盆栽の水やりは、植物の生命を維持する基本作業です。しかし、その方法は樹種や季節によって異なり、盆栽が枯れる原因の約9割を占めるとも言われます。この記事では、赤松や五葉松、桜、モミジなど30樹種を対象に、日々の管理に役立つ水やりの知識を解説します。
水やりとは
水やりは、鉢土に水を与える作業です。植物の根は先端からしか水を吸わないため、水やりによって土中に水分を供給し、細根の活動を支えます。鉢の中に水をやることを「灌水」、葉に水をやることを「葉水」と呼びます。
適期の見極め
水やりは、土の表面が乾いたタイミングで行うのが原則です。多くの樹種で、春と秋は1日1回、夏は1日1〜2回、冬は2〜3日に1回が目安となります。
具体的な判断基準は以下の通りです。
* 土の色で判断する: 赤玉土は乾くと白っぽく変色するため、表面が白くなったら水やりのサインです。
* 土を掘って確認する: 土の表面を5mm〜1cm程度掘り、中が湿っている場合は水やりを控えます。
* 鉢の重さで判断する: 急須のような穴のない鉢では、鉢を持った感覚で乾き具合を判断します。
手順と判断基準
水やりには、ホームセンターなどで購入できるジョーロを使用します。
1. ジョーロの水を、鉢土全体に均等にかけます。
2. 鉢の底から水がチョロチョロと漏れてくるまでたっぷりと与えます。
3. 植え替え直後は、バケツなどに鉢ごと漬けるか、微塵を含んだ茶色く濁った水が出なくなるまで与えます。
2〜3日の外出時は、水をたっぷり与えた後に鉢全体をビニール袋で覆うことで乾燥を防げます。
樹種別の違い
樹種によって水の好みや必要な頻度が異なります。
* 松柏類(黒松、五葉松、真柏、杜松)
土が常に湿っていることを嫌うため、土が乾いてから水やりを行います。夏場は黒松で1日2〜3回、五葉松は朝夕、冬は3〜5日に1回が目安です。真柏も湿った土壌を好みません。
* 梅・桜類(白梅、紅梅、野梅、枝垂れ梅、桜、大島桜、山桜、庭桜、枝垂れ桜)
水を好む樹種です。特に開花中は多くの水を吸うため、多めに与えます。夏の水やりは1日2回が目安となり、成長期(3〜9月)は水切れに注意が必要です。
* モミジ・ケヤキ類(イロハモミジ、モミジ、ヤマモミジ、ケヤキ、ニレケヤキ)
成長期は水を多く必要とします。夏場は成長が活発なため、1日に数回の水やりが必要になる場合があります。水切れすると葉先が枯れるため注意します。
* 花物・実物(長寿梅、ドウダンツツジ、ハナカイドウ、椿、老爺柿)
開花期や花芽形成期に水管理が重要です。ドウダンツツジは初夏に水切れさせると翌年の花付きが悪くなります。ハナカイドウは夏に1日2〜3回、椿は開花前後に水を切らさないようにします。
* その他の樹種
* ブルーベリー: 夏は1日2回、冬は土の表面が乾いたら与えるなど、季節による差が大きいです。
* オリーブ: 過湿を嫌います。冬は土の表面が乾いてから2〜3日後、さらに土の中央まで乾いてから与えます。
* パンダガジュマル: 夏は毎日水やりをしますが、冬は休眠期のため2週間に1回程度と頻度が大きく変わります。
こんなやり方は要注意
水のやりすぎによる根腐れ
水のやりすぎは根腐れを引き起こし、枯死の原因となる可能性があります。特に五葉松、黒松、ヒメナンテン、オリーブなどは過湿に注意が必要です。土が湿っているうちは水やりを控えます。
夏場の水切れ
初夏の時期は、ドウダンツツジが翌年の花芽をつくるため水切れに注意が必要です。ヤマモミジは水切れすると葉先が枯れて紅葉に影響します。枝垂れ桜も夏場に水切れさせると翌年の花つきが悪くなる可能性があります。
不適切な時間帯の水やり
夏場の気温が高い日中に水を与えると、根にダメージを与える可能性があります。五葉松、オリーブ、パンダガジュマル、老爺柿などは、日中の高温時を避け、早朝か夕方以降の涼しい時間帯に行います。
強い水圧での水やり
強い水圧で一箇所に水をやると、用土がえぐれて水のかけムラができます。また、幹の皮が剥がれる可能性もあるため避けます。
腰水の常用
鉢を水に浸す腰水は、根腐れの原因になる可能性があります。冬場に屋外で行うと凍結の恐れもあるため、常用は推奨されません。
松類への夕方の葉水
松類への葉水は、夕方に行うと葉が長くなる原因になるため、日中に行うのが適しています。
実践のコツ
葉水の効果的な使い方
葉水は、乾燥を防ぐだけでなく、芽吹きを保つ効果も期待できます。黒松や赤松の芽切り後や、杜松の成長期に葉水を行うと効果的です。パンダガジュマルは春から秋に1〜2日に1回の頻度で葉水を行います。
植え替え後の特別な水やり
植え替え後は、微塵を含んだ色のついた水が出なくなるまでたっぷりと水を与えます。イロハモミジでは、竹串を刺して水の通り道を作ると効果的です。白梅の植え替え時には、植物の活力を補うためメネデールを100倍に希釈して与える方法もあります。
野梅の花芽を増やす「水切り」
野梅は6月頃に「水切り」を行うことで、花芽がつきやすくなります。葉がしおれるまで水やりを待ち、鉢土の表面が白くなるまで乾かしてから水やりをすることで、木が締まります。
鉢の表面の苔
枝垂れ桜などでは、鉢の表面の苔が土の乾燥を早める原因になることがあります。特に夏場の水やり管理では、苔を剥がすことも有効です。


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