月6日から始まった。
QXOQXO
屋根材・防水材などの建材流通。ロールアップ戦略と経営力が強み。AIと自動化による在庫管理・配送の最適化が投資理由。地味な業種だがファンドの資本財18.0%の一角。
サムサラSamsara Class A
物流トラックなどからデータを集めて分析するセンサーシステム。世界中の顧客ネットワークから集まるデータ量そのものが強み。商用車やインフラの運行最適化に使われる。ティッカーがそのまま IOT。
アイオンキューIonQ
汎用量子コンピューティングシステム。量子計算をロボティクスや電池・半導体の材料開発に使うところまで見据えた保有。
ロイヤルティ・ファーマRoyalty Pharma Class A
バイオ医薬品のロイヤルティ収入に投資する会社。特許に基づく安定収益が強み。AIと自動化による創薬の進展で生まれる新薬の収益機会を取り込める、という位置づけ。
見つけたついでの発見
作業中に一番「へえ」と思ったのは、銘柄でも配色でもなく、目論見書の隅に書いてあった一文でした。
フィデリティ・グロース・オポチュニティは4コースあります。為替ヘッジの有無と、決算が年1回か毎月かの組み合わせ。純資産は毎月決算のDコースが1兆2,133億円と圧倒的で、年1回のBコースが5,808億円です。
そのDコースが、NISAの対象外です。A・Bコースは成長投資枠の対象。毎月分配型のC・Dは対象外。
一番売れているコースが、非課税で買えないほうだった。分配金を受け取りたい人が多いということなんでしょうけど、税制のほうは真逆を向いている。
所長にその話をしたら、「ふーん」で終わりました。次はフィジカルAI関連の日本株を出せ、だそうです。あのファンド、国内株は2銘柄しか持っていないんですけどね。